回復期リハビリテーション病棟の特徴と働き方│看護師の役割からやりがいまで解説

回復期リハビリテーション病棟の特徴と働き方│看護師の役割からやりがいまで解説

最終更新日:2023/11/26

回復期はリハビリテーション看護が学べる領域です。今回は回復期リハビリテーション病棟の特徴と看護師に求められる役割や仕事内容を解説します。さらに回復期ならではのやりがいや培われるスキルについても勤務経験者が紹介します。ぜひ参考にしてください。

在宅・社会復帰を支援する回復期

回復期における医療は、社会の高齢化に伴い需要が高まっている領域です。まずは回復期の定義や特徴と、急性期、慢性期との違いについて解説します。

回復期とは

回復期とは、急性期を脱し身体機能の回復を図る時期のことです。厚生労働省は回復期機能を担う医療を次のように定義しています。

  • 急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能
  • 特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能(回復期リハビリテーション機能)

引用:厚生労働省:第16回地域医療構想に関するWG 資料2-2 慢性期機能を有する病床の機能分化・連携の推進について

回復期機能を有する病棟では、在宅・社会復帰に向けた看護の提供や積極的なリハビリテーションが行われます。患者さんの容態は落ち着いていて回復に向かっていますが、合併症の発症リスクは残っているため、身体管理を行いながら安全を考慮したリハビリテーションを行うことが必要です。

対象となる患者さん

回復期の患者さんの特徴は以下のとおりです。

回復期の患者さんの特徴
疾患 脳血管疾患、運動器疾患、廃用症候群 など
例)脳梗塞、骨折
年齢 高齢者が多い(約7割が75歳以上)
身体的特徴 容態は比較的安定しているが、合併症の発症リスクあり

回復期の対象となる患者さんの疾患は、脳血管疾患や運動器疾患などが中心で、比較的容態が落ち着いている傾向にあります。しかし合併症の発症リスクは残っており、急性期を脱したとしても、引き続き身体面の観察は欠かせません。また患者さんの約7割が75歳以上と、年齢層は高めになっています。

急性期・慢性期との違い

回復期と急性期、慢性期の違いは、主に対象となる患者さんの状態や提供する医療などさまざまあります。以下がそれぞれの違いをまとめた表です。各段階でのリハビリテーションの役割も異なるため、併せて解説します。

急性期・回復期・慢性期の違い

全日本病院協会:慢性期の医療について

急性期では廃用症候群の予防、慢性期では社会生活の改善や維持を目指し、回復期では復帰に向けたADLの改善を中心としたリハビリテーションが行われます。段階ごとにリハビリテーションの役割が異なることを理解しましょう。

回復期リハビリテーション病棟とは

回復期リハビリテーション病棟とは、リハビリテーションを集中的に行う回復期機能をもつ病棟です。ADLの向上による寝たきりの防止と在宅復帰を目的としており、急性期を経過した患者さんに医療やリハビリテーションを提供しています。

ここからは、回復期リハビリテーション病棟の特徴と、地域包括ケア病棟、療養病床との違いについて解説します。

回復期リハビリテーション病棟の入院期間

回復期リハビリテーションは、施設基準が設けられており、患者さんの状態によって入院期間も定められています。入院期間の詳細は以下のとおりです。

【状態別】回復期リハビリテーション病棟の入院日数

出典:厚生労働省:診療報酬調査専門組織 参考 令和4年度診療報酬改訂項目の概要
患者さんの状態 日数
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後もしくは手術後の 状態または義肢装着訓練を要する状態 150日以内
(※高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合は、180日以内)
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折または2肢以上の多発骨折の発症後または手術後の状態 90日以内
外科手術後または肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後または発症後の状態 90日以内
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節または膝関節の神経、筋または靱帯損傷後の状態 60日以内
股関節または膝関節の置換術後の状態 90日以内
急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患または手術後の状態 90日以内

令和4年度から、診療報酬が算定可能な「回復期リハビリテーションを要する状態」のなかに「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した大血管疾患または手術後の状態」の患者さんも含まれるようになりました。それに伴い、回復期リハビリテーション病棟の体制の拡充が図られています。

地域包括ケア病棟との違い

回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟は担っている役割が異なります。回復期リハビリテーション病棟の役割は、リハビリテーションを中心とした医療を提供し、ADLの回復と自立した生活を目標に患者さんとともに歩むことです。

一方、地域包括ケア病棟では在宅復帰支援に加えて、急性期からの受け入れや在宅・介護施設からの緊急時の受け入れも行います。回復期リハビリテーション病棟よりも幅広い患者さんが対象となり、地域の医療・介護・福祉にかかわる多職種との連携が必要となるところも大きな違いです。

療養病床との違い

回復期リハビリテーション病棟と療養病床では対象となる患者さんが異なります。回復期リハビリテーション病棟の患者さんの容態は比較的安定していますが、療養病床は、医療必要度や要介護度が高く、長期にわたる治療・療養が必要な患者さんが対象です。

療養病床は、在院日数も回復期リハビリテーション病棟より長い傾向にあります。リハビリテーションも行われますが、家族による看護が困難である、入所先の施設の確保ができていないなどの理由で入院する患者さんがいる現状もみられます。

回復期リハビリテーション病棟で働く看護師の役割・仕事内容

ここからは、回復期リハビリテーション病棟で働く看護師の役割や仕事内容とスケジュール例を詳しく解説します。

回復期における看護師の役割

回復期における看護師の役割は、患者さん一人ひとりに合わせた看護を意識しながら、ADLの回復や自立に向けたサポートをすることです。患者さんやその家族と信頼関係を築きながら、ニーズを把握し、必要な看護や対策を考えていくことが求められます。

また、チーム医療における連携をコーディネートすることも回復期における看護師の重要な役割です。回復期リハビリテーション病棟では、理学療法士や作業療法士、ソーシャルワーカーなどの各専門職がそれぞれの役割を果たしています。

看護師は患者さんの回復や退院に向けて、より円滑にリハビリテーションを提供できるよう、チーム医療の中心となって多職種間の橋渡しをすることが求められます。

回復期で働く看護師の仕事内容

回復期看護師の主な仕事内容は以下になります。

回復期リハビリテーション病棟の看護師の主な仕事内容
転科・入退院の対応 ● 転科・入院生活についての説明、情報収集と看護計画の立案
● 退院時の説明や、薬剤や書類の準備
リハビリテーションに関する対応 歩行の付き添いや声かけなど看護師によるリハビリテーション
※病院によって異なる
処置・検査 採血、経管栄養など
※医療行為の内容や頻度は病院によって異なる
日常生活援助 食事・入浴・排泄などの介助
※患者さんの経過に合わせた方法で介入する
カンファレンスへの参加 他職種との情報共有

回復期リハビリテーション病棟の仕事は、点滴や心電図モニターなどの医療行為は少ないのが特徴です。

入院生活中のADLは患者さんにとってリハビリテーションの一環となるので、日常生活援助を行う際は、看護師は患者さんの状況を把握したうえで介入を調整する必要があります。

また、他職種とスムーズな連携を図るために行われるカンファレンスは、回復期リハビリテーション病棟では欠かせない仕事内容のひとつです。看護師間だけでなく、他職種も交えて患者さんについての情報共有や問題点についての対策について話し合い、患者さんの早期回復を目指します。

1日のスケジュール例

回復期リハビリテーションの勤務形態は病院によって異なりますが、今回は2交代制の職場を例に挙げ、1日のスケジュールを日勤・夜勤別に紹介します。

日勤

日勤での受け持ち患者数は看護師の人員にもよりますが、1人あたり5〜10人程度です。リハビリテーションと日常生活を中心とした療養であるため、看護師は身体観察を行うとともに、患者さんの1日のスケジュールに合わせて業務を行います。

以下が日勤の一般的な1日スケジュール例です。

回復期リハビリテーション病棟の1日スケジュール例(日勤)

回復期リハビリテーション病棟の患者さんは、療養生活であっても、退院後の生活に近づけるという視点のもと、朝はパジャマから普段着に着替え、食事は食堂でとるなどしています。これはほかの病棟とは異なる点です。

夜勤

病院にもよりますが、夜勤では20〜25人程度の患者さんを1人で受け持ちます。回復期リハビリテーション病棟に入院する患者さんは比較的状態が落ち着いていますが、夜間に急変する場合もあり得ます。病棟内にスタッフが少ないなかでもすぐ動けるよう、急変対応をイメージしておきましょう。

以下が夜勤の一般的な勤務スケジュール例です。

回復期リハビリテーション病棟の1日スケジュール例(夜勤)

運動機能が完全ではない患者さんや高齢の患者さんが多いため、夜間転倒には特に注意して日常生活援助を行うことが必要です。

勤務経験者が語る~回復期のやりがいからキャリアプランまで~

ここからは、回復期リハビリテーション病棟で働いた経験がある看護師が、回復期ならではの魅力や培われるスキル、働くなかで大変だったことなどについて解説します。

回復期ならではのやりがい・魅力は?

回復期の魅力は、患者さんの回復に向けて直接サポートができることです。患者さんのADLの向上が目に見えることは、やりがいにつながります。

また、他職種と密にコミュニケーションをとることで、新たな気づきが得られやすい点も魅力のひとつです。他職種の意見に触れる機会が多くなると、看護の視点とは違う角度から課題がみえるようになってきます。自分の看護の幅も広がり、自身の成長を実感できるようになるでしょう。

回復期看護で培われるスキルは?

回復期では、リハビリテーション看護のスキルが培われます。このスキルはリハビリテーションのアプローチ方法が習得できるだけでなく、身体機能や障害に応じ適切な方法で患者さんのケアに介入することが身に付きます。看護師の仕事をしてくうえでの基本として、さまざまな場面で活用できるしょう。

また、退院支援にかかわる知識が深められる点も、回復期で得られるもののひとつです。患者さんの退院後の生活をイメージしながら、介護・福祉サービスの種類や申請・利用方法が学べます。さらに、退院後の健康管理や指導を通して、患者さんの健康を長期的にサポートしていくための看護の視点も養われ、在宅看護・介護分野でも役立つスキルになるはずです。

回復期リハビリテーション病棟で働くなかで大変だったことは?

回復期リハビリテーション病棟で働いて大変だったことは、体力面での負担です。成人期の若い患者さんは比較的早期に自立をしますが、高齢の患者さんは介助や見守りが必要な場合が多く、体力を要します。

さらに、日常生活援助は患者さんのADLに合わせて行うため、時間がかかることもあります。入院・転科の対応やカンファレンスがある日は特に時間に追われるため、忙しさから体力的にきついと感じることもありました。自分自身の体も定期的にケアすることが大切です。

そのほか、回復期リハビリテーション病棟で働き始めたばかりのときは、他職種とのコミュニケーションに苦手意識をもっており、大変に感じることがありました。しかし、働いていくなかで克服できるので、自分のペースで少しずつ慣れていくとよいでしょう。

その後のキャリアプランとおすすめの資格

回復期リハビリテーション病棟の経験を活かしたその後のキャリアプランには、在宅看護・介護分野や退院支援ナース(退院調整看護師)などが挙げられます。在宅看護・介護分野は、患者さんのADLに合わせた日常生活援助やコミュニケーション力、他職種との連携など、回復期で培った経験が活かせる分野です。

退院支援ナースは、入院後さまざまな事情により自宅に戻るのが難しい患者さんに対して、退院先を決定するための支援や調整を行う役割の看護職です。回復期での退院支援やチーム医療の経験を活かすことができます。

また、回復期リハビリテーション病棟での経験を活かし取得できる資格の一つとして「回復期リハビリテーション看護師」があります。回復期リハビリテーション病棟協会による認定資格で、リハビリテーション看護師としてよりスキルアップしたい人は調べてみるとよいでしょう。

回復期リハビリテーション病棟で働くためには

看護師免許があれば新卒からでも回復期リハビリテーション病棟で勤務することが可能です。ただ「新卒は看護スキルを身につけるために急性期に就職する必要がある」と考える学生もいるでしょう。

しかし、回復期でも看護の基本を身に付けることはできます。場合によっては、急性期より回復期のほうが向いているという人もいるかもしれません。以下では、回復期に向いている人の特徴とともに、回復期を志望する人が就活や入職前にやっておいたほうがよいことを紹介します。

回復期看護に向いている人の特徴

以下のような特徴がある人は、回復期看護に向いているといえます。

  • チームワークが得意な人
  • 患者さんとじっくり向き合いたい人
  • リハビリテーションについて知識を深めたい人

回復期は急性期よりも一人の患者さんと関わる時間が長くなるため、患者さんとじっくり向き合いながら看護を提供したい人に向いているでしょう。また、チームワークが得意な人やリハビリテーションについての知識を深めたい人も回復期の仕事はおすすめです。

学生時代にやっておくとよいこと

回復期への就職を考えている学生は、以下のような内容について事前学習しておくと役立つでしょう。

  • 対象疾患(主に整形外科・脳血管疾患)
  • 日常生活援助の基礎知識
  • 介護保険制度の基礎知識
  • 理学療法士や作業療法士など他職種の役割

また、回復期機能を有する病院で新卒への教育体制が整っている施設をみつけるには、採用試験前にインターンシップや病院説明会に参加することをおすすめします。新卒への教育体制が整っている病院を選ぶと、新卒でも必要な看護スキルが身に付けやすくなります。

ぜひ積極的にインターンシップや説明会に参加して情報を収集しておきましょう。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビより

「回復期」を視野に入れてキャリアの選択肢を広げよう

回復期リハビリステーション病棟は医療行為が少ないため、スキルが身に付きづらいイメージがありますが、リハビリテーション看護や退院支援など、回復期ならではの経験を積める職場です。今後、社会の高齢化に伴い回復期の需要はさらに高まります。回復期に携わることで得られるスキルを把握して、キャリア選択の幅を広げてみてくださいね。

参考文献

厚生労働省:第7回社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会 参考資料2 療養病床に関する基礎資料.(2023年7月24日閲覧)

大口祐矢:看護の現場ですぐに役立つ 臨床看護のキホン. 第1版. 秀和システム, 2021年, p.50-55

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執筆者情報

プロフィール画像

伊藤 雪乃

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2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力