【2025年版】看護実習目標の立て方と領域・シーン別例文を紹介
最終更新日:2025/07/01
看護実習の際には看護実習目標を設定する必要があります。これは実習評価に関わる大切なポイントですが、何を書けばよいか迷う学生も少なくありません。そこで今回は、看護実習目標の立て方のコツを解説します。進行別や領域別の看護実習目標の例文も紹介するので参考にしてください。
目次
看護実習目標とは
看護実習(基礎Ⅰ・基礎Ⅱ・領域・統合)は学年ごとに段階を追って行われますが、実習にあたっては毎回目標(看護実習目標)を立てることになります。この看護実習目標とは、看護学生が実習を通してどのような学びを得たいかをまとめたものです。実習全体を通した大きな学びや習得目標となる「実習目標」と、その達成のために日々の行動を具体的に示す「行動目標」に分けられます。
なお、実習中に立てる目標には「看護目標」もありますが、看護目標は患者さんの回復や生活の質向上のために看護の方向性やゴールを明確にしたもの。看護実習目標とは位置付けが異なりますので、その違いを下記にまとめました。
看護実習目標と看護目標の違い
| 種類 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 看護実習目標 | 実習 | 実習を通してどんな学びを得るかを明確にする 以下に分けられる 1.実習目標:実習の全体目標 2.行動目標:その日の目標 |
| 看護目標 | 患者さん | 患者さんの回復を目指すために行う看護についての目標 |
目標設定はなぜ重要?

目標設定は、実習の学びを深め、気づきや成長を促すためには欠かせません。看護実習では、実習ごとに実習目標を立て、そこから日々の行動目標を設定し、実践後に振り返りや修正を行うというサイクルを繰り返します。
このサイクルによって、行動に目的意識が生まれ振り返りがしやすくなるため、学びが深まり自己成長につながります。学生時代では気づきや成長が特に重要になりますが、看護実習においても目標設定から振り返りまでの過程や目標の達成状況はその評価に反映されるでしょう。
看護実習目標でチェックされるポイント
看護実習目標は、実習の学びを深めるための目標設定になっているか、指導者や先生によって特に以下の点を重点的にチェックされます。
- 実習の目的に沿っているか
- 達成基準が明確で評価しやすいか
- 自分自身の課題と結びつけられているか
- 患者さんと自分の個別性が組み込まれているか
看護実習では、領域ごとに学ぶべきテーマが決められているため、目的に沿った評価しやすい具体的な実習目標を立てることが重要です。また、受け持ち患者さんや自己課題は人それぞれ異なるため、患者さんが主体になっているか、自分の課題にあった行動目標を設定しているかもチェックされるポイントでしょう。
看護実習目標の立て方【4ステップ】
看護実習目標は下記の4ステップで設定します。
- 実習の目的・目標をチェックする
- 自分の課題を振り返る
- 実習目的と自己課題の共通点を見つける
- 看護実習目標を設定する
ここでは、基礎看護実習を例に、実習目標の立て方をステップごとに解説します。そのほかの領域の実習目標や行動目標も同じ流れで立てられるので、参考にしてください。
ステップ1:実習の目的・目標をチェックする
学校で配布されるシラバスや実習要項には、実習で学ぶべき「目的」と、目的を達成するために具体的にどんなことが実践できるようになるのかという「目標」が記載されています。下記は、いくつかの実習要項をもとに作成した、基礎看護実習(Ⅰ・Ⅱ)の目的の例です。
基礎看護実習の目的(例)
- 患者とのコミュニケーションを通して、日常生活の制限や健康障害がある人を総合的に理解する
- 患者の健康障害が生活に及ぼす影響を踏まえ、必要な日常生活援助を考えて実践できる基礎的能力を養う
学校によっては、実習要項に実習の進め方や評価方法が記載されている場合もあります。実習要項は目的だけでなく内容すべてを熟読し、学びの方向性を理解しておきましょう。
ステップ2:自分の課題を振り返る
これまでの授業や実習を振り返り、課題を整理します。指導者や先生からのフィードバックや自分が深めたい、伸ばしたいと感じた点を振り返り、課題を明確にしましょう。課題は具体的な内容でピックアップしておくと、次のステップがスムーズになります。
フィードバックをもとに設定した課題(例)
患者さんの表情や反応を観察しながら、コミュニケーションがとれていました。次の実習では生活背景や価値観、発達課題にも意識を向け、患者像を捉えられるようになりましょう。
<自身の課題>
患者さんの話をよく聞くよう心がけていたが、共感することで会話が終わってしまうことが多かった。相手の生活や大切にしていることを引き出す質問ができず、深い理解にはつながらなかったと感じた。
ステップ3:実習目的と自己課題の共通点を見つける
実習の目的と自分の課題の共通点を見つけ、実習で学びたいこと、解決したい課題を抽出します。
例えば、ステップ1で確認した基礎看護実習の目的には「患者を総合的に理解する」とあり、ステップ2の課題では「患者さんの生活背景や発達課題まで理解するのが難しい」と感じているため、この「総合的に理解する」という部分が実習目的と自己課題の共通点となります。この共通点を見つけることで、実習の学びの方向性と自分の成長の目標が重なり、自分自身に意味のある目標を設定できます。
ステップ4:看護実習目標を設定する
ステップ1〜3をもとに、看護実習目標を文章にします。ポイントは、実習目的に沿って自分の課題を解決できるような目標を具体的に書くことです。
実習目的をクリアするために、何のためにどのようなことをするかという視点で考えると書きやすくなります。良い例と悪い例を比較してみましょう。ここでは、基礎看護実習の実習目標を例として示します。
基礎看護実習の実習目標の例
患者を総合的に捉え個別性に合った日常生活援助を判断するために、コミュニケーションを通して患者の生活背景や価値観を理解する
・ 実習目的「患者理解」「日常生活援助」と合致している
・ 自身の課題「患者さんの生活背景や発達課題まで理解するのが難しい」に対応している
・「どのようになるために何をする」という根拠と到達目標が明確
患者と積極的に関わり、コミュニケーションをとる
・ 実習目的との関連性がない
・ 抽象的で何を達成したいのか不明確
【最新】看護実習目標の具体例│領域・シーン別で紹介
ここからは看護実習目標の具体例を紹介します。領域別の実習目標例から、行動目標に活用できる実習の進行度別の目標例まで紹介するので、参考にしてください。
【領域別】実習目標の例
ここでは、基礎看護実習から統合実習まで、領域別に実習目標例をまとめました。成人看護実習は急性期・慢性期・回復期の医療機能別で紹介しています。
基礎看護実習
- 患者の療養生活を理解するために、病棟の特徴と看護師の役割を理解する
- 患者を身体的・精神的・社会的に理解するために、患者と家族を尊重したコミュニケーションを図る
- 安全・安楽な日常生活援助を実施できるようになるために、コミュニケーションやカルテから得た情報をもとに患者に必要なケアを考える
領域実習:成人看護実習(急性期)
- 急性期患者の状態変化を把握するために、バイタルサインや全身状態の観察結果と検査・カルテ情報を統合してアセスメントする
- 回復を促進し、患者のセルフケア能力を高められるようになるために、健康状態や欲求段階の変化に合わせた安全・安楽なケアを実践する
- オペ室見学を通し、周術期前中後の病棟と手術室看護の連携や役割の違いを理解する
領域実習: 成人看護実習(慢性期)
- 慢性疾患を抱える患者の生活習慣や価値観、社会的役割を理解し、生活するうえでの課題を把握する
- 患者一人ひとりに合った援助を実践できるようになるために、慢性疾患が生活にもたらす影響とセルフケア能力をアセスメントし、個別性を踏まえたケアを立案・実施する
領域実習: 成人看護実習(回復期)
- ADL拡大や日常生活の自立支援ができるよう、回復過程にある患者の疾患や身体的健康状態を把握し、生活背景を踏まえた看護を考えて実施する
- 退院カンファレンスを見学し、在宅復帰のための看護や他職種との連携を理解する
領域実習: 老年看護実習
- 高齢者の身体的・精神的特徴を理解し、健康維持と患者のニーズを捉えた個別性に合わせた看護を実践する
- 高齢者福祉施設の見学を通して、全身状態に合わせて病院や施設でどのような看護が実践されているか違いを理解する
領域実習: 母性看護実習
- 観察やコミュニケーションを通して妊産褥婦の身体的・精神的変化を理解する
- 地域における医療と母子保健の実際を知り、看護の役割を理解する
領域実習:小児看護実習
- 療養生活のなかで患者が発達段階に合わせた成長ができるよう、疾病が発達段階や成長に与える影響を理解し看護を検討する
- 年齢に応じた発達の特徴を理解するために、保育園実習を通してさまざまな発達段階の子ども等とコミュニケーションをとり観察する
領域実習:精神看護実習
- 患者との人間関係を築くために、心身の健康に課題を抱える患者の権利や価値観を尊重したコミュニケーションをとる
- 精神疾患の特徴を理解し、個別性に合わせた生活支援を行う
領域実習:地域・在宅看護実習
- 保健・福祉・医療の連携の実際を知り、地域包括ケアシステムにおける看護師の役割を理解する
- 地域で療養・生活する患者がその人らしく暮らせるよう、患者や介護者の精神的・身体的な問題や課題、生活背景や信条に配慮したケアを実践する
領域実習:統合実習
- 複数患者を受け持ち、チームメンバーと協力しながら優先順位を考慮したケアを実践する
- 24時間看護における看護師の役割を理解するために、夜勤実習を通して夜勤看護師の仕事内容や日勤看護師との連携方法を観察する
【進行度別】行動目標の例
行動目標は、実習の進行度によって設定のポイントが異なります。ここでは、実習初日や看護計画立案後など、実習の進行度別に行動目標の例を紹介するので、参考にしてみてください。
◯ 実習初日
- 病院と病棟の機能や看護師の役割を理解するために、病棟で働くスタッフの1日の流れや患者の生活リズムを把握する
- 患者の全体像を把握するために、コミュニケーションやカルテにより身体的・精神的な患者の情報を収集する
実習初日は、オリエンテーションとして施設の概要やその領域実習の注意点について説明を受けることがほとんどです。領域の特徴を理解し、施設や病棟の概要を把握することを目標にしてみましょう。状況によっては受け持ち患者さんが決定することもあるため、情報収集に関する目標も立てておくとよいでしょう。
◯ 看護計画を立てる前
受け持ち患者さんが決定し看護計画を立てるまでには、アセスメントするための情報収集が必要となります。老年看護実習であれば高齢者の特徴を理解するなど、その領域ごとに理解すべき目的を意識しながら、患者さんの全体像を把握するための目標を設定しましょう。
◯ 看護計画を立てた後
- 患者の清潔を保ちながら気分転換ができるよう、デイルームに移動し足浴を実施する
- 脱臼を予防しながらADLの拡大ができるように、良肢位を説明したうえで車椅子への移乗を見守り介助しながら、患者の理解度を確認する
看護計画立案後はその計画に基づいて看護を実践するため、その日に行うケアに対する行動目標が中心となるでしょう。患者さんの個別性も含めた目標設定を意識しましょう。
看護実習目標を設定するときのポイント
ここからは、実習目標や行動目標を設定するときに気をつけたい4つのポイントを解説します。
実習目標を踏まえて行動目標を細分化する
実習全体の目標である実習目標を達成するためには、日々の目標である行動目標を正しく設定する必要があります。最終的な実習目標の達成につながるよう、行動目標を細分化して考えましょう。
実習目標を達成するまでの過程 ※老年看護の場合

例えば「老年期の健康障害を理解し、個別性に合った看護を実践する」という実習目標を立てた場合、それを達成するための行動目標として、老年期の理解、看護計画の立案、看護実践などが必要です。さらに看護計画を立案するためには、アセスメントが必要となり、アセスメントするためには情報収集が必要になります。
評価できる目標設定をする
目標設定は、達成基準が明確で評価可能な内容にしましょう。評価基準が明確であれば、何をすべきか自分自身もわかりやすくなります。
慢性疾患を抱えて生きる患者が、社会生活を営むうえでの問題や課題についてどのように捉え考えているかを聴取する
✕ 悪い例
患者の価値観や尊厳を大切にしたコミュニケーションを図る
良い例では、患者さんとコミュニケーションを図りその考えが聴取できれば目標達成と評価できますが、悪い例はどこまでコミュニケーションをとれば目標達成するのかが明確ではありません。評価基準を明確にするコツは、看護実習目標を細分化し、より具体的な目標を立てることです。
目標の達成度を評価し継続・発展させる
行動目標は、実践後にどの程度達成できたかを評価しましょう。「どの程度達成できたか」「どこに課題が残ったか」を整理し、課題が残った部分は実践方法を再検討して目標を設定します。達成できた場合は、実習目標により近い段階の行動目標に発展させて目標設定することで段階的に学びが深められます。
目標に個別性を組み込む
目標設定は、他人の目標や例文をそのまま真似するのではなく、必ず「個別性」を反映させましょう。ここでの個別性とは、患者さんの個別性と、学習課題など自分の個別性です。
患者さんの個別性が反映されていない目標では、質の高い看護には結びつきません。また、他人の真似をした目標は、自分自身の課題が反映されていないため、実践に移しづらいものになってしまいます。
今回紹介した例文や他人の目標は参考程度に留め、自分の受け持ち患者さんの個別性と自己課題を反映した目標を設定しましょう。
看護実習目標によくある悩み・Q&A
ここからは、看護実習目標に関するよくある悩みを紹介します。
Q:目標が思いつかないときはどうすればよい?
Q:受け持ち患者さんが不在の場合の行動目標は?
Q:行動目標が同じような内容になってしまうときの対処法は?
ポイントをおさえて看護実習目標を設定しよう
看護実習で学びを深めるためには、自分なりの実習目標や行動目標を設定し、主体的に取り組むことが大切です。「目標設定→実践→振り返り→評価」のサイクルを繰り返すことで、確実に自己成長へとつながっていきます。目標設定に苦手意識があっても、ステップに沿って繰り返し取り組むことで、適切な目標を立てられるようになるはずです。ぜひポイントを押さえて、自分に合った目標を設定し、有意義な実習にしましょう。
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【参考】
文部科学省:新たな看護師等養成カリキュラムに対応した指導の手引き(2025年4月17日閲覧)
文部科学省:看護学教育モデル・コア・カリキュラム(2025年4月17日閲覧)

