看護学生の実習期間│時期・スケジュール例を詳しく解説
最終更新日:2024/08/27
看護実習は将来看護師として臨床現場で活躍するための重要なステップです。実習期間や内容は厚生労働省によって定められています。詳細スケジュールは各学校で異なりますが、本記事では学年別のおおよその実習期間・時期と実習を乗り切る秘訣を紹介します。
目次
看護実習の概要について
看護実習は、看護師としての基盤を築く重要なプロセスです。実習を有意義なものにするためには、まずは看護実習の目的と内容を理解しましょう。
看護実習の目的
看護実習を行う目的は、看護学生が講義で学んだ知識や技術を実際の医療現場で実践して、看護師に必要な能力を養うことです。
看護実習を通して患者や利用者との関係構築や多職種連携を学び、批判的・創造的思考力、問題解決能力、高い倫理観、自己省察などを身につけることが求められます。
参考:大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会 第二次報告|文部科学省
看護実習の種類
看護実習は主に以下4つに分類されます。
- 基礎Ⅰ実習
- 基礎Ⅱ実習
- 領域実習
- 統合実習
それぞれで取り組む内容が異なります。以下では実習ごとの内容と目的を解説します。
1.基礎Ⅰ実習
基礎Ⅰ実習では、医療施設における看護援助場面の見学が主となります。具体的には実習指導者である病棟看護師をシャドーイングしながら、日常生活援助の体験や環境整備などの初歩的な技術を実践します。
基礎Ⅰ実習の目的は看護の機能・役割を理解し、看護師としての基本姿勢や患者さんとのコミュニケーション能力を習得することです。患者さんから入院生活の思いを引き出す経験や、病棟の特徴や療養環境について理解することが求められます。
2.基礎Ⅱ実習
基礎Ⅱ実習では2週間の実習期間中、1人の患者さんを継続して受け持ちます。具体的にはカルテや本人から情報収集を行い、看護計画を立案した上で看護ケアを提供します。
基礎Ⅱ実習の目的は個別性を重視した看護の展開や、実践への適用能力を高めることです。患者さんとの関わりだけでなく、実習チームの学生・講師・実習指導者で行うケースカンファレンスから、看護上の問題点や援助の方向性について理解を深めることも重要です。
3.領域実習
領域実習では下記6分野において、それぞれの対象者に必要な看護過程の展開や看護技術を実践します。
分野 | 対象 | 学習内容 |
---|---|---|
成人看護学実習Ⅰ・Ⅱ | 15歳~64歳までの外科系・内科系疾患で入院する患者 | ・急性期病棟・慢性期病棟の特徴と看護を学ぶ |
高齢者看護学実習Ⅰ・Ⅱ | 75歳以上の患者 | ・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・慢性期病棟の高齢者の特徴と看護 |
小児看護学実習 | 小児科病棟の15歳以下の患児 幼稚園・保育園に通う幼児期の子ども |
・小児科病棟:小児疾患の特徴と看護を学ぶ ・幼稚園・保育園:幼児の成長・発達の特徴を学ぶ |
母性看護学実習 | 妊娠〜産褥期の母親と新生児 | ・自然分娩または帝王切開術に立ち会い産前産後の看護を学ぶ |
精神看護学実習 | 精神科病棟の精神疾患を持つ患者 | ・精神科病棟:精神疾患の特徴や看護を学ぶ ・地域活動支援センター:施設や医療福祉従事者の役割を学ぶ |
地域・在宅看護学実習 | 地域住民や訪問看護の利用者 | ・地域の各生活支援施設:母子・成人・高齢者の生活の場を学ぶ ・訪問看護:実習指導者と一緒に対象者の居宅へ訪問し在宅看護を学ぶ |
6〜8名のメンバーと領域別の担当講師1〜2名のグループ構成での参加が一般的です。
領域実習の主な目的は、看護の対象となる人や地域・医療福祉従事者や施設の役割を理解することです。病院や介護施設などの様々な実習場所で看護の実践に参加し、患者や利用者のニーズに応えていきます。
4.統合実習
統合実習は1年生からの講義や実習での学びを踏まえて行われる集大成の実習です。以下のようにⅠとⅡに分けられます。
分類 | 学習内容 |
---|---|
統合実習Ⅰ | ・病院内の各責任者からの講義 ・病棟管理者・リーダー・メンバーの見学実習 |
統合実習Ⅱ | ・複数患者の受け持ちやリーダー体験 ・夜間実習 |
具体的に最大2名の患者さんの受け持ちや夜間実習、多重課題の優先順位付けなどが求められます。また学生看護チームを編成し、チームナーシングと同じような受け持ち方式で実習が行われる場合もあります。
統合実習はこれまでの実習で学んだ知識・技術・態度を統合し、実際の看護現場で適切な判断と対応ができるようにすることが目的です。より現場の看護師に近い実践能力を高める実習となるでしょう。
【4年制大学向け】学年別の看護実習期間と時期
4年制大学の看護学生の実習期間・実施される時期について学年別にまとめました。実施時期の詳細は学校によって異なるので、あくまで参考程度に留めてください。
学年 | 実習内容 | 実施時期 | 実習期間 |
---|---|---|---|
1年生 | 基礎Ⅰ実習 | 9月~ | 1週間 |
2年生 | 基礎Ⅱ実習 | 5月~7月 | 2週間 |
3年生 | 領域実習 | 10月~ | 2~3週間×6 |
4年生 | ~7月 | ||
統合実習 | 9月~ | 2週間 |
1年生
1年生の9月ごろに実施される基礎Ⅰ実習の期間は約1週間です。1年生は英語や情報リテラシーなど看護や医療以外の一般教養がメインになるので、実習が行われるのはこの時期のみとなります。ただし学内演習は前期から週1日ペースで行われ、学生同士で基本的な看護技術を体感しながら身につけていきます。
2年生
2年生は5月から7月あたりに基礎Ⅱ実習があり、期間は約2週間となります。大学によっては、基礎Ⅰ実習も2年生に進級してから行われる場合があります。2年生も実習期間は短く、医学・薬学などの専門的な概論、看護の対象者についてライフステージ別に学ぶ座学が中心です。
3年生
3年生の後期からは領域実習が始まり、実習期間は各領域2~3週間が一般的です。領域別の実習前には学内オリエンテーションが行われ、実習の目的や注意点等を確認していきます。3年生の前期は1、2年に引き続き座学が多く、この期間に領域実習に必要な知識を蓄えます。
4年生
4年生は前期に残りの領域実習、後期には統合実習が実施されます。領域実習の期間はすべてを含め約1年、統合実習はⅠ・Ⅱそれぞれ約1週間ずつ行われるため、合計期間は約2週間です。統合実習が終了すると、卒業研究や国家試験対策が始まります。
【3年制学校向け】学年別の看護実習期間と時期
3年制学校の看護学生の実習期間や内容を以下にまとめました。3年制は4年制に比べて実習の頻度が多くなるのが特徴です。
学年 | 実習内容 | 実施時期 | 実習期間 |
---|---|---|---|
1年生 | 基礎Ⅰ実習 | 9月頃が多い | 1週間 |
基礎Ⅱ実習 | 2月頃が多い | 2週間 | |
2年生 | 領域実習 | 10月~2月 | 8週間 |
3年生 | 5月~11月 | 10週間 | |
統合実習 | 11月 | 2週間 |
1年生
1年目は基礎Ⅰ実習・基礎Ⅱ実習が行われます。実習期間は、基礎Ⅰ実習が1週間、基礎Ⅱ実習が2週間です。ただ2年目に基礎Ⅱ実習を実施する学校もあるため、実習時期はあくまで目安です。また4年制大学の1年生で行われる一般教養の講義はほとんどなく、看護学や医学概論を学び始めます。
2年生
2年生の10月頃になると領域実習が始まります。実習期間の合計はおよそ8週間です。しかし学校によっては実習の間に講義をはさむなど実習時期はさまざまなので、具体的なスケジュールは各学校で確認しましょう。
3年生
3年生では引き続き領域実習が約10週間、統合実習が約2週間行われます。学校によって実施時期は異なるため、11月頃まで実習に行く場合もあります。国家試験は2月のため、実習や講義の合間に少しずつ国家試験対策も進めていかなくてはなりません。
看護実習期間中のスケジュール例
ここでは看護実習期間中の1日、また1週間のスケジュール例を紹介します。
※実際のスケジュールは学校や実習先の病院や領域ごとに異なるので、あくまでも参考までに留めてください。
1日のスケジュール
1日の実習スケジュールは、病棟実習であればどの領域も以下の流れが一般的です。
例えば成人看護学の急性期実習では、手術、母性実習の場合は緊急の分娩や帝王切開術の見学が入るため、イレギュラーなスケジュールに応じた行動計画を立てる必要があります。
また、帰宅後も引き続き実習記録や翌日の行動計画・看護計画の立案、予習・復習が必要となるため、いかに効率よく進めて睡眠時間を確保するかが重要です。
1週間のスケジュール
次に実習期間中の1週間のスケジュールをまとめました。ここでは、基礎Ⅱ実習の開始1週間の内容を紹介します。
多くの領域実習で、月曜日は実習開始初日です。また毎週金曜日は学内実習が実施されます。そのため、1週間のうち病棟実習は4日間であるケースがほとんどです。
小児看護の幼稚園・保育園実習や、高齢者看護の老健・特養での実習では病棟とは異なるスケジュールや看護計画の展開で進行します。また地域看護学の生活支援施設系での実習では主に見学がメインとなるため、領域ごとに応じて行動計画や目標を立てていきます。
先輩看護師に聞いた「実習期間を乗り越える方法」
看護実習は看護師を目指す学生にとって重要な経験であり、国家試験を受験するための必須事項です。しかし実習は厳しい状況が続くこともあり、状況に合わせて対処しなくては挫折しかねません。
先輩看護師のアンケート調査からも「看護実習」は学生生活のなかで最もつらいことのひとつであることがわかります。
ここからは実際にどうやって実習期間を乗り越えたのか、先輩看護師の意見から得られた「つらい実習を乗り越える方法」について紹介します。
実習期間に向けて事前準備をする
それぞれの看護実習開始前には、学んだ知識や技術の復習や心構えをしておくことが大切です。先輩が行っていた事前準備を抜粋して紹介します。
先輩が行っていた事前準備
- 実習期間までに基礎的な学習を復習した
- 早めに事前学習ノートを作って対策した
- 事後学習もしっかり取り組んで備えた
実習を通してどのように成長したいか、何を学びたいかを明確にして、積極的な参加姿勢を持ちましょう。
また実習が始まる前には、実習で必要となるものを準備しておくと安心です。実習に必要なものをチェックリストとしてまとめているので、ぜひ実習前に活用してください。
実習に必要なものチェックリスト
- 白衣
- 幼稚園実習や特養実習で使うエプロン
- 聴診器
- ナースシューズ
- ヘアピン・ヘアゴム
- ナースウォッチ
- 電卓
- 瞳孔計ペンライト
- 医療用ハサミ
- クリップボード
- 多色ボールペン
- ポケットサイズのメモ帳
- 検査値まとめ表
- 領域別ポケット参考書
- 事前学習ノート
実習の目的や目標を見失わないようにする
看護師になるという目的や、自分が目標とする看護師に意識しておくことは、実習中のモチベーション維持につながります。現に「看護師になりたいという思いで実習期間を乗り越えた」という意見も多くみられました。
ただし完璧な看護師像を追い求めて自分に過剰なプレッシャーをかけると、挫折する可能性もあるため注意しましょう。
メンバーと協力しあう
実習中はグループメンバーとの協力で乗り切りましょう。「メンバー間で励ましあって乗り越えた」という先輩の意見は最も多く、つらいときに助け合うことの必要性が感じられます。
また同じ目標を持った仲間なので、困ったときの助け合いや悩みの共有をすると互いに成長もできるでしょう。
スキマ時間を有効活用して実習記録に取り組む
実習期間中は繁忙なスケジュールが続くため、スキマ時間を上手に使って実習記録をまとめるといった工夫が大切です。先輩からは主に、休憩時間や電車の移動時間を活用している意見がみられました。さらに実習記録の作成だけでなく、休息や睡眠など気分転換の時間をスキマ時間で確保するのもよいでしょう。
なお以下のアセスメントガイドには、実習記録に必要な情報や例文が掲載されているため、効率的にアセスメントを組み立てることができます。ぜひ活用してみてください。
参考:ナース専科 就職
実習期間を有意義に過ごし、理想の看護師像を見つけよう
実習期間は看護学生生活のなかでも大変な期間ですが、理想の看護師像を見つめ直す貴重な時間です。実習期間で得た経験や知識は、就職活動やその先の看護師キャリアにつながります。それぞれの期間と実習内容を整理して事前準備をしっかり行い、実習期間をより有意義なものにしましょう。