ケアミックス病院とは?看護師の仕事内容からメリット・デメリットまで

ケアミックス病院とは?看護師の仕事内容からメリット・デメリットまで

最終更新日:2024/07/09

ケアミックス病院は複数の医療機能を併せ持つ病院を指します。今回は勤務経験者の声をもとに、ケアミックス病院の特徴やメリット・デメリットについてまとめました。さらに入職難易度や向いている人の傾向についても解説します。ぜひ参考にしてください。

ケアミックス病院とは

ケアミックス病院とは急性期一般病床と療養病床、地域包括ケア病床など、いくつかの医療機能を備えている病院の総称です。厚生労働省の資料によると「一般病床と療養型病床または精神病床の混合型」との記述もありますが、実際のところケアミックス病院のはっきりした定義はありません。

ケアミックス病院が誕生した背景には、医療ニーズの変化や診療報酬の改定などが挙げられます。このような時代の動きに対応するため、一般病床を療養型病床に転換する病院が増えていったことがきっかけといえるでしょう。

現在は国の地域医療構想による病床再編や在宅医療促進の影響も加わり、急性期、回復期、慢性期だけでなく終末期や在宅医療など、ひとつの病院で複数の医療機能を備えている病院がその数を増やしています。

ケアミックス病院の種類

複数の医療機能を備えているケアミックス病院には様々なタイプがあります。以下はケアミックス病院が持つ医療機能の例です。

  • 一般病棟 + 回復期リハビリテーション病棟 + 在宅部門(訪問看護ステーションなど)
  • 一般病棟 + 地域包括ケア病棟 + 療養病棟
  • 一般病棟 + 緩和ケア病棟 + 精神科病棟
  • 回復期リハビリテーション病棟 + 療養病棟

ほかにも、介護施設やデイサービスが併設されているケアミックス病院もあります。また、手術や重症患者さんへの対応からリハビリテーションをメインにする病院や、比較的中軽症の患者さんを一般病棟で受け入れ、療養病棟を設け、さらに在宅支援を行う病院など、病院によって特徴があります。

ケアミックス病院の特徴を判断するには、病院の公式ホームページ等に掲載されている「病床数」を参考にするとよいでしょう。以下を例に、病床数からどのようなことがわかるか考えてみます。

  1. 一般病棟100床 + 回復期リハビリテーション病棟50床 + 訪問看護ステーション
  2. 一般病棟30床 + 地域包括ケア病棟30床 + 療養病棟60床

1の病院で手術や救急の受け入れにも対応している場合は、急性期をメインにした一般病棟は病床数が多く、それを受ける回復期と在宅支援にも力を入れている病院と考えられます。一方2の病院は、慢性期を受け入れる療養病棟をメインにしたケアミックス病院といえるでしょう。

総合病院との違いは?

以前は、医療法上「複数の診療科と所定の設備を備え、都道府県知事の承認を得ている100床以上の病院」が「総合病院」と規定されていました。しかし、1997年の医療法改定により、総合病院に関する規定は廃止されています。ただし、現在も以前のなごりから、診療科が複数あり救急搬送を受け入れているような大規模病院を総合病院と呼ぶ傾向があるようです。

一方、ケアミックス病院は診療科の数や病院規模ではなく、急性期や慢性期などの医療機能を複数備えている病院のことです。ただし複数の医療機能を備えていたとしても、総合病院と捉えられる場合はあるかもしれません。

例えば、一般病床が300床で複数の診療科に分かれていて、回復期リハビリテーション病床が30床の病院の場合、病床の割合のほとんどが一般病床であるため、総合病院とも考えられるからです。病院の特徴は名称だけでなく、公式ホームページに公開されている病床数や病院概要で確認してみましょう。

ケアミックス病院の看護師の役割と仕事内容

ここではケアミックス病院の看護師の役割と仕事内容を解説します。

ケアミックス病院で働く看護師の役割

ケアミックス病院で働く看護師は、所属する病棟の役割を理解して患者さんを支援することが求められます。そのため、それぞれの領域について看護師の役割を理解しておくことが重要です。

領域別の看護師の役割
急性期 患者さんの生命維持や全身状態の回復を優先し、適切な治療を安全に行うための看護を提供すること
回復期 患者さんの個別性に合わせ、ADLの回復や自立に向けた看護を提供すること
慢性期 患者さんが疾患と向き合いながら、その人らしい生活を送るための看護を提供すること

ケアミックス病院では、一般病棟が急性期、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟が回復期、療養病棟が慢性期にあたります。ナース専科就職ナビでは、各病棟や診療科別の看護師の仕事についてさらに詳しく解説しているので、参考にしてください。

仕事内容は病棟ごとに異なる

所属する病棟によって看護師の役割が違うように、業務内容も病棟によって異なります。バイタルサイン測定や与薬、日常生活援助などの基本的な看護業務は共通ですが、主となる業務は以下の表のように領域によって様々です。

【領域別】主な業務内容の例
急性期 ● 手術や検査前後の処置やオリエンテーション、ケア
● ドレーンや点滴ルートの管理
● 心電図モニタや呼吸器など医療機器の管理
回復期 ● トイレ介助や食事介助など自立を促す日常生活援助
● リハビリなどでの他職種との連携
慢性期 ● 保清や排泄援助
● 褥瘡や呼吸のケア

業務内容の特徴として、急性期のほうが医療処置などの診療の補助が多めです。一方、回復期や慢性期は日常生活援助や環境調整など療養上の世話が多くなる傾向にあります。ただし、細かな業務内容や1日の流れは、領域でなく配属先の病棟によって異なることを覚えておきましょう。

ケアミックス病院のメリットとデメリット

ここでは看護師がケアミックス病院で働くメリットとデメリットを解説します。

ケアミックス病院のメリット

複数の医療機能があるケアミックス病院で働くメリットとして、以下の3つが挙げられます。

幅広い経験が積める

急性期から慢性期まで幅広い経験が積めることは、ケアミックス病院で働く大きなメリットです。さらに、一般病棟が診療科ごと分かれている病院であれば診療科に合わせて違った経験が積めたり、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟がある病院であれば病棟区分による違いが学べたりと、経験できることも多岐にわたります。幅広い経験を積むことで、看護師としてのキャリアプランの幅も広がるでしょう。

配属先の選択肢が多い

ケアミックス病院は、配属先の選択肢がバラエティに富んでいるのもメリットのひとつです。看護学生はまだ現場の経験がないため、なかには自分の適正や希望の領域がわからない人もいるかもしれません。ケアミックス病院なら特徴が異なる複数の配属先があるため、どの病棟が自分の適正に合うのか、学校の先生や内定後の面談で相談しながら考えることができます。

ライフスタイルに合わせて働き続けやすい

ケアミックス病院は、ライフスタイルが変化したときに、働き方が異なる別の病棟への異動を希望できる点も魅力です。例えば、多忙な急性期しかない病院の場合、結婚や育児によって勤務が難しくなったときは転職を考えなければなりません。しかしケアミックス病院であれば、人員状況にもよりますが、比較的落ち着いている回復期病棟や療養病棟へ異動して働き続けることができます。

ケアミックス病院のデメリット

ケアミックス病院で働くデメリットとして、以下の3つが挙げられます。病院選びに活かすためにデメリットも理解しておきましょう。

希望する病棟で働けない場合がある

ケアミックス病院は、複数の医療機能を併せ持ちますが、希望の配属先で働けるとは限りません。特に新卒配属の場合「まずは急性期から経験を積みたい」と考える人が多いかもしれませんが、はじめから回復期や慢性期に配属される場合もあります。さらに、希望しない病棟への異動があるかもしれません。

しかし、どの病棟に配属されたとしてもそこで得られる学びはあるので、モチベーションを失わずに積極的に学ぶ姿勢を持ち続けることが大切です。

病院の特徴が異なり見極めが難しい

ケアミックス病院は、どのような医療機能を持ち合わせているかによって特徴が大きく異なり、それを正しく見極めるのは容易ではありません。特徴を正しく理解できていないまま病院を選んでしまうと、入職した病院が自分の関心とは異なる領域に力を入れていたなどのようなミスマッチが起こる可能性も高まります。

ケアミックス病院を志望する人は、病院の特徴を正しく理解するために説明会やインターンシップへ参加することをおすすめします。

異動時に仕事を覚えるのが大変

ケアミックス病院内では、異動になった際に、新たな病棟の特徴を理解して業務を覚えるのが大変だと感じる人がいます。病棟が変わると、業務内容や働き方だけでなく、受け入れる患者さんや滞在日数の規定など様々な点が違ってくるからです。ケアミックス病院内の異動には、戸惑うことが多いかもしれません。

ただし、異動は病棟ごとの役割の違いや病棟間の連携の仕方について学べる貴重な機会にもなるでしょう。

勤務経験者がケアミックス病院について解説!

ここからはケアミックス病院に勤務経験がある看護師が、その魅力やおすすめのキャリアプランを紹介します。

志望動機や興味の理由

新卒時には急性期病院で働いていましたが、働くなかで回復期や在宅支援に興味が湧き、一般病棟と回復期リハビリテーション病棟、訪問看護ステーションがあるケアミックス病院に転職しました。入職後、最初に配属されたのは一般病棟でしたが、ローテーション研修として1日ずつ各病棟や外来、訪問看護ステーションに勤務する機会があり、それがよい経験になりました。

ケアミックス病院の入職難易度

入職難易度は、ケアミックス病院だから高い、低いということはなく、病院自体の人気に左右されます。ケアミックス病院のなかでも、幅広い領域の病棟を備えている病院は比較的人気があるイメージです。ただし、看護学生は急性期を希望する人が多い傾向にあるため、新卒採用の場合はケアミックス病院のほうが、人気の高い急性期病院よりは難易度が低いかもしれません。

ケアミックス病院で働いてみて感じたこと

ケアミックス病院で働いてみてよかったことや大変だったこと、どんな人が求められたかなど、実際に感じたことを紹介します。

よかったことは?

ケアミックス病院で働いてよかったことは、患者さんの経過を院内で見守れることです。急性期の病院では、手術や治療が終わると別の病院に転院してしまうため、患者さんの退院後の経過が気になったとしても知ることはできませんでした。

しかし、ケアミックス病院なら、一般病棟から回復期リハビリテーション病棟や療養病棟へ転棟したとしても、同じ病院内なので、経過を聞いたり、様子を見に行ったりすることができます。自分が関わった患者さんの経過が見られることは、特にやりがいとなりました。

大変だったことは?

ケアミックス病院で大変だったことは、ベッドコントロールが意外に多く忙しかったことです。急性期病院に比べケアミックス病院は入退院が少ないと思っていたのですが、区分が異なる病床を効率よく稼働させるため、ベッドコントロールによる転棟が多く行われていました。

そのため、患者さんへの説明やベッドの移動、カルテ処理などで忙しさを感じることがありました。ケアミックス病院は一般病棟で入院を受け入れるため、入院対応をしながら転棟する患者さんの対応に追われていたときは特に大変でした。

どんな人が求められる?

ケアミックス病院では、何にでも関心を持ち、学ぶ意欲がある人が求められます。複数の種類の病棟があるケアミックス病院では、異動があっても配属先に応じて学ぶ姿勢が大切です。また、ほかの病棟との連携も大切になってくるため、他部署の仕事にも関心を持ち、学ぶ喜びを見出せるとよいでしょう。

ケアミックス病院でおすすめのキャリアプラン

ケアミックス病院でおすすめのキャリアプランは、様々な病棟で経験を積むことです。ケアミックス病院では、転職せずに同じ病院のなかで経験年数を重ねながら、急性期や慢性期など幅広いステージの患者さんの看護について学ぶことができます。ケアミックス病院に興味のある人は、興味のある領域やキャリアプランに合った医療機能を備えた病院を選び、幅広く経験するのがおすすめです。

ケアミックス病院に向いている人の特徴

ここでは、新卒からケアミックス病院に入職するメリットを踏まえて、ケアミックス病院に向いている人の傾向を紹介します。

ジェネラリストを目指したい人

ケアミックス病院は様々な病棟の経験が積めるため、総合的に幅広い知識を持つジェネラリストを目指したい人には向いている病院といえます。国は急性期から在宅まで、切れ目のない医療を目指しているため、ケアミックス病院でジェネラリストを目指すのはキャリアプランの幅を広げることにもつながるでしょう。

まだ看護師としてのキャリアプランが明確でない人

ケアミックス病院は看護師としてのキャリアプランが明確になっていない人にもおすすめです。看護学生は現場経験がないため、キャリアプランや興味のある領域がはっきりしない人も多いでしょう。ケアミックス病院なら、様々な病棟で幅広い経験を積みながらじっくりキャリアプランを考えることができます。働くなかでキャリアプランが変わっても、転職せずにキャリアアップを目指せるのはメリットです。

急性期を学びたいけど不安がある人

急性期を学びたいけれど自分が急性期にあっているか不安な人は、ケアミックス病院も選択肢に入れるとよいかもしれません。急性期病棟があるケアミックス病院なら、どうしても合わなかった場合に異動という方法もとれるからです。もちろん、病院側の事情や判断により、必ずしも異動できるとは限りませんが、病棟の選択肢が多いのは安心材料になるのではないでしょうか。

ケアミックス病院の特徴を理解して病院選びに役立てよう

ケアミックス病院は急性期と回復期など、複数の医療機能を備える病院の総称で、病院ごとに特徴があります。ライフステージや興味・関心に合わせて、幅広い病棟で学べるメリットがあり、経験や身に付けた知識は看護師としてのキャリアにも役立つでしょう。本記事でケアミックス病院の特徴を理解し、病院を選ぶ際の参考にしてみてください。

参考

一般社団法人日本医療・病院管理学会:ケアミックス(2023年12月14日閲覧)

厚生労働省:病院経営管理指標及び中小病院の経営の方向性に関する調査(2023年12月14日閲覧)

執筆者情報

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柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。