【看護師の勤務形態】2交代制と3交代制の違いからシフト例まで解説
最終更新日:2024/08/27
看護師の勤務形態は、2交代制や3交代制など病院によってさまざまです。それに伴い、月の休日数や夜勤回数も異なります。今回は看護師の勤務形態の種類ごとの特徴と、実際のシフト例を紹介します。看護学生のうちに看護師の多様な働き方を理解しておきましょう。
目次
看護師の勤務形態とは
勤務形態とは、勤務時間や休日数など従業員の具体的な働き方に関する条件のことです。勤務時間や休日が固定されている固定時間制や、勤務時間が変動するフレックスタイム制、変形労働時間制などがあります。
看護師が勤務する職場の勤務形態は変形労働時間制が多く取り入れられていますが、変形労働時間制のなかでも2交代制・3交代制・変則交代制などさまざまな種類があり、病院ごとで異なります。自分の理想の働き方を実現するために、勤務形態について理解しておきましょう。
看護師の勤務形態の種類
ここでは、看護師の代表的な勤務形態の種類とそれぞれの特徴を紹介します。勤務時間は病院により前後する場合がありますが、一般的な例として参考にしてください。
日勤
日勤は昼間に働く勤務形態であり、勤務時間は病院によって異なります。以下が日勤の一例です。
日勤の労働時間
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
---|---|---|
日勤 | 8:00〜17:00 | 8時間 (休憩1時間) |
昼間は検査や診察で人手が必要となる時間帯なので、日勤は看護師の職場でも比較的多い勤務形態といえます。
日勤のメリットは、生活リズムが整えやすいことです。また日勤看護師の人数は多いので、助けあって仕事ができます。
ただし、病院の手術室や外来が稼働している平日は忙しく、急な入院やベッド移動が入ると残業になる場合があります。さらに夜勤手当がないため、交代勤務より給料が下がる可能性も否めません。
交代制
交代制とは、日勤と夜勤を交代で勤務する形態です。看護師の交代勤務は、2交代制と3交代制があります。
2交代制の労働時間
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
---|---|---|
日勤 | 8:00〜17:00 | 8時間 (休憩1時間) |
夜勤 | 16:30〜9:00 | 16時間 (休憩2時間程度) |
2交代制は、24時間を日勤と夜勤の2つにわけて働く勤務形態です。夜勤は16時間程度勤務する病院が多く、3交代制でいうところの準夜と深夜を一度にこなします。
2交代制のメリットは3交代制より夜勤回数が少なく、勤務間の時間が長いのでゆっくりと休めることです。ただし1回の夜勤が長時間になるため、体力面で負担がかかりやすいことがデメリットとして考えられます。
3交代制の労働時間
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
---|---|---|
日勤 | 8:00〜17:00 | 8時間 (休憩1時間) |
準夜勤 | 16:30〜1:00 | 8時間 (休憩1時間) |
深夜勤 | 0:30〜9:00 | 8時間 (休憩1時間) |
3交代制は24時間を日勤・準夜・深夜の3つにわけて働く勤務形態です。1回の勤務時間は7.5〜8時間程度になります。
3交代制のメリットは、1回の勤務時間が2交代制よりも短く身体への負担が少ないことです。その一方で2交代制より夜勤回数が多く勤務間の休みが短いため、人によっては生活リズムを整えにくい場合もあります。
変則交代制勤務
変則交代制勤務は、交代勤務のなかに、長日勤や早番・遅番などが入る勤務形態です。病院のなかには、変則交代制を採用しているところもあります。変則勤務の例は、以下のとおりです。
長日勤の労働時間
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
---|---|---|
長日勤(ロング日勤) | 8:30〜19:30 | 10時間 (休憩1時間) |
夜勤 | 19:00〜9:00 | 12時間 (休憩2時間) |
長日勤は日勤者のうち数名が夕食後まで勤務し、夜勤者と交代する勤務形態です。2交代制夜勤の長時間労働の負担を軽減するために、長日勤を採用している病院があります。
長日勤のメリットは、夜勤時間が短縮して忙しさが増す夕食前後の負担が減ることです。しかし、夜勤の負担が長日勤にかかるので、日中の忙しい時間帯を10時間勤務しなければならない点が負担になる人もいるでしょう。
早番・遅番の労働時間
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
---|---|---|
早番 | 7:00〜16:00 | 8時間 (休憩1時間) |
遅番 | 12:00〜21:00 | 8時間 (休憩1時間) |
早番・遅番は、朝食や夕食前後の忙しい時間にあわせて働く勤務形態です。業務内容は患者さんを受け持たず、フリー業務をする病院が多いようです。
早番や遅番のメリットは、勤務時間前後にプライベートの時間がとりやすいことです。フリー業務なので、精神的に負担が少ないと感じる人もいます。
しかし、早番・遅番勤務は基本病棟内でひとり、勤務交代を頼みにくい、フリー業務がゆえに仕事を多く振られるなどのデメリットもあります。
病院勤務の看護師の約7割は交代制で勤務
以下のグラフは、日本看護協会の「看護職員実態調査」より正規雇用看護師の現在の勤務状況を示したものです。この結果からどのような勤務形態を採用している病院が多いのか分析しました。
上記からわかるように病院勤務の看護師の7割以上が2交代制や3交代制で働いていると回答しています。
さらに、日勤と回答した人のなかには「職場に夜勤はあるが現在はしていない」と答えた人が8.1%、その他と回答した人のなかには「夜勤専従」や「オンコール」と答えた人が4.7%含まれており、実質的に8割以上の病院が交代制を採用していることがわかります。
2交代制と3交代制の違いと割合
つぎに看護師の2交代制と3交代制の違いについて、それぞれのシフト例を比較しながら解説します。また交代制の割合から、現在の交代制勤務の傾向を説明するので、職場を選ぶときの参考にしてください。
2交代制・3交代制のシフト例
以下は2交代制勤務と3交代制勤務のシフト例と1か月の勤務スケジュールを比較したものです。
2交代制・3交代制どちらも、夜勤前には日勤が入る勤務が一般的です。2交代制の場合は、夜勤の翌日は休日になり夜勤明けの9時ごろからはプライベートの時間になります。
3交代制の場合は、日勤→深夜→準夜のサイクルで勤務するので、17時ごろに日勤が終わると深夜に備えて数時間休憩し、日付が変わった0時すぎから勤務開始になります。深夜が明けた9時ごろから、翌日の準夜がはじまる16時ごろまで休み、準夜を終えると休日です。
日本看護協会の「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書」では、病院で働く看護師の1カ月の平均夜勤回数は、2交代制が4.9回、3交代制が7.5回となっています。
どちらの勤務形態も基本的に休日数は同じですが、2交代制は夜勤の勤務時間が長いので、単純に病院に出勤する回数が少なく、3交代制は夜勤が短時間で、病院に出勤する回数が多くなります。
現在は交代制のなかでも2交代制が主流に
引用:2021年 看護職員実態調査、2005年 看護職員実態調査
上記グラフは、日本看護協会の「看護職員実態調査」より、2005年と2021年の病院勤務の看護師の夜勤状況を比較したものです。
2005年は、2交代制が30.4%、 3交代制が69.6%と、3交代制を採用している病院が約7割を占めていました。
しかし2021年では反対に、2交代制が76.4%、3交代制が23.6%で、2交代制を採用している病院が7割以上です。病院の勤務形態は3交代制から2交代制が主流に変化してきていることがわかります。
職場・施設別の勤務形態の特徴
看護師が働く職場や施設によって採用されやすい勤務形態があります。ここでは、職場別の勤務形態の特徴を紹介します。傾向を理解して、病院選びの参考にするとよいでしょう。
総合病院
総合病院は、病棟・外来・オペ室などの配属先により勤務形態が異なります。
病棟
病棟は2交代制または3交代制勤務がほとんどです。ただし、同じ病院内でも病棟により採用している勤務形態が違う場合もあります。早番や遅番の有無も、病棟ごとに決まっている場合が多いでしょう。
外来
外来は、平日の日勤が基本です。土曜診療がある病院では、土曜日も出勤になります。救急外来を受けている病院では、交代制で夜勤や宿直を担当する場合もあります。
オペ室
オペ室はオペが行われる日に勤務するため、平日の日勤が基本です。予定手術がない週末は、オンコール当番制で緊急手術があった場合に対応します。
クリニック
クリニックは基本的に日勤のみで、診療時間にあわせて勤務します。勤務時間や土曜出勤はクリニックによってさまざまです。また入院施設をともなうクリニックであれば、夜勤もあります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、平日の日勤のみの場合が多い傾向にあります。ただし夜間訪問が必要な場合は、時間外の訪問も対応します。24時間緊急訪問に対応している事業所では、夜間や休日はオンコール当番制です。
企業
企業で働く看護師の勤務形態は、平日の9時前後から18時前後まで、完全週休2日制のところが一般的です。職場の例としては、従業員の健康増進を目的に企業に常駐する産業看護師や、健康・医療関係の一般企業などがあります。
ナース専科 就職では看護学生向けの病院情報を掲載しています。希望する勤務形態に絞った検索もできるので、ぜひ参考にしてみてください。
参考:ナース専科 就職
勤務条件を確認するときに知っておきたい労働基準法
ここでは、勤務条件を確認するうえで知っておきたい労働に関する法律を解説します。看護師に限らず働くうえで知っておくべき基本のポイントも紹介していますので、確認しておきましょう。
労働基準法とは
労働基準法とは、労働者の権利を保護する目的で、労働時間・休日・賃金・労働環境など労働全般に関することが定められている法律です。労働基準法の遵守については、労働基準監督署が監督しています。
現在、日本では少子高齢化や働き方の多様化に対応するため、政府による「働き方改革」として、仕事と育児や介護の両立や柔軟な働き方がしやすい環境整備が進められています。
働き方改革では、労働時準法の法改正も行われ、時間外労働の上限規制や割増賃金率の引き上げなどが義務化されました。
看護学生が知っておきたい労働基準法
以下では看護師の勤務形態に関連する労働基準法について解説します。看護学生が入職前に理解しておくとよいでしょう。
労働基準法32条:労働時間
労働基準法32条では、労働時間について以下のように定められています。
- 1日あたり8時間、1週間で40時間を超える労働をさせてはいけない
看護師が働く環境は、24時間対応が必要なこともあり、上記法定を満たせないのが現状です。そのため、変形労働時間制として、1カ月や1年など一定の期間を平均して法定労働時間を満たしていればよいとされています。
変形労働時間制を採用するには、労使協定や終業規則を定める必要があります。
労働基準法 32条:休憩時間
労働基準法32条では、休憩時間について以下のように定められています。
- 1日あたりの労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分以上の休憩が必要
労働基準法では、8時間以上の労働時間に対する休憩のルールは定められていません。そのため、12時間夜勤や16時間夜勤であっても休憩が60分あれば、法律違反になることはありません。
しかし、労働者の健康や安全に業務をすすめる観点から、日本看護協会では「16時間以上の夜勤をする場合は、2〜3時間の休憩時間が望ましい」としています。
そのため、16時間以上の夜勤は、2〜3時間の仮眠時間が設けられている場合がほとんどです。ただし、仮眠時間は休憩時間ではないため、急変などの緊急時は業務に戻らないといけません。
参考:日本看護協会 労働に関するよくあるご質問(6-3.夜勤時の休憩)
労働基準法36条:残業時間
労働基準法36条は、一般的に「36協定」と呼ばれ、残業時間について以下のように定められています。
- 企業は時間外や休日の労働を命じる場合、労働者と書面による協定を結び労働基準監督署に届け出なければならない
病院は、法定労働時間を超えて時間外労働させる場合に、労働基準法36条にもとづき、労使協定(36協定)を締結し、従業員の同意を得なければいけません。
病院は、労使協定により定めている所定の労働時間を超えた労働させる場合、残業手当を支払います。
また2019年からは、労使協定で定める時間外労働時間に月45時間、年360時間の残業時間の上限が設けられています。
労働基準法35条:連続勤務日数
労働基準法35条では、休日について以下のように定められています。
- 毎週少なくとも1回、または4週間を通じ4日以上の休日を与えなければいけない
労使協定(36協定)を結び、変形労働時間制で働いている場合、4週間のうち4日以上の休みがあれば法的に問題はありません。つまり、24日間連続勤務して、4日休めば法律違反にならないということです。
しかし従業員の健康保持や安全配慮の観点から24日連続勤務は現実的な勤務形態ではないので、日本看護協会では、看護師が適切な労働環境で働けるように「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を作成しています。
看護師の働き方改革の取り組み例
看護師の職場においても、働き方改革に関する取り組みがすすめられています。実際に、いくつかの病院で取り組まれている事例を紹介します。
申し送りの時間短縮・廃止
電子カルテによる効率的な情報収集などにより、申し送り時間を短縮または廃止する取り組みです。申し送りにかかっていた時間を短縮することで、業務開始時間を早め、時間内に業務終了をめざしています。
勤務時間前の情報収集の禁止
看護師の前残業廃止のための取り組みです。看護師は、勤務前に担当患者さんの情報収集しておくのが通例とする風潮がありました。
しかし、情報収集も勤務時間にあたるとして、勤務時間内に情報収集の時間を設けている病院もあります。
勤務別ユニフォームの導入
残業時間を短縮するため、日勤と夜勤でユニフォームを2色に色分けする取り組みです。色分けされていることで、本人の定時に仕事を終える意識を高める効果や、ユニフォームの色でどの勤務かわかるため職場内で助けあう意識を高める効果があります。
看護師の勤務形態を理解して理想の働き方を見つけよう
看護師の勤務形態はさまざまな種類があり、病院や施設により異なります。理想の働き方は人それぞれなので、自分に合う勤務形態を見つけることが大切です。それぞれの勤務形態の特徴を理解して、病院選びに役立ててください。
また、看護師の勤務形態に関するルールは病院ごとに異なるため、病院に就職後は自分の職場のルールを就業規則などで確認しておきましょう。