美容看護師とは?仕事内容、採用条件から面接のポイントまで

美容看護師とは?仕事内容、採用条件から面接のポイントまで

最終更新日:2023/12/14

美容外科や美容皮膚科で働く美容看護師は、疾患を対象とする病院とは異なったやりがいがある仕事です。今回は美容看護師の働き方について、勤務経験者の声をもとに解説します。また採用に関するポイントもご紹介しますのでぜひ参考にしてください。

美容看護師とは

美容看護師とは、美しくなるための医療を提供する医療機関で働く看護師のことです。美容ナースと表現されることもあります。

美容看護師が働く職場には美容外科や美容皮膚科があり、大手の美容外科グループから個人経営のクリニックまで様々です。また、美容皮膚科のなかには脱毛など一つのサービスに特化したクリニックもあります。

美容看護師の役割

美容看護師の役割は、施術を通して受診者の「コンプレックスを克服したい」「より美しくなりたい」という願いを叶えるためのサポートを行うことです。そのため、患者さんの健康をサポートする一般診療科の看護師と比べ、美容看護師はサービス業としての特性が強く、接遇スキルやコミュニケーション能力、提案力などが求められます。

一般診療科との違い

一般診療科と美容クリニックの違いは提供する医療の目的が異なる点です。一般診療科はより健康になるために疾患の治療や健康問題を改善するための医療を提供するのに対し、美容医療は外見の美しさを追求するために外科的手術や美容処置を提供します。

また、提供する医療の目的が異なることで、治療費にも違いが生まれます。健康を目的とした一般診療科は診療報酬により料金が定められており、患者さんの医療費負担は1〜3割です。一方、美容を目的とした美容医療は基本的に保険適用にはなりません。

また、美容クリニックは独自に料金設定できる自由診療で、治療内容によっては高額になる場合もあります。受診者の負担額は一般診療より高くなる傾向にあります。

美容看護師の仕事内容・1日のスケジュール

ここからは美容看護師の具体的な仕事内容や1日のスケジュール例を紹介します。

ただし、美容クリニックによって提供する施術メニューや営業時間は様々なので、美容看護師の仕事内容や1日のスケジュールも職場によって違ってきます。その点を踏まえて参考にしてください。

美容看護師の仕事内容

美容看護師の主な仕事内容は3つの分野に分けられます。下記の表は、3つの分野とそれぞれの仕事内容をまとめたものです。

美容看護師の主な仕事内容
外科系の業務 ● 手術の準備や後片付け
● 術中の介助
● 術前説明や術後の受診者のフォロー
皮膚科系の業務 ● 医療脱毛や皮膚治療に関するレーザー照射
● ピーリングなどの薬剤塗布
● 美容に関する注射や点滴
その他の業務 ● 備品や薬剤の管理
● 美容機器や院内設備の管理
● ケア用品などの物販営業
● 受診者のカウンセリング
● 予約対応やクレーム対応
● カルテ記入

美容クリニックは、おおまかに脂肪吸引や豊胸などの美容外科と、脱毛やシミ取りなどの美容皮膚科に分けられます。その両方を提供している総合美容クリニックから、いずれかに特化した専門美容クリニックまで多種多様です。

そのため、美容看護師は外科系なら手術関連の業務、皮膚科系なら機械操作や薬剤塗布など、職場や配属先で携わる仕事内容が大きく変わってきます。

またクリニックによっては、表中の「その他の業務」に記載しているカウンセリングや受診者の予約対応はカウンセラーが担当する場合があります。さらに、美容クリニックはスタッフの年齢層が比較的低い職場が多いため、病院よりは早い経験年数で新人教育や管理業務に携わる場合もあります。

美容看護師の1日のスケジュール

美容看護師は、基本的に日勤のみの勤務で夜勤はありません。ただし、土日や大型連休に来院する受診者が多いため、曜日にかかわらず週休2日でシフト制勤務になる場合が多いでしょう。なかには休日が固定されていたり週休3日制を取り入れているクリニックもあるようです。

ここでは、美容外科および美容皮膚科で働く看護師の1日のスケジュール例をそれぞれ紹介します。細かいスケジュールはクリニックにより異なるため、一例として参考にしてください。

美容外科勤務の看護師の1日

美容外科の1日スケジュール例

美容皮膚科勤務の看護師の1日

美容皮膚科の1日スケジュール例

美容クリニックは、診療開始時間が遅い場合が多く、そのため診療終了が20時以降になるクリニックもあります。診療時間が長いクリニックでは、早番・遅番の勤務形態を採用しているところもあるようです。一方で、予約制のクリニックが多く、残業は比較的少ないでしょう。

その日に担当する受診者は、看護師のレベルに合わせてリーダーが割り当てます。外科系、皮膚科系などチームが分かれている場合は、チームのなかで個々のスタッフの施術可能な範囲を考慮して受診者の受け持ちを決めることになります。

ただし、診療時間内はほとんどインターバルのないクリニックが多く、割り当てられた受診者に次々と対応をするため、予想以上に忙しいようです。

勤務経験者が語る「美容看護師の働き方」とは

ここからは美容クリニックの勤務経験がある看護師の話をもとに、美容看護師のやりがいや給料事情を紹介します。

今回取材した方のプロフィール

Y さん

看護学校を卒業後、大学病院の小児科で1年経験を積んだのち美容看護師へ。脱毛メインの美容クリニックに3年間勤務。その間に新人教育や管理者業務にも携わった。

当時の志望理由や興味の理由

看護学生のときから小児科と美容医療に関心をもっていました。まずは一般診療科の経験を積むために小児病棟を選択しましたが、亡くなる子どもさんがいる現場につらさを感じるようになりました。そのため、健康な方がきれいになるサポートをしたいと思い美容看護師になりました。

営業のスキルやキャリアアップにも興味があったため、美容クリニックのなかでも実力でステップアップできるクリニックを選びました。

入社後の研修内容について

入社後2週間程度は本部での研修やスタッフ同士での施術練習を行います。その後約1カ月間は、教育担当者のもとで現場研修を受けながら少しずつ業務をマスターする流れとなります。

現場研修では、まず1種類の脱毛機の操作からスタートし、実際の施術は一部分だけを担当しました。その後、教育担当者が新人スタッフごとにタイミングを確認し、ほかの部位の施術を任せたり、そのほかの機械操作を教えたりしていました。人によって研修内容をコントロールしていたため、一人ひとり進み具合は様々でした。

入職後3カ月後ぐらいからは、在庫管理や物販営業なども担当するようになりました。ただし、これらのタイミングはクリニックによって異なるため、気になる人は採用時に確認するとよいでしょう。

美容看護師のやりがい・魅力とは

美容看護師のやりがいは、自分自身も美容に対する意識を高めながらお客さまがきれいになるサポートができることです。

美容看護師は、身に付けた美容に関する知識をまず自分自身で実践し、体験談をもとにお客さまにおすすめすることも多いため、お客さまだけでなく自分自身もきれいになっていくことが実感できます。化粧品や一部の施術を社内割引で利用できるのも魅力のひとつです。

また、夜勤がないのでワークライフバランスが整えやすく、一般診療科では身に付けられない営業力や接遇スキルも養えます。さらに、年齢層が比較的低い職場だからこそ若手でも役職につけるチャンスは多く、スタッフ教育やマネジメントに興味がある人はやりがいに直結するはずです。

働くなかで大変だったこと

美容看護師として働くなかで大変だったことは、お客さまの対応です。美容クリニックではお客さまに高額な治療費をお支払いいただくため、それに見合うサービスを提供する必要があります。

技術面はもちろん、接遇面でも高いレベルが求められるため、たとえベストな対応を心がけていたとしてもクレームにつながることがあり、落ち込むこともしばしばありました。一般診療科では求められないことも美容クリニックでは必要不可欠になることがあり、特に敬語や立ち振る舞いは意識することが大切です。

そのほか、美容クリニックはトレンドに対する敏感さや知識のアップデートが求められます。また、看護学校で学んだ領域と異なる知識を働きながらスピーディーに習得する必要があるため、人によっては勉強面で苦労することもあるでしょう。常に学び続けるという姿勢が重要です。

病院勤務のときの条件を比較すると

勤務条件については、一般診療科の病院勤務のときと比較すると、総合的にみて条件は悪くない印象でした。以下で、給料面と勤務形態を比較してみましたが、詳細は職場によって異なります。あくまで参考にとどめてください。

給料・年収面

一般病棟勤務のときと比べ、美容クリニックでは夜勤がなく残業もほとんどありませんでしたが、給料は上がりました。クリニックの規模などによって違いますが、美容看護師の年収は全体的に高めである印象です。私が働いていたクリニックの場合、基本給は少なめでしたが、様々な手当が加算されて年収は500万円ほどでした。

勤務時間・休日面

一般病棟勤務のときよりも残業が減り、夜勤もなくなったため、バランスの取れた生活が送れました。また、職場の勤務開始時間が午前11時からと遅めだったので、朝をゆっくり過ごせるようになり、通勤ラッシュが避けられる点も魅力でした。一方で、年間休日は120日程度と、休日数は一般診療科と大きく変わりませんでした。

持っておくとよい資格や経験

美容看護師になるには看護師免許以外に特に必要な資格はありません。クリニックによっては臨床経験が問われる場合もありますが、必須ではなく、人材不足のときなどは臨床経験が短くても採用される場合があります。

サービス業としての側面もあるため、新卒から美容看護師を目指す場合は、学生時代にアルバイトでの接客経験があると有利かもしれません。

その後のキャリアビジョン

美容看護師としておすすめのキャリアビジョンは、教育担当や管理職として経験を積み、その経験を活かした道を目指すことです。若手でもやる気次第で役職に就くチャンスがあるので、若いうちから管理能力を身に付けることができます。

美容クリニックから病棟や訪問ステーションへの転職を希望する場合、美容クリニックでの勤務期間は臨床経験としては含まれません。しかし、マネジメントやスタッフ教育に携わっていると、そこは経験として評価されるかもしれません。

美容看護師になるには?採用条件と面接のポイントを紹介

ここからは美容クリニックの採用支援に携わっていた人の話をもとに、美容看護師の採用事情を解説します。

近年の美容看護師の採用事情

一般診療科の求人に比べ、美容クリニックの求人数は圧倒的に少ないようです。しかし最近は、全国に美容クリニックが増えてきているため、美容看護師の求人数は増加傾向にあります。ただし、応募者数が多いため、一般病院よりも就職難易度は高めでしょう。

以前は中途採用がほとんどでしたが、最近は一部の大手美容クリニックで新卒採用も行われています。しかし、新卒者向けの研修制度が十分に整っていないなどの理由から、中途採用を優先するクリニックのほうが多いのが現状です。

美容看護師の一般的な採用条件とは?

美容看護師の一般的な採用条件として性別や経験は問われませんが、年齢は30代ぐらいまでの採用が多いようです。ただし、美容外科をメインにしているクリニックでは、1年以上の臨床経験が必要なところもあります。

細かい採用条件はクリニックの規模や提供しているサービスによって異なりますが、経験よりもその人のポテンシャルを重視するクリニックは少なくありません。

美容クリニックの採用試験のポイント

美容クリニックの採用試験は、「説明会、面接1回程度、内定」という流れが一般的で、一般診療科の採用試験とさほど変わりません。面接官は、採用グループの人か、もしくは現場の看護師が担当する場合もあります。

面接では接遇スキルやコミュニケーション能力、美容医療に対する姿勢などを確認することが多く、病院よりも一般企業の採用試験に近いところがあります。そのため。美容看護師に求められる素質を理解し、一般企業向けの就活対策をしておくとよいでしょう。

スタンス(素質)

受診者をより美しくするための美容医療は、病院よりも企業としての要素が強いため、以下のような素質を持つ人が求められます。

  • 素直さ
  • 向上心や学ぶ意欲
  • ポジティブで前向きな姿勢
  • チャレンジ精神
  • キャリアアップ志向

美容クリニックは、習得しなければいけない知識も多く、スピード感のある対応が求められます。そのため、特に向上心やチャレンジ精神が重視されるようです。

求められる経験や知識

臨床経験は問われない場合が多いのですが、外科系や皮膚科系の一部のクリニックでは1年以上の臨床経験が求められることもあります。臨床経験がなくても基本的な看護や手技の知識は必要になるため、看護学校で習得できる知識は積極的に学んでおきましょう。

美容看護師の採用に関するQ&A

ここでは美容看護師の採用に関するよくある質問にお答えします。

新卒から美容看護師になるのは難易度が高い?

新卒採用をしているクリニックは多くないため、難易度は高いといえます。また、新卒から美容看護師になると、その後別の領域に転職する際に「臨床経験なし」と捉えられ、新人としてキャリアを再スタートしなければならない可能性もあります。新卒から美容看護師を目指す人は、その後のキャリアプランも考えて選択することが大切です。

一方で、美容クリニックはキャリアアップや給料アップのチャンスが巡ってきやすい職場でもあります。一般診療科で学べないスキルも身に付くため、美容看護師になりたい気持ちが大きければぜひ挑戦してください。美容が好きな人にとっては、自分の好きなことを仕事にできる職業でもあるでしょう。

採用面接で問われやすいことは?

面接では、美容看護師を選んだ理由や看護師としてのキャリアビジョンなどが問われやすいでしょう。さらに、美容看護師は専門の知識を常にアップデートしなければならないため、勉強に対する姿勢や取り組み方など、学生時代の学習意欲を聞かれることもあります。

髪色やネイルは自由?

ネイルは外科系の施術を提供しているクリニックでは禁止されている場合がほとんどです。サービス業としての接遇を重視するため、髪色が規定されているクリニックも珍しくありません。詳細は各クリニックの求人情報に記載している場合が多いので、気になる人は確認してみてください。

持っておくとよい資格は?

看護師免許は必須ですが、そのほか特に必要な資格はありません。クリニックによって習得したい知識も異なるため、採用試験前や入職するまでは、知識を身に付けるよりも敬語や立ち振る舞いなどを見直しておくとよいでしょう。

クリニック選びで注意すべきポイントは?

新卒から美容看護師を目指している人は、クリニックの新卒採用実績を確認しましょう。過去に新卒採用の実績があるクリニックのほうが、新人の教育制度やフォロー体制が整っている可能性が高いと考えられます。

また、クリニックによっては物販や売上に貢献するとインセンティブがつく場合もあります。ノルマやインセンティブは、モチベーションになる人もいればストレスになる人もいるため、クリニック選びの際に確認しておくとよいでしょう。

美容看護師はイメージ以上に体力を使う仕事です。入職後のギャップを防ぐためにも、気になるクリニックが説明会やインターンシップを開催している場合は積極的に参加してみてください。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビ

美容看護師から病棟看護師や訪問看護師にはなれる?

美容看護師から病棟看護師や訪問看護師への転職は可能ですが、転職先によっては条件を選べない場合もあります。実際に美容看護師として働いていた人のなかには転職時に苦労した人もいます。

しかし、以前よりも美容看護師に対する理解が深まっているため、美容看護師から病棟や訪問看護への転職は不可能ではありません。ただし新卒から美容看護師になった場合、病棟や訪問看護とは仕事内容が大きく違うため、転職時には新人としての再スタートになることを覚えておきましょう。

美容看護師を目指す人は志望先にあった就活対策を

美容看護師は新卒からでも目指せますが、求人数は少なく、難易度は一般病棟よりも高い傾向にあります。また、新卒から美容看護師を目指す場合、その選択は後のキャリアにも少なからず影響するので、キャリアプランしっかり考えておくことが大切です。美容看護師は一般診療科では学びにくいスキルや経験が得られるため、キャリアを考えたうえで目指したいという人はぜひ挑戦してみてください。

なお、美容クリニックの採用は一般企業の採用に近いため、志望先に合った就活対策が必要です。学校生活での頑張りも評価のポイントとなるため、積極的に勉強や実習に取り組みましょう。

参考

日本美容外科学会:美容外科の手術(2023年10月31日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。