外来看護師の役割・仕事内容からやりがいまで│勤務経験者が解説
最終更新日:2024/08/23
外来患者さんをサポートする外来看護師。今回は外来看護師に求められる役割を踏まえたうえで、具体的な仕事内容ややりがいを勤務経験者が解説します。向いている人の特徴や新卒向けの志望動機例もあわせて紹介するので、外来に興味がある人はぜひ参考にしてください。
目次
外来とは
外来とは、患者さんが病院に入院するのではなく、自宅や施設などから病院に通って診療を受ける場のことをいいます。外来も入院病棟と同じように、一般的には内科や外科をはじめとした複数の診療科に分かれています。
外来診療の一連の流れは、以下のとおりです。
- 受付
- 診察
- 検査・処置
- 会計
大学病院や総合病院などの外来棟や、入院設備のない地域のクリニックなどで勤務する看護師を外来看護師といいます。
外来看護師の役割
外来看護師の主な役割は、患者さんが医師の診察や検査をスムーズに受けられるようサポートすることです。
外来は、生活習慣病や慢性的な病気で定期的なケアや治療を受ける人や、手術後の経過観察やリハビリを必要とする人など、さまざまな患者さんが対象となります。
1日に数多くの患者さんが受診するため、外来で働く看護師は限られた時間内で、的確にアセスメントし、処置や生活指導など行うことが大切です。
病棟看護師との違い
外来看護師と病院看護師では、具体的な業務内容が異なります。
外来看護師は、患者さんの問診や診察の介助、採血などの医療処置、患者さんへの生活指導が主な業務であるのに対して、病棟看護師は患者さんの日常生活の援助や薬剤・点滴の管理などの業務が中心です。
また、外来看護師は一時的または定期的に診療を必要とする数多くの患者さんが看護の対象ですが、病棟看護師は病棟内に入院している特定の患者さんが看護の対象です。
そのため、外来看護師には効率的なコミュニケーションや迅速な判断が求められますが、病棟看護師の場合は不規則な勤務にも対応しつつ、患者さんと長期的な関係を築く能力が重要視されるなど、必要とされるスキルも異なります。
外来看護師の給料事情
以下の表は、新卒と勤続10年の看護師(外来・病棟含む)の基本給についてまとめたものです。
看護師の平均基本給 | |
---|---|
新卒(高卒+3年課程専門卒) | 203,276円 |
新卒(大卒) | 209,616円 |
勤続10年(31~32歳、非管理職) | 246,770円 |
病棟看護師の場合は、上記に加えて夜勤手当がつくケースがほとんどです。2020年病院看護実態調査(日本看護協会)によると、夜勤1回あたりの平均手当額は二交代制の場合で11,286円となっており、例えば、夜勤が月に4回であれば約45,000円が基本給に加算されることになります。
一方、外来看護師に加算される手当に夜勤手当は含まれず、基本給与に加えられるのは通勤手当が主となるため、外来看護師の給料は病棟看護師よりも低くなる傾向にあります。
外来看護師が働く外来の種類と特徴
外来看護師の勤務場所は、主に「大学病院」「一般病院」「クリニック・診療所」の大きく3つに分けられます。
以下より、それぞれの勤務先に設置されている外来の種類と特徴についても詳しく解説します。
一般外来
一般外来は、初診の患者さんや一定期間診療を受けていない患者さん、また症状の原因特定が難しい患者さんの診察が行われるのが一般的です。
ここでは、問診や医師の診察の補助、バイタルサイン測定、検査結果の説明同席、事務との連携などが主な業務となります。
専門外来
専門外来は、特定の疾患や病状に対する診療を行う場です。例えば、心療内科、皮膚科、整形外科、小児科、産婦人科などが該当します。
一般外来での診察結果で特殊な治療が必要となった患者さんや、他の医療機関から紹介された患者さんなどが対象です。
専門外来で勤務する看護師はその専門分野に深い知識と技術を持ち、各分野に特化したケアや患者教育も行います。
救急外来
救急外来は、急な病気や事故で治療を要する患者さんが訪れる外来診療の場です。救急車による患者さんの搬送受け入れや、休日・夜間に病状が悪化した患者さんへの対応が中心となります。
救急外来で勤務する看護師には、緊急事態への対応能力と迅速な判断力が求められます。また心肺蘇生法(CPR)や救急医療に関する特別な訓練が必要とされる場合もあります。
外来看護師の仕事内容・働き方
外来診療は時間に制約があるため、外来看護師は効率的な時間管理と調整能力が必要です。ここからは、外来看護師の具体的な業務、勤務形態、そして1日のスケジュール例について詳しく解説します。
外来看護師の具体的な仕事内容
外来看護師は、一般的に以下のような業務をこなします。
外来看護師の業務一覧 | |
---|---|
問診 | 患者さんの病歴や現在の健康状態を確認する。 必要な検査の前に、アレルギーや服用中の薬などの確認を行う。 |
診療準備 | 処置に備えて、薬剤や機器等を準備する。 |
診察介助 | 必要に応じて処置の介助を行う。 採血や注射の場合は看護師が実施することもある。 |
患者教育 | 治療方針や薬の服用方法など、必要に応じてアドバイスをする。 |
ICへの同席 | IC(インフォームドコンセント)が行われる際に同席し、患者さんが情報を理解できるようにサポートする。医師の説明が不足した場合は補足する。 |
なかでも外来看護師の特徴的な業務は患者教育です。患者さん自身の病状理解や、日常生活での自己管理を促進するための指導を行います。
病気や薬剤の説明、生活習慣のアドバイスなどが含まれ、イメージしやすいようデモンストレーションを用いることもあります。患者さんの積極的な治療参加をサポートするためにも大切な業務です。
外来看護師の勤務形態
外来看護師の勤務形態は、勤務先や診療科にもよりますが一般的に日勤のみであることが多いといえます。
しかし、救急外来のように24時間対応が求められる場所では夜勤・遅番などの不規則勤務に当たることもあり、内視鏡外来のように緊急時に対応が必要になる診療科ではオンコール体制を取ることもあります。
外来看護師の1日のスケジュール例
外来で働く看護師の1日の勤務スケジュールは、患者さんの人数や病状、必要なケアによりスケジュールは変動します。参考までに、大規模病院の一般外来の基本的なスケジュール例を紹介します。
一般外来の場合、突発的な業務が発生することがほとんどないため、残業が少ない点も特徴です。しかし午前・午後あわせて30~40人ほどの患者さんに対応するため、診療を円滑に進行させながら、患者さんに必要なケアを行うことが重要です。
勤務経験者が語る~外来のやりがいから大変なことまで~
ここからは、実際に外来で働いた経験を持つ看護師が、自身の経験から得たやりがい、培われるスキル、困難な経験、そしてキャリアプランについて解説します。
看護師 プロフィール
中山 知愛 さん
看護大学卒業後、総合病院の消化器内科に約3年勤務。この間に内視鏡室専門外来にも従事していた。その後訪問看護ステーションでの勤務を経験する。
外来ならではのやりがい・魅力は?
外来の魅力は、元気になった患者さんにたくさん出会えることです。毎日さまざまな患者さんと接しますが、病状が悪化しても一回の治療で回復されるケースが多く、患者さんの元気な姿を見る機会も多いといえます。
また、病棟治療を終えた患者さんが回復過程で来院する様子を見られることもあります。元気になった患者さんに接することは、とくにやりがいが感じられる瞬間です。
加えて、専門外来で勤務することが、専門的な技術や知識の向上につながることも魅力といえます。例えば内視鏡外来では、検査中の患者さんに対する内視鏡検査ならではの観察やケアに携わることができます。ここで得たことは、病棟やほかの外来で患者指導やアセスメントを行う際に役立つでしょう。
外来業務で培われるスキルは?
外来業務では、患者さんやその家族に簡潔にわかりやすく説明する能力が磨かれます。患者さん一人ひとりの診療時間が短く、治療の内容やケアの指示などについて要点をまとめて伝える必要があるので、日々の業務でわかりやすく説明する能力を培うことができます。
また、専門外来や救急外来では緊急時の対応をすることもあるので、患者さんの健康状態を迅速に評価し、適切なケア方針を決定するための判断力も養われるでしょう。
さらに、外来では患者さんだけでなくその家族と関わる機会も多く、家族の理解を得るためのコミュニケーション能力も業務を通して培えるはずです。
外来で働いていて大変だったことは?
患者さんと触れ合う時間が短いなかで心境や病状を理解し、的確かつ迅速に対応をしなければならなかったこと。大変だと感じることは多々ありました。
また外来では、病棟と異なり診療が1度きりのことが多いため、自分の対応が適切だったのかを確認する機会がなかなか得られません。日々の対応を自己評価や改善につなげることが難しく、悩む看護師も多いようです。
さらに、病棟よりも看護師の数が少ないので、悩みを一人で抱えることも多くなってしまいがちです。でも、人からのアドバイスが解決につながることもあるので、悩みがあるときは早めに先輩や同僚に相談するのがおすすめです。
今後のキャリアプランは?
外来で働くことで、病棟とは違ったキャリアの道も開けるでしょう。以下では、外来での勤務経験が生かせる今後のキャリアプランを2つ紹介します。
外来看護師として専門性を深める
特定の診療科の外来看護師であれば、その分野に特化した専門知識や技術を身に付けて、スペシャリストになることができます。専門看護師や認定看護師をはじめとした資格を取得することで、例えば、がん外来、糖尿病外来、心臓病外来などで、より専門性の高いケアや教育を提供することができるようになるでしょう。
マネジメントに携わる
外来、病棟に限らず、看護師として長年の経験を積めば、外来部門の主任看護師として、スタッフの育成やスケジュール管理、品質改善などのマネジメント業務に従事する機会も得られるでしょう。組織運営やリーダーシップスキルを高めるチャンスにもなります。
外来で働くためには
外来看護師には、即戦力、自己管理能力、コミュニケーション能力が求められます。ここからは、外来に向いている人の特徴とともに、新卒からでも外来看護師になれるのかについて解説します。
外来に向いている人の特徴
以下のような人は外来看護師に向いているでしょう。
- 幅広い年齢の患者さんや多様な課題を持つ患者さんに対応できる柔軟性を持つ人
- 問題解決のためにすぐ他職種に相談できる人
- 1人で的確にトラブル対応ができた経験を持つ人
- 患者さんへの説明を補完する知識とコミュニケーション力を持つ人
これらはあくまで傾向であり、外来で働くために全てを兼ね備えなければいけないわけではありません。ただし、外来では看護師同士で連携ができるケースはほとんどないため、医師や関係する他職種とのコミュニケーションが積極的に取れると、患者さんへのよりよいケアにつなげられるでしょう。
新卒から外来で働ける?
新卒から外来勤務は難易度が高いといえます。必ずしもということはありませんが、外来の求人のほとんどが「実務経験歓迎」や「病院経験2~3年以上」と記載されており、一定期間の病院経験を求めている職場が多くなります。
また、外来では看護師はチームでなく単独で業務をこなすうえに、短い時間の中で1日数十人もの患者さんと関わるため、新人の教育体制が整えにくい環境とも考えられます。
さらに、外来業務に含まれる採血や点滴などは、経験を重ねることでマスターする部分も多くなります。教えてもらえる環境が整っていない外来で新卒からいきなり働くのはハードルが高いでしょう。
まずは病棟や新人の教育体制が整えられている訪問看護ステーションで、ある程度経験を積み、その後のキャリアとして外来部門を検討するのが現実的でしょう。
外来看護師の働き方を理解してキャリアを考えよう
外来看護では、看護師としての即戦力、自己管理能力、コミュニケーション能力を活かし、一人ひとりの患者さんに適切なケアを行う必要があります。短期間で多くの患者さんの状態を観察し、処置介助を行い、患者さんと家族の心情を察知しながら、相談や教育も行います。
外来看護師の役割や働き方を理解したうえで、今後のキャリアデザインに活かしましょう。
参考文献
公益社団法人 全日本病院協会:みんなの医療ガイド 病院の機能と組織.(2023年8月9日閲覧)
日本看護協会:2022年 病院看護・助産実態調査報告. (2023年8月9日閲覧)