患者さんの認知機能を低下させない。
根拠ある実践で
後輩にケアの必要性を伝えたい
湘南鎌倉総合病院
認知症看護認定看護師
玉城 佐和子さん
湘南鎌倉総合病院
認知症看護認定看護師
玉城 佐和子さん
2010年の病院移転時から混合病棟で勤務しています。当病棟の患者さんは緊急手術をする方や重症度の高い方が多く、他科に比べると生命にかかわる重要なルート類が挿入されることが少なくありません。一方で、脳の損傷による高次脳機能障害や認知症でルートの必要性がわからなくなった方、負担の大きな心臓手術でせん妄になった高齢患者さんなど自らルートを抜去する危険性が高い方も多く、安全上やむなく行動制限をする場面に出合ってきました。
入職6~7年目の頃、そうした行動制限に疑問を感じ、どうすれば減らせるのか、高齢者ケアにつなげる方法はないのかを先輩看護師に相談したところ、勉強して認知症看護認定看護師を目指してみてはどうかと助言をもらいました。もともと高齢化率の高い地域で生まれ、高齢者とのかかわりが好きで看護師になった経緯も、資格取得にチャレンジするきっかけとなりました。
教育機関での研修中は仕事との両立がかなり大変でしたが、乗り越えられたのは、背中を押してくれた病棟メンバーのサポートと、当院の充実した支援体制のおかげです。特に入学金、交通費、遠方であれば住居費、教育課程在学中の給与などがすべて支給されるなど、金銭的・時間的援助はとても心強く、恵まれた環境だと感じます。
当院には認定看護師が多く在籍しており、院内でさまざまな勉強会があるほか、認定看護師への相談や指導を受けることも可能です。現在私もその一員として、認知症ケアの根拠と必要性を伝え、同僚や後輩と一緒に実践することで身につけた知識や技術を還元することにやりがいを持っています。例えば、これまで何気なくしていた声かけ。自分の対応をひとつずつ振り返ることで、認知症あるいは認知機能が低下している患者さんがどう反応するのか根拠づけが明確になり、今の状態ならどうかかわっていくべきかを考えられるようになりました。
ある時、看護師が複数で声をかけると怒り出す患者さんに対して、夜勤中の看護師が身構えて数名で声をかけてしまい、怒りを増長させたことがありました。私が一人で話を聞いてみると、以前、複数のルートが入っていたときに暴れてしまい、みんなに押さえつけられた記憶が強く残っていたことがわかりました。身体抑制された思いが甦り、怒りとなって自分の身を守っていたのです。私たちの声かけの仕方次第で相手に安心感も不安感も与えるのだと再認識したケースでした。その後のカンファレンスで声かけの仕方を変えたことで、その方は突然怒り出すことはなくなりました。
病棟には認知症でなくとも突然の環境変化で認知機能が低下する患者さんがたくさんいます。急性期病院で大事なのは短い入院期間で今以上に状態を悪化させないこと。患者さんの地力が下がると退院後の家族の負担が大きくなってしまうからです。それには興奮させて嫌な思いをさせないことが大切です。認定看護師として、患者さんと患者さんを取り巻く家族や全スタッフにかかわり、院内・院外の勉強会を通して安心して過ごせる環境を提供できるよう努めています。病棟看護師の認知症への苦手意識を払拭し、一緒にかかわって良かったと思ってもらえるように取り組んでいます。
湘南鎌倉総合病院
[住所]〒247-8533 神奈川県鎌倉市岡本1370-1
[TEL]0467-46-1717
Profile プロフィール
脳神経外科・心臓血管外科・眼科混合病棟 沖縄県出身・沖縄県立看護大学卒業
2010年、新卒で同院へ入職。2017年に認知症看護認定看護師資格を取得。
病棟での勤務とともに認知症ケアチームの一員として組織横断的に活動中。
内科、外科、クリティカルで3カ月ずつ経験を積み、配属を決定する研修制度に魅力を感じて入職を決定。地元を離れ、慣れない土地での一人暮らしに不安が大きかったですが、研修で同期とすぐに親しくなり、相談し合ったり、一緒に食事に出かけたりしているうちに不安が軽減されました。
仕事面では、先輩方が日々の業務や看護技術のことはもちろん、今後のキャリアについても相談に乗ってくれ、とても心強いです。