【看護観の書き方】看護学生がレポート・面接で活用できる例文つき

【看護観の書き方】看護学生がレポート・面接で活用できる例文つき

最終更新日:2024/04/03

看護観はあなたが描く理想の看護師像であり、採用面接や小論文でもよく問われます。看護観は人それぞれ異なり、正解はありません。今回はあなただけの看護観の考え方を解説します。明確になっていない看護学生や今一度振り返りたい看護師の方はぜひ参考にしてください。

看護観とは「理想の看護師の姿」

看護観は「自分は患者さんに対してこういう看護がしたい」という、理想の看護の姿です。看護師は一人ひとり、患者に提供したい看護のイメージを持っていて、そのイメージを大切にしながら看護をおこなっています。

まだ、自分の看護観がわからない看護学生さんもいるかもしれません。この記事を通して、一緒に考えていきましょう。

看護観はなぜ必要?

実習レポートや就職面接などなシーンで問われる看護観。看護学生に看護観が求められる大きな理由は、看護師になったときの実務に活きるからです。また、看護学生のときに描いていた理想の看護師像を忘れないようにするためでもあります。

看護観に正解はなく知識や経験で変化するからこそ、そのときの自分軸で主観的に看護観を考えることが大切です。

経験で変わる看護観

看護観は、実習や日常生活の経験で変化します。看護観に影響を与える代表的な因子には、以下があります。

  • 患者との関わり
  • 医師をはじめとする他職種との関わり
  • 指導者との関わり
  • 家族や友人などの人間関係
  • 自身や身近な人物の病気体験
  • 成功体験
  • 死生観 など

看護観は変化していきます。そのときは気づかなくても、後々振り返えると、看護観に影響を与えた印象的なエピソードであった、ということもあると思います。

私の看護観は経験で変わる

看護学生が描く理想の看護師を設定しよう

看護学生が自身の看護観をまとめる際には「理想の看護師の姿」だけでなく、患者さんとのかかわりのなかで大切にしていることや、意識していること、何か患者さんとの特徴的なエピソードなどを併せて考えるとよいでしょう。

理想の看護師の姿が「やさしい看護師」「患者に寄り添う看護師」などのように、漠然としていても問題ありません。なぜ、「やさしい看護師」「患者に寄り添う看護師」になりたいと思ったのかを掘り下げ、患者さんにどのようなかかわりをしたいのかを、自分の言葉でまとめていきましょう。

記事の後半では、看護観の考え方と例文をあげていますので、ぜひ参考にしてみてください。

看護観を看護実習に活かす

自分の看護観、つまり理想の看護師の姿を認識して把握できるようになると、目指すべきものが明確になりさまざまなメリットを得ることができます。

実習目標・看護計画が立てやすくなる

「実習目標が立てられない」と悩む看護学生さんはとても多いですよね。実習目標は考えているだけでは、なかなか浮かんできません。そんなときに役立つのが「看護観」です。

看護観は「理想の看護師の姿」であり、「自分が患者さんにこういう看護がしたい」とも言い換えられます。どんなに忙しくても大切にしたいことが、あなたの看護観です。看護観が明確になっていると実習目標が立てやすくなります。

たとえば以下の2つの看護観をイメージしてください。
1)「患者さんに寄り添い、思いを傾聴する」
2)「患者さんの身体的苦痛を取り除き、安楽に配慮する」

この2つの看護観では「精神的ケア」と「身体的ケア」それぞれに注目していて、大切にしたいポイントが異なります。この2つの看護観をもとにした、実習目標の例を以下にあげます。

1)の場合は「患者さんとコミュニケーションをとる時間を持ち、病気に対する思いを傾聴する」、2)の場合は「患者さんの苦痛の原因を考え、安楽な姿勢や環境を調整し、足浴などのリラックス効果が期待できる看護ケアを取り入れていく」となるでしょう。

このように看護観が明確になっていると、実習目標も変わってきます。自分が患者さんにどのような看護を提供したいかが具体的になり、より実習目標が立てやすくなるのです。

就職活動にも看護観は活用できる

就職先を選択する際に

就職先をどうやって選んだらいいか、悩む人も多いかもしれません。
どこの医療機関にも「看護の理念」や「求める看護師像」「新人教育の目標」があります。自分の看護観と大幅にずれていたり、大切にしたい事と違ったりすると、就職してから自分の目指す看護ができないと悩む可能性が高くなります。

自分の看護観と似た理念の病院を選ぶことで、自分の看護を展開しやすくなりますし、より満足感の高い看護師1年目ライフが期待できるでしょう。

病院の理念は、インターンシップや病院説明会を通じて知ることができます。気になる人はナース専科就職ナビから申し込める病院をチェックしてみてください。

履歴書の志望動機や自己PRの手段として

履歴書の志望動機や自己PRに悩むときには、「看護観」を書いてみましょう。看護観を書くことで、自分がどのような看護をしたいのかを、相手に伝えることができます。さらに、将来の目標や仕事に対する意欲・向上心も伝わります。

志望動機には看護観と併せて「看護師になろうと思ったきっかけ」や「なぜこの病院を選んだのか」を記載しましょう。
自己PRでは看護観や過去の経験から、自分の長所をアピールしてください。

また、看護学生が知っておきたい就活のイロハをまとめた「就活のトリセツ」には、病院の選び方や履歴書の書き方について紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
就活のトリセツ

※ナース専科就職ナビより

就職の面接時にも問われることの多い看護観

看護観は看護に対する考えを知るために、面接でよく聞かれる項目です。看護観に影響を与えた患者さんとの印象深いエピソードがあれば、手短に話せるとよいでしょう。

看護観をアウトプットする方法。様々なシーンで使える例文を紹介

ここからは具体的に看護観を考える方法と、レポートや面接で使える例文をご紹介します。まずは以下の3つのステップのように、想像力を働かせながら「理想の看護師の姿」自分なりの看護観を考えていきましょう。

看護観を考えるための3ステップ

ステップ1

あなたの目の前に、一人の患者さんがいます。名前、性別、年齢は、あなたの頭の中でイメージしてください。

イメージができたら、次のステップにすすみます。

ステップ2

「患者さんはなんだか苦しそうです」
この言葉を聞いて、どのような「苦しそうな患者さん」が浮かびましたか? 心臓?呼吸?心?どこが苦しいのでしょう。痛みがあるのかもしれません。つらい処置を受けているのかもしれませんね。

苦しそうな患者さんの理由がイメージできたら、次のステップにすすみます。

ステップ3

「苦しそうな患者さんに、あなたはどのような看護を提供しますか?」
では、浮かんできた看護やかかわりを、メモしてください。

一番はじめに思いついた看護やかかわり、たくさん浮かんだ人はその中で一番大切にしたいことが、あなたが看護師として大切にしたいこと、すなわち「あなたの看護観」です。

苦しそうな患者さんに対して、具体的には、以下のような看護やかかわりが考えられます。

呼吸が苦しそうな患者さんをイメージした場合は、どこが苦しいのか、バイタルサインを測定し、状態を適切に把握する必要があるでしょう。

体に痛みがある、つらい処置を受けていて苦しい患者さんをイメージした場合は、身体的な苦痛を緩和するかかわりが求められます。安楽な姿勢の工夫、鎮痛剤を使用した疼痛コントロールが必要かもしれません。

心が苦しく、話を聞いてほしい患者さんをイメージした場合は、傍で話を聞くことが一番大切な看護です。「ただそばにいてほしい」そんな思いを抱える患者さんの気持ちに寄り添う看護も必要かもしれません。

なにが大切なのか、看護の価値観は人それぞれ。ここで上げたものと違っていても、大丈夫です。看護観は人それぞれで正解はありません。

面接でも伝わりやすい看護観のまとめ方

面接ではとくに、アウトプットした看護観を簡潔に伝える必要があります。PREP法を活用すると自分の看護観をわかりやすく伝えられるので、自分のエピソードを当てはめて文章を組み立ててみましょう。

PREP法とは

PREP法とはビジネスシーンでよく用いられる、相手に伝わりやすい文章を構成する方法のひとつです。以下の4要素の頭文字を意味していて、この順に文章を組み立てることで簡潔で説得力のある文章に仕上がります。

Point (結論・要点):自分がもつ看護観
Reason (理由):その看護観をもつ理由
Example(具体例):実習などで得た具体的なエピソード
Point (結論・要点):自分がもつ看護観と入職後の意欲

レポート・小論文で使える看護観の書き方と例文

看護観を書くときには「何を誰に、どのようにしたいか」と「自分の思いを素直に」という点に注意しましょう。「苦しそうな患者さんの看護観」について、さきほど例としてあげた看護をもとに、例文を考えていきます。

どこが苦しいのか、バイタルサインを測定し、状態を適切に把握する

「人の命にかかわる看護師において、知識と技術に基づいた適切なアセスメントは何よりも重要です。実習の指導者さんがテキパキと急変に対応する姿をみて、正確な知識と技術を持ち、臨機応変に看護を提供できる看護師になりたいと考えています」

痛みがある、つらい処置を受けていて苦しい場合に、苦痛を緩和するかかわりをする

「私の看護観は、患者さんの辛い気持ちに寄り添い緩和できる看護をおこなうことです。痛みは、誰にとっても辛く心地のよいものではありません。ときには、治療への意欲や生きる希望を失わせてしまうものだと、実習で末期がんの患者さんを担当していて感じました。的確なアセスメントと対応だけでなく、心理面にも寄り添える看護師となり、患者さんの心身両面から支える看護師になりたいです」

心が苦しく、話を聞いてほしい患者さんの話を聞く

「看護師さんは忙しそうで声をかけにくい」実習で担当した患者さんの言葉が、私には衝撃的でした。その言葉をきっかけに、患者さんが声をかけやすい看護師でいたいと考えるようになりました。優しく穏やかな雰囲気を持っていれば、患者さんにとっては思いを伝えやすくなりますし、気持ちに寄り添うことができると考えるからです。ノンバーバルコミュニケーションにも配慮した、優しく穏やかな対応ができる看護師になりたいと思っています」

「ただそばにいてほしい」思いを抱える患者さんの気持ちに寄り添う

「一番患者のそばにいる看護師。学生実習では看護ケアに追われてしまっていましたが、患者さんの「あなたがそばにいてくれると安心よ」という言葉で、看護はケアだけでなく寄り添うことも大切だと気づきました。さらに、講義ではエンパワーメントの重要性も学びました。エンパワーメントとは「勇気づける」「生きる力を湧き出させる」などの意味があります。寄り添うだけでなくエンパワーメントができる看護師を目指したいと考えています。」

例文はあくまで、看護観の一例です。「思いつかない」からといって、看護観の例文をまねるのはNGです。看護観は自分が思う「理想の看護師の姿」を、自分の言葉で考えてみましょう。

看護観を研鑽し続けられると看護師として進化し続けられる

看護観はあなたの「理想の看護師の姿」です。いまはまだ漠然としたものでしかないかもしれません。看護観はさまざまな経験で変化していきます。経験はあなたの看護観を唯一無二のものにしてくれるでしょう。

看護観が明確になることで、看護師として進化し続けられ、進みたい道も見えてきます。それは病棟でバリバリ働き師長になることかもしれません。在宅で患者さんとじっくりかかわることかもしれません。さらに認定看護師や専門看護師になることかもしれません。

あなたしか持っていない看護観を大切にして、理想の看護師の姿を追い続けることで、看護師としても成長し続けられるのです。

参考

1)萩野谷 浩美 看護学生が捉えている看護観 医学と生物学 (Medicine andBiology) Vol. 161 (3): i3̲Oj02, 2021

執筆者情報

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小田 あかり

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大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。