看護実習記録の書き方|行動計画・看護過程をスムーズに書くコツとは

看護実習記録の書き方|行動計画・看護過程をスムーズに書くコツとは

最終更新日:2025/03/28

看護実習で学んだことを整理し、理解を深めるために大切な看護実習記録ですが、なかには実習そのものよりも記録に苦労する看護学生もいるようです。今回は、看護実習記録の種類とそれぞれ書き方のポイントを解説します。実習記録をスムーズに書くコツも紹介するので参考にしてください。

看護実習記録とは

看護実習記録とは、看護学生が実習中に実践した内容や学んだことを書き記すものです。記録する目的としては、実習で学んだことや体験したことを言語化して自分の思考プロセスを可視化すること、指導者からのアドバイスにより自分の考えを見つめ直して思考や看護観を深めることなどが挙げられます。

また、看護実習記録は看護師になってから取り組む看護記録にもつながるもの。看護記録を書かなければならない医療現場は多く、学生のうちから看護実習記録をしっかり書くことは、看護師という職業への理解を深めることになるでしょう。

看護実習記録は大きく分けて3種類

医療現場で用いられる看護記録は主に看護過程を記載しますが、看護実習記録では看護過程のほかに行動計画・実習目標、学びレポートも書くことになります。

名称や細かな内容は学校によって異なりますが、記録する内容はほとんど変わりません。ここではそれぞれの記録の内容や目的を解説します。

1.行動計画・実習目標

行動計画は、実習時の1日の行動を計画としてまとめたもので、自分の行動を確認し実践するために作成します。計画は、患者さんや病棟の1日のスケジュールを把握したうえで、患者さんに必要なケアと自分が学びたいことの優先順位を考えながら立てるようにします。行動計画は指導者や教員に確認してもらうことが多いため、アドバイスを受けながら学びを深めていきます。

実習目標は、実習全体の目的やその日の目的を書き記したものです。日ごとに目的を明確にすると、やるべきことがはっきりして評価もしやすくなります。

2.看護過程の記録

看護過程の記録は、患者さんに提供する看護のプロセスをまとめたものです。実習の看護過程の記録は以下の内容で構成されます。

  • アセスメント・関連図
  • 看護診断
  • 看護計画
  • 看護の実施(経過記録)
  • 評価

看護過程の記録では、患者さんの病歴や治療内容、そのほかの身体的・精神的・社会的な情報から必要なケアを導き出します。さらに、アセスメントした内容を根拠に看護を実施・評価するプロセスを繰り返すことで、患者さんの状態に合わせた看護を実践するという目的もあります。

3.実習の学びレポート

実習の学びレポートは、実習を振り返って、設定した目標に対して評価できる点や課題、学んだことなどをまとめたものです。学びレポートは、自分自身の客観的な振り返りや課題を見つけるほか、看護観を深める目的があります。

【実習記録の書き方】それぞれのポイントまとめ

ここでは実習記録の種類別に、書き方のポイントを解説します。

行動計画と実習目標のポイント

行動計画と実習目標を書くポイントをそれぞれ解説します。

行動計画:患者さんを中心にスケジュールを立てる

行動計画を書くときは、受け持ち患者さんの検査や治療の予定を把握し、患者さんの日課や体調などを考慮することがポイントです。対象となる患者さんが第一優先であることを忘れずに、病棟スケジュール、実習チームのスケジュール、自分が学びたいことなどを踏まえてスケジュールを立てなければなりません。

検温や保清、リハビリテーションやカンファレンスなど、すでに決まっている予定を先に書き出し、余白となる時間に患者さんに行いたいケアや実習目標を意識した活動予定を組み込むとよいでしょう。

実習目標:実習の目的と自分の課題を意識して設定する

看護実習は領域別に学ぶべき目的が設定されているため、その目的に沿って実習目標を立てる必要があります。また、課題は人によって異なり、同じ人でも経験の段階によって変わってくるため、実習の目的を理解したうえで自分の課題を振り返り、実習目標を立てることが大切です。

実習目標を設定する手順や例文は、次の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

看護過程のポイント

看護過程は、以下の手順で書きます。

  1. 情報収集
  2. アセスメント・関連図を書く
  3. 看護診断を決める
  4. 目標と看護計画を立てる
  5. 実践した内容の経過記録を書く
  6. 評価する

書くときに意識したいポイントは、次の3つです。

1.:情報収集は優先順位をつけて行う

実習中の限られた期間内で患者さんの全身状態を把握し、個別性に合わせた看護過程を記録するには、効率的な情報収集がカギとなります。必要な情報を整理し、優先順位を考えて情報収集を行いましょう。

なお効率的に情報収集するコツは、あらかじめカルテや看護記録の内容を把握し、不足している情報のみを患者さんに確認することです。

下記の表では、どの情報をどのような方法で集めるとよいかについてまとめました。ぜひ参考にしてください。

情報収集の方法 得られやすい情報
カルテ・看護記録 ● 現病歴・既往歴
● 検査内容・結果
● 医師の指示と治療内容
● 実施されている看護の内容
● 夜間の患者さんの様子
患者さんの観察 ● バイタルサイン・全身状態
● 身体的・精神的訴え
患者さん・家族とのコミュニケーション ● 生活背景・社会背景
● 退院後の希望
● 家族の生活

2:患者さんの全体像を把握してアセスメントし関連図を書く

アセスメントの内容と関連図は、患者さんの身体的、精神的、社会的な状況を全体的に把握するために書きます。書きやすいところから書いていくと内容に偏りが出る場合があるので、患者さんの情報を整理し、全体像を把握してから書き始めましょう。

とくに関連図は、やみくもに書き始めると全体像がわかりにくくなってしまいます。付箋などで情報を整理してから書くことをおすすめします。

ナース専科ではアセスメントガイドとして、看護理論別にアセスメントのポイントや看護過程の書き方を解説しています。情報ページは会員限定コンテンツとなっているため、ぜひ会員登録してアセスメントガイドを活用してみてくださいね。

アセスメントガイド

参考:ナース専科 就職

患者さんのゴールを設定した看護計画を立てる

看護目標や計画は、その患者さんのゴールを設定して立てることが大切です。例えば、もともと少食の人に対して年代ごとに決められた一般的な食事摂取量を目標にして看護計画を立てても、個別性に添った看護にはなりません。

患者さんの病状や治療方針、生活背景や価値観を考慮して問題点を洗い出し、それらの看護問題に対して患者さんのゴールがどこなのかを明確にしましょう。参考書などに書かれている基本の看護計画をベースに設定したゴールの視点を組み込んで考えると、看護計画が作成しやすくなるはずです。

学びレポートを書くポイント

学びレポートを書くポイントは、実習中の体験からの学びを今後の課題や看護観に結びつけることです。たくさん書けばよいというわけではありません。実習中の経験をただ書き並べるのではなく、具体的なエピソードを挙げて学びを示し、看護観や課題につなげるようにしましょう。また、実習の目的から外れた学びになっていないか、伝わりやすい文章になっているかをチェックすることも大切です。

看護実習の学びレポートの書き方は、次の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

実習記録をスムーズに書くコツ

ここでは実習記録をスムーズに書くコツを解説します。行動計画や看護過程を書くために、実習前後や実習中に意識しておきたいポイントをまとめたので、参考にしてください。

記録の目的を理解しておく

実習記録を書くコツは、それぞれの記録の目的を理解しておくことです。目的を理解しておけば、書くべき内容や、何から取り組めばよいか優先順位がはっきりします。

また、それぞれの記録の目的を理解したうえで書き進めていけば、どのような情報が不足しているか、行動計画に何を盛り込むべきかが明確になり、書きやすくなるでしょう。

こまめにメモを取る

記録をスムーズに書くためには、意識してこまめにメモを取るようにしましょう。メモがあれば、実習中の出来事を忘れて記録が書けなくなったり、誤った情報を記録してしまうことが防げます。また、メモを取る際には、感じたことやアセスメントしたことを一緒に書きつけておくと、さらに書きやすくなるはずです。

メモには日付を記入し、時系列で振り返られるようにしておきましょう。実習に慣れてきたら、記録用紙を意識してメモを取ってみるのもおすすめです。

シラバスや文献を活用する

学校のシラバスには学ぶべき内容や実習の到達目標が書かれています。シラバスを参考にするとその実習で何を学び、アセスメントや行動目標に反映させるべきかが明確になり、実習記録も書きやすくなります。自分の学校のシラバスや看護実習要項は、読み込んでおきましょう。

また、看護過程や関連図に関する文献では看護展開のパターンが解説されているため、看護診断や計画を書く際の参考になります。看護領域や症状、疾患別のものなどが多数出版されているので、いろいろな文献を参考にしながら、患者さんの個別性を考慮して看護過程を書いてみてください。

先生や指導者から積極的に意見をもらう

先生や指導者からの指摘や意見は、成長するきっかけにつながります。積極的に質問し、学びを深めましょう。アドバイスを素直に受け取って自分のものにしていけば、看護師になってから看護記録を書く際にも必ず役立ちますよ。

実習記録の書き方でよくある質問

ここでは看護実習記録の書き方に関するよくある質問を紹介します。

Q:実習記録の表現は敬語や丁寧語にするべき?

基本的に敬語や丁寧語は不要です。看護過程は、看護の根拠となる思考を書き記し、実践した内容の証明や情報共有をすることが目的なので、簡潔にわかりやすく書きましょう。

行動計画や学びレポートを書く際も一般的に敬語や丁寧語は不要ですが、不安な場合は学校の先生に相談してください。箇条書き形式は不可、カンファレンスなどの発表時は敬語や丁寧語を使用するなど学校によってルールが異なるかもしれません。

Q:個人情報はどの程度考慮すべき?

実習記録は病院外に持ち出すため、個人情報の取り扱いには最大限の注意が必要です。記録物には個人名を使わず「Aさん」など仮名で記載する、メモであっても個人が特定されないような表現を用いる、記録は紛失しないように管理するなど配慮を徹底しましょう。

多くの学校では、個人情報の取り扱いについて注意すべきことの説明があるはずです。学校のルールに従い、個人情報の取り扱いには十分に注意しましょう。

Q:看護師になってもたくさんの看護記録を書くの?

看護師が医療現場で実際に書く看護過程は、簡素化されたものや、電子カルテのシステムを利用したものがほとんどです。実習記録のように行動記録や学びレポートはありません。書き方は病院によってさまざまですが、あらかじめ決められたフォーマットに則って書くことが多いでしょう。

看護実習記録は、基本に則って記録を書くよい機会になります。実習記録は書くことが多くてなかなか終わらないと感じる人もいるかもしれませんが、書くことで思考を整理したり、根拠に基づいた看護を考える機会にもなるため、たくさん書いて学びを深めてみてくださいね。

コツをつかめば実習記録も悩まない!

看護実習記録には、行動計画・実習目標、看護過程、学びレポートの3種類の記録があり、それぞれに書く目的が異なります。その違いと書き方のポイントを理解したうえで取り組むと、スムーズに書くコツもつかみやすくなるでしょう。実習記録には苦戦する場合もあるかもしれませんが、書くために考えること、考えたことを言語化する経験は看護師になってから必ず役に立ちます。指導者のアドバイスも積極的に取り入れて、前向きにトライしていきましょう。

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参考

日本看護協会:看護業務基準,2021年改訂版(2025年1月25日閲覧)

日本看護協会:看護記録に関する指針(2025年1月25日閲覧)

執筆者情報

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柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。