整形外科看護師の具体的な仕事内容から向いている人まで!【経験談つき】

整形外科看護師の具体的な仕事内容から向いている人まで!【経験談つき】

最終更新日:2024/10/03

今回は、整形外科看護師の役割と具体的な仕事内容、1日のスケジュール例を外来・病棟別に解説します。さらに、勤務経験がある看護師が整形外科で培うことのできるスキルや大変さ、就職活動で役立てられる志望動機まで紹介しているので、整形外科に興味がある看護学生はぜひ参考にしてください。

整形外科とは

整形外科は、骨、筋肉、靭帯、神経など運動器に関わる組織の疾病・外傷を対象とし、機能的な改善という視点をもって、その診断と治療を行う診療科です。治療法としては、保存的治療(薬物療法、理学療法、運動療法、ブロック注射など)と手術療法が中心で、日常生活指導なども行われます。

整形外科の特徴

整形外科では、ほかの診療科と比較して以下のような特徴があります。

専門領域が多岐にわたる

整形外科は疾患の数が多く、専門領域が治療部位・目的によってかなり細かく分かれています。脊椎、手、肩関節、股関節、膝関節、足といった運動器に応じた分野、さらにスポーツ医学、リウマチ、骨・軟部腫瘍、骨代謝など専門性に特化した分野があり、医師がそれぞれ専門分野をもって治療にあたっています。

患者さんの年齢層や症状が幅広い

整形外科は、急性期から慢性期まで幅広い症状の患者さんが対象です。急性期では主に骨折や外傷に対する治療、回復期では集中的なリハビリテーションが行われます。また慢性的な痛みで通院する患者さんも多く、慢性関節リウマチや骨粗鬆症などに対しての治療も行います。

また、対象となる患者さんは新生児・小児から高齢者までと、その年齢層が幅広いのも特徴です。成長期あるいは老化による運動器の変化や発達段階に応じた特徴を理解し、その年齢層に合わせた治療やケアが必要です。

整形外科で働く看護師に求められる役割とは

整形外科で働く看護師の役割は、日常生活動作の向上のために患者さんが安心して治療を受け、早期回復できるように心身をサポートすることです。

整形外科では、運動機能の回復と早期の社会復帰が治療の目的となります。整形外科を受診する患者さんは、外傷や疾患、手術による痛みや運動制限など身体的な苦痛のほかに、急な受傷などによる不安・恐怖などの心理的なストレスも抱えています。

そのため整形外科看護師は、患者さんの回復・社会復帰に向けた身体的なケアとともに、心理面のケアも大切になります。

整形外科看護師の仕事内容⁻スケジュール例つき

ここからは、整形外科看護師の仕事内容と、1日のスケジュールを病棟・外来別に解説していきます。

整形外科看護師の具体的な仕事内容

まず、整形外科で働く看護師の仕事内容を一覧にしてまとめました。

仕事内容 詳細
入退院の対応 ● 入院時:入院生活についての説明、情報収集と看護計画の立案
● 退院時:退院時の説明、薬や書類の準備
術前・術後の管理 ● 手術出し(オペ出し)・迎え
● 術後の状態観察
医療処置 ● 注射、点滴、採血など
そのほかの処置 ● 創傷処置の介助
● ギプスやシーネの管理
● 整復の介助
● コルセットなど装具の管理
日常生活援助 ● 患者さんの疾患や治療経過に合わせた日常生活のサポート

整形外科で入院する患者さんは手術を受ける人が多く、入退院が頻繁にある診療科のひとつです。そのため処置や日常生活援助以外に、入退院の対応や説明、手術出し・迎えの準備など、入退院に関するひととおりの業務も看護師の仕事になります。

また、整形外科ではリハビリテーションも行われます。リハビリテーションは理学療法士や作業療法士がメインで対応する業務ですが、看護師もコルセットなどの装具が適切に装着できているかの確認や、松葉杖の使い方、歩行に関する指導を、必要に応じて行います。

【病棟/外来別】整形外科看護師の1日スケジュール例

ここからは、整形外科看護師の1日のスケジュール例を病棟・外来別に紹介します。ただしスケジュールはあくまで一例であり、日によって取り組む業務は異なります。

病棟スケジュール例

整形外科看護師(病棟)の1日スケジュール例

整形外科病棟では、運動機能が低下した患者さんが多く、上記に示した業務を行いながら、移動介助、検査の付き添い、リハビリに関する指導なども行います。また、緊急入院の受け入れも随時発生するため、日によってはめまぐるしく感じることもあるでしょう。

外来のスケジュール例

整形外科看護師(外来)の1日スケジュール例

整形外科外来の業務は医師の外来診療の補助になるので、午前と午後にやる内容は大きく変わりません。ただし、診療終了時間まで随時急患を受け入れるため、患者さんの状態によっては、処置が長引き遅くまで残業する場合もあります。

経験者が語る「整形外科看護師」のやりがいから大変なことまで

ここからは、整形外科で勤務経験がある看護師が、整形外科看護師ならではのやりがいや、培うことのできるスキル、大変なことについて解説します。

整形外科ならではのやりがいとは

整形外科看護師としての一番のやりがいは、患者さんの運動機能を回復させADL向上のためのサポートができることです。

実際に、骨折で動けなかった患者さんが歩けるようになったり、膝の痛みで出かけることができなかった患者さんが旅行に出かけたと笑顔で話したりする姿を見ることは、自分自身の喜びにつながりました。

また整形外科は基本的に忙しい職場なので、スタッフ同士で協力して効率よく業務が進められた時は、一層の達成感を得られる人も多いでしょう。

整形外科看護師で培うことのできるスキル

整形外科で培うことのできるスキルは数多くあります。今回はそのなかでも、とくに際立っているものをいくつかご紹介します。

コミュニケーション力

整形外科の看護師は、治療に関する説明や不安軽減のための会話など、患者さんへ接する機会が多いため、コミュニケーション力が養われます。また、医師や理学療法士など他職種とのやり取りが欠かせないことから、スタッフ間でスムーズに連携するための力も磨けるでしょう。

幅広い年齢層の患者さんへの対応力

看護師には患者さんの発達段階に合わせた看護の提供が必要とされます。整形外科では小児から老年までが対象となるため、整形外科で働く看護師は幅広い年齢層に対応した看護が身につけられます。

介護の分野で活かせる知識

整形外科は高齢患者さんの受診も多く、なかには退院後に介護サービスを利用する人もいます。そのような患者さんの場合、入院や手術準備、リハビリのほか、退院支援・調整にかかわることになるので、介護の分野で活かせる知識も身につけられるはずです。

周手術期に関する看護知識

整形外科では手術が多く行われているので、整形外科で働く看護師は術前のオリエンテーションから、手術準備、術後の管理や合併症への対応など、周術期に関する看護知識が身につけられます。

また、手術のスケジュールに合わせて自分の1日の業務を調整する必要があるため、優先順位を考えた行動もできるようになるでしょう。

整形外科看護師として働くなかで大変なこと

やりがいや魅力がある一方で、整形外科で働くなかでとくに大変だったことを2つ紹介します。

体力を要する仕事が多いこと

整形外科は、単に業務が忙しいだけでなく、車椅子への移乗やストレッチャーへの移動などの力仕事が多いため、体力的に大変だと感じました。少しでも体力面の負担を減らすには、介助における正しい姿勢・動作を身につけ、スタッフ同士で協力して移動介助を行うなどがポイントです。

覚えることが多いこと

整形外科で扱う疾患はとても多く、治療法も患者さんによって異なります。覚えることがたくさんあることが大変でした。しかしひと通り覚えて仕事ができるようになると、さまざまな状況に対して柔軟に対応できるようになります。まずは知識をインプットすることが大切であることを感じました。

整形外科看護師になるには-志望動機の例つき

看護師免許があれば整形外科の看護師として働くことは可能です。では、整形外科の看護師にはどのような人が向いているか、また、整形外科で働くために看護学生のうちにやっておきたいことは何かを紹介します。

整形外科看護師に向いている人

整形外科の役割や仕事内容、自身の経験をふまえ、どのような人が整形外科の看護師に向いているかを考えました。

  • 周手術期の看護を経験したい人
  • スピード感をもって仕事をしたい人

整形外科では手術が頻繁に行われるため、周手術期の患者さんの看護を経験したい、あるいは興味のある人に向いています。

また入院、手術、リハビリなど多くの業務を担うため、素早い判断や臨機応変な対応が求められます。ある程度時間をかけてじっくり仕事がしたい人よりも、多様な業務を自分でコントロールしながらテキパキと動く仕事がしたい人には向いているでしょう。

看護学生のうちにしておきたい事前学習

整形外科を希望している看護学生は、以下の事前学習をしておくと現場で役に立ちます。

  • 解剖生理学
  • 整形外科の主要疾患と看護
  • 包帯巻きの練習

整形外科専門の参考書があると、より専門的な知識が得られます。就職試験や就職が決まった際は、一冊購入するようにしましょう。

また就業体験に参加して、実際の整形外科の現場で情報収集を行うのも有益です。どのような働き方をするのか理解を深める機会にもなるので、ぜひ参加してみてください。以下から、あなたの条件に合った就業体験開催病院を見つけることができます。

就業体験 病院見学会

※ナース専科 就職より

どのような志望動機がおすすめ?

希望する診療科が整形外科と決まっている場合は、志望動機を伝えるときに「整形外科に興味を持ったきっかけ」と「なぜ整形外科で働きたいのか」にもフォーカスしましょう。

以下では、整形外科を志望する動機とその伝え方の例を2つ紹介します。

<例1>

整形外科に興味を抱いたのは、中学生の頃にスポーツで骨折し、入院したことがきっかけです。その際に治療にあたってくれた先生や看護師さん、理学療法士の方が優しくサポートしてくださり、私も医療従事者として同じように患者さんの助けになりたいと考えました。
貴院では特に整形外科に力を入れており、より専門的な知識やスキルが身につくと考え、志望しました。

<例2>

整形外科に興味を抱いたのは、実習のときです。整形外科病棟で実習をさせていただいた際に、周手術期から回復期、慢性期まで幅広い領域を経験できる整形外科に魅力を感じました。また、リハビリや退院支援を通して他職種との連携スキルも身につけたいと考えました。
貴院を志望した理由は、手術件数が多く、多くの患者さんが治療をされているため、整形外科看護師としてより多くの経験を積めると考えたからです。

上記はあくまで一例です。実際に志望動機を考えるときは、例文に含まれている要素を参考にしつつ、自分の看護観を軸にして個別性のあるものにしましょう。

整形外科の働き方を理解してキャリアを選択しよう

整形外科は、患者さんの回復をサポートできるやりがいのある診療科です。取り扱う疾患や対象となる患者さんは幅広く、覚えることが多い点は大変ですが、看護師として多くの経験を積むことができます。整形外科に興味がある人は、この記事を参考に整形外科で働くイメージを膨らませてみてください。

参考文献

医学生・研修医の方へ,整形外科の特徴「整形外科とは」.日本整形外科学会(2023年7月3日閲覧)

患者様・ご家族の皆様へ,「回復期リハビリテーション病棟とは」.回復期リハビリテーション病棟協会(2023年7月3日閲覧)

外来のご案内,診療科目「整形外科(慢性疾患など)」.芦屋セントマリア病院(2023年7月3日閲覧)

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執筆者情報

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伊藤 雪乃

ito-yukino

2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力