現場のリアルを知ろう!急性期・回復期・慢性期の魅力|病床機能ごとの特徴を知って、自分に合った病院を見つけよう
最終更新日:2024/09/02
急性期・回復期・慢性期、実際に働く上でどんな違いがあるのでしょうか。
今回はそれぞれの特徴や必要なスキル、やりがいなどを現場目線からお伝えします。
「入職してみたらイメージと違った」ということがないように、事前にしっかり把握して病院選びに役立てましょう。
※本内容は、2023年5月13日に開催したオンライン就活ゼミ「現場のリアルを知ろう!急性期・回復期・慢性期の魅力」にて、AOI国際病院の看護部長と看護師にお話いただいた内容を再構成したものです。
目次
講師プロフィール
AOI国際病院 看護部長 認定看護管理者
佐藤直也(さとうなおや)氏
下谷医師会立看護高等専修学校(准看護学校)を2011年に卒業後、博慈会高等看護学院第二看護学科へ入学。2002年卒業後、一般急性期病院(320床)の循環器病棟、CCU、内科病棟にて勤務。その後、一般急性期病院での看護経験を重ね、2012年に現法人の医療療養病院入職。2010年より看護師長となり、副看護部長経験を経て2022年より現職。現在は、日本医療評価機構評価調査者として院外でも積極的に活動している。
急性期・回復期・慢性期の違い
看護師の仕事は「診療の補助」と「療養上の世話」の2つの役割があり、このバランスの違いが急性期と回復期・慢性期の違いになります。
急性期は、「診療の補助」がメインとなり、生命の危機に瀕している患者さんへいかに安全・着実に処置を遂行できるかという部分が最重要になります。
一方で回復期・慢性期は、「療養上の世話」がメインとなり、身体的・精神的・社会的ケアが必要な患者さんの対応が中心となります。「看護の原点」ともなる、寄り添ったケアができるかが重要になってきます。
急性期 診療の補助>療養上の世話 |
● 発症直後や手術後で、24時間体制での観察や治療介入が必要な患者さん ● 人工呼吸器やECMOなどの高度医療機器で生命を維持する患者さん ● さまざまな診療科や年代 |
回復期 診療の補助<療養上の世話 |
● 急性期を脱して、リハビリが必要な患者さん ● 脳神経系、整形系の疾患が多い ● 比較的幅広い年代 |
慢性期 診療の補助<療養上の世話 |
● さまざまな事情により、在宅では必要な看護が受けられない患者さん ● 比較的高齢で寝たきりの患者さんが多い ● 医療依存度は多岐に渡る(介護医療院は介護がメイン) |
急性期の特徴・魅力
高度な医療機器の取り扱いや診療科に特化した専門知識を学べるのはもちろんですが、ほかの環境との一番の違いは急変対応や多重業務が日常的であることです。
常に優先順位をつけてテキパキと動き、臨機応変に対応することが求められます。さまざまな事象に耐えられる精神力を持つことも重要なポイントです。
ちょっとしたことが命に直結してしまうため、プレッシャーや責任の重さを感じることも多々ありますが、患者さんが元気になって退院するまでの過程を見ることができ、チームワークで乗り切る達成感も感じられます。
急性期看護で必要となるスキル
- 最新の医療技術や医療機器について学べる機会が多い
- 急変対応や多重業務が発生するのでテキパキ動くことが大事
- さまざまな事象に耐えられる精神力
急性期看護のやりがい・懸念点
- 「患者さんの命を助ける」という点での達成感は得やすい
- 回復過程が見られ、自分の知識とのつながりが感じやすいので自信になる
- 多重業務、臨機応変、スピード感が求められる
回復期の特徴・魅力
脳神経系、整形系、循環器系の回復過程の援助が主な業務となるため、リハビリ知識や離床を促すケアの技術を学ぶことができます。
多職種との連携が多く、看護師はその調整役となります。回復期は在宅復帰を前提としているため、患者さんの社会的背景や退院を見据え、家族の支援もしていく必要があります。
リハビリ職員や医師と協力しながら同じ目標に向けて取り組めることや、患者さんと密にコミュニケーションをとりながら看護ができることが回復期看護の魅力です。
回復期看護で必要となるスキル
- リハビリ系の知識(離床を促すケア方法の習得)
- 多職種との連携・調整能力
回復期看護のやりがい・懸念点
- 患者さんとコミュニケーションをとりながら在宅復帰のための支援ができる
- チームで話し合いながら同じ目標を持って頑張ることができる
- 退院し社会復帰していく患者さんを見られる
- 在宅での生活を見据えた家族ケアも必要
- 仕事と勉強の両立が比較的しやすく、モチベーションが維持できる
慢性期の特徴・魅力
急性期や回復期と比べて入院期間が圧倒的に長く、毎日同じ患者さんと向き合い変化をキャッチしながら看護を行います。
病院によって患者層はさまざまですが、コミュニケーションがとれない方や看取りの患者さんも多く、一人ひとりに適したケアを考えて行動する必要があります。
医療依存度の高い患者さんが多い病棟では、高度な看護技術を求められることもあり、急性期とは違った忙しさを感じる場合もあります。
慢性期はルーティンワークが多いため一つの技術を確実に習得できることが魅力です。
また、日々患者さんと密に接する介護士からの気づきなど、他職種とのかかわりの中からさまざまなことを学べる環境でもあります。
慢性期看護で必要となるスキル
- 医療依存度が高い患者さんが多い病棟では、一人ひとりに合わせた知識・技術が求められる
- 患者さんとコミュニケーションがとれない場合が多いので、患者さんの変化をキャッチし、対応する能力が求められる
慢性期看護のやりがい・懸念点
- 患者さんの変化に気づきを得ながら看護していくことにやりがいを感じることができる
- ルーティンワークが多く、一つの技術を確実に学ぶことが可能
- コミュニケーションがとれない患者さんも多い
- 軽快退院よりも看取りが多くなるので、気持ちの切り替えが大事
- 仕事と勉強の両立が比較的しやすく、モチベーションが維持できる
看護学生さんからよくある質問
Q. 教育体制は急性期のほうがしっかりしていますか?
A. 新人教育制度は厚生労働省のガイドラインを基に作成していますので、病床機能の違いによって差が出るということはありません。どの病院を選んでも基本的な看護技術は身に付くようになっています。
Q. 回復期・慢性期より急性期のほうが経験を積めますか?
A. 「経験」といってもいろいろあります。多職種との連携や在宅に向けた看護という経験は回復期が最も積めますし、人工呼吸器や点滴の管理などの技術はルーティンワークとなっている慢性期が着実に習得しやすい面もあります。なりたい看護師像や看護師を目指したきっかけを思い返してみて、自分にとって必要な経験が何なのかを具体的に考えることが重要です。
「ケアミックス型病院」という選択肢も<注目>
自分のやりたい看護や環境が定まっていない方には、ケアミックス型病院という選択もあります。ケアミックス型病院は、救急・急性期、回復期、慢性期、緩和ケアなどの複数の病床機能を持っており、一貫した看護が提供できます。
部署特性が異なるため、転職せずに院内異動によるキャリアアップが可能で、結婚・出産など自身のライフステージに合わせた働き方ができることも大きな魅力です。
就職先を選ぶ上で大切なのは「自己理解をしっかり深めること」<POINT>
根幹になるのは「どうして看護師になりたいと思ったか」という部分です。なりたい看護師に近づくためにはどんな環境が必要なのかを逆算できると就職先が見えてきます。
また、自分はどんな性格なのか・どんなストレスに弱いかを理解しておくことも重要です。
看護師の仕事においては、あらゆるストレス負荷は避けられません。
働く中でもちろん克服できることもありますが、自分が精いっぱい努力しても変えられない部分も大きいはずです。
「やりたい看護とできる看護は違う」とよくお伝えするのですが、【目先のやりたいこと】だけにとらわれるのではなく、自己理解をしっかりと行い、自分にとって初めて働く環境はどこが最適なのかを、ぜひじっくり考えてみてください。
また、実習での経験を就職先選びの材料にする方も多いですが、実習の経験はあくまで一部分でしかありません。
実際に当院へ就業体験に来た学生の中には、「実習のイメージより忙しかった」などのギャップを口にする方もいらっしゃいます。
就業体験にも積極的に参加して、その環境でやっていけそうか、経験を自己理解の材料として役立てましょう。
看護師としてのキャリアをどこからスタートさせるべきか<POINT>
病床機能ごとの役割はどんどん高度化しており、急性期に限らず慢性期や回復期でも学べることがたくさんあります。将来のなりたい看護師像に向かうために、どこからキャリアをスタートさせたとしても総合的な看護の経験値は変わりません。
どんな環境を選んだとしても自分の学び方や考え方次第でいくらでも成長はできます。
看護師の仕事は患者さんの命をあずかる非常に責任重大な仕事です。不安があるまま周りに流されて入職するのではなく、自分の性格や看護観に合った先で看護をするのが自分にとっても患者さんにとっても最善です。
ぜひ長期的な視点で看護師としての人生設計をしてみてください。
看護師リアルボイス 回復期病棟業務の実状と魅力
AOI国際病院 回復期リハビリテーション病棟 2年目看護師のお話
多職種と連携し、退院に向けて一体感を持って取り組めることや、介護保険や社会保障について学べるなど魅力はたくさんありますが、患者さんが退院される姿を間近で見られることがなによりうれしく、やりがいとなっています。
回復期は患者さんのADLの拡大に伴い、転倒・転落リスクや導線を考慮した環境整備をすることが大切です。また、ナースコールが多く多重課題が生まれやすいので、優先順位を考えて業務を行う必要があります。
- 回復が目的の病棟のため、明るく活気がある
- 患者さんが回復・退院するまでをサポートできる
- 多職種との連携からたくさんの学びがある
回復期病棟のここが魅力
- ナースコールが多く、業務が思い通りに進まないことも
- 既往がある患者さんも多く急変する場合もあるので、日々の状態観察がとても大事
回復期病棟のここが大変
学生時代は「自分がその現場で働いているイメージがつくかどうか」を意識しながら就職活動を行いました。早い段階から少しずつ行きたい病院を調べて計画的に進めておくと、心に余裕が持てると思います。たくさんの情報収集をして、自分に合った職場を見つけてくださいね。
各病床機能の役割を理解し、実りある看護師としての就活を
すでに志望先を絞っている方もそうでない方も、なんとなく抱いているイメージで選択肢から排除してしまうのではなく、各病床機能の特徴を深く知り、現場の方のお話もたくさん聞いて、本当に自分に合う環境はどこなのか、じっくりと考えてみてください。