アセスメントガイドロイ編 役割機能様式

このチャプターは社会における他者との関係の在り方、役割やその変化に対する反応、すなわち役割機能システムを扱います。チャプター11では、一次的・二次的・三次的役割に関連するアセスメント項目をまとめました。
一次的役割とは年齢、性別、発達課題に起因する役割のことをいいます。二次的役割とは発達段階と一時的役割にともなう課題をその人が達成すべきだとみなす役割のことをいいます。三次的役割とは一時的、もしくは本人が自由に選べる役割のことをいいます。
※アセスメントガイドの内容はあくまで一例です。必ず実習で受けもつ患者さんや通っている学校での授業・教科書・指導などに合わせた情報収集を心がけましょう。とくにこのチャプターでは、基準値などをもとに評価することができません。

一次的役割

[一次的役割]年齢(発達課題)

年齢(発達課題)について

年齢は、出生からの経過年数のことです。人間には、健全で幸福な発達をとげるために各段階(年齢)で達成する必要のある発達課題というものがあるといわれています。次の発達段階へスムーズに移行するため、各発達段階で習得すべき課題と達成する意義がありますが、課題については各研究者・提唱者によってさまざまであるため、その内容は多岐にわたります。教育心理学者のロバート・J・ハヴィガーストが発達課題について最初に提唱しました。

患者の年齢から現在の発達課題を知ることで、正常な発達過程を達成しているか、課題を抱えているかが推測できます。

情報収集の項目例

  • 年齢に合った発達課題を達成できているか
  • 役割や周囲との関係に見合った年齢的発達がみられるか
  • 年齢に合った他者とのコミュニケーションが行えているか
  • 疾患・治療にともなう役割の変化に対し、年齢に見合った対応ができているか

※エリクソンの心理社会的発達理論やハヴィガーストの発達課題理論などを用いてアセスメントをします。年齢に応じた課題を達成している場合、正常な発達をとげていると考えられます。(エリクソンやハヴィガーストの各発達課題はあくまで一例なので、学校で使われている理論を参考に情報収集をしましょう。)

エリクソンの心理社会的発達理論

エリクソンの心理社会的発達理論では、「成功のみが賞賛されているわけではなく、不成功もそれなりに経験する必要性がある」といわれており、両者を統合したものが正常な成長に寄与します。また、前段階の発達課題は次段階の発達段階の基礎になります。

時期 年齢 発達課題 得られるもの 補足
乳児期 ~1歳 基本的信頼vs不信感 希望 基本的信頼感を獲得できたら、今後出会うものを信じることができ「希望」を得られる。基本的信頼感を得られなかった場合、常に不信感を抱く
幼児期 ~6歳 自立性vs恥・疑惑 意思 自ら行動し自立性を得ると、自立性の基盤となる「意思」を得られる。自立性が得られなかった場合、疑惑を抱く
学童期 ~12歳 勤勉性vs劣等感 有能感 得意・不得意を自覚し目的を達成していく勤勉性を獲得すると、「有能感」が得られる。勤勉性が得られなかった場合、劣等感を抱く
青年期 ~18歳 アイデンティティの確立vs役割の拡散 忠誠 自身の人間性をある程度確信すると、アイデンティティが確立される「忠誠」が得られる。アイデンティティが確立できない場合、自分が何者かわからなくなる(役割の拡散)
成人期 ~40歳 親密性vs孤独 職場や家庭で役割・責任を担い、同性や異性との親密性を獲得すると「愛」を得られる。親密性が獲得できない場合、孤独を感じる
中年期 ~60歳 生殖vs停滞 世話 子育てや職場の後進育成など、次世代に貢献すること(生殖)で「世話」を獲得できる。生殖が獲得できない場合、他者との関係が減り自己満足・自己陶酔に陥る(停滞)
老年期 60歳~ 自己統合vs絶望 英知 自分の人生を回顧し受け入れること(自己統合)ができると、「英知」を獲得できる。自己統合が獲得できない場合、さまざまな衰えに対する絶望を抱く

ハヴィガーストの発達課題理論

ハヴィガーストの発達課題理論では、「発達課題とは、人生のそれぞれの時期に生ずる課題で、それを達成すればその人は幸福になり、次の発達段階の課題の達成も容易になるが、失敗した場合はその人は不幸になり社会から承認されず、次の発達課題の達成が困難になる」といわれています。

時期 年齢 発達課題
乳幼児期 1~6歳
  • 食べる、話す、排泄するなどの学習
  • 善悪の区別、良心の学習 など
児童期 6~12歳
  • 同じ年頃の仲間とうまく付き合う学習
  • 読み書き計算の基本的技能の学習 など
青年期 12~18歳
  • 男性または女性としての社会的役割の獲得
  • 両親や他の大人からの情緒的自立
  • 身体的変化を受け入れて身体を有効に使うこと など
壮年期 20代~30代前半
  • 就職、配偶者の選択、結婚、子どもの養育
  • 適切な社会集団の発見 など
中年期 30代後半~60歳
  • 大人としての市民的・社会的責任を達成すること
  • 一定の経済力を確保し、維持すること
  • 配偶者と信頼関係で結びつくこと
  • 生理的変化を受け入れ、適応すること
  • 老年の親の世話と順応 など
老年期 60代以降
  • 肉体的な強さと健康の衰退への適応
  • 引退と収入の減少への適応
  • 同年代の人と明るい親密な関係を結ぶこと
  • やがて訪れる死への準備と受容 など
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※このページは、有資格者の現役看護師が学生時代の実習と臨床経験にもとづいて作成したアセスメントシートで、あくまで一例です。必ず実習で受けもつ患者さんや通っている学校での授業・教科書・指導などに合わせた情報収集を心がけましょう。
※紹介する検査値の基準値は、LSIメディエンスに準拠しています。