【看護観とは?】レポート・面接で活用できる例文を紹介
最終更新日:2025/07/22
看護観は、看護師としての在り方や姿勢を支える大切な土台です。就活の面接や学校のレポートなどでもよく問われるテーマで、自分自身の看護に対する考えを明確にする作業が求められます。今回は、看護観の書き方や、レポートや面接で活用できる例文を解説します。看護観を就活・実習に活かすためのポイントも紹介するので参考にしてください。
看護観とは
看護観とは「患者さんにどのような看護を提供したいか」という看護に対する個人の考え方や価値観を言葉にしたものです。主に看護師として大切にしている思いや信念、理想の看護師像などを表します。
看護観が大切な理由
看護観が大切なのは、患者さんへの看護の在り方や仕事への向き合い方の土台となるためです。例えば、「患者さんの苦痛を緩和したい」という看護観を持っている人は、患者さんの話を傾聴して精神的苦痛の緩和に努めたり、スピーディーな処置で身体的苦痛を最小限にできるよう看護技術を磨いたりするなど、それが自然に日々の業務に結びついていくようになるでしょう。
また、理想の看護師像を持っておくと、どのような看護師を目指したいかを考える手がかりになり、モチベーションの維持にもつながります。このように、明確な看護観は、看護師として自分らしく働くための軸になるでしょう。
看護観に正解はなく経験で変化する

看護観は、その人の性格や人生観に加え、実習や看護の経験を重ねるなかで変化していくものであり、正解はありません。そのため、正しい答えを探すのではなく、大切にしたい看護や理想の看護師像について自分がどのように考えているかを明確にし、それを言語化することが大切です。
看護観は、経験を通して得た気づきをもとに見直すことも必要です。看護師になると看護観を言語化する機会が減ってしまうため、学生のうちから定期的に自分の看護観と向き合うとよいでしょう。
看護学生が看護観を考える意義とは
看護学生時代は、レポートや採用面接などで看護観を問われることがあります。では、なぜ看護師になる前から看護観を考える必要があるのか、ここでは看護学生が看護観を考える意義や、そのメリットについて解説します。
自己成長につながる
看護観を考えることは自己成長を促す大切な機会になります。看護観には明確な正解がなく、言葉にするのも容易ではないため、看護師になってからも「看護とは何か」について悩むことは少なくありません。経験が浅い看護学生であれば、なおさら難しく感じられるでしょう。
それでも、看護学生のうちから自分が大切にしたい看護について問い続けることが、人としての成長を促し、看護師として働くうえで欠かせない人格形成につながっていくはずです。
実習時に活かされる
看護観を考えることは、実習の学びを深めるうえでも大切な役割を果たします。患者さんにどのような看護が必要か、自分はどのような看護を提供したいのか、看護観を軸に目標や計画を考えられるようになり、主体的に実習に取り組めるようになるからです。
また、実習中に患者さんとの関わりで戸惑いを感じたり、患者さんへの看護で悩んだりした経験を通じて、自分の看護を振り返り、さらに看護観を深めることができるでしょう。
就活時に役立つ
学生のうちから看護観と向き合っていると、就活のさまざまな場面で活かすことができます。例えば、自分が大切にしたい看護が明確になっていれば、「どのような病院でどのような看護がしたいか」という視点で志望先を選ぶことができるでしょう。
また、採用面接で問われやすい「どんな看護師になりたいですか?」という質問に対して、自身の看護観を軸に自信を持って自己アピールできるはずです。
【3ステップでできる】看護観の考え方・書き方
ここからは、3つのステップによる看護観の考え方や書き方を解説します。
【1】自分の目指す看護をもとにテーマを決める
看護観のテーマを決める際には、印象に残っている体験や夢中になったことを振り返るとヒントが見えてきます。日常生活や患者さんとの関わりのなかで記憶に残っていることや、実習中によく考えていたことなどを深掘りしてみましょう。
下記にテーマを見つけるための質問リストをまとめたので、自分自身に問いかけてみてください。特に印象に残る出来事や気になる問いがあれば深掘りしていきましょう。
振り返り質問リスト
- 実習で心に残った患者さんとのエピソードは?
- 患者さんに「もっとこうしたい」「こうすればよかった」と思ったことは?
- 学校で学んだことで興味を持った分野や夢中になったことは?それはなぜ?
- これまでに人を支えた、または支えられた経験は?
- 人と関わるときに大切にしていることは?
- 看護師を目指したきっかけは?
看護観のテーマを決めるポイントは、自分が何をしたいかではなく、患者さんにどのような看護を届けたいかという視点を意識することです。看護観は、あくまでも患者さんが主役であることを忘れないようにしましょう。
【2】伝わりやすい構成を組む
文章にする前に構成を考えておくと、より伝わりやすい看護観になります。構成を考える際は「結論→理由→具体例→結論・要点」の順で組み立てるPREP法を活用するのがおすすめです。最初に結論を述べてから、具体例を交えて理由を説明していくことで、わかりやすく説得力のある文章になります。
- Point (結論・要点):自分の看護観
- Reason (理由):その看護観をもつ理由
- Example(具体例):具体的なエピソード
- Point (結論・要点):看護観と看護師になってからの目標
【3】自分の言葉で文章にまとめる
構成が決まったら、文章にまとめます。ポイントは自分の言葉で具体的に書くことです。ここでは、無理に難しい表現や専門用語を使うのではなく、自分が感じたことや考えたことを自分の言葉で表現するようにしましょう。どのような看護師になりたいのか、どのような看護を患者さんに届けたいのか素直に書くことで、あなただけの看護観が伝わる文章になります。
【パターン別に考える】看護観の例文集
こここからは、テーマのパターン別に看護観の例文を紹介します。
実習経験から得た看護観
テーマ:『患者さんに寄り添った声かけを大切にしたい』
終末期の実習では、肝性脳症による意識障害によって開眼や発語など自発的な反応がみられない患者さんを受け持ちました。はじめは、声かけやケアに対する反応がないことに戸惑いましたが、学校の授業で人間の五感のうち最後まで健全に機能するのは聴力だと習ったことを思い出し、日々の挨拶やケア前後の声かけを積極的に続けました。すると、実習終了日に「ありがとうございました」と感謝を伝えたとき、患者さんが「ありがとう」と微かな声で返してくださいました。
この経験から、どのような状態の患者さんに対しても、その人らしさを尊重し寄り添う姿勢が大切だと学びました。看護師になったら、相手の反応の有無に関わらず、思いを込めた声かけを大切にして、患者さんや家族に安心と信頼を届けられる看護を目指していきたいです。
身近な人や家族の体験から得た看護観
テーマ:『患者さんを支える家族にも寄り添った看護』
私の祖父は脳梗塞の後遺症で寝たきりの状態となり、長期間入院していました。当時、高齢の祖母は毎日欠かさず病院に通い、祖父に昼ごはんを食べさせていましたが、体調が優れず病院に行けない日もあったようです。祖母が病院に来ない日は、祖父も元気がない様子だったと聞きました。
そんな2人を心配した看護師さんが「おばあさまが元気でいることが、ご主人にとって一番の薬です。無理なさらずに過ごしてくださいね」と祖母に声をかけてくださいました。祖母はその言葉に元気づけられ、とても心強かったと話していました。
理想の看護師像から導いた看護観
テーマ:『個別性に合わせた対応力のある看護』
急性期実習で出会った看護師さんから、個別性を見極めてその患者さんに必要な看護を判断するには、対応力が大切だということを学びました。その看護師さんは、退院間近の患者さんと接するときは、穏やかな笑顔で「もうすぐおうちですね」と退院を共に喜びながらも、再発予防の注意点については落ち着いた口調でしっかりと伝えていました。
一方で、病棟内で急変が起こった際には、救急カートの搬入や医師への報告など、素早く的確に動いていました。相手や状況に合わせて言葉や態度、行動を切り替え、看護を提供する姿勢は、まさに「個別性に合わせた対応力のある看護」だと感じました。
学校では個別性を大切にする看護を学んできましたが、それを実践するためには、状況を的確に判断する力や知識・技術が必要だと思います。看護師になったら、患者さん一人ひとりの状況に合わせて最適な看護ができるよう、知識と技術を磨き、対応力を高めていきたいと考えています。
大切にしたい価値観から導いた看護観
テーマ:『笑顔で患者さんに安心してもらう看護』
私は人見知りの性格で、実習で初めて接する患者さんとの会話にも緊張していました。そんな私に患者さんが優しく笑いかけてくれたことで、安心し、一気に緊張がほぐれたことがあります。反対に、無表情や険しい顔の人もいて、そんなときは話しづらいと感じることもありました。そして、患者さんも看護師に対して同じように感じるのではないかと考えるようになりました。
看護師になれば、環境の変化や多くの責任を背負うなかで、笑顔を忘れてしまう場面があるかもしれません。しかし、知識も技術も未熟だからこそ、私に今すぐできることは「笑顔で接すること」だと思っています。患者さんに安心してもらえるような関わりを持つために、いつも笑顔を忘れずに、親しみやすい看護師を目指します。
看護観を考えるときのポイント
ここでは、自分らしく伝わりやすい看護観を考えるときの4つのポイントを紹介します。
患者さんが主体になるよう意識する
看護観は、常に「患者さん主体」で考えることが大切です。看護観とは自分がどんな看護を大切にしたいかを表すものですが、患者さんにどうなって欲しいか、そのためにどう関わるかという視点を持たなければ、押し付けの看護になってしまう可能性があります。
例えば、コミュニケーションを大切にするという目標を設定していたとしても、目の前の患者さんが一人で過ごしたいタイミングに頻繁に話しかけてしまうことは、よい看護とはいえません。「コミュニケーションを通して患者さんにどうなってほしいのか」というような視点を持ち、主役は常に患者さんであることを意識しましょう。
具体的なエピソードを交える
実習や日常生活の実体験をもとに考えると、より自分らしい看護観になります。特に誰かとのやりとりや自分が感じたことなど、具体的なエピソードを交えて表現することで、文章にしやすくなり、説得力や共感も得られるでしょう。
また、実際に体験した出来事について振り返ることは、自分自身の考え方を見直す機会になり、その後の成長にもつながるはずです。
看護観を今後の目標や成長につなげる
看護観として自分が大切にしたい看護がかたちにできたら、それを今後の目標や成長につなげることが大切です。理想の看護師に近づくためには、どのようなことを目標に学び、成長していきたいかをあわせて考えてみましょう。
特に就活において看護観を問われる場合には、志望先病院の特徴や理念と看護観から導かれる自分の目標との共通点を見つけることがポイントです。看護師になってその病院でどのように成長していきたいか、自己アピールにつなげてみてください。
型にはまりすぎない
看護観に正解はないため、誰かの文章をまねしたり、きれいな言葉を並べたりする必要はありません。大切なことは、自分がどう感じ、どう考えたかです。形式にとらわれすぎず、素直な自分の言葉で考え表現することが、自分らしい看護観につながるでしょう。
ベースとなる看護観はぶれないようにする
看護観を考えるときは、自分の軸がぶれないようにすることが大切です。特に、就活で看護観を問われたときには、志望動機と看護観にズレがあると、意思が曖昧でぶれている印象を与えてしまいます。
実習などの経験から看護観が変化することは自然なことですが、考えが定まらず迷いがある場合は、一度自分と向き合い、看護観を言語化する機会を設けましょう。自分のベースとなる看護観を言語化しておくと、どんな場面でも自信をもって自分の考えを伝えることができるはずです。
自分なりの看護観を言葉にしよう
看護観は、一人ひとり違っていて当然で、過去の経験や未来の出来事によっても変化するものです。正解はありません。また、自身の人生観や患者さんとの関わりのなかで、自分なりの看護観を考え言葉にするプロセスそのものが成長にもつながります。看護師になってからも看護観を深める機会はありますが、言語化することは少なくなるため、看護学生のうちにじっくり自分の看護観と向き合い、言葉にしてみてくださいね。
