看護学生の実習・就活に必須!正しい言葉遣いと敬語【話し方の例文付き】

看護学生の実習・就活に必須!正しい言葉遣いと敬語【話し方の例文付き】

最終更新日:2024/09/02

丁寧な言葉遣いや正しい敬語は、社会人としての最低限のマナーです。実習や就職活動が始まると、社会人と関わる機会が多くなります。言葉遣いに自信がない看護学生に向けて、“敬語”に着目して例文を交えながら解説していきます。

就活・看護実習前に正しい言葉遣いと敬語を身につける

看護学生は実習で患者さんや指導者さんなど目上の方と話す機会が多いので、正しい話し方と敬語・言葉遣いをマスターしておく必要があります。それらは実習のみならず、就活においてもその先の社会においてもとても重要です。
看護学生のうちから正しい話し方と敬語・言葉遣いを身につけて自然なコミュニケーションができるようになりましょう。

正しい話し方と敬語・言葉遣いとは?

社会では自分の置かれている立場や相手との関係、TPOに合わせた言葉遣いが求められます。友人や家族など気心の知れた人達との日常会話とは異なる言葉遣いを選ぶ必要があります。

敬語・言葉遣いには相手の自尊心や地位を守る意味があります。特に敬語の使い方を間違えると相手に失礼にあたりますし、思いやりや心遣いに欠けた人だと判断されてしまうかもしれません。
また、いきなり敬語を使おうと思っても、なかなかスムーズに出てこないものです。日ごろから正しい敬語を使えるようになりましょう。

敬語は「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種

敬語には「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3つの種類があります。

丁寧語

「です」「ます」のように、丁寧な言葉遣いで相手に敬意をあらわす際に使用する敬語の基本となる言葉遣いです。相手と同等の関係や、丁寧な気持ちをあらわしたときに使います。

尊敬語

目上の人や尊敬する人に敬意をあらわす際に使用します。相手を主語にして、敬意を表したい相手の行動を高めて表現します。

謙譲語

相手に敬意をあらわす際に、自分がへりくだって相手を立てるときに使用します。自分や身内を低くするために自分や身内が主語になります。

敬語を使い分けるポイント

それぞれに、以下のような使い分けのルールがあります。相手と自分の関係性や主語が誰になるかで使い分けるようにしましょう。

敬語の使い分け方

看護学生がよく使う言葉の具体的な使い分け例をまとめました。以下の表を参考に、日常生活でも使ってみるようにしてください。

基本語 丁寧語 尊敬語 謙譲語
行く 行きます いらっしゃる
行かれる
伺う
参る
見る 見ます ご覧になる 拝見する
見させていただく
言う 言います おっしゃる 申し上げる
聞く 聞きます お聞きになる 承る
会う 会います お会いになる お目にかかる

看護学生が間違えやすい敬語・言葉遣いの一覧

ここからは、看護学生が看護実習や就職活動で間違えやすい敬語をまとめました。

「大丈夫です」

「大丈夫」+「です」は、敬語だと思っている看護学生も多いのではないでしょうか。しかし「大丈夫」は「問題ない」という肯定の意味で使用するだけでなく、「必要ない」という否定の意味で使うこともあり、さらに「了承した」という意味で使う場合もあります。
肯定の意味で使う場合に正しい敬語で言い換えると「問題ございません」、否定の意味で使う場合は「必要ありません」「結構です」、了承したことを伝えたい場合は「承知しました」となりますので、注意しましょう。

「ご苦労様でした」と「お疲れ様です」

「ご苦労様」は目下の人に対して使用する言葉です。実習先の指導者さんや医師など目上の人に使用してはいけません。看護実習で患者さんをねぎらうときには「お疲れ様です」を使うようにしましょう。

「大変参考になりました」

「参考」は自分の足しにするという意味があります。相手の知識や経験を自分のために利用するという意味にも捉えられかねません。「大変勉強になりました」が適切な敬語になります。

「自分」「僕」「俺」

敬語では自分に対する1人称は、性別を問わず「わたし」もしくは「わたくし」で統一します。就職活動などでは「わたくし」を用いる方が、より丁寧な印象を与えます。

もっと質問をしたいとき

患者さんや指導者さんの話をもっと聞きたいときにどのような言葉を使えば失礼にあたらないのでしょうか。「聞きたい」の敬語には「お聞きしたい」「伺いたい」「お尋ねしたい」などの言葉があります。
もし上手く使い分けられない方は「もう少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」 「質問してよろしいでしょうか?」などを使うのがおすすめです。

正しい敬語・言葉遣いを事例別に解説

看護学生がよく使う言葉を例に、正しい敬語を事例別に解説します。

事例1:実習編

自称と他称

看護実習などで患者さんやその家族を呼ぶ場面でも、正しい言葉遣いがあります。自称・他称それぞれの使い分けは以下のとおりです。

自称 他称
私共
友人
父・実父
母・実母
夫・主人
妻・家内
息子
御一同
ご友人
お父様
お母様
ご主人
奥様・奥方様
お子様・ご令息
お子様・お嬢様

確認や同意を求めるとき

「よろしかったでしょうか」は患者さんや指導者さんに確認・同意を求めるときに使いがちな言葉です。しかし「よろしかった」という表現が過去形で確認・同意する意味を持ってしまうため「よろしいでしょうか?」が適切な敬語になります。

了承したとき

「了解しました」は丁寧語で、目上の人に対しては失礼にあたります。「承知(しょうち)しました」や「かしこまりました」「承(うけたまわ)りました」を使うようにしましょう。それぞれの使い分けは、以下を参考にしてください。

承知しました 相手からの依頼を理解し受け入れたときに使います。
かしこまりました 承知しましたよりも丁寧な言葉です。
目上の人から何か依頼されたときに使います。
承りました 相手の意見を聞き、誰かに伝えるときに使います。

同意をしめす「相づち」

同意するときに使いがちな 「うん」「なるほど」という「相づち」は、いずれも敬語ではありません。
相手を肯定するときには「おっしゃる通りです」。相手を肯定し自分も共感するときには「私もそのように思います」を使うようにしましょう。

依頼に対応することが難しく断るとき

何かを依頼されて断るときに使いがちな「できません」は敬語ではありません。敬語で上手に断るときには「できかねます」「致しかねます」などと言い換えるようにしましょう。

また断りを入れる際には、相手の意思や意見を受け止める必要があります。「そのようにお考えなのですね」「そのように感じていたのですね」といった共感の言葉をつけ足し、「大変残念ですが」「せっかくのお申し出なのですが」などのクッション言葉と組み合わせると相手へ柔らかい印象を与えることができます。

謝罪するとき

謝罪するときに使いがちな「ごめんなさい」「すみません」は敬語ではありません。「ごめんなさい」は口語表現でくだけた印象を、「すみません」はやや稚拙な印象を与えてしまいます。

謝罪するときはミスやトラブルの程度に合わせた言葉遣いが必要です。具体的には、以下のような使い分けがあります。

謝罪のレベル 使い分けのポイント
お詫びの気持ちを表現する 申し訳ありません
お許しください
失礼いたしました
反省しております
お詫び申し上げます
軽い謝罪では失礼な相手やトラブルのとき 大変失礼いたしました
ご迷惑をおかけいたしました
お詫びの言葉もございません
申し訳ございませんでした
自分に全ての非があり、相手には一切の責任がないとき 猛省しております
謹んでお詫び申し上げます
心より謝罪いたします
弁解のしようもございません

事例2:就職活動編

「拝見する」と「見る」

相手から受け取った書類などを確認する場合は「拝見します」という謙譲語を使いましょう。

「貴院」と「御院」

敬語では相手の病院や施設のことを「貴院」「御院」とあらわします。状況に応じて、以下のように使い分けます。

「貴院」:資料や履歴書などに書くときに使う
「御院」:面接など直接話すときに使う

院長など目上の相手の敬称

「院長様」や「看護部長様」のように役職に「様」はつけません。会話の中では「○○院長」「○○看護部長」もしくは「院長の○○様」「看護部長の○○様」と呼ぶのが正しい言葉遣いです。役職のない相手は「○○さん」「○○様」と呼びましょう。

正しい敬語・言葉遣いで気を付けたいポイント

二重敬語に注意

丁寧に話そうとするあまり、1つの言葉で敬語を重ねて使用してしまうことを二重敬語といいます。具体的には以下のような例があります。

誤「何時ごろお戻りになられますか?」
正「何時ごろお戻りになりますか?」「何時ごろ戻られますか?」

誤「お召し上がられますか?」
正「召し上がりますか?」

誤「ご覧になられました」
正「ご覧になりました」

例のような「お○○なる」と「○○られる」はどちらも尊敬語にあたります。誤って同時に使用しないよう注意してください。

口癖が出ないように注意

緊張したり、焦ったりしたときに出てしまうのが「口癖」です。具体的には「えーっと」「うん」「やっぱ」「マジ」「超」などが挙げられます。口癖は無意識に出てしまうだけでなく、話が聞き取りにくくなり、稚拙な印象を与えます。

口癖は日常的に意識することで改善できます。身近な人に協力してもらい、自分の癖を客観視して改善しましょう。

クッション言葉を使う

クッション言葉は、表現を柔らかくするときにも活用できる言葉です。看護実習や就職試験で活用できるクッション言葉をシーン別にまとめたので、参考にしてください。

<依頼するとき>

  • 恐れ入りますが
  • お手数をおかけしますが
  • ご都合がよろしければ
  • お忙しいところ申し訳ありませんが
  • ご面倒でなければ

<断るとき>

  • せっかくですが
  • あいにくですが
  • 申し訳ありませんが
  • 心苦しいですが
  • ご意向に添えず
  • 恐縮ですが

<ものを尋ねるとき>

  • 失礼ですが
  • ご迷惑でなければ
  • 差し支えなければ
  • お伺いしたいことがあるのですが

<援助を申し出るとき>

  • もしよろしければ
  • 私にできることがあれば

正しい言葉遣いと敬語は患者さんとのコミュニケーションに不可欠

患者さんに安心を与える効果がある

丁寧な言葉遣いや正しい敬語には誠実さや人柄、気遣いなど相手に好印象を与え、安心させる働きがあります。また、一定レベルのマナーが身についていると判断され、相手からの信頼を得やすくなります。

相手に声をかけるときは名前を呼ぶ

日常生活で親しい人に声をかけるときに使う「 ねぇ」「あの…」などの言葉は、正しい言葉遣いではありません。相手への尊敬やマナーという点から、相手に声をかけるときは「○○さん」と呼びましょう。「様」付けをしている場合は、実習先のルールに従いTPOに応じた言葉遣いを心がけてください。

正しい敬語・言葉遣いは社会人の基本マナー

看護学生になり、以前よりもさまざまな年齢や経歴の社会人と接する機会が増えたという人がほとんどでしょう。多くの看護学生は、正しい敬語・言葉遣いを使う経験が不足した状態のはずです。
看護学生時代から正しい敬語・言葉遣いを理解して使いこなせるようになれば、実習や就職活動で困ることがありません。社会人としてのコミュニケーションにおける基本マナーを身につけましょう。

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執筆者情報

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小田 あかり

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大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。