【病棟看護師の働き方】仕事内容・役割からやりがいまで経験者が解説!

【病棟看護師の働き方】仕事内容・役割からやりがいまで経験者が解説!

最終更新日:2023/11/30

今回は病棟で働く看護師の働き方について解説します。求められる役割や仕事内容のほかに、勤務経験者が病棟看護師ならではのやりがいや大変なことを紹介。病棟勤務を志望する人だけでなく、どこでどのように働くか迷っている人もぜひ参考にしてください。

病棟看護師とは

大学病院や総合病院をはじめとした入院設備がある施設のなかで病室がある建物を病棟といい、病棟看護師とは、そこで働く看護師のことを指します。入院患者さんの看護ケアを行いますが、症例や年齢層は病院や病棟の種類によってさまざまです。

病棟看護師の役割

病棟看護師の役割は、入院中の患者さんが安心して治療に専念できるように、医師の診療や処置の補助、療養生活の援助、患者さんや家族の心理的なケアを行うことです。

入院中の患者さんを一貫して看ている看護師だからこそ、疾患に対する医療的ケアだけでなく、患者さんや家族の精神的な苦痛や不安に寄り添うことが求められます。

また、病棟看護師は、医師、薬剤師、栄養士、理学療法士など各専門職とのコミュニケーションが多く、様々な視点・情報を集約し治療計画に生かすことができるため、患者さんへの適切な援助に向け他部署との連携を図る役割も担います

外来看護師・訪問看護師との違いは?

病棟看護師と外来看護師・訪問看護師は、業務内容、対象となる患者さんとの関わり方、勤務形態などが違っています。以下はそれぞれの特徴を表にまとめたものです。

病棟看護師・外来看護師・訪問看護師の比較表

病棟看護師 外来看護師 訪問看護師
主な業務 ● 24時間体制の看護
● 療養生活の援助
● 診療・処置の補助
● 外来診療の補助
● 患者さん・家族への指導
● 予防接種・注射業務
● 患者さんの自宅での看護
● リハビリ指導・支援
● 生活指導・支援
対象となる患者さん 入院患者さん 外来患者さん 在宅患者さん
患者さんとの
関わり方
軽症から重症まで幅広い患者さん・家族と短期間〜長期間にわたって関わる 短時間で多くの患者さんと頻繁に関わる 患者さん・家族の在宅環境を理解し、深く関わる
勤務形態 日勤・夜勤あり
● 土・日・祝日出勤あり
● 週5〜6日勤務
主に日勤
● 週5日勤務
● 平日勤務が多い
主に平日の日勤
● 休日・夜間のオンコール対応あり

病棟看護師は、入院中の患者さんを受け持つため、交代勤務により24時間体制で看護を行う点が、外来看護や訪問看護との違いのひとつになります。

また、病棟看護師は、療養生活の援助や医療機器・薬剤・食事の管理などを業務として行います。一方、外来看護師や訪問看護師は、実際に行うのではなく患者さんや家族へ指導をする立場になる点も異なります。

看護師が働く病棟のそれぞれの特徴

看護師が勤務する病棟は、患者さんの疾患によって分かれています。以下では、看護師が働く病棟をいくつか例をあげそれぞれの特徴を紹介します。

内科系病棟

内科系病棟は、内科的治療をしている患者さんが入院している病棟です。病状が重篤な患者さんもおり、内科系病棟の看護師には急変時の対応能力が必要です。また複数の疾患を合併した患者さんのケアを行うことも多く、全身的な視点での看護が求められます。

大学病院や総合病院では、以下のように診療科ごとの病棟構成になっています。これらの病棟では診療科に応じた専門的な知識やスキルが必要です。

  • 循環器内科
  • 呼吸器内科
  • 消化器内科
  • 腎臓内科
  • 血液内科 など

外科系病棟

外科系病棟には、手術を必要とする患者さんが入院します。そのため、看護師には術後ケアに関するスキルが求められます。術後ケアは身体の回復だけでなく、患者さんの術後の生活への適応やリハビリテーションの進行にも関与します。

また、手術を控えた患者さんや家族への情報提供と不安の軽減も重要な仕事です。外科系病棟も内科と同様に、大きな病院ではさらに細かな診療科に分かれます。

  • 消化器外科
  • 心臓血管外科
  • 整形外科
  • 脳神経外科
  • 形成外科
  • 泌尿器科 など

小児科病棟

小児科病棟は、新生児から15歳前後までの子どもが看護の対象となります。検査のための短期入院から手術を受けるための長期入院まで、入院の目的もさまざまです。入退院を繰り返すケースも少なくありません。

小児は病態の進行や薬物への反応が大人とは異なるため、小児科病棟の看護師は小児特有の身体機能や疾患についての知識を持ち、成長と発達に合わせたケアを行います。

自己表現や症状説明が難しい年齢でもあるため、小児病棟の看護師は非言語的な情報を敏感に読み取ることも求められます。

精神科病棟

精神科病棟では、うつ病や統合失調症、重度の認知症など、様々な精神疾患を持つ患者さんが入院します。

そのため精神科病棟の看護師は、患者さんの心の健康を支えることや、患者さんの心の変化に柔軟に対応することが求められます。

疾患特有のコミュニケーションの困難さに直面することもあり、相手の伝えたいことを引き出すスキルや共感力が重要な病棟になります。

産婦人科病棟

産婦人科病棟は、周産期のサポートが必要な女性が入院する「産科」、女性特有の健康問題を抱える「婦人科」の患者さんの看護ケアを行います。

産婦人科病棟の看護師は、患者さんの精神的ケアを行うことが大切です。女性特有の疾患に対する専門知識も必要になります。

長引く不妊治療に対する精神的苦痛を持つ患者さんや、今後の生活が大きく変わることに対する不安やストレスを感じる妊婦さんには、家族を巻き込んだ指導も求められます。

緩和ケア病棟

緩和ケア病棟は、がんの進行などによる身体の痛みや精神的苦痛を和らげるための病棟です。

緩和ケア病棟の看護師は、治癒を目的とした医療行為を積極的には行わないという点で、一般の病棟看護師とは求められるスキルが大きく異なります。

患者さんが最期を迎える場となるケースも多く、一人ひとりの希望やペースに合った過ごし方を考えてケアを行うことが重要になります。本人の希望をうまく引き出しケアの方針を決めていく姿勢が必要です。

回復期リハビリテーション病棟

回復期リハビリテーション病棟では、患者さんの起床から就寝までの間、食事・更衣・口腔ケア・整容・排泄などの日常的な動作すべてをリハビリと捉えます。この点が一般の病棟とは異なる特徴です。

回復期リハビリテーション病棟には、脳血管疾患や筋骨格系の疾患などからの回復とリハビリテーションを目的とした患者さんが入院します。看護師は、患者さんが再び地域で日常生活を送れるよう支援することが求められます。

病棟看護師の仕事内容

ここからは病棟看護師の具体的な業務と、どのような1日を過ごすのかを詳しくみていきましょう。

病棟看護師の業務一覧

勤務する病棟によって異なる場合もありますが、以下は病棟看護師が担う一般的な業務内容です。

病棟看護師の主な業務一覧

内容 詳細
バイタルサイン測定 患者さんの心拍数・血圧・呼吸数・体温などを定期的に測定し、健康状態をモニタリングする
薬剤の管理・与薬 患者さんの処方薬を管理し、正確な時間と量で与薬し、薬の効果や副作用について観察する
医師の診療・処置の補助 医師の診療・処置で必要な器具の準備と、スムーズに進めるための補助を行う
医療処置 採血やルート確保、創傷ケア、ドレーン管理など、医師の指示に基づいて医療処置を行う
日常生活援助 患者さんの食事・入浴・排泄・環境整備など、日常生活をサポートする
ナースコール対応 患者さんや家族からの呼び出しに対応し、必要な看護や説明を行う
予約・緊急入院対応 患者さんの入院オリエンテーション、退院支援計画書の作成、退院に向けた調整・指導 ※病院によっては入院手続きも行う
手術・検査出し 手術前・検査前のオリエンテーションや事前処置と、手術・検査への送り出し、手術後・検査後のケアを行う
カルテへの記載 患者さんの病状、ケアの内容、アセスメントした情報をカルテに記載する
カンファレンス 病棟内のチーム、または医師・コメディカルと患者さんの病状やケアプランの共有・討議を行う

【日勤/夜勤別】病棟看護師の1日スケジュール例

次に病棟看護師の1日のスケジュール例を紹介します。まず病棟看護師の勤務は主に日勤・夜勤に分かれています。一般的な勤務時間は以下のとおりです。

病棟看護師の形態別勤務時間

勤務形態 時間 労働時間
日勤 8:00〜17:00 8時間(休憩1時間)
二交代制 夜勤 16:00〜9:00 16時間(休憩2時間程度)
三交代制 準夜勤 16:30〜1:00 8時間(休憩1時間)
三交代制 深夜勤 0:30〜9:00
深夜勤
8時間(休憩1時間)

なかには、長日勤や早番・遅番などが入る変則交代制勤務、夜勤のみのシフトで働く夜勤専従勤務もあります。看護師の勤務形態については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

ここからは病棟看護師の1日のスケジュールを日勤と夜勤に分けて紹介します。

日勤の1日スケジュール例

病棟看護師の日勤帯の受け持ち数はおよそ5〜8人程度です。患者さんの病状や必要なケアによってスケジュールは毎日変動しますが、ここでは一般的な1日のスケジュール例を紹介します。

病棟看護師(日勤)の1日スケジュール例

夜勤の1日スケジュール例

夜勤帯の受け持ち数は、10〜16人程度です。夜勤の病棟看護師は、患者さんの入眠援助と必要に応じたケアを提供します。また夜間の急変や緊急入院の対応も重要な役割のひとつです。以下では二交代制での夜勤スケジュール例を紹介します。

病棟看護師(夜勤)の1日スケジュール例

病棟看護師の給与事情

病棟看護師の給与は一般的に基本給と各種手当によって構成されていますが、働く場所や経験年数、役職・資格などによって金額は異なります。

ここでは病棟看護師の平均基本給と各種手当の概要を紹介したうえで、外来看護師と訪問看護師との比較における特徴を解説します。

基本給

以下の表は、新卒と勤続10年の病棟看護師の平均基本給与額をまとめたものです。

病棟看護師の平均基本給

参考:日本看護協会:2022年 病院看護・助産実態調査報告書
分類 金額
新卒(高卒+3年課程専門卒) 203,276円
新卒(大卒) 209,616円
勤続10年(31~32歳、非管理職) 246,770円

経験年数が多いほど、リーダー業務や教育などの責任も増えるため基本給も増額する傾向にあることがわかります。

手当

病棟看護師には基本給に加えて、以下のような手当が付くことがほとんどです。ただし金額や支給内容は病院によって異なります。

手当 概要
住宅手当 住宅費用の一部支給
家族手当 配偶者や子どもがいる場合に支給
通勤手当 職場までの交通費の補助
夜勤手当 夜勤1回ごとに支給
資格手当 専門看護師や認定看護師などの資格を有する場合
役職手当 主任や師長などの役職に就いている場合

病院にも異なりますが専門看護師や認定看護師などの資格を取得すると、より高度な看護技術を患者さんに提供できるスキルを評価され手当として還元される場合があります。

ただし専門看護師や認定看護師として働くと、夜勤が大幅に減る可能性があるため、夜勤手当額が少なくなる可能性があるほか、「2022年 病院看護・助産実態調査報告書」によると、近年では資格取得による評価、還元がされづらくなっていることがわかります。

外来看護師・訪問看護師と比較して

外来看護師や訪問看護師の給与と比較すると、病棟看護師は夜勤手当がつくため、給与が高くなる傾向にあります。一方、訪問看護師の場合もオンコール手当はつきますが、夜勤手当と比較すると金額は低くなることが多いようです。

病棟勤務経験者のホンネ ~やりがいから大変なことまで~

ここからは実際に病棟で働いた経験を持つ筆者が、職場環境や仕事の魅力、大変だったことなど具体的なエピソードを交えた体験談をご紹介します。

病棟ならではのやりがい・魅力は?

看護師として病棟で働くことの魅力は、患者さんの回復過程や生活の質(QOL)の向上に関われる点にあります。チームでケアに尽力した結果として、患者さんの健康状態が改善する姿を目の当たりにできると、大きなやりがいにつながります。

また、急性期から慢性期、軽症から重篤な状態まで、多岐にわたる症例・病態に接する機会が得られる点も病棟ならではの魅力です。

看護師として必要なスキルや知識を広範囲にわたって身につけることができるため、自分の成長を実感しやすい環境といえます。

病棟勤務で培えるスキルは?

病棟で働く看護師は、看護スキルとコミュニケーション能力を広く身につけることができます。患者さんや家族の心情に寄り添いつつ、治療やケアについて適切な情報を伝えるスキルも求められます。

また、医師や他のコメディカルとも協力して仕事を進めるため、チームワーク力や協調性も養われます。

さらに、病棟では予期せぬ緊急事態に遭遇することが多々あり、命に関わるような場面での迅速かつ冷静な判断と的確な行動が求められるため、緊急対応力を磨くこともできるでしょう。

病棟看護師で大変だったことは?

長時間の立ち仕事や患者さんの入浴・トイレ・移乗介助、緊急時の対応など、体力勝負ともいえる仕事内容は、病棟看護師で大変だったこととして挙げられます。さらに、夜勤による生活リズムの崩れも体に負担を感じる人が少なくないようです。

また、ナースコールや緊急対応に追われて、スケジュール通りに仕事が進まず残業になることが多いことや、病院にもよりますが、委員会や病棟会などで休日出勤が課せられることは、病棟看護師ならではの大変さといえるでしょう。

病棟看護師として働くためには

病棟看護師として働くためには、どのようなスキルや能力が求められるのでしょうか。病棟看護師に向いている人物像や、看護師としてのキャリアをスタートする前にやっておきたいことについて深掘りします。

病棟看護師に向いている人の特徴

病棟看護師に向いている人は、以下のような特徴を持つ人です。

  • 幅広いタイプの患者さんとのコミュニケーションを楽しめる人
  • 同じ病棟内の看護師や他の医療スタッフとの協調性を持って仕事ができる人
  • 患者さんの急変や死に直面しても常に迅速・冷静に判断できる人
  • 日々進歩する医療技術をインプットするために、学習し続けられる人

ただし、上記に当てはまらないからといって、必ずしも病棟看護師に向かないというわけではありません。経験を積むことで身につけられる特性でもあるので、患者さんに寄り添った看護をしたいという思いが大切です。

学生時代にしておいたほうがいいこと

ここからは、看護師になる前、看護学生時代にしておくべきことについてまとめました。

看護学校での学びを深める

看護学生の学びは、そのまま将来の仕事に直結します。そのため、臨床実習だけでなく座学で学ぶ理論もしっかり理解しておくことが大切です。

どの領域に進む場合でも看護学生時代に学んだ基礎看護技術はすべて必須なので、シミュレーションを繰り返しておくことをおすすめします。また、解剖生理学は医療従事者にとっての基本となるので、学び直しておくとよいでしょう。

また希望の診療科がある場合は、その領域のなかでもとくに症例の多い疾患とその看護ケアについて調べておくと、患者さんを受け持つときに役立つはずです。

アルバイトで社会経験

1年生や夏季休暇など、余裕のある時期にはアルバイトをしておくこともおすすめです。
病棟看護師として働くと、幅広い年齢の患者さんや多様な専門職と関わります。学生のうちに、アルバイト先の上司や同僚・お客さんなど、様々な人と接する機会を作り、コミュニケーションのとり方を学んでおくとよいでしょう。

複数のインターンシップや病院見学会に参加する

複数のインターンシップや病院見学会に参加しておくと、自分にとって魅力的な職場を見つける近道となります。また面接で志望動機を聞かれた際に、インターンシップや病院見学会で得た情報を組み込むことで、納得感のある回答に仕上がるでしょう。

実施中のインターンシップや病院見学会は以下から検索することができます。気になる病院から検索し、積極的に参加してみましょう。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビより

病棟での働き方を理解してキャリアを選択しよう

病棟看護師として働くことは大変な面もありますが、入院患者さんの心身の健康を全面的にサポートできる充実感は、大きなやりがいにつながります。人の役に立ちたいという強い思いを持ち、人間関係を大切にする人や学び続ける姿勢を持てる人は病棟看護師に向いているでしょう。本記事で病棟看護師の働き方を理解し、自分のキャリア選択の幅を広げてみましょう。

参考文献

日本看護協会:2022 年 病院看護・助産実態調査 報告書.(2023年7月5日閲覧)

日本看護協会:2020年 病院看護実態調査 報告書.(2023年7月5日閲覧)

日本看護協会:2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書.(2023年7月5日閲覧)

執筆者情報

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村上 舞

murakami-mai

帝京大学医療技術学部看護学科卒業後、医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会 整形外科病棟に4年半勤務。その後循環期病棟、呼吸器内科病棟、回復期病棟、特養、デイサービス、クリニック、健診センター等、様々な職場を経験。現在はライターとして活動中。