オペ看護師に向いている人とは?仕事内容・年収事情からやりがいまで解説

オペ看護師に向いている人とは?仕事内容・年収事情からやりがいまで解説

最終更新日:2023/09/18

オペ看護師は手術を受ける患者さんを支える仕事であり、手術に関する専門的な知識が学べます。今回はオペ室で働いたことがある看護師の話をもとに、オペ看護師のやりがいや給与事情、向いている人の特徴などを深堀します。オペ看護師を目指す人はぜひ参考にしてください。

オペ看護師とは

オペ看護師とはオペ室に勤務する看護師のことで、手術室看護師・オペ室看護師・オペナースなどとも呼ばれています。

オペ看護師の看護の対象は勤務する病院で手術を受ける患者さんです。複数の診療科がある総合病院では、基本的に患者さんの年齢や診療科に関わらずすべての患者さんを担当します。しかし病院によっては担当する手術の診療科が決まっているところもあるようです。

オペ看護師に求められる役割

オペ看護師は手術中に担う役割の違いによって、器械出し看護師と外回り看護師に分けられます。それぞれの役割について詳しく解説します。

器械出し看護師

器械出し看護師とは手術中に必要な器具を医師に手渡す「器械出し」を担当する看護師です。医師と直接関わる業務のため「直接介助」と呼ばれることもあります。

器械出し看護師の役割は、手術がスムーズに進むように必要な器具の準備をすることや、術中に使用する器械を適切なタイミングで安全に医師に渡すことです。複数の器械や術式の理解、医師の動きを予測する力など、医師と円滑にコミュニケーションを取る能力が求められます。

外回り看護師

外回り看護師とは手術を調整したりサポートしたりする看護師です。基本的に器械出し以外の業務全般を担当しており、直接医師と関わる器械出し看護師と対照的に「間接介助」と呼ばれることもあります。

外回り看護師の役割は手術全般の進行をサポートすることで、患者さんのケア、病棟との連携、オペ室環境の調整など多岐にわたります。手術がスムーズに進行するように全体を見る視野の広さや、他部署と円滑に連携が取れるコミュニケーション能力が求められます。

オペ看護師と病棟看護師の違い

オペ看護師と病棟看護師では役割や担当する患者さんが主な違いであり、それに伴って働き方も異なります。

オペ看護師は手術を受ける患者さんの術前・中・後の看護を担当しますが、病棟看護師は入院患者さんの診療の補助や日常生活の援助など、療養生活全般をサポートします。そのためオペ看護師は手術が行われる日中の勤務が一般的ですが、病棟看護師の場合は24時間継続した看護が求められるため、交代勤務が基本です。

また病棟では看護師がチームとなり他部署と連携しながら複数の患者さんをサポートしますが、オペ室では看護師、医師、臨床工学士など他職種がひとつのチームとなり1人の患者さんを担当する点も違いのひとつでしょう。

オペ看護師に向いている人の傾向

病棟勤務とは働き方が違うオペ看護師にはどのような人が向いているのか、4つの傾向をまとめました。ただし、4つの傾向に当てはまらないとオペ看護師になれないわけではありません。経験とともに得られるものもあるため、参考までにとどめてくださいね。

専門性を磨きたい人

オペ看護師は看護師のなかでも特殊な分野のため、専門性を磨きたい人に向いています。オペ室の場合、病棟では学べない手術の流れや術式、器械の知識などが学べるため、オペ看護師として働くことで看護師のなかでも専門性の高い知識が得られやすいからです。

解剖生理が好きな人

オペ看護師は術式の理解や器械の役割を理解するのに解剖生理の知識が欠かせないため、解剖生理の勉強が好きな人はオペ看護師に向いています。オペ看護師になれば、実際に手術の流れを見ながら解剖生理の理解を深められるでしょう。

チームで協力しながら働きたい人

オペ看護師は他職種を含めたチームの一員として1人の患者さんの手術を担当するため、チームで協力しながら働きたい人に向いています。病棟看護師でもチームワークは必要ですが、オペ室では手術というひとつの目標に対して集中的に他職種と団結するため、違ったやりがいが感じられるでしょう。

体力・精神面に自信がある人

オペ看護師は基本的に手術中に休憩を取ることはないため、体力・精神力に自信のある人のほうが向いているといえます。長時間におよぶ手術では交代で休憩をとる場合もありますが、数時間の緊張状態のなか立ちっぱなしで集中し続けることが求められるため、強靭な体力と精神力が必要です。

オペ看護師の仕事内容

オペ看護師の器械出しと外回り業務は、手術ごとに担当が割り振られます。新人のオペ看護師は器械出し業務からはじめ、慣れてきたら外回り業務を担当し経験を積んでいく場合が多いようです。

ここではオペ看護師の具体的な仕事内容を、器械出し看護師と外回り看護師に分けて解説します。

器械出し看護師の仕事内容

器械出し看護師の主な仕事内容は以下のとおりです。

器械出し看護師の仕事内容
器械・物品の準備 必要な器械・物品を準備し不足や破損がないか確認する
器械・物品の展開 手術の流れに沿ってスムーズに介助できるように必要物品を広げる
器械出し 手術の状況に合わせて医師に器械を手渡す
器械・物品の整理 使用した器械・物品の確認と片付け

手術は安全かつスムーズに進行することで、患者さんの身体への負担を最小限にできます。器械出し看護師の仕事は、医師に器械を手渡す業務を中心に手術を円滑に行うための準備や片付けを担当します。

新人のオペ看護師は短時間の手術の器械だし業務からスタートし、長時間の手術や難しい手術を担当できるように経験を積みます。はじめて担当する手術は先輩看護師の見学、見守りのもと実践、自立という流れを踏むことが多いようです。

外回り看護師の仕事内容

外回り看護師の主な仕事内容は以下のとおりです。

外回り看護師の仕事内容
術前オリエンテーション 術前に患者さんを訪問し手術のオリエンテーションと精神的なケアをする
※オペ看護師全体で担当する病院もある
看護計画と記録 看護計画の立案・実施・評価と術中の経過を記録する
手術室の環境整備 手術台や器材の準備、室温などの室内環境を調整する
患者さんの受け入れ 病棟や外来看護師から申し送りを聞き、患者さんを受け入れる
患者さんのケア 患者さんへの声かけ・状態観察・体位固定・体位変換など
麻酔医の介助 薬剤やモニターの確認と体位変換など
患者さんの送り出し 病棟へ患者さんの申し送りを伝え、送り出す

外回り看護師は患者さんのケアから環境整備、医療機器の準備・点検、記録など、幅広い業務を担当します。

外回り看護師は手術の進行具合を把握しながら患者さんを観察、不足物品の補充や室温調整からライトの調整まで、広い視野と細かな気配りが求められます。そのため器械出し看護師として自立し、手術の流れをしっかり理解してから外回り看護師を担当するケースが多いようです。

オペ看護師の1日の勤務スケジュール

オペ看護師の勤務スケジュールは、勤務している病院の手術状況により異なります。多くの診療科がある大規模な病院であれば手術件数も多く、1日に複数の手術を担当しなければなりません。

一方で、病院のなかには手術が午後からと決まっているところや、1週間のうちで手術日が決まっているところもあります。上記を踏まえてオペ看護師の1日の勤務スケジュール例を見てみましょう。

オペ看護師の1日スケジュール例

日によってスケジュールは異なりますが、手術が行われる日のオペ看護師の一般的な1日スケジュール例を紹介します。

オペ室で働く看護師の1日スケジュール例

基本的に手術は平日の日中に予定されているため、オペ看護師のスケジュールは手術の予定にあわせて決まり、手術以外の時間は術前オリエンテーションや手術準備を行います。

手術が午後からの病院や、1週間のうちで手術日が決まっている病院では、手術以外の時間は滅菌器具の準備や外来・ICUなどの他部署に応援に行く場合もあります。

オペ看護師に夜勤はある?

オペ看護師は日勤勤務が中心ですが、オペ看護師の夜勤の有無は勤務先の手術の実施状況により異なり、病院によっては夜勤がある場合もあります。以下は病院の種類ごとに手術状況と看護師の勤務体制の一例をまとめたものです。

オペ看護師の勤務例

病院の例 手術状況 勤務例
大規模な病院
救急病院
●診療科・手術件数が多い
●脳・心臓外科など長時間の手術がある
●2・3交代の24時間勤務
●遅番などの変則交代勤務あり
単科の専門病院 ●専門の手術のみ行う ●平日の日勤がメイン
●土日・夜間はオンコール
中規模な病院 ●1週間のうちで手術日が決まっている
●午後のみ手術を行う
●平日の日勤がメイン
●土日・夜間はオンコール
●手術日以外は他部署の業務

オペ看護師で夜勤があるのは、長時間の手術も実施している大規模な病院や、夜間の緊急手術も実施する救急病院などです。

夜勤勤務のオペ看護師は日勤の看護師と交代して長時間の手術に入りますが、夜間の手術がなければ翌日の手術準備をしながら緊急手術に備えて待機します。また他病棟の応援に行く場合もあります。

夜間の緊急手術が少ない病院はオンコール体制をとっているところが多いようです。緊急手術の場合はオンコール当番が呼び出され手術を担当します。オンコール当番の日は連絡が取れるようにする、すぐに出勤できる場所にいる、飲酒はしないなどの配慮が必要です。

勤務経験者が語る~オペ看護師のやりがいや給与事情~

ここからは手術室勤務の経験がある看護師が、オペ看護師で培えるスキルややりがい、給料事情を紹介します。

看護師プロフィール

竹 佑香 さん

竹 佑香 さん

新卒からオペ看護師として手術室19室、ベッド数700床の大規模救急病院に4年間勤務。その後、整形外科専門病院や地方の中核病院でオペ看護師として活躍。現在は、離島へ移住し役所に勤務し地域医療に携わっている。

オペ看護師を志望した理由

実習のオペ見学で周手術期の看護に興味を持ち、入職時の面談で興味がある分野を話したところ、病院側からオペ室をすすめられました。途中からオペ室に配属になるより新人からオペ室を学んだほうが良いと思いオペ看護師になりました。

オペ看護師業務の研修方法は?

オペ看護師の業務は専門性が高いため、入職後にじっくりと指導を受けながら経験を積みます。病院の教育方針により違いはありますが、私が就職した病院では病棟に配属された看護師と合同で新人向けの看護知識・技術の基礎研修を受け、勤務中にオペ室業務の指導を受けていました。

手術室看護で培えるスキルとは?

手術室看護で培えるスキルは、解剖生理の知識と学び続ける力です。オペ看護師は手術に携わりながら解剖知識を深められます。また幅広い手術が担当できるようになるには、手順や解剖の勉強が欠かせないので、自然と自己学習する力も培えるでしょう。

そのほかに、全体を観察しながら調整する力やスムーズに手術が進むように先回りして考える力も身につけることができました。

オペ看護師のやりがいや魅力は?

オペ看護師の一番のやりがいは機能の回復を目標にして手術を受ける患者さんに直接貢献できることです。オペ看護師は直接患者さんと関わることは少ないのですが、スムーズに手術が終わり術後訪問や病棟看護師からの話で患者さんの回復状況を聞けたときはとてもやりがいを感じました。

またオペ看護師は心臓や脳などの難易度の高い手術を担当するまで、2〜3年間かけて経験を積んでいきます。できなかった手術の器械出しを不安なく担当できるようになったときは、達成感とやりがいを感じられた瞬間でした。

オペ看護師として働くなかで大変なところは?

オペ看護師の大変なところは、精神的・肉体的なタフさが必要なところです。手術中の途中退出は避けたいので、手術前から水分を控え術中にトイレを我慢することも。さらに手術室の温度管理は低めに設定されているため、寒いなか長時間立ち続けなければいけない場合もあります。

そんな過酷な状況下であっても、手術中は緊張感に耐えながら集中力を持続させなければいけないため、その点で大変さを感じる人は多いでしょう。そのため日頃から心身を整えておくことや、体調不良時にオペ看護師の仲間と助け合うことが大切です。

オペ看護師の給与事情

オペ看護師の給与事情は働く病院により違います。同じ病院であればオペ看護師であっても病棟看護師であっても基本給は同じです。そのためオペ看護師も夜勤がある病院では病棟看護師と同様に夜勤手当がつきます。ただし夜勤がない病院は、病棟看護師より給与水準が低くなる傾向です。

オンコール当番制の病院は、オンコール手当がつきます。オンコール手当は夜勤手当より少額の場合が多いため、特殊手当・危険手当などの名目で手当をつけてくれる病院もあるようです。

その後のキャリアビジョンとおすすめの資格

オペ看護師の専門性をさらに高める資格としては「手術看護認定看護師」があります。オペ看護師の知識を活かしながら病棟看護も学びたい場合は、ICUやHCUなどの術後看護を担当する病棟もひとつの選択肢です。

またオペ看護師として培った解剖生理や幅広い疾患の知識は、病院だけでなく訪問看護や施設などに転職した際にも役立つでしょう。

オペ看護師は優秀でないとなれない?

オペ看護師は病棟看護師に比べ採用される人数が少ないため狭き門と思う人もいるかもしれません。しかしオペ看護師になるために必要な資格は看護師資格のみで、必要な知識は配属後から学びます。

またオペ看護師が不足している病院では、新卒・既卒関係なく人材を探しているところもあるため、オペ看護師になるには、優秀さというよりも本人の思いと病院の人員状況がカギであるといえるでしょう。

それを踏まえて、ここからは新卒からオペ看護師になるためにできることを紹介します。

新卒からオペ看護師になるには

新卒からオペ看護師になるには、入職時に手術室に配属される必要があります。興味がある人は、就職面接や内定後の面談でオペ室勤務の希望をアピールし、オペ看護師を目指しましょう。以下では学生時代にやっておいたほうがいいことと病院選びのポイントを解説します。

学生時代にやっておくとよいこと

オペ看護師を目指したい人は、学生のうちから解剖生理に興味をもっておきましょう。オペ看護師に解剖生理の知識は欠かせません。

ただ座学で学ぶ知識と実践で学ぶ知識は違うため、学生のうちから解剖生理を完璧に覚えるというよりも、まずは解剖生理に興味を持って学んでいく姿勢を身につけておくことが大切です。

また周手術期の実習でオペ室見学がある場合は、しっかりとオペ看護師の動きを見学しておきましょう。

病院選びのポイント

オペ看護師の働き方や学べることは、就職する病院の手術実施状況に左右されます。

幅広く専門性を磨きたい人は大規模な病院、特定の領域の手術を学びたい人は専門病院、ゆっくりと専門性を磨きたい人には比較的オペ室の規模が小さな病院がおすすめです。

オペ看護師に興味がある人は、病院見学やインターンに参加し以下のポイントをチェックしておきましょう。

  • オペ室の数
  • オペ件数
  • 診療科の数とオペ内容
  • 新卒でもオペ室配属になる可能性があるか

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビより

専門性が磨けるオペ看護師は新卒からでも目指せる

周手術期の看護が学べるオペ看護師は、診療科の垣根を超えて手術を受ける患者さんを支えるやりがいのある仕事です。病棟看護師とは異なる役割があり、仕事内容や働き方にも違いがあるものの、スペシャリストとして専門性を磨くことができます。オペ看護師は新卒からでも目指せる領域であるため、特徴を理解して興味のある人は計画的な病院選びをしましょう。

参考

日本手術看護学会(2023年8月9日閲覧)

徳山薫他:周術期看護最終稿.手術医療の実践ガイドライン 第3版 第6章.日本手術医学会(2023年8月9日閲覧)

看護職の皆さまへ,認定看護師.日本看護協会(2023年8月9日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。