2040年問題で看護師はどうなる?医療現場の変化と今後の働き方

2040年問題で看護師はどうなる?医療現場の変化と今後の働き方

最終更新日:2025/12/26

2040年、日本の医療現場は大きな変化を迎えることが予測されています。高齢者人口はピークとなり医療・介護の需要が増加、看護師にも働き方や役割の変化が求められます。この記事では、2040年問題が看護師の仕事や医療現場に与える影響と、変化に対応するためのスキルや働き方をわかりやすく解説します。

2040年問題とは?看護師が知っておくべき日本の未来

「2040年問題」とは、ピークを迎える高齢化と進む人口減少により、現役世代と65歳以上の高齢者のバランスが崩れ、社会のさまざまな分野で問題が生じると予測される現象の総称です。具体的には、医療・介護需要の急激な増加、社会保障の増大、労働人口の減少、インフラの老朽化などの問題が考えられます。

このような変化は、医療現場だけでなく、看護師の働き方・役割にも大きな転換を迫るものです。将来のキャリアを考えるうえでも、早い段階から理解しておくことが重要となるでしょう。

ここでは、2040年を中心に顕著になると予測される日本社会の変化と、それが医療現場に及ぼす影響を解説します。

超高齢化社会の到来と人口構成の変化

2040年ごろには、団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口は約35%に達すると推計されています。一方で、出生数と人口全体の減少は続き、全人口に対する子どもや若年層の割合は下がるとされています。

この人口構成の変化は医療や介護だけでなく、年金や医療費など社会保障制度の負担増加、労働力不足による産業構造の変化、インフラの老朽化に対する維持管理など、幅広い分野にも影響を及ぼすと考えられます。

医療・介護ニーズの増大と地域格差

厚生労働省の推計では、2040年における医療ニーズは劇的に増加します。特に85歳以上については、救急搬送が75%、在宅医療の需要が62%、それぞれ増加するとされています。

その理由としては、独居や老老介護、福祉施設に入所する高齢者が増え急変時の救急搬送のニーズが増大すると考えられること、また、入院期間の短縮化や「自宅で療養したい」という意向の高まりから在宅医療需要の増大が予測されることがあります。

加えて、寿命の延伸に伴い、慢性疾患を抱える人が増え、複数の疾患を同時にもつ多疾患併存の患者さんも年々増加します。こうした背景から、医療・介護のニーズはより長期的で複雑なものになり、これまで以上に多角的で細やかな対応が求められるようになります。

一方で、医療・介護ニーズは地域によって二極化する傾向がみられています。例えば、過疎地域では人口および患者さんの減少に対応した医療体制の維持が課題となる一方、都市部では増加する高齢者の受け皿整備が必要になります。このような地域間の構造的格差への対応も解決しなければならない課題です。

深刻化する医療・福祉分野の人材不足

医療・福祉分野は、すでに慢性的な人材不足に陥っています。そのうえで、働き手の中心となる生産年齢人口の減少によるさらなる人材不足と働き方改革の必要性から、人材確保はますます大きな課題となるでしょう。

職種別の課題をみると、医師については医療ニーズの地域格差への対応や、医師自身の高齢化などが挙げられます。看護師や介護職では、複雑化するケアへの対応や夜勤負担から、離職のリスクが高くなることが懸念されます。その場合、人手不足によって一人あたりの業務負担が大きくなり離職が連鎖的に起こる悪循環が生じやすいことも課題です。

【2040年問題】政府が目指す医療提供体制の方向性

2040年に向けて、政府は急性期中心の「治す医療」と、治療からその後の生活を切れ目なく支える「治し、支える医療」を明確に役割分担し、地域で完結できる医療・介護体制の整備を行うことを基本的な考え方としています。

これに基づき、新たな地域医療構想では、主に以下のような取り組みについて方向性が議論されています。

高齢者救急への対応

転倒による骨折、感染症、慢性疾患の悪化などで、高齢者特有の救急搬送が増加すると予想されています。一方で、地域の救急医療提供体制は医師・看護師不足によってひっ迫し、救急受入の遅延や搬送先の確保が難しくなるという懸念があります。

そこで、軽症・中等症を中心とした高齢者救急の受入体制を強化するとともに、早期リハビリテーションによる介入でADLの低下を防ぎ、入院した場合も早期に生活の場に戻れる支援体制を整えることが重要だとしています。

また、救急搬送や状態悪化を未然に防ぐため、電子カルテによる情報共有などの医療DXを活用し、在宅医やかかりつけ医、地域施設との連携強化を目指しています

在宅医療需要への対応

増加する在宅医療の需要に対応するためには、地域の状況にあわせて24時間対応の在宅医療提供体制を整えることが重要です。そのため、オンライン診療の活用や介護分野との連携を進め、より効率的・効果的な在宅医療を提供できる体制の強化が必要としています。

また、外来医療の時間外対応や在宅医療を含むかかりつけ医機能を発揮させ、地域住民が必要なときに必要な医療が受けられる体制の構築も目指す方向性として盛り込まれています。

医療従事者の確保

医療の質を保ち医療従事者を安定して確保するためには、地域ごとの医療需要の変化に対応できる体制づくりが欠かせません。しかし今後は、手術など多くの人手を要する医療が減り、急性期病床の稼働率が下がることが考えられ、医療機関の経営に影響が出ることが懸念されています。

このような状況を踏まえ、必要に応じて現行の構想区域を越え、急性期医療機関に一定の症例や医師・看護師を集約する仕組みを整えることが重要だとしています。

これに伴い、医師や看護師の専門的な修練の機会を確保し、医療従事者全体の働き方改革を進めながら、地域で高度医療や救急医療を安定して提供できる体制の構築を進めるとしています。

地域医療の維持

地域医療の維持としては、人口減少が進み医療従事者が不足していく地域で、どのように医療機能を維持するかを大きな課題としています。

過疎化が進む地域では、日常の健診や初期救急といった基本的な医療を守るために、拠点となる医療機関からの医師派遣や巡回診療が重要になります。さらに、ICTの活用や医療DX、タスクシフト/シェアを進めて生産性を高めることで、限られた医療資源を活用し、地域に必要な医療提供体制の維持を目指しています。

看護師の仕事はどう変わる?医療現場の5つの変化

2040年問題により医療提供体制が変わるなか、看護師の働き方や求められる役割も大きく変化します。ここでは、看護師の仕事がどのように変わっていくのか、5つの変化について解説します。

1. 働く場所が「病院」から「在宅・地域」へ

これまで看護師が働く場の中心は病院でしたが、在宅や地域医療のニーズが拡大することにより、今後は在宅・地域の看護へと活動の場が広がるでしょう。

すでに訪問看護師として働く看護師は増加傾向ですが、そのほかにも、訪問診療や看護小規模多機能型居宅介護事業など、看護師の活動領域はさらに広がり、多様化する傾向にあります。

そのため、一人の患者さんを生活環境まで含めて包括的に看護する視点を養いながら、さまざまな場で働く看護師の役割の違いを理解しておく必要があります。

2. 求められる役割が「治療」中心から「予防・生活支援」へ

医療の方向性は、治療だけでなく、病気を予防し健康に生活できる状態を支える医療へと拡大していきます。そのなかで、看護師に求められる役割も予防や生活支援へと拡大し、救急対応、入院時から退院・在宅までを見据えた看護支援、フレイルやサルコペニアの予防、生活習慣病のコントロール、認知症の早期発見や家族支援など、生活に密着した支援が重要視されます。

また、地域住民に対する健康相談や健康教育といった活動に看護師が関わる場面が増え、患者さんの生活そのものに寄り添いながら、長期的な健康を支える役割が不可欠となるでしょう。

3.人手不足が進み、任される仕事の幅が広がる

医師や看護師、介護職などすべての領域での人材不足が深刻化しており、結果として看護師が担う仕事の幅が拡大しています。すでに、従来は医師が行っていた業務の一部を移管(タスクシフト)する動きが始まっており、特定行為研修を修了した看護師が呼吸管理や創傷管理、輸液管理などの高度な実践を行う機会も増えています。

医療から生活支援まで看護師に求められる役割が変化していくなか、看護師の裁量がさらに大きくなれば、キャリア形成の選択肢はより一層多様化するでしょう。

4. ICTやAIの活用が当たり前になる

現在、医療現場では質の維持や効率化のため、ICTやAIの導入が進められています。AIによるトリアージや問診支援、バイタルサインの自動取得、音声入力による記録の効率化、在宅患者さんの遠隔モニタリングなど、ICTやAIを活用した医療・介護が標準となる時代は目の前に迫っています。

これによって看護師の業務負担は軽減されますが、一方でこれらの技術を適切に活用し、患者さんの情報を多職種と共有しながらケアの質を高めるためのリテラシーが今後は強く求められるようになるでしょう。

5. 多職種連携や外国人材との協働が不可欠に

治し、支える医療や地域完結型の医療が進むことで、医療・介護・福祉・行政など地域全体の多職種が連携する場面はさらに増えていきます。そのため、看護師は患者さんを支える調整役として、より力を発揮する必要があります。

自分が所属する組織内の医療チームだけでなく、地域全体をチームとして捉え、自分が働く場が患者さんの生活のどの部分を支えるのかを理解し、多職種と連携することが大切です。

また、深刻な人材不足を補うために外国人看護師・介護職の受け入れも進む見込みであり、異文化への理解やコミュニケーション能力、指導力など、新たな能力が求められるようになるでしょう。

これからの時代に備えて今からできること

2040年に向けた医療提供体制の変化は、看護師の働く環境や求められる能力にも影響します。看護師の活躍の場はさらに広がり、知識に基づく判断力やコミュニケーション能力、多職種と協働する力、全体を見る力など、幅広いスキルが必要になるでしょう。

このような変化に備えるためには、学のうちから準備を始めることが大切です。ここでは、変化に備えて今からできる3つのポイントを紹介します。

看護の基礎をしっかり学ぶ

どのような領域で働く場合でも、根幹となるのは「看護の基礎力」です。急性期では状態変化を見逃さない観察力と判断力が必要になり、回復期や在宅では患者さんの疾患や健康障害を理解したうえで生活を支える視点が求められます。

基礎力を身につけるためには、病態生理や看護過程、フィジカルアセスメントなど、学生のうちからしっかり学ぶことが重要です。基礎知識を理解し、技術の根拠を説明できる力を身につけておくと、どの分野に進んでも応用が利く看護を実践できます。

変化に対応できる柔軟性を身につける

医療の現場は、今後さらに変化のスピードは加速し、急性期の高度化、在宅医療の拡大、ICTの導入などを起点とした新しい取り組みが次々と広がっていくでしょう。そのため、知識や技術だけでなく、状況に応じて思考や行動を切り替えられる柔軟性が重要です。

実習や日々の生活のなかで、「今までと違う」「自分の知っているやり方と違う」と戸惑うことがあっても、それを新しい学びのチャンスと捉え、そこから学ぶ姿勢を心がけましょう。変化に恐れない前向きな姿勢は、看護師になってからも大きな武器となりますよ。

キャリアプランを考える機会をもつ

看護師は活躍できる領域が幅広いため、働き始めてからもキャリア選択の機会があるでしょう。医療現場の変化に伴い、看護師のキャリアは選択肢が広がっています。そのため、学生のうちからキャリアプランを考える習慣をもつことが大切です。

プランは最初から明確である必要はありませんが、自分はどの領域に興味があるのか、どのような看護師として活躍したいかなど、キャリアプランにつながる視点を意識しておくと、学校や実習への取り組み方や得られる学びも変わってきます。

2040年問題に対応できる看護師を目指そう

2040年は人口構造が大きく変わる転換期として、医療・看護・介護を含めた社会全体が変化する節目とされています。高齢化の進行により、看護の力はこれまで以上に必要とされ、役割も広がっていくでしょう。そのため、看護学生である今から未来の医療の姿を理解し、変化に対応できる力を身につけることが大切です。これからの医療を支える存在として、自分らしいキャリアを築ける看護師を目指していきましょう。

参考

・厚生労働省:新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について(2025年11月25日閲覧)
・厚生労働省(社会保障審議会医療部会)第114回資料:2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見案(2025年11月25日閲覧)
・厚生労働省(社会保障審議会医療部会)第119回資料:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ(2025年11月25日閲覧)
・日本看護協会:看護の将来ビジョン 2040〜いのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護~(2025年11月25日閲覧)
・日本看護協会:2040 年を見据えた看護提供体制のあり方について(2025年11月25日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。