看護実習目標の設定方法を解説│すぐに使える領域別例文つき

看護実習目標の設定方法を解説│すぐに使える領域別例文つき

最終更新日:2024/05/14

看護学生が看護実習目標を負担なく設定するためにやるべきステップを解説。また、シーン別の看護実習目標の設定方法を例文付きで紹介します。「実習目標を考えると気分が憂鬱」……そんな看護学生の悩みを解決します。

看護実習目標の設定方法

看護実習目標は、「行動目標」「看護目標」「学習目標」という3つの目標を網羅する必要があります。実習で自分がどのように行動するかを考えるのが「行動目標」、対象者にどのような看護を提供するかを考えるのが「看護目標」、実習を通して何を学ぶかを考えるのが「学習目標」です。学校や学年により看護実習目標は異なりますが、実習先・診療科に合わせた目標を設定するようにしましょう。

看護実習目標とは?

看護実習目標とは看護学生が「自分が実習を通して何を学びたいか」をまとめたものです。

看護実習目標が明確になっていないと1日の行動だけでなく看護実践や観察、患者さんとのコミュニケーションで何をすればよいかわからず、有意義な実習にならない可能性があります。

看護実習目標の「考え方」と「書き方」

看護実習目標は実習先・学習内容、そして学生一人ひとり異なります。 学生一人ひとりが今まで経験してきたことや学習課題、看護観が異なるためです。良い看護実習目標は、以下の4つを満たした内容になります。

  • 実習の目的に沿っている
  • 自分自身の課題と結びつけられている
  • 継続性、発展性がある
  • 達成基準が明確で評価しやすい

看護実習をスムーズかつ、実りの多いものにするためにシラバスや実習要綱を確認 しながら、自分なりの目標を設定することが実習成功の近道です。

看護実習目標を設定するための4つのステップ

  1. シラバスや実習要綱で実習の目的・目標をチェックする
  2. 授業や演習・実習の最終評価と課題を振り返る
  3. ステップ1とステップ2の共通点を見つける
  4. ステップ1でチェックしたシラバスや実習要綱に沿って自分がやりたい看護を言語化する

看護実習目標はただやるべきことを並べるだけでは、良いものは設定できません。学習内容や実習先に合わせ、実習を通して看護学生として成長できる目標を設定することが重要です。ここからは、看護実習目標を設定するためにマスターしたい4つのステップを例と合わせて紹介します。

ステップ1:シラバスや実習要綱 で実習の目的・目標をチェックする

年度初めに配布されるシラバスや実習前に配布される実習要綱 には、実習を通して何を学ぶのかという「目的」と、具体的にどんなことが実践できるようになるのかという「目標 」が記載されています。

まずは、シラバスや実習要綱を確認し、実習の目的と目標を正しく理解することが大切です。実習要項が実習直前に配布される場合、先にシラバスで概要だけでも理解しておきましょう。

    <実習要綱>

  1. 人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解する能力を養う。
  2. 対象を中心とした看護を提供するために、看護師としての人間関係を形成するコミュニケーション能力を養う。
  3. 健康の保持・増進、疾病の予防及び健康の回復に関わる看護を、健康の状態やその変化に応じて実践する基礎的能力を養う。

ステップ2:授業や演習・実習の 最終評価と課題を振り返る

自分の苦手な点や指導者や教員からのフィードバックだけでなく、もっと深めたい・伸ばしたいと感じた点を思い出し、自身の課題を明確にします。

<教員からのフィードバック>

患者さんとのコミュニケーションはとても上手にできるようになりましたね。次の実習では社会的役割や発達課題に目を向け、幅広く患者像を捉えられるようになりましょう。

<自身の課題>

患者さんと意識せずに話せるようになってきた。けれど会話の内容が体調や天気、病気の理解、日々のケアの実践に集中してしまい、患者さんのバックグラウンドや課題に気づくことができなかった。

ステップ3:ステップ1とステップ2の共通点を見つける

実習の目的や目標と、自分の課題には何らかの共通点があります。たとえば、基礎看護技術の実践やコミュニケーション という実習目標の中でも、「患者さんとのコミュニケーション」の部分に着目してみましょう。あなたは患者さんと日常会話はできるけれども、社会的役割や発達課題の把握に課題を感じていて、フィードバックも受けています。

自身の課題を把握したところで、実習要綱と照らし合わせると「1) 人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解する能力を養う」という中の「社会的に統合された存在として幅広く理解する」という部分が共通していることがわかります。このように実習の目的と自身の課題の共通点を探してみてください。

ステップ4:ステップ1でチェックしたシラバスや実習要綱に沿って自分がやりたい看護を言語化する

ステップ3までで、自身の課題や実習で何を学びたいかを整理できたら、ステップ1のシラバスや実習要綱に立ち戻り、自分の目標や課題と関連させた看護実習目標を考えます。以下はその一例です。


対象者とのコミュニケーションを通じて、疾病が社会的役割や発達課題に与える影響を把握する。対象者の疾病受容過程を阻害する因子を理解し、疾病からの回復・社会復帰に必要な知識やスキルを身につけられるような援助をおこなう 。

目標は一度設定して終わりではありません。4つのステップを活用し日々の実践を振り返ることで、実習の目的や目標と自分の課題や看護観を踏まえた、より具体的かつ継続性のある 目標が設定できるでしょう。ぜひ、今日から看護実習目標の設定に活用してください。

看護実習目標を設定する5つのポイント

看護実習目標を設定するためのステップが理解できたでしょうか。次は設定するうえでのポイントを5つに分けて解説します。

ポイント1:過去の目標を参考にカスタマイズする

実習先や対象年齢が変わっても看護実習目標には共通点があります。過去の目標を参考に、実習の目的や目標、対象者に合わせた表現にカスタマイズしましょう。

(例)

<ベースとなる目標>

対象者の日常生活を通して、健康上の問題点や発達課題を把握し、個別性に応じた看護実践が展開できる。

<慢性期実習の場合>

慢性疾患を抱える対象者が、社会生活を営むうえでの問題や課題を聴取し、解決に向けた看護計画を設定・実践する

<急性期実習の場合>

疾患が対象者に与える身体的・社会的・精神的な問題や課題を聴取し、解決に向けた看護計画を設定・実践する

ポイント2:目標は細分化する

前述の慢性期実習や急性期実習の目標では、実習でどのように行動するかが明確になっていません。そのため、行動計画や看護計画の設定・実践が困難です。以下の例のように目標を細分化すれば、行動が明確になり行動計画や看護計画が立てやすくなるでしょう。

<慢性期実習の場合>

(例1)慢性疾患を抱えて生きる対象者が、社会生活を営むうえでの問題や課題を カルテから情報収集する

(例2)慢性疾患を抱えて生きる対象者が、社会生活を営むうえでの問題や課題について どのように捉え考えているかを聴取する

ポイント3:評価可能な目標設定をする

看護実習目標は、達成基準が明確で、指導者から見て評価しやすいものである必要があります。ポイント2で挙げた例1の場合は、カルテからの情報収集ができれば目標が達成できたと評価できます。

例2の場合は、患者とコミュニケーションを図り病気や生活についての思いを聴取できれば目標が達成できたと評価できるでしょう。看護実習目標を細分化することで、評価しやすい目標設定になるのです。

ポイント4:継続性・発展性のある目標を設定する

ポイント2で挙げた目標は、今後の看護計画の設定や実践、患者教育に繋げることができる継続性・発展性のある目標です。具体的には、以下の例が挙げられます。

  • カルテ及び対象者から聴取した情報をもとに、疾病の受容のプロセスを明らかにし、阻害する因子を把握する
  • 疾病の正しい知識や退院後も継続可能な自己管理能力を身に着けることができる ように、血圧測定と自己管理手帳の記載を指導・実践する

ポイント5:他人の真似はNG

最後に紹介するポイントは「真似をしない」ということです。看護実習目標には自らの看護観や学習課題を盛り込む必要がありますが、他人の真似をした目標は、自分自身の課題が反映されていないため、実践に移しづらいものになってしまいます。評価者である指導者から看護実習目標を設定した理由を問われても答えられない、実習計画と実践に一貫性がなくなってしまうという可能性もあります。

参考にしたい看護実習目標があった場合は、あくまでも考え方や書き方の参考程度に留め、自分の看護観や課題を反映した目標を設定しましょう。

例文で解説!シーン別看護実習目標

看護実習目標は実習の日数や学年、実習の領域・対象年齢に応じた目標の設定が求められます。ここからは、ベースとなる看護実習目標をもとに、シーン別の看護実習目標を例文付きで紹介します。

<ベースとなる目標>

対象者の日常生活を通して健康上の問題点や発達課題を把握し、個別性に応じた看護実践が展開できる

例文:実習日数別看護実習目標

実習1日目

  • 病棟・病院オリエンテーションを受け、機能や特徴、地域で担う役割を理解する
  • 病棟で働くスタッフの1日の流れや、患者の生活リズムを把握する
  • 対象者の日常生活を把握し、疾病や治療が患者に与える身体的・精神的・社会的な影響を把握する

実習2日目以降

  • オリエンテーションで理解できなかったことを質問し、理解を深められる
  • 患者が困難に感じていることや悩んでいることを知ることができる
  • 患者が疾病の受容過程を歩み、社会に復帰するために必要な疾病や治療の正しい知識、スキル獲得の程度を把握する

実習最終日

  • 患者のバイタルサインを正確に測定し、指導者さんに報告できる
  • 正しい方法で血圧を測定する目的や理由を理解し、患者自らが実践し自己管理ができる

実習日数別の目標は、まずは患者の1日の生活や病態を把握し理解を深める目標にしましょう。その後、看護技術や患者教育の実践に必要な目標に細分化していくと、実践・評価がしやすくなります。

例文:領域別看護実習目標

内科系

  • 慢性疾患を抱える患者の生活習慣や価値観・社会的役割を理解し、病気と共に生きていくうえでの課題や問題点を把握する
  • 病気と療養を両立するために、必要な知識やスキルが獲得できるような看護計画を立案する

外科系

  • 手術が患者の生活や身体的・社会的・心理的に与える影響を把握する。術後合併症や観察項目を調べ、患者の状態を理解する
  • 手術によるボディイメージの変化が、患者の精神面に与える影響や問題を把握し、適切な病気の受容段階 と行動ができるような看護計画を立案する

急性期

  • 日々変わる患者のバイタルサインの変動や状態の変化について、指導者の支援を受けながら適切に理解できる
  • この先の変化を予測しながら、患者にとって負担や苦痛の少ない心地のよい看護支援が提供できる

小児看護

  • 疾病が患者の発達課題や成長に与える影響を把握する
  • 制限された療養生活の中で発達課題をクリアし、疾病を抱えながら心身が成長できる支援を検討する

精神科

  • 心身の健康に課題を抱える患者のプライバシーや尊厳・権利を尊重しながら、コミュニケーションや生活支援を通し患者との信頼関係を築く

地域看護

  • 生活の場で療養する患者とその家族が「どのようにありたいか」という点に着目し、患者や介護者の精神的・身体的な問題や課題、阻害因子を把握する

領域別実習目標を設定する際には、それぞれの領域ごとの患者や疾患の特性を理解し目標に反映させる必要があります。いずれの実習でもまずは患者の状態の把握と理解に関する計画を立てるとよいでしょう。

自分の学びと看護を深められる看護実習目標を設定しよう

看護学生にとって、看護実習目標の設定は実習時に避けて通れない日々のハードルです。今回紹介した4つのステップや目標設定のポイントを理解し、自分の学びや看護を深められるような看護実習目標を設定し有意義な実習にしましょう。

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【参考】

1)看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン.P25 – 厚生労働省

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執筆者情報

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小田 あかり

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大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。