看護の就業体験ガイド|実施内容から学生が参加するメリットまで

看護の就業体験ガイド|実施内容から学生が参加するメリットまで

最終更新日:2024/09/02

病院が実施している就業体験のプログラムは病院や働き方への理解を深める貴重な機会です。今回は、病院による就業体験の内容や参加するメリットを解説します。就業体験先を選ぶポイントや、スケジュール例も紹介するので参考にしてください。

看護学生向けの病院が行う就業体験とは

病院が行っている就業体験とは、看護学生が実際の現場で働く体験をする場のことです。新卒採用をしている病院が看護学生向けに実施しているもので、参加者は病院の仕組みや具体的な仕事内容が実践的に学べるだけでなく、職場の雰囲気を肌で感じることもできます。

病院説明会との違い

就業体験と病院説明会は、採用活動の一環として病院が実施しますが、内容には違いがあります。病院説明会は、病院側が病院の概要や採用情報などを学生に説明するものであるのに対し、就業体験は、病棟や手術室での看護体験や座談会など学生参加型のプログラムです。

そのため、就業体験のほうが病院で働くことへの理解をより深めやすいといえるかもしれません。ただし、病院によって実施時期が限られていたり、行わない場合もあります。

就業体験の目的

就業体験の目的は、参加者と主催者によって違っています。それぞれについて解説します。

参加する看護学生側の目的

就業体験に参加する看護学生の目的は以下の3つです。

  • 病院への理解を深める
  • 自己理解を深める
  • 働くイメージをつかむ

就業体験は、病院の雰囲気を感じたり患者さんと看護師の関わりの様子を自分の目で確かめたりできるため、病院への理解が深まり、病院選びの判断材料にもなります。また、参加して感じたことや理解した内容を整理することが、自分の看護観や理想の働き方をみつめ直す機会にもなるでしょう。

さらに、就業体験を通して社会人として働くことや実際にその病院で働くことをイメージするきっかけにもなります。

主催する病院側の目的

就業体験を主催する病院側の目的は以下の3つです。

  • 病院の魅力を看護学生に伝える
  • 採用後のミスマッチを防ぐ
  • 看護人材の育成に貢献する

病院側としては、就業体験によって看護学生に職場や病院で働く人の雰囲気を知ってもらい、病院の魅力を伝えることが大きな目的です。また、資料や説明会だけでは伝えきれないリアルな現場の情報を伝えることで、看護学生が入職後に理想とのギャップから早期離職してしまうのを防ぐという目的もあります。

就業体験は、学生が将来の方向性を見出すきっかけ作りにもなることから、看護師として活躍する人材の育成に貢献する場になっているともいえます。

就業体験に参加するメリット

ここでは看護学生が就業体験に参加するメリットを解説します。

参加した看護学生の満足度は98%

ナース専科就職ナビでは、就業体験に参加した看護学生の満足度を調査しました。

参加した就業体験の満足度を教えてください

アンケートでは、病院の就業体験に参加した人のおよそ98%が「満足」と回答しています。そのうちの67.7%は「大変満足」と回答していることから、看護学生にとって就業体験は満足度の高いプログラムであることがわかります。

看護学生が就業体験に参加するメリット

就業体験の満足度が高い理由は、参加した看護学生にとってさまざまなメリットがあることです。ここでは、看護学生が就業体験に参加する4つのメリットを解説します。

現場のリアルな情報が得られる

病院の就業体験に参加するメリットは、現場のリアルな情報が得られることです。院内見学や看護体験を通して、病院の設備、働くスタッフや入院患者さんの雰囲気などが確認できます。診療科や病棟ごとの雰囲気の違いも感じられ、入職後の診療科選びにも役立ちます。

また、プログラムのなかに懇親会や質疑応答の時間を設けている病院も多く、責任者や採用担当者、先輩看護師など幅広い層の職員から直接話を聞くチャンスがあるのも魅力です。

自分の就活の軸を深掘りする機会になる

就業体験に参加することで、自分の就活の軸を深掘りする機会が得られることもメリットといえます。現場のリアルを知りどう感じたかを振り返ることが、自分の理想をみつめ直すきっかけにもなるからです。

複数の病院の就業体験に参加すれば、病院ごとの特徴の違いを比較しながら、自分に合うかどうかを検討することも可能です。自分の理想を明確にして就活の軸をしっかり持っておくと、その後の病院選びや志望動機の作成に役立つでしょう。

入職後のミスマッチが軽減できる

就業体験に参加すると、その病院で働く自分をイメージしやすくなり、入職後のミスマッチを減らすことにもつながります。日本看護協会「2023年病院看護実態調査」によると、2022年度の新卒看護師の離職率は10.2%で高止まりの傾向といえます。早期離職の要因はさまざまですが、自分でできる一番の対策は入職後に「想像と違った」とならないようにすることです。

就業体験に参加して理想の働き方が叶えられそうな病院がみつけられれば、入職後の意欲を高めることにもつながるでしょう。

志望先の病院にアピールできる

就業体験に参加することは、志望先の病院に対し入職意欲の高さをアピールするチャンスにもなり得ます。就業体験に参加した記録が病院に残るだけでなく、参加時に採用担当者と直接話す機会が持てれば、自分の印象を残せる可能性も大いにあるでしょう。

また、就業体験に参加したエピソードを志望動機や面接時の返答に盛り込めば、より説得力のある内容になり、自らの意欲の高さを伝えることもできるでしょう。

就業体験のスケジュール

ここでは就業体験の参加時期や当日のスケジュール例を紹介します。

おすすめの参加時期

就業体験に参加する時期は、大学の3年次、専門学校なら2年次の7月〜9月頃、あるいは12月〜3月頃がおすすめです。

一般的に看護学生の就職活動は、最終学年の前年の夏頃から始まり、遅くとも最終学年の冬頃までには内定先が決まる流れとなっています。そのため、実習や採用試験が本格的に始まる前に就業体験に参加しておくと、余裕をもって就職活動を行うことができます。

それぞれの時期にどのような目的を持って就業体験に参加すればよいか、ポイントをまとめました。なお、就業体験は病院によって随時実施しているところもあれば、時期や対象学年を限定しているところもあります。気になる病院の情報は早めにチェックしておきましょう。

実施時期:7月~9月

7月〜9月は夏休み期間のため、就業体験を行う病院は多い傾向にあります。まとまった時間が確保しやすい時期なので、説明会や請求資料をチェックして気になる病院の就業体験に参加してみましょう。

この時期は就職活動の初期段階にあたるため、病院の種類や規模にこだわらず、できる限り多くの就業体験に参加することをおすすめします。さまざまな病院の幅広い情報を得ることで、病院選びの視野が広がり、自己分析にも役立ちます。

実施時期:12月~3月

12月〜3月は冬休みや春休みを利用して就業体験に参加できる時期です。具体的に志望先の病院を絞り込む時期にあたるので、気になる病院の就業体験に参加して志望先の決定に役立てましょう。

3月以降も就業体験に参加することは可能ですが、3月頃までに就業体験を終え、志望先の病院を決めておくと、採用試験や実習、国家試験の対策に集中できます。

当日のスケジュール例

就業体験のスケジュールは病院によって異なりますが、ここでは一般的な例として1日コースの場合のスケジュール例を紹介します。

看護学生向け就業体験のタイムスケジュール例

就業体験は、オリエンテーションで始まり、院内見学、看護体験、質疑応答と懇親会の流れでタイムスケジュールが組まれていることが多いようです。細かなスケジュールは病院によって異なるため、当日のオリエンテーションで確認してください。

病院によっては、数日間にわたって実施しているところや半日のみのところもあります。また、オンラインで参加できたり、夜勤帯での就業体験を実施しているケースもあるようです。自分のスケジュールの都合や体験してみたい時間帯に合わせて選んでみましょう。

就業体験でチェックしたいポイント4選

就業体験でチェックしたいポイントを押さえておくと、限られた時間内でも病院への理解が深められます。ここでは就業体験でチェックしたいポイントから4つについて解説します。

チェックポイント1:病院の雰囲気や設備

病院の雰囲気や設備は院内見学でチェックしましょう。バタバタしていて忙しそう、ゆったりとした雰囲気など、実際の院内の空気が感じられます。

病院設備の充実度は働きやすさに関わるため、トイレや浴室の広さ・清潔さ、最新設備の有無や院内設備のメンテナンス状態、病院全体の清掃が行き届いているかなども確認するとよいでしょう。

チェックポイント2:患者さんやスタッフの雰囲気

院内の人間関係や雰囲気は、勤務した場合のモチベーションやストレスに大きく影響します。院内見学や看護体験で、患者さんやスタッフの様子からチェックしてみてください。

どのような状態の患者さんが入院しているか、患者さんに対する看護師の対応は丁寧か、看護師同士のコミュニケーションが円滑で協力体制が感じられるかなどの点から観察してみましょう。看護師と他職種との関わり方についてもみておくとよいでしょう。

チェックポイント3:リアルな現場の情報

就業体験は、説明会よりも参加者と病院側スタッフとの距離が近いため、リアルな現場の情報が得られるチャンスです。看護師の働き方や採用情報など、気になることは積極的に質問しましょう。

特に懇親会や座談会は、年齢や感覚の近い先輩看護師が参加していることも少なくありません。直に話が聞ける貴重な機会です。病院に関することだけでなく、就職活動や国家試験対策に対するアドバイスをもらえることもあるので、積極的に交流を深めてみてください。

チェックポイント4:診療科ごとの特徴

就業体験を開催している病院のなかには、診療科をいくつか見学できるところもあります。どの診療科を希望するかの参考になるため、気になる診療科ごとに雰囲気や患者像、看護師の役割や業務内容の違いをみておきましょう。

気になる就業体験先の探し方・選び方

就業体験はさまざまな方法で参加募集が行われています。いち早く情報収集し、効率よく就業体験に参加するために、ここでは就業体験先の探し方と選び方のコツを紹介します。

探し方のコツ

就業体験の情報を探すには以下のような方法があります。

  • 病院の公式サイトや資料で確認する
  • 学校の就職センターや先生から情報を得る
  • 就活サイトを活用する

素早く多くの情報を得るには、就活サイトを活用するのがおすすめです。多くの病院情報を掲載している就職サイトから、気になる病院を絞り込み、資料請求や病院の公式サイトで確認するか、就活サイトの就業体験情報から直接申し込みをする方法もあります。

ナース専科就職ナビでは、全国の病院情報や就業体験の情報を掲載しています。サイトより就業体験の申し込みができる病院もあるため、ぜひ活用してください。

就業体験 病院見学会

選び方のコツ

何かと忙しい看護学生は、限られた時間で効率よく就業体験に参加したいもの。そのためには選び方が大切です。ここでは、参加する就業体験の選び方のコツを3つ紹介します。

早い時期から開催されている就業体験を選ぶ

早い時期から開催されている就業体験があったら、参加する方向で検討しましょう。遅くなればなるほど、参加できる就業体験も限られてきてしまいます。また、希望する病院の就業体験の日程が被ってしまう場合もあります。

病院選びに役立てるためにも、複数の就業体験に参加して比較することが理想です。まずは早めに行われている病院の就業体験に参加してみましょう。早い段階で参加できると、自己分析も深められ、情報収集する時間も確保できるため、余裕を持った就職活動ができるはずです。

異なる規模や機能の病院を複数選ぶ

どの病院の就業体験に参加するか迷ったら、異なる規模や医療機能の病院からそれぞれ選ぶことをおすすめします。特徴が異なる病院の就業体験に参加し、その違いを比較することが、視野を広げることにつながるでしょう。

特にまだ進みたい分野が定まっていない人は、いろいろな現場をみることで自分の就活の軸が定まりやすくなります。進みたい分野がある程度決まっている人も、比較検討の材料として異なる分野の就業体験にぜひ参加してみましょう。

気になる病院がある人は似た規模や機能の病院を選ぶ

すでに志望先の病院が決まっている人や気になる病院が明確にある人は、その病院と規模や病棟の種類、医療機能が似ている病院の就業体験に参加してみましょう。

規模や医療機能がさほど変わらない病院であっても、特徴や雰囲気は異なります。就業体験に参加してほかの病院を知ることで、違う視点が生まれたり、もともと志望している病院への入職意欲が高まったりするかもしれません。

参加前~参加後の注意点

ここからは、病院の就業体験に参加するときの注意点を、参加前、当日、参加後に分けて解説します。事前に確認しておきましょう。

参加前

就業体験を充実した時間にするには、参加前の準備が欠かせません。当日に慌てることがないよう、やるべきことを確認しておきましょう。

事前情報の確認

事前に確認すべき情報は以下のとおりです。

確認事項
病院の情報 ● 病院の特徴(診療科や施設概要)
● 病院や看護部の理念
● 就業体験のプログラム内容
交通手段と集合場所 ● 病院までの交通手段
● 集合場所と集合時間
参加目的と質問事項 ● 参加する目的
● 病院への質問事項

事前に病院の情報を頭に入れておくことで、就業体験での病院への理解がさらに深められます。病院情報を公式サイトや資料で確認しておきましょう。また、当日は遅刻しないように時間にゆとりをもってスケジュールを組み、万が一に備え複数パターンの交通手段を調べておくと安心です。

そのほか、就業体験を充実したものにするため、自分が参加する目的を再確認し、病院への質問事項はメモにまとめておきましょう。

持ち物と身だしなみの確認

病院から案内されている持ち物や服装を準備します。不明な場合は、早めに病院に問い合わせてください。白衣やナースシューズなどは、前日までに忘れず学校から持ち帰りましょう。

持ち物チェックリスト
☐ 白衣
☐ ナースシューズ(白靴下・ストッキング)
☐ 筆記用具
☐ 学生証
☐ マスク

上記に加え、昼食や名札、体調管理表、印鑑が必要な場合もあります。

身だしなみはマナーとしてはもとより、相手に与える印象にも関わります。悪い印象にならないようチェックリストをもとに身だしなみを整えましょう。

身だしなみチェックリスト
髪型 ☐ 清潔感のあるヘアスタイル
☐ 長い髪はまとめる
服装 ☐ リクルートスーツ
☐ 着衣に汚れやシワがないか確認
カバン ☐ 持ち物とA4サイズの資料が入るもの
☐ 派手ではないシンプルなもの
メイク ☐ ナチュラルメイク
☐ 香水など香りの強いものは避ける

当日

就業体験当日の注意点は以下の2つです。

主体的に参加する

就業体験は説明を受ける場ではなく、体験することが目的です。学びある時間にするためにも、受け身ではなく主体的に参加・行動しましょう。病院の指示に従い、患者さんに配慮しながら積極的な姿勢で臨むことを心がけてください。

挨拶や正しい言葉遣いを徹底する

挨拶や言葉遣いは、その人の印象を左右します。ハキハキとした丁寧な言葉遣いを心がけ、患者さんや病院スタッフへの挨拶は忘れないようにしましょう。

参加後

就業体験参加後にやるべきことは以下の2つです。

礼状を送る

礼状は参加した翌日までに、感謝の気持ちや参加した感想を添えて送りましょう。礼状は就業体験に参加させてもらったことへの感謝を伝えるものです。たとえ志望の病院でなかったとしても、礼状を送ることはマナーとして大切なことです。メールで送る方法もありますが、温かみが感じられる手書きをおすすめします。

情報をまとめる

就業体験で得た情報や感じたことをまとめておくと、その後の病院選びだけでなく、エントリーシートの作成や面接に役立つ場合があります。また、自分が感じたことを言語化してまとめる作業は、自己分析の機会にもなります。参加後はできるだけ早く情報を整理しておきましょう。

就業体験に参加して理想の病院をみつけよう!

病院の就業体験は、病院選びだけでなく自己分析をする機会になり、就活の軸を確実なものにすることにも役立ちます。さらに、看護体験を通して働くイメージを固めることが、入職後のミスマッチを防いだり、働く意欲を向上させたりと、入職して看護師となった自分にもメリットをもたらします。限られた時間のなかで納得できる就職活動を行うために、ぜひ積極的に就業体験を活用しましょう。

執筆者情報

プロフィール画像

伊藤 雪乃

ito-yukino

2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力