【看護師の福利厚生】病院選びで比較するときのポイントは?

【看護師の福利厚生】病院選びで比較するときのポイントは?

最終更新日:2024/03/28

看護師に働きやすい環境を提供するための福利厚生。看護学生が病院の求人を見る時にチェックしたい条件のひとつです。今回は福利厚生の種類から比較ポイントまで解説します。病院ならではの福利厚生も紹介するので職場を選ぶ際の参考にしてください。

福利厚生とは

福利厚生とは、雇用主である企業や病院が賃金とは別に従業員に提供する報酬です。金銭が支払われるものから、家族を含む従業員の健康・生活の向上につながるサービスが得られるものまであります。

福利厚生の目的は、従業員の生活やキャリアを充実させることで、人材の定着や従業員のモチベーションを上げることです。福利厚生はさまざまな種類があり職場によって異なります。

「福利厚生」は看護学生の病院職びにも重要

福利厚生は看護師になった後の働きやすさにもつながるため、看護学生が病院を選ぶときの判断材料になり得ます。看護学生が福利厚生をどのように捉えているか、ナース専科のアンケート調査をもとに分析しました。

志望病院の福利厚生が気になる看護学生は6割以上

看護学生が資料請求・説明会で知りたい情報

「資料請求で知りたかったこと」と「合同就職説明会で知りたかったこと」に関するアンケートでは、病院概要・教育体制に次いで、6割以上の看護学生が福利厚生と回答。待遇面に関する給料や、看護部の理念、病院の雰囲気などを上回る結果でした。

アンケート結果からもわかるように、福利厚生は多くの看護学生が職場を選ぶときの基準になっているといえるでしょう。

看護学生が理解すべき福利厚生の種類

福利厚生にはさまざまな種類があり、就職先によって内容も異なります。福利厚生の内容を比較する前に、まずは福利厚生の種類と仕組みを正しく理解しておきましょう。

福利厚生は大きく分けて2種類ある

福利厚生は、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに分けられます。2つの違いは、以下のとおりです。
法定福利厚生と法定外福利厚生の説明

法律で義務化されている「法定福利厚生」

法定福利厚生とは、法律によって企業に義務づけられている福利厚生を指し、以下のようなものがあります。

種類 内容 費用負担の割合
健康保険 病気やけがの治療費を軽減するための公的医療制度 企業と従業員が折半
厚生年金 国民年金の上乗せとして企業で働く従業員が加入する公的年金制度 企業と従業員が折半
雇用保険 従業員が失業した場合に失業給付金の給付や再就職を支援する制度 法律により企業と従業員の負担率が決められている
労災保険 業務中の病気やけがに対する保険 全額企業が負担する
介護保険 介護サービス料金の負担を軽減するための保険制度
40歳以上の人は加入が義務付けられている
企業と従業員が折半

参考:厚生労働省「労働保険料の申告・納付」

    厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」

病院や企業独自の「法定外福利厚生」

法定外福利厚生とは、法律で定められておらず病院や企業が任意で設定する福利厚生です。自社で独自の法定外福利厚生を運用している場合と、さまざまな法定外福利厚生を取り揃える福利厚生運用代行会社などに外部委託している場合があります。

病院や企業が独自の法定外福利厚生を設ける理由は、働きやすさをアピールして優秀な人材を獲得するためです。そのため法定外福利厚生は従業員にとって、働きやすさや働くメリットの指標になるといえます。そのため福利厚生のなかでも法定外福利厚生の内容をチェックするとよいでしょう。

病院が提供する「法定外福利厚生」の例

ここからは病院が提供する法定外福利厚生の一例を、目的別で紹介します。

収入サポート関連の法定外福利厚生の例

収入のサポートにつながる福利厚生は、手当として給料と一緒に支払われるものから貯蓄をサポートするものまであります。

住宅補助制度

住宅補助制度とは従業員の住まいに関する補助制度です。賃貸物件の家賃や、持ち家のローンの一部を定額で負担してくれる場合や、病院が所有している物件を社宅として相場より安い家賃で貸し出す場合があります。

なかには、赴任旅費や引っ越し手当として、入職にともなう引越し代を負担してくれる病院もあるようです。ほとんどの病院では「月額〇〇円まで」や「社宅は独身のみ入居可」など、補助の条件が決まっています。

通勤手当

通勤手当とは通勤費の負担を軽減する制度です。自宅から職場までの通勤方法により、電車・バスなど公共交通機関の運賃や、車・バイクのガソリン代が距離に応じて支給されます。病院ごとに補助のルールが決められており、月額の上限が設定されていることが多いようです。

家族(扶養)手当

家族手当とは、扶養している家族や子どもがいる場合に、給料とは別に支給される手当です。扶養手当や子ども手当などの名称で支給されることもあります。扶養家族ひとりにつき金額が決まっている場合や、第一子は10,000円、第二子は5,000円など条件がある場合もあるので、詳細を確認しましょう。

財産形成手当

財産形成手当とは従業員の資産づくりを支援する制度です。財形貯蓄制度ともよばれ、給料から天引きされるかたちで提携先の金融機関に資金を積み立て、計画的な貯蓄を支援します。財産形成手当にはいくつか種類があり仕組みも異なるため、利用時は退職時の手続きや払い出し方法を確認しておきましょう。

食事補助制度

食事補助制度とは勤務中の食事に関する費用を補助する制度です。昼食代の一部を負担するものや、提携先の飲食店で割引が使えるものなどさまざまあります。病院では、安い金額で院内食堂を利用できる場合が多いでしょう。院内食堂では、その日の病院食と同じ献立を提供する場合や、従業員用の別メニューを提供する場合もあります。

ライフワークバランスをサポートする法定外福利厚生の例

ライフワークバランスをサポートする法定外福利厚生は、勤務時間外を含めた従業員の生活の質の向上を目的とした制度です。

慶弔/災害関連制度

慶弔金制度は、従業員の結婚・出産・死亡などのときに、お祝い金やお見舞い金を支給する制度です。長期間勤務した従業員に対し、永年勤続表彰を支給する病院もあります。災害補償制度は、災害や事故がおきたときに、従業員や家族を支援する制度です。どちらも頻繁に利用することはありませんが、あると役に立つ福利厚生のひとつでしょう。

育児介護支援制度

育児介護支援制度とは、従業員の育児や介護をサポートする支援制度です。保育料や介護費用の補助、院内保育所の設置、育児休暇の延長などが主な内容です。大規模な病院では、夜勤勤務の看護師のために、24時間託児所や、発熱した子どもも預けられる病児保育が可能な託児所を設置しているところもあります。病児保育対応の託児所が職場内にあるのは、看護師ならではのメリットといえるでしょう。

健康増進制度

健康増進制度は、従業員の健康増進を促す制度です。離職率の低下が主目的であり、法律で定められている健康診断以外に、人間ドックやがん検診の補助や、予防接種の補助が受けられます。メンタルヘルスケア専門の部署を設けている病院や、働いている病院を受診する場合に、医療費の補助が受けられる病院もあります。

休暇関連制度

休暇関連制度は法律で定められた有給休暇以外に、病院の定めるルールに従って休暇が取れる制度です。結婚・出産時の特別有給休暇、夏季・冬季休暇、アニバーサリー休暇などさまざまな種類があります。年中無休、24時間稼働している病院の場合は、夏季の3カ月中に交代で夏季休暇を取ることがほとんどです。

キャリア形成支援関連の法定外福利厚生の例

専門職である看護師の職場では、キャリア形成支援に力を入れている病院も多くあります。

資格支援制度

資格支援制度とは、スキルアップのための資格取得を支援する制度です。例えば、養成校に通う必要がある専門看護師や認定看護師の資格支援として、病院在籍中の通学が認められる場合や、学費負担をしてくれる場合があります。ただし病院によっては、資格取得後に一定期間の継続勤務を求められることがあるので、利用時は条件を確認しましょう。

研修制度

研修制度とは所属する診療科や経験年数に応じた各種研修の受講を支援する制度です。院内で独自の研修を実施している病院や、看護協会主催の研修が受けられる病院があります。院外研修を受ける際は、研修日を出勤あつかいにしてくれるところや、研修費を負担してくれるところなど条件もさまざまです。

教育支援制度

教育支援制度は、看護師の経験に応じて教育を支援する制度です。ある程度の規模の病院では、クリニカルラダーを導入しているところが多くみられます。クリニカルラダーとは、看護師として必要な知識や技術を身につけるための教育システムです。新人ナースからエキスパートナースまで、段階に応じた教育を実施し、段階的なスキルの向上を目指します。

その他

その他にも、病院によりさまざまな法定外福利厚生があります。以下がその一例です。

社員旅行制度

社員旅行制度とは、従業員のリフレッシュや他部署との交流を深める目的で、病院が旅費を一部または全額負担して旅行にいく制度です。24時間稼働している病院などは、いくつかのグループにわけて社員旅行を開催しています。また、研修をかねた研修旅行を実施している病院もあるようです。

施設利用割引制度

施設利用割引制度とは、病院が提携している宿泊施設やレジャー施設を割引価格で利用できる制度です。旅行会社などと提携し、全国の宿泊施設やスポーツジム、映画館などで割引が利用できます。

クラブ活動やイベントの補助制度

クラブ活動やイベントの補助制度とは、病院内または従業員で運営しているクラブやサークルの活動費を一部補助するものや、忘年会などのイベント費用の一部を負担してくれる制度です。この制度を取り入れる目的として、従業員の交流を深めて業務の効率化をアップさせることが考えられます。

看護学生が病院の福利厚生を比較するときのポイント

病院の福利厚生は手当からキャリアアップに関するものまで、種類も内容もさまざまです。より良い職場を選ぶためにも、福利厚生はしっかり比較検討しましょう。ここでは、福利厚生を比較するときのポイントを紹介します。

福利厚生の情報を集める

まずは各病院の福利厚生の情報を集めましょう。福利厚生は求人票に書かれていないものや、説明会で紹介されないものも数多くあります。福利厚生の詳細内容を知るためには、自ら積極的に情報収集することが必要です。ここでは、情報収集のコツを紹介します。

求人票やホームページでチェックする

はじめに求人票やホームページで採用情報からチェックしましょう。看護師の採用情報は、学校求人からハローワーク、転職サイトなどさまざまな場所に掲載されています。同じ病院であっても掲載先によって記載されている福利厚生が違うこともあるので、資料請求をするのもおすすめです。

採用担当者に質問する

志望先の病院で気になる福利厚生があれば、採用担当者に質問してみましょう。事前に求人票やホームページで情報収集しておき、質問内容をまとめておくことがおすすめです。合同就職説明会や病院見学のときに尋ねると、自分が知らなかった情報が得られる場合もありますよ。

実際働く先輩に質問する

実際に働く先輩の意見は、信頼できる貴重な情報です。福利厚生についてもより正しい情報を教えてくれる可能性が高いので、積極的に聞いてみましょう。近場に先輩がいない場合は、学校の先生に相談してみると、卒業生で働く先輩を紹介してくれるかもしれません。

口コミサイトを活用する

福利厚生の情報を得るうえで、病院で働く看護師の口コミサイトなどを活用するのもひとつの方法です。ただし口コミサイトに記載されている情報のなかには、古いものや間違ったものがある場合もあります。あくまでも参考程度に留めておくとよいでしょう。

ナース専科就職ナビでは看護学生向けの病院情報を多数掲載しており、以下から資料請求も可能です。福利厚生の条件に絞った病院検索もできるので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:ナース専科就職ナビ

看護学生が重視したい福利厚生を知る

福利厚生を選ぶポイントは、自分のキャリアプランやライフスタイルに合った支援が受けられるかです。なにを重視するかは人それぞれですが、以下ではこれから看護師として働く看護学生におすすめの福利厚生を紹介します。福利厚生を比較するときの参考にしてみてください。

住宅手当や寮制度

住宅に関連する補助は収入や支出に直結するため、重視したいポイントです。一人暮らしを始める人や、首都圏など住宅費が高い地域に就職を希望している人は、とくに住宅手当や寮制度の有無を確認するとよいでしょう。

ただし、寮は病院の近くにある場合が多いため、職場と家が近いことに抵抗がある人は家賃補助などの住宅手当のほうがおすすめです。

キャリア支援制度

キャリア支援がある病院であると、今後のキャリアの幅が広げやすくなります。とくに専門的に学びたい分野がある人や明確なキャリアビジョンがある人は、自分にあった教育制度や資格支援が充実しているかを確認してみてください。

まだ専門分野などまで考えられない人は、幅広く看護師のキャリアアップを支援している病院を選ぶとよいでしょう。

自分のライフプランに沿った支援

自分のライフスタイルに合った福利厚生があるかも比較するうえで大切です。単純に法定外福利厚生の種類が多ければ、働きやすい職場というわけではありません。なかには自分とあまり関係ない福利厚生もあります。必ず自分が利用しやすい福利厚生であるか、内容を理解して見極めましょう。

福利厚生に関する現役看護師の声を参考にする

現役看護師に勤務先の病院が採用している魅力的な福利厚生ついてアンケート調査を行ったところ以下のようなものが挙げられました。

  • 病児保育、夜間保育、学童制度勤務内の食事代負担
  • 診察・処方料負担
  • 健康診断の項目が充実
  • ジムや映画代の割引
  • 旅行費用負担

以下の記事で紹介しているので気になる人は参考にしてみてください。

福利厚生を理解して病院選びに役立てる

病院ごとで取り入れている福利厚生は異なります。福利厚生の内容が自分のキャリアや生活の質の向上につながるものであれば、働きやすさにもつながるでしょう。志望する病院を選ぶときは、給料や休日数などの条件だけでなく、福利厚生の内容も判断基準のひとつにしてくださいね。

【参考】

労働保険制度(制度紹介・手続き案内)(厚生労働省)

企業における福利厚生施策の実態に関する調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。