内科看護師ってどんな仕事内容?特徴・やりがいから外科との違いまで

内科看護師ってどんな仕事内容?特徴・やりがいから外科との違いまで

最終更新日:2024/11/25

内科は病院やクリニックにおいて代表的な診療科のひとつです。今回は内科の特徴や働く看護師の仕事内容を解説します。勤務経験者の話をもとに、向いている人の傾向や学生のうちに勉強すべきことも紹介するので参考にしてください。

内科とは

内科とは、内臓、神経、血液などの疾患について問診や検査結果による診断をもとに、手術ではなく、薬物療法や食事・運動療法などによって治療を行う診療科です。対象となる疾患は幅広く身体全体を診る医療分野のため需要が高く、内科系診療科を掲げている医療施設は、病院からクリニックまでさまざま存在します。

厚生労働省が発表している2022年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況では内科医が最も多くなっています。

対象となる患者さん

内科は、風邪や腹痛など一般的な疾患から消化器疾患や心疾患など専門性を要する疾患まで、幅広い疾患の人を対象とします。症状にかかわらず身体の内部の健康問題を抱える人すべてが内科の対象となる患者さんです。

薬物療法や食事・運動療法などによる治療がメインで、なかには、慢性疾患や生活習慣病など継続的な治療が必要な人や病態・合併症などにより手術が行えない人もいます。

内科と外科の違い

内科と並ぶ代表的な診療科としては外科が挙げられます。内科と外科にはどのような違いがあるのか、下記は内科と外科の特徴の違いをまとめました。

内科 外科
治療方法 保存的治療 手術による治療
・薬物療法
・食事療法
・運動療法
・カテーテル治療   など
・開胸・開腹手術
・整形外科手術
・内視鏡手術   など
対象となる
患者・疾患の傾向
・一般的な疾患や慢性疾患
・手術による治療が困難な疾患
・骨折・外傷や手術による治療が可能な疾患
経過 状態変化がゆっくりしている 状態変化が早くはっきりしている
治療期間 比較的長い 比較的短い

内科と外科の大きな違いは手術の有無です。内科は保存的治療がメインのため、身体的侵襲は少なく、経過が比較的ゆっくりであるのに対し、手術がメインの外科は、身体的侵襲が大きく、術後の経過は比較的早く、はっきりしている傾向にあります。

病院によっては内科も外科も診療科が患部別に細分化されているケースがあります。その場合、消化器系のがんであれば、化学療法による治療行うときは消化器内科、手術により治療するときは消化器外科のように、治療方法によって内科と外科のどちらの対象になるかが変わります。

内科の看護師の役割と仕事内容

ここでは内科で働く看護師の職場例や役割、仕事内容を解説します。

内科で働く看護師の職場例

病院、クリニックから専門診療科まで、内科で働く看護師の職場は多岐にわたります。ここからは施設形態別と診療科別で、内科で働く看護師の職場例を紹介します。

施設形態別
  • 病棟
  • 外来
  • クリニック(診療所)

施設形態で分けると、入院患者さんを受け入れる病棟、通院患者さんの治療を行う外来、入院施設が19床以下のクリニックの主に3つに分けられます。

病棟は、入院による治療が必要な人や複数の疾患を抱えている人、在宅療養が困難な高齢者さんなどが対象となります。クリニックや外来は、通院での治療が可能な人が対象となるため、風邪や食欲不振など比較的軽症の患者さんや、入院による治療を終えて在宅療養をしている患者さんに携わる機会が多いでしょう。

診療科別
  • 呼吸器内科
  • 循環器内科
  • 消化器内科
  • 脳神経内科  など

大規模な病院で診療科が細分化されている場合は、上記のように内科が患部別に分かれています。規模が小さい病院やクリニックは、診療科を細分化せず、内科として幅広い疾患を受け入れているところが多い傾向にあります。また、消化器内科クリニックのように医師の専門分野に応じて診療科を掲げているクリニックもあります。

役割

内科で働く看護師の役割は、施設形態や専門分野にかかわらず、患者さんが安全に効果的な治療を受けられるよう援助することです。

内科医は問診や各種検査データなどをもとに診断し、治療方法を決定します。そのため看護師には、検査の介助や薬物投与の説明・実施、生活指導や服薬指導などによって、スムーズに治療が進められるよう看護を提供することが求められます

内科で働く看護師の仕事内容

内科で働く看護師の具体的な仕事内容は、施設形態によって異なります。入院による治療が必要な患者さんと、通院しながら治療を受ける患者さんでは必要な看護が違ってきます。

ここでは病棟と外来・クリニックに分けて、内科で働く看護師の仕事内容を解説します。ただし、同じ施設形態であっても施設や専門分野によって細かい仕事内容は異なるため、ここで紹介する仕事内容は、内科の一般的なものとして捉えてください。

病棟の仕事内容

内科病棟の看護師の業務一覧
全身状態の管理 ・症状、バイタルサイン、検査データなどから全身状態を観察する
検査介助 ・採血や採尿などの検体採取
・内視鏡検査などの準備や説明
薬物治療の実施・指導 ・点滴や注射の実施
・服薬管理と指導
入院生活のケア ・環境整備、入浴や食事など日常生活の援助
患者・家族の精神的ケア ・コミュニケーションによるケア
・退院後の生活に関する指導・ケア
記録・手続き ・看護計画の立案
・看護記録
・入退院に伴う手続き

入院患者さんを受け入れている病棟では24時間体制で療養上のケアが必要なため、診療の補助に加えて日常生活の援助が主な仕事になります。また、病棟に入院している患者さんは、複数の疾患を抱えている人や全身状態がよくない人が多い傾向のため、全身状態の継続的な管理も重要になります。

外来・クリニックの仕事内容

外来・クリニックの看護師の業務一覧
診察の補助 ・診察の準備
・医師のサポート
・問診
・バイタルサインの測定
検査介助 ・採血や採尿などの検体採取
・エコーや内視鏡検査の介助
薬物治療の実施 ・点滴や注射の実施
指導 ・服薬指導
・生活指導
記録・手続き ・看護記録
・受付業務

外来やクリニックでは、医師の診療の補助が主な仕事内容となります。ただし、内科的治療を効果的に進めるには患者さんや家族の管理が欠かせないため、在宅療養のための服薬管理の支援や生活指導も重要な業務のひとつです。

内科病棟の1日のスケジュール例

ここでは2交代勤務の病棟を例に、内科病棟で働く看護師の1日のスケジュールを日勤と夜勤に分けて紹介します。

なお、勤務形態や仕事のスケジュールは病院や病棟によって異なるため、ひとつの例として参考にしてください。また、日勤や夜勤で受け持つ患者さんの人数は、病院の医療区分や病棟が採用している看護方式によって異なります。受け持つ患者さんの人数は、急性期の病棟の場合は少なく、慢性期の場合は多くなります。

日勤のスケジュール

以下は日勤のスケジュール例です。

内科で働く看護師の1日スケジュール例(日勤)

内科病棟では薬物療法や食事療法がメインとなるため、点滴や血糖測定、経管栄養剤の注入などのケアが多くなります。インスリン自己注射や生活習慣の指導をしたり、内視鏡や心電図などの検査がスムーズに受けられるようにスケジュールの確認をしたりすることも看護師の仕事です。

夜勤のスケジュール

以下は2交代制の夜勤のスケジュール例です。病院によっては3交代制を採用しているところもあります。

内科で働く看護師の1日スケジュール例(夜勤)

夜勤帯は、バイタルサインの測定、点滴の更新、食事介助などを主に行います。救急搬送の受け入れをしている病院であれば、夜間緊急入院の対応も必要になります。

内科と外科はどちらが大変?経験者が語る内科のリアル

ここからは、内科をメインに外科でも勤務経験がある人の体験談を交えて、内科のやりがいや内科と外科の大変なところの比較を紹介します。

看護師プロフィール

モモ さん

モモ さん

新卒で就職した急性期病院の整形外科病棟で経験を積むなか、内科に興味を持ち循環器内科へ異動。3年間の勤務で内科看護を学ぶ。その後、慢性期病院へ転職し、内科病棟や内科外来にて勤務。

内科に興味を持ったきっかけは?

新卒では外科に配属になりましたが、看護師として働くうちに患者さんの治療にじっくり関わり、体内の循環や生理学の学びを深められる内科への興味が強くなりました。なかでも、全身の循環動態の知識を培える循環器内科を経験してみたいと思い異動を希望しました。

内科のやりがい・魅力は?

内科のやりがいは、患者さんとじっくりと関われることです。内科の患者さんは長期入院になったり、入退院を繰り返す人もいるため比較的時間をかけて信頼関係を築きながら看護が提供できます。病気の知識や在宅生活についての指導などを通し、患者さんや家族とコミュニケーションをとる機会が多いのが魅力です。

内科でつらかったことや大変だったことは?

内科で大変と感じたことは、経過がゆっくりで変化が読み取りにくいことです。 そのため、治療やケアを行ってもなかなか改善がみられなかったり、なかには入退院を繰り返すうちに状態が悪くなってしまったりする状況に遭遇し、つらさを感じることがありました。

また、内科は緊急対応が少なめといわれますが、急性期の内科病棟では急変や入退院が多く、外科以上に忙しくなる場合もあります。そのため、患者さんとじっくり関わりたくても時間が取れないもどかしさもありました。

内科と外科どちらが大変?

内科と外科は大変なところや魅力が違うため、どちらが大変と感じるかは人それぞれです。例えば、スピード感のある仕事をしたい人の場合、展開の早い急性期の外科によりやりがいを感じ、変化がゆっくりである慢性期の内科病棟では物足りなさを感じるかもしれません。

内科と外科のそれぞれの特徴を理解して、自分の価値観にあったほうを選ぶとよいと思います。各々に学べる分野の違いやよさがあるので、内科と外科の両方を経験してみる選択肢もおすすめです。

内科で培えるスキルは?

内科で培えるスキルとしては、観察力やアセスメント力が挙げられます。内科は変化が穏やかだからこそ、バイタルサインや全身状態、検査結果や患者さんとのコミュニケーションから小さな変化を読み取る観察力が必要になります。あらゆる情報から総合的にアセスメントする能力も身につきます。

また、アセスメントや患者さんへの指導には根拠のある知識が必要であるため、解剖生理や疾患の知識が身につけられる機会も多いでしょう。

その後のキャリアプランやおすすめの資格は?

内科で学べる基礎知識は、ほかの診療科や病院以外の医療施設でも幅広く役立ちます。内科看護師としてより専門性を磨きたい人は、診療科が細かく分かれている大規模病院を選び、興味のある専門分野に進むキャリアプランを選ぶとよいでしょう。

内科看護師として働いている人におすすめの資格は糖尿病看護認定看護師です。糖尿病は患者数が多く、内科の対象となる代表的な疾患であるため、糖尿病看護認定看護師の知識は病棟と外来のどちらでも役立つでしょう。

内科看護師になるには?向いている人の特徴を紹介

内科看護師になるには、免許取得後に内科がある病院やクリニックに就職する必要があります。診療科が多数ある病院の場合は、内科に配属されるよう、内科の特徴を理解し、志望動機を明確にしておきましょう。

内科が向いている人の特徴

内科が向いている人の特徴を以下にまとめました。

  • 患者さんとじっくり関わりたい人
  • 処置よりもケアが好きな人
  • 広い視点で物事を考えるのが好きな人

内科は、外科に比べると治療による変化が穏やかで、治療期間が長くなりやすく、医療処置よりもケアが多めになる傾向にあります。そのため、患者さんとじっくり関わりたい人や、処置よりもケアが好きな人が向いているといえます。

また、全身状態や検査結果などからアセスメントする能力や、患者さんの性格や生活背景を考慮して指導する力が必要になるため、広い視点で物事を考えるのが好きな人には学びの機会が多いでしょう。

ただし、上記の特徴が備わっていなくとも看護師としての能力は経験を通して蓄積されるものです。特徴に当てはまらなくても、内科で学びたいことがある人はぜひ挑戦してみてくださいね。

目指している学生へ。今からやっておくとよいことは?

内科看護師を目指したい人は、学生のうちから解剖生理学をしっかり学び理解しておきましょう。解剖生理学を理解していれば、全身状態の観察や疾患の理解、薬物動態の理解に役立つからです。

また、同じ内科でも医療区分や専門分野によっては、学べる看護や知識、仕事内容が異なります。内科のなかでもどのような分野に興味があるのか、どのような看護をしたいのかを掘り下げておくと志望動機の作成にも役立ちます。

就業体験や病院説明会に参加することで、より自分の興味や目指すべき方向性を明確にすることができます。複数の病院に参加してどちらがより希望に近いのかを比べるのもおすすめです。今参加できる就業体験や病院説明会は以下のバナーから検索できます。ぜひ活用してください。

説明会・見学会 就業体験

※ナース専科 就職

内科看護師の働き方を理解してキャリアの選択肢に

内科は薬物療法や食事療法などによる治療を提供する診療科で、対象となる患者さんは幅広く、専門分野の種類も豊富です。全身管理や患者さんへの指導、解剖生理、疾患などの幅広い知識が学べるうえ、病棟から外来、クリニックまで働く職場も多いため、その後のキャリアプランも広がります。内科看護師は、やりがいだけでなく大変なこともありますが、働き方を理解して将来の選択肢にしてみてください。

参考

厚生労働省:令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(2024年10月15日閲覧)

日本看護協会:認定看護師(2024年10月15日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。