看護師もワークライフバランスを充実させたい!実現に向けてできること

看護師もワークライフバランスを充実させたい!実現に向けてできること

最終更新日:2024/01/03

ワークライフバランスを整えることは、イキイキと働き続けるためにとても重要です。では忙しい看護師でも理想のワークライフバランスは叶うのでしょうか?実現するためにやるべきことを解説します。

理想のワークライフバランスとは

ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」のことです。自分が理想とするワークライフバランスを叶えることで仕事とプライベートの両方が充実し、互いに良い効果を生み出せるといわれています。

理想のワークライフバランスは個人の価値観によって異なりますが、今回は看護学生と現役看護師にアンケートを行い、看護学生と看護師が描いている「理想のワークライフバランス」の傾向を調査しました。

看護学生のワークライフバランスの理想

以下はナース専科が看護学生の最終学年に実施した「理想のワークライフバランス」に関するアンケートの結果です。

Q:理想のワークライフバランスの割合を教えてください

アンケートによると、仕事とプライベートの理想の割合は5:5と回答した学生が最も多い結果となりました。看護師になったらどちらも平等にバランス良く働きたいという学生は多いようです。

また2位以降の結果を見てもわかるとおり、個人の考え方によって仕事とプライベートの優先順位は違うものの、どちらかに極端に偏っているのではなく、程よい割合でどちらも大切にしたいと考えていることが伝わります。

現役看護師のワークライフバランスの理想

次に現役看護師を対象に行った「理想のワークライフバランス」についてのアンケート結果です。

Q:理想のワークライフバランスの割合を教えてください

看護学生と同様に、仕事とプライベートの理想の割合は5:5と回答した現役看護師が最も多く、看護師になってからも仕事とプライベートを同じ割合でバランスよく働き続けたいと考える人が多いようです。

一方で2位以降の結果から、看護学生の結果と比べると仕事よりプライベートを重視している人が多いことがわかります。看護師として働き出すと学生のときよりもプライベートを重視する傾向にあるようです。

看護師のワークライフバランスの現状

看護学生、看護師それぞれに理想のワークライフバランスがあることがわかりましたが、24時間勤務の職場が多い看護師は、理想のワークライフバランスを保つのが難しい職種ともいわれています。

そこで現在の職場のワークライフバランスについて現役看護師に調査しました。ここではその結果と考えられる理由について紹介します。

理想と現実にはギャップがある

以下は現役看護師を対象に「現在の職場のワークライフバランスの割合」について調査した結果です。結果からもわかるとおり、上で紹介した理想のワークライフバランスと現実とでは少し乖離がありました。

Q:現在の仕事とプライベートの割合を教えてください。

理想のワークライフバランスとして回答が多かった5:5の割合を叶えられている人は全体の約20%いるものの、一方で半数以上の人がプライベートより仕事の割合が大きいと感じているようです。

また、仕事7:プライベート3と感じている人が全体の約25%で1位、仕事8:プライベート2と感じている人が全体の約13%で4位と、割合が仕事に大きく傾いていると感じている人が多いこともわかります。

理想のワークライフバランスの実現が難しい理由

なぜ、理想のワークライフバランスと現実の働き方とで差が生まれるのでしょうか?ここでは看護師による理想のワークライフバランスの実現が難しいといわれる3つの理由を解説します。

不規則な勤務になりやすいから

看護師の多くは24時間、365日稼働している職場で働いています。その場合、固定の時間や曜日の勤務というよりも、不規則なシフト制勤務になることがほとんどです。

シフトの希望は出せるものの、勤務日程が確定するまでプライベートの予定が立てづらいことや、長期休暇や連休などが取りづらいこと、さらに生活リズムを整えにくいことなどがワークライフバランスの実現が難しいといわれる要因となっています。

人手不足によって忙しいから

看護業界の慢性的な人手不足も看護師のワークライフバランスの実現が難しい理由のひとつです。人手不足の職場は忙しく、休みの調整がしにくい場合があります。

また人手不足により看護師一人あたりの業務量が増えると、残業も多くなり勤務前後の自由な時間が減ってしまいがちです。十分に休息する時間が確保できないと、心と体への負担が大きくなり、結果として理想の働き方から遠ざかってしまう可能性が高いと考えられます。

ライフイベントとの両立が難しいから

看護師の約9割は女性であり、多くのライフイベントを迎えます。しかし、このライフイベントと仕事との両立の難しさもワークライフバランスの実現が難しいといわれる要因となっています。

結婚、出産、育児、子どもの教育、親の介護など、女性はライフイベントによって休みの確保や勤務時間の調整が必要です。近年では理解がある職場も増えてきていますが、働き方によっては仕事と両立することが困難だと考える看護師も大勢います。

また女性が多い職場だからこそ、産休や育休の時期が重なると一時的に人員が減りほかのスタッフへの負担がより増えてしまうこともあるため、お休みをもらうことに難しさを感じる人もいるでしょう。そのほか看護師は知識をアップデートし続けなければならない職業ですが、ライフスタイルの変化によって勉強時間をなかなか確保できない点も、仕事との両立が難しい要因といえます。

看護師は仕事を優先させるべき?

看護師の仕事の特性上、理想のワークライフバランスを保ち続けることは難しいかもしれません。しかし必ずしも仕事を優先しなければいけないわけではありません。ではどのように働くべきか、ここでは看護師が働くうえで大切なことと、ワークライフバランスの叶えるための実際の取り組み事例を紹介します。

自分にあったバランスで働くことが大切

仕事とプライベートが5:5の割合で働くことが正解ではなく、理想のライフワークバランスは人それぞれで異なります。自分の叶えたいキャリアやライフプランを実現できる働き方を目指すことが大切です。

バリバリと働いてキャリアを積み重ねたい人は、仕事を優先させることが理想のバランスと考えられます。しかし、プライベートの時間を重視したいのに仕事が忙しくてつらい人は、疲れだけでなくストレスもたまってしまうでしょう。その状態では患者さんに提供する看護の質にも影響します。

忙しい看護師こそ自分が理想とするライフワークバランスを今一度考え、自分にあった働き方が叶えられるような職場選びを意識しましょう。

推進される看護師の職場改善

日本では仕事と生活の調和が国の活力につながるとして、国によるワークライフバランスの実現が推進されています。

また日本看護協会でも「看護職の健康と安全が、患者の健康と安全を守る」という考えのもと、看護職のワークライフバランス実現を推進しており、多様な勤務形態の導入や待遇改善など、看護師の職場改善に力を入れています。

それに伴い、看護師のワークライフバランス実現に向けた具体的な取り組みを始める病院が少しずつ増えているようです。以下では具体的な取り組み例を紹介します。

ワークライフバランス実現のための取り組み例

ここでは厚生労働省が運営する医療機関の勤務環境に関する情報サイト「いきサポ」より、実際に病院で行われている看護師のワークライフバランス実現に向けた取り組みを紹介します。

事例1:岡波総合病院(三重県)の取り組み

  • 休日数の増加
  • 時間単位の有給の導入

参照:厚生労働省:いきサポ 岡波総合病院 ~看護師のワーク・ライフ・バランス向上の取組み~

上記病院では有給の消化を推進していましたが、取得率にばらつきがあったため年間の休日数を112日から120日に拡大し、職員が休みを確保しやすい職場環境を整えています。また病院受診や子どもの学校事情などで1〜2時間だけ時短勤務したいという看護師の意見から、時間単位の有給を導入。結果的に、看護職だけでなく他部門の職員からも喜ばれているようです。

事例2:松戸市立総合医療センター(千葉県)の取り組み

  • 2・3交代制のミックス勤務を導入
  • 看護補助者による看護師の業務負担改善
  • 就業規則や福利厚生の周知

参照:厚生労働省:いきサポ 勤務形態・業務負担軽減による看護師確保と各種制度の周知

上記病院では、個人の働き方に合わせ2交代と3交代を選択できるミックス勤務を採用。さらに病棟ごとで異なっていた看護補助者の業務内容を病院全体で見直し、明確にすることで看護師の業務負担の軽減につなげています。そのほか、わかりにくかった就業規則などを冊子にまとめ職員に周知することで、特別休暇などの利用率も上がっているそうです。

理想のワークライフバランスを実現するためには

ここからは看護師として理想のワークライフバランスを実現するために、就職活動や入職後にできることを紹介します。

自分の理想のワークライフバランスを明確にする

まずは自分の理想とするワークライフバランスを明確にしましょう。仕事とプライベート、理想のバランスを明確にするために、自己分析することがおすすめです。自己分析により自分の価値観が明確になると、どのようなワークライフバランスで働きたいかのヒントが見えてくるでしょう。

どんな職場なら実現できるか考える

自分の理想とするワークライフバランスはどのような職場で実現可能か考えてみましょう。看護師が働く職場や働き方は多種多様であるため、どのような職場ならワークライフバランスを実現できるかを考えるには、病院の種類や診療科による働き方の違い、勤務形態の違いなどを理解しておくことが大切です。そのうえで自分にあった職場の条件を整理し、重視するポイントを考えてみましょう。

条件をもとに情報収集し職場選びをする

看護師になって理想のワークライフバランスを実現するためには、職場選びが重要です。理想のワークライフバランスと整理した条件から情報収集し、理想に近い職場を見つけましょう。

合同説明会は効率よく複数の病院情報が得られるため、忙しい看護学生にもおすすめです。インターンシップでは説明会では聞けない現場のリアルな意見が聞けることもあるため、気になる病院のインターンシップには積極的に参加してみてください。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビ

看護師になったらオン・オフの切り替えを心がける

看護師になったらオンとオフの切り替えを心がけ、自分自身でもワークライフバランスの実現に努めましょう。新人のうちは慣れない環境で心身ともに疲弊することがあるかもしれません。そんなときは仕事ばかりにとらわれず、しっかり休むことが大切です。自分なりにオンとオフを切り替える方法を見つけ、自分自身でワークライフバランスを保つよう心がけてくださいね。

理想のワークライフバランスが叶う働き方を見つけよう

看護師の仕事は24時間勤務の職場も多く、忙しさから理想のワークライフバランスを実現するのが難しい場合もあります。看護学生のなかには、看護師になってからワークライフバランスが実現できるか不安を感じる人もいるでしょう。

しかし忙しい看護師だからこそバランスの取れた働き方が大切であり、看護師だからといってワークライフバランスが実現できないわけではありません。看護師としてやりがいをもって働き続けるためにも、学生のうちから自分の理想の働き方を理解し、ワークライフバランスが実現できる職場を選びましょう。

参照

日本看護協会:看護職のワーク・ライフ・バランスの実現(2023年11月6日閲覧)

日本看護協会:看護職のワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック(2023年11月6日閲覧)

厚生労働省:いきいき働く医療機関サポートWeb いきサポ(2023年11月6日閲覧)

内閣府:「仕事と生活の調和」推進サイト(2023年11月6日閲覧)

執筆者情報

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柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。