小児科看護師になるには?やりがいから今後のキャリアまで経験者が解説
最終更新日:2024/10/03
今回は小児科看護師の役割・仕事内容とやりがいについて、経験者の声をもとに解説します。これから小児科看護師を目指す人や興味を持っている人はぜひ参考にしてください。
目次
小児看護とは
小児看護とは、成長・発達の過程にある子どもたちが抱える疾病や障害の治療・予防に特化した看護領域のことです。対象の中心となるのは新生児から15歳の子どもですが、日本小児科学会が診療の対象年齢を成人まで引き上げたことから、近年は18〜20歳ぐらいまでを対象とする場合もあります。また、保護者への教育やサポートも行います。
小児看護の目的と特徴
小児看護の主な目的は、患児さんの権利を尊重し、健康と成長に寄り添いながら生活の質(QOL)を高めることです。幅広い発達段階に合わせたアプローチや、保護者が治療に参加するための指導など、成人看護領域とは異なる特徴があります。
小児科看護師の役割
小児科看護師の役割は、患児さんの健康や治療をサポートすることです。身体のケアだけでなく、精神面でのフォローも非常に重要で、患児さんの親代わりのような立場で寄り添う看護も求められます。
例えば、保護者がいないときに寂しさを和らげたり、治療のネガティブなイメージを極力減らしたりと、看護師は患児さん一人ひとりと向き合うことが大切です。
小児科看護師の職場一覧
小児領域に携わる看護師は以下のように幅広い職場で活躍しています。
- 一般病院の小児科病棟・NICU・外来
- 小児病院の各診療科
- 産科病棟(新生児ケア)
- 地域の小児科クリニック
- 保育園
- 学校の保健室
小児看護の専門性を活かし、患児さんの健康と成長を守るという役割はそれぞれ変わりません。ただし、職場によって具体的な業務内容は異なります。今回は小児科病棟での働き方について、具体的に解説します。
病棟で働く小児科看護師の仕事内容
ここからは、小児科病棟で働く看護師の具体的な仕事内容を紹介します。ただし、仕事内容の詳細は病院や病棟で異なるということを頭に入れておいてください。
医師の治療・処置介助
医師の治療・処置介助は、小児病棟に限らず看護師が担う仕事です。ただし、小児科病棟では医師の治療・処置介助の場面が多くあります。
例えば、採血・ルート確保を医師が行う際に、患児さんが暴れないようにうまく固定することも処置介助のひとつです。看護師はどの場所をどのように押さえれば患児のけがを防げるか、痛みを感じにくいかなど考えて行う必要があります。
清潔ケア
清潔ケアとは、体を清潔に保つために清拭やシャワー浴・洗髪などの援助を行うことです。シャワーを浴びることができる子はシャワー浴、赤ちゃんは沐浴、ルートキープされている子は清拭など、年齢や状況に応じてケア方法を選択します。
清潔ケアは基本的にすべての患児さんに毎日実施します。そのため、シャワー室の利用時間が被らないよう、患児さんの状態や保護者の面会時間などを考慮して、看護師が時間調整を行います。
ナースコール対応
ナースコール対応も小児病棟だけの業務とは限りません。しかし、体調不良の連絡やトイレ介助の依頼だけでなく、「寂しいから来てほしい」など、小児ならではの要望に応える場合もあります。少しでも患児さんの不安が軽減できるよう、工夫しながら関わります。
安全管理
幼児期は成人に比べて危険に対する判断能力が低いため、看護師が安全を最大限に確保することが求められます。とくにベッドからの転落には十分に注意が必要で、乗り降りの際は必ず付き添うようにします。
また、面会時の注意点として、ベッド柵を下げたままにしてベッドサイドから目を離さないようにすることなど、保護者への指導も必要です。
授乳
新生児には看護師が人工乳(ミルク)による授乳を行います。およそ2〜3時間ごとを目安に、一人ひとりの授乳時間やペースに合わせ、日勤帯だけでなく夜勤帯でも適宜実施します。
母親の母乳が出る場合は、面会の時間帯に母乳を与えてもらうよう促します。保護者もミルクの管理ができるよう最終授乳時間を共有することも、小児科看護師の仕事のひとつです。
遊び
保育士が1〜2名配属されている病院では、遊びへの対応は基本的に保育士の仕事です。ただし、業務に余裕がある場合は、看護師もプレイルームや病室での遊びに参加し、子どもたちの活動を促しながら、様子を観察します。
あまり家族が面会に来られない子にはとくに配慮し、気分転換にプレイルームに誘い、積極的にコミュニケーションをとります。
【日勤/夜勤別】小児病棟で働く看護師の1日スケジュール例
ここからは、小児科病棟で働く看護師の1日の業務スケジュール例を日勤と夜勤に分けて紹介します。こちらも病院によって異なるため、あくまで参考までに留めてください。
日勤
小児科病棟の看護師の日勤帯の受け持ち人数は、5〜8人程度です。患児さんの病状や必要なケアによりスケジュールは毎日変動しますが、日勤の一般的な1日のスケジュール例は以下の通りです。
夜勤
夜勤帯の受け持ち人数は、10〜16人程度です。夜勤の小児科病棟の看護師は患児さんの入眠援助のほか、不安の軽減や随時必要に応じたケアを提供します。また夜間の急変や緊急入院の対応も重要な役割のひとつです。
以下では二交代制の小児科病棟の一般的な夜勤スケジュール例を紹介します。
小児科病棟で働く看護師の給料事情
看護師の給料は病院全体で統一されており、小児科病棟の看護師と他診療科の病棟看護師は基本給や手当は同じです。以下の表は、新卒と勤続10年の病棟看護師の平均基本給与額をまとめたものです。
病棟で働く看護師の平均基本給
分類 | 金額 |
---|---|
新卒(高卒+3年課程専門卒) | 203,276円 |
新卒(大卒) | 209,616円 |
勤続10年(31~32歳、非管理職) | 246,770円 |
夜勤に入る場合は上記の基本給に夜勤手当がプラスされます。また、小児看護専門看護師や小児プライマリケア認定看護師などの資格を取得したり、主任や師長などの役職者へキャリアアップしたりすると手当がつき、全体の給料が増額することもあります。
経験者が語る!小児科看護師の「やりがいから大変なことまで」
ここからは、実際に小児科病棟で働いた経験を持つ看護師が、小児科に興味をもった理由と、働いてみて感じた小児科ならではのやりがいや大変さについて、体験談を交えて紹介します。
看護師 プロフィール
菊山実恵子 さん
看護専門学校を卒業後、正看護師の資格を取得し新卒で小児科病棟へ配属となる。その後は整形外科病棟を経験し、現在も現役の看護師として活躍中。
小児科の看護師に興味を持った理由は?
小児科の看護師に興味を持った理由は、幼少期の経験から子どもと関わる仕事にあこがれを感じたことです。
自分自身がよくけがをする子どもで、学校の保健室に通うことが多く、養護教諭の先生にたびたびお世話になっていました。その経験から、自分も子どもにやさしく接する人になりたいと思ったのがきっかけです。
就職する際に小児科病棟を志望した理由は、看護学校での実習で小児科がとくに楽しく、就業体験で参加した小児科病棟でも雰囲気の良さを体験したためです。さらに、自分がずっとあこがれていた子どもと関わる仕事にも通じることから、小児科病棟を志望しました。
小児科の看護師ならではのやりがい・魅力は?
小児科病棟に入院したてのころはぐったりして元気のなかった患児さんが、元気に泣いたり笑ったりする姿を見られたときが、看護師として最もやりがいが感じられる瞬間でした。また患児さんだけでなく、保護者の方が感謝の声をかけてくれるときも喜びを感じました。
子どもは無邪気で可愛いく、純粋に甘えてくれたり懐いてくれたりすることは、仕事に対するモチベーションに直結します。これは小児科ならではの魅力だといえるでしょう。
小児科で培えるスキルとは?
小児科の看護師は、常に「いかに患児さんに痛い思いをさせず、医師が処置をしやすいようにサポートするか」を考えるため、小児ならではの処置介助スキルが身に付きます。
また、子どもは自分の気持ちや考えをうまく伝えられないので、バイタルサインに加え、表情・活気などから気持ちを読み取る力や、本人の思いを引き出すコミュニケーション力を磨けるでしょう。
さらに、これから行う処置について、小さな子でもわかるように説明するスキルも求められます。発達段階に合わせてイラストの活用や、ぬいぐるみや実物の注射器を使って説明するなど、どう伝えたら相手が理解できるのかを常に意識して考えられるようになるでしょう。
働いていて大変だったことは?
小児科では、患児さん本人よりも保護者の対応で大変だと感じる瞬間がありました。
例えば保護者のこだわりで病院食を拒否されたとき。偏食が激しくなる恐れもありますが、家庭の事情もあるので、どこまで踏み込むべきか悩ましい問題です。
その子にとって本当によいことは何かについて、カンファレンスで話し合いもしますが、センシティブな内容なので、明確な解決方法を見い出せないことは小児科ならではの難しい課題です。
小児科看護師におすすめの「プラスの資格」は?
小児科で働く看護師のプラスの資格として、「小児専門看護師」や「小児プライマリケア認定看護師」があります。どちらも小児看護のより深い知識やスキルを持つ看護師として、高度な看護の提供だけでなく、教育や研究にも携わります。
小児看護でリーダーシップを発揮したい人や看護の質をさらに高めたいというモチベーションを持つ人におすすめの資格です。ただしこれらの資格は、大学院や認定看護師教育機関に一定期間通う必要があり、難易度は高めです。
また小児科では、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー負荷試験を実施するための検査入院を担当することもあり、「小児アレルギーエデュケーター」という資格を取得している人もいます。
小児アレルギーエデュケーターは、アレルギー疾患に関する高度な専門知識と指導技術を備える看護師・薬剤師・栄養士などを認定する学会資格です。総合病院の小児科病棟以外にも、アレルギー専門の病院や小児科クリニックなど、幅広い場で活かせる資格のひとつで、アレルギー疾患の適切なケア方法を患児さんや家族に指導することができます。
小児アレルギーエデュケーターは一度の講習会(受講試験あり)参加で受験資格を得られます。受験後も、特定の臨床経験やさらなる講習会の受講、学術集会への参加が必要ではありますが、専門看護師や認定看護師よりは比較的取りやすい資格だといえるでしょう。
小児科の看護師になるには
小児科の看護師になるには、まずは小児科がある病院へ就職する必要があります。小児科に配属されるための心構えや、やっておくとよいことについてみていきましょう。
小児科の看護師として働くうえで大切な心構え
小児に関する疾患の勉強も大切ですが、まずは一般的な子どもの成長過程や発達段階を知ることが重要です。病棟に配属され、実際に患児さんを受け持ち、疾患や小児看護ならではのケアについてより深く理解するためにも、基礎を身に付けておきましょう。
また、小児科は他の病棟と比較すると独自性の強い病棟といえます。アレルギー関連の資格を持っている人がいるように、配属されたらより専門的な知識を常にアップデートするよう心がけましょう。
小児科に配属されるためにやっておくとよいこと
小児科に配属されるためには、就職活動のときに小児科の就業体験に参加しておきましょう。就業体験での経験を採用面接で伝えられると、具体性のある話ができるはずです。
また、働きたい病院の就業体験に参加すると、勤務している先輩看護師から現場ならではの話を聞けるため、面接対策の参考になるかもしれません。
まずは、積極的に就業体験に参加してみましょう。病院の就業体験は以下から申し込みができます。気になる人はぜひチェックしてみてくださいね。
小児科の特徴を理解してキャリア選択につなげよう
小児科の看護師には、独自の専門的な知識や技術だけでなく、子どもとその家族への思いやりや踏み込んだケアが求められます。成人領域とは異なり、発達状況に合わせた対応や保護者対応など、小児科ならではの大変さもあります。
しかし、子どもの成長の瞬間に関われるという大きなやりがいが感じられます。小児看護領域の幅広い働き方を理解したうえで、自分のキャリアの選択につなげましょう。
参照
東京福祉保健局 東京都立北多摩看護専門学校:小児看護学.(2023年7月5日閲覧)
日本看護協会:2022年 病院看護・助産実態調査 報告書.(2023年7月5日閲覧)
日本看護協会:認定看護師.(2023年7月5日閲覧)
日本看護協会:専門看護師.(2023年7月5日閲覧)
日本小児臨床アレルギー学会:小児アレルギーエデュケーター試験実施要項.(2023年7月5日閲覧)