看護師になるには|中高生から社会人までケース別で必要費用・期間を解説

最終更新日:2025/03/28
看護師は活躍の場が多い専門職。そんな看護師になるには、所定の教育を受け国家試験に合格する必要があります。今回は、看護師免許の概要、看護師になるために必要な期間や費用をケース別で解説します。看護師を目指すうえでの注意点も紹介するので参考にしてください。
目次
看護師ってどんな仕事?
看護師は、病気やけがで治療を受ける人や介護が必要な人のケア、こころや体に健康問題を抱える人を支援する医療専門職のひとつです。患者さんの療養上の世話と診療の補助が主な仕事で、医療・保健・福祉の分野で人々の健康をサポートします。
看護師は国家資格であり、保健師助産師看護師法によって「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう」と定められています。
看護師国家試験の概要
看護師になるには、国家試験に合格し看護師免許を取得する必要があります。看護師国家試験の概要を以下にまとめました。
看護師国家試験 | |
---|---|
受験資格 | 指定の学校にて3年以上の養成課程を修了した者 |
試験実施時期 | 年1回(例年2月中旬) |
試験内容 | 10科目・240問 |
合格率 | 90%前後 |
看護師国家試験自体の合格率は90%前後と高めの水準となっていますが、受験資格を得るには指定の養成所や教育機関で3年以上の教育を受けなければなりません。
看護職には看護師のほかに准看護師という資格があります。看護師は国家資格ですが、准看護師は都道府県が定める資格となります。仕事内容にも違いがあり、看護師は自らの判断で看護業務を行えますが、准看護師は医師や歯科医師、または看護師の指示を受けて看護業務を行わなければならないと定められています。
データから見る看護師
ここでは、国が発表しているデータから看護師として働いている人の現状を紹介します。
働いている看護師の現状
厚生労働省が発表しているデータをもとに、働いている看護師の人数や平均年齢などをまとめました。
看護師の勤務実態まとめ | |||
---|---|---|---|
就業者人数 (令和4年度) |
約131万人 | 雇用形態 | 正規雇用:82.2% 非正規雇用:17.8% (派遣含む) |
平均年齢 | 41.9歳 | 平均月収 | 25.5万円 |
男女比 | 女性:91.4% 男性:8.6% |
平均年収 | 508.2万円 |
看護師の就業者数は、2022年末時点で約131万人となっており、2012年の同データと比較すると約30万人増加しています。しかし、加速する高齢化に伴い、看護師は慢性的な人手不足が続いている現状です。
働いている看護師の9割以上は女性ですが、近年では男性看護師も増加しつつあります。また、看護師の平均年収は508.2万円であり、日本人の平均年収460万円と比べると高い水準といえるでしょう。
活躍の場
以下のグラフは、厚生労働省が発表した看護師の就業場所に関するデータです。
※出典:厚生労働省:令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
看護師が活躍する場として最も多いのは病院で、全体の67.8%を占めています。一方で、訪問看護師ステーションや介護保険施設、企業などで働く看護師も一定数を数え、活躍の場は多岐に渡ります。特に、訪問看護ステーションで働く看護師は増加傾向が続いており、厚生労働省の発表では2025年の訪問看護事業所における看護師の需要は4万5000人ほど拡大すると推計されています。
【ケース別】看護師になるためのルートと必要期間
看護師になるには、いくつかのルートがあります。
ここでは最終学歴ごとに、進学ルートの詳細と必要期間を解説します。
中学卒業から目指すルート
中学卒業後から看護師を目指す場合、5年一貫の看護師養成課程がある学校に進学する必要があります。
5年間のカリキュラムでは、看護専門科目に加えて普通科目も学ぶため、卒業後は高等学校卒業の資格も得られます。ただし、このルートで看護師になると、最終学歴は高卒になることを覚えておきましょう。
そのほか、中学卒業後に准看護師免許を取得し、さらに看護師を目指すルートもあります。ただし最終学齢が中学卒業の場合には、准看護師として3年以上の実務経験が必要になるため時間がかかります。
高校卒業から目指すルート
高校卒業後から看護師になるには、3年制の専門学校や短期大学に進学するか、4年制の大学や統合カリキュラム校に進学する必要があります。保健師や助産師養成課程がある大学や4年制の統合カリキュラム校に進学して所定の教育を修了した場合は、保健師あるいは助産師の国家試験の受験資格も得られます。
社会人から目指すルート
会社員や主婦など社会人から看護師になるには、最終学歴だけでなくライフスタイルに応じて看護師養成学校を選び、進学するのがおすすめです。家庭の事情や経済状況など生活背景は人それぞれなので、自分にあったルート選びをしましょう。
社会人から看護師になるルートは、次の記事で詳しく解説しています。
看護師養成学校の入学試験と学校別の費用
ここでは看護師養成学校の入学試験の内容と学校別の費用、費用の負担を減らす選択肢について解説します。看護師になるためのルート選びや学校選びの参考にしてください。
入学試験
看護師養成課程がある学校の入学試験は、一般的に以下のような種類の試験が実施されています。
- 推薦入試(指定校・公募)
- AO入試(総合型選抜)
- 一般入試
- 社会人入試
それぞれの入学試験の内容は、筆記、小論文、面接、エントリーシート作成など学校や試験の種類によってさまざまです。看護師になるには、まず看護師養成学校に進学しなければなりません。地域性や募集定員などにより入試倍率が高いところもあるので、受験時期や試験内容もあわせて比較検討し、合格をねらえる学校選びを意識してみてください。
【学校別】看護師になるまでの費用
看護師になるための費用は選ぶ学校によって異なります。以下は、文部科学省や各学校が公表しているデータをもとに、学校の種類別に看護師になるまでの費用の目安をまとめたものです。
※費用はあくまで目安であり、この範囲に含まれない場合もあります。
学費として必要なもの | 学校の種類 | 期間 | 費用の目安 |
---|---|---|---|
● 入学金 ● 授業料 ● 実習費 ● 設備費 ● 教科書代 ● ユニフォーム代 |
5年制一貫養成学校 | 5年 | 約250〜400万円程度 |
看護師専門学校 | 3年 | 約200〜400万円程度 | |
看護短期大学 | 約300〜450万円程度 | ||
看護大学(公立) | 4年 | 約250〜300万円程度 | |
看護大学(私立) | 約500〜700万円程度 |
学費として必要な費用は学校によりさまざまで、修学旅行の積み立てや保険料が必要なところもあります。また、医師会立や国公立の学校と私立の学校とでは学費の違いが大きくなるため、進学を希望する学校のホームページなどで確認しておきましょう。
5年制一貫養成学校や専門学校は、費用負担が比較的軽い傾向にありますが、看護師になってからの給料に差が出る場合があります。進学を考える際は、学費の総額だけでなく、卒業後のキャリアも含めて検討することが大切です。
費用の負担を減らす制度とは?
学費の負担を減らすためには、奨学金(返済が必要)や給付金(返済が不要)を利用する方法もあります。
費用の負担を減らす制度の例 | |
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奨学金制度 |
● 日本学生支援機構の奨学金 ● 都道府県や自治体の奨学金 ● 大学・専門学校独自の奨学金 ● 病院独自の奨学金 |
給付金制度 |
● 日本学生支援機構の給付奨学金 ● 高等学校等就学支援金制度 ● 専門実践教育訓練給付金(社会人対象) |
奨学金や給付金には多様な種類があり、支給方法や支援内容、利用できる条件がそれぞれ異なります。制度や支援内容を認識して活用しましょう。奨学金制度については、次の記事で詳しく解説しています。
看護師を目指すうえで必要なこと
看護師はやりがいがある一方で患者さんの健康を支える責任のある仕事です。ここでは看護師を目指すうえで知っておきたいこと、必要な心構えを紹介します。
職業についての理解を深める
看護師はやりがいのある職業ですが、同時に責任を伴い、体力的・精神的な負担も少なくありません。「思っていた以上にハードだった」とギャップを感じないよう、事前に看護師という職業への理解を深めることが大切です。
職業体験(大人でも参加できるものもあります)に参加したり、現役の看護師の話を聞いたりするなどして看護師への理解を深めてみてください。
ナース専科では、看護師の仕事を診療科別に詳しく紹介しています。看護師の仕事への理解を深めるために、ぜひチェックしてみてくださいね。
看護学校での生活パターンを理解しておく
看護師養成学校では授業と課題に加え看護実習もあるため、忙しくて大変だと感じる人もいるでしょう。特に高学年になるにつれ、実習や就活、国家試験対策とやるべきことが多くなります。授業内容や実習の流れを知り、学校での生活パターンをイメージしておきましょう。
学校の特徴・仕組みを比較する
大学、短大、専門学校と、看護師になるにはさまざまな進学ルートがあります。それぞれの学校によって、学ぶ期間やカリキュラム、実習の環境、国家試験の合格率などが異なるため、自分に合った学校を選ぶことが大切です。資料請求やオープンキャンパスへの参加などで比較しながら、納得のいく進学先を選びましょう。付属の病院などがある看護学校も多いので、看護師になってからどのような職場で働きたいかなども視野に入れて検討するとよいでしょう。
看護師に向いている人の傾向
看護師に向いている人の傾向を以下にまとめました。
- 責任感が強い人
- 他人に共感する力がある人
- コミュニケーションを取るのが好きな人
看護師は、患者さんや家族に寄り添いながらその人の健康を支える仕事です。ですから、責任感が強く相手の立場に立って物事を考えられる人が向いているといえます。
また、医師やほかの医療スタッフと連携を図りながら患者さんをサポートとすることが多い仕事なので、チームワークは欠かせません。コミュニケーションを取るのが好きな人は、ほかのスタッフとスムーズに連携することができ、患者さんとの信頼関係も築きやすいでしょう。
ただし上記の3つの特徴は傾向にすぎず、働く職場や診療科によって求められる素養は異なります。
たとえ向いている特徴に当てはまっていないとしても、現場での経験を通して成長することができます。看護師を目指したいという意思を大切にぜひ挑戦してみてください。
【看護師を目指す人へ】看護師になるための方法と働き方を理解しておこう
看護師になるには複数のルートがあり、必要な期間や費用などはそれぞれ異なりますが、どのルートを選んでもある程度の時間とお金がかかります。また、やりがいを感じられる職業である一方で大変な面があることも事実です。看護師を目指す人は、看護師という職業についての理解を深めたうえで、自分はどのルートを選択すべきか吟味してみてくださいね。
参考
日本看護協会:看護師になるには(2025年2月13日閲覧)
日本看護協会:准看護師制度について(2025年2月13日閲覧)
厚生労働省:看護師国家試験の施行(2025年2月13日閲覧)
厚生労働省:令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(2025年2月13日閲覧)
国税庁:令和5年分民間給与実態統計調査(2025年2月13日閲覧)
厚生労働省:職業情報提供サイト jobtag(2025年2月13日閲覧)
厚生労働省:看護師等(看護職員)の確保を巡る状況
公益社団法人東京都専修学校各種学校協会:令和4年度専修学校各種学校調査統計資料(2025年2月13日閲覧)
e-Gov 法令検索:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(2025年2月13日閲覧)
文部科学省:私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(2025年2月13日閲覧)