【最新版】看護学生の奨学金ガイド|種類・返済免除・選び方まで解説

【最新版】看護学生の奨学金ガイド|種類・返済免除・選び方まで解説

最終更新日:2025/10/14

看護学生の学費や生活費を支える奨学金制度には、病院奨学金や日本学生支援機構の制度などさまざまな種類があり、条件も異なります。この記事では、看護学生が利用できる奨学金制度の種類やメリット・デメリット、返済免除の条件、選び方のポイント、さらに面接対策までわかりやすく解説します。

看護学生をサポートする奨学金制度とは

奨学金は、経済的理由で修学が困難な学生を支援する制度です。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の発表によると、全国の学生の約3割が奨学金制度を利用しています。

看護学生の42%が実際に奨学金制度を利用

奨学金を借入している看護学生

看護学生を対象にしたナース専科のアンケートでは、42%が何らかの奨学金を利用していると回答しました。多くの学生が奨学金を活用し、学費や生活費の負担を軽くしていることがわかります。

看護職を目指すために必要な費用

そもそも看護師になるまでには、どの程度の費用が必要なのでしょうか。看護師になるまでに必要な費用を調査しました。

資格取得までにかかる学費(看護師・保健師・助産師)

看護師や保健師、助産師になるまでにかかる学費(入学金、授業料、実習費、設備費、教科書代、ユニフォーム代など)は、進学ルートや学校の種類によって大きく異なります。ここでは、公開されているデータをもとに、資格取得までの費用の目安をまとめました。

看護職の学費の目安

看護師 3年制専門学校
短期大学
約200~450万円程度
4年制大学 公立:約250~300万円程度
私立:約500~700万円程度
保健師・助産師 約240~1000万円程度※

参考:令和4年度 専修学校各種学校調査統計資料

   国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

   私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

※助産師・保健師課程のある大学(専門学校)の場合と、看護師資格取得後に進学する場合があり、ルートによって費用の差が大きくなります。

学費はあくまで目安であり、学校によっては、修学旅行の積立金や保険料など別途費用がかかる場合もあります。

学費以外にかかる生活費

看護職を目指すには、学費以外に生活費も必要です。必要な生活費は、実家暮らしと一人暮らしとでは異なります。以下の表は、全国大学生活協同組合連合会が発表しているデータをもとに、学生の生活費の目安をまとめたものです。

生活費の目安(2024年)

生活スタイル 月額 年間
自宅生 約6万9500円 約83万4000円
一人暮らし 約13万1710円 約158万520円

参考:第60回学生生活実態調査

学費や生活費は、3年制の専門学校よりも大学、実家暮らしよりも一人暮らしのほうが高くなる傾向です。

表で示した学費と生活費を合算すると、最も安くて約450万円(自宅から専門学校に通学)、一番高いケースでは約1330万円(一人暮らしで私立大学に通学)がかかることになります。奨学金を検討する際には、まず自分が選択する進学ルートと生活スタイルでどの程度の費用が必要かを把握するようにしましょう。

看護学生が利用できる奨学金制度の仕組みと種類

ここからは、看護学生が利用できる奨学金制度の仕組みと種類を解説します。

貸与型と給付型の違い

看護学生が利用できる奨学金は「貸与型」と「給付型」に大きく分けられます。さらに「勤務義務付き(返済免除型)」の奨学金もあります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

奨学金タイプ別の仕組みと特徴

種類 仕組み 返済 特徴
貸与型
(無利子)
卒業後に返済が必要 借りた金額 ・利息負担がない
・成績・家計基準がやや厳しい
貸与型
(有利子)
卒業後に返済が必要 借りた金額+利息 ・利息負担がある
・条件が緩く利用しやすい
給付型 無償で支給 不要 ・独自の条件が設定されていることもある
・募集定員がある
勤務義務付き
(返済免除型)
指定医療機関での一定期間の勤務が条件 勤務で免除 ・就職先が制限される
・転職が一定期間制限される

看護学生向けの奨学金制度一覧

看護学生が利用できる奨学金は、日本学生支援機構、病院、自治体などが運営しています。代表的な制度をまとめました。

看護学生向けの奨学金制度一覧

種類 基本情報 返済 特徴
日本学生支援機構第一種 奨学金
(無利子)
無利子貸与型 借りた金額 ・利息負担がない
・成績や家計基準の条件がある
日本学生支援機構第二種 奨学金
(有利子)
有利子貸与型 借りた金額+利息 ・利息負担がある
・条件が緩く利用しやすい
病院奨学金 勤務義務付き貸与型 勤務で免除 ・卒業後の就職先が確保できる
・義務期間中の退職は一括返済を求められる
自治体奨学金
(看護師等修学資金)
無利子・勤務義務付きが多い 勤務で免除 ・地域医療に貢献することで返済が免除になる
・勤務地が限定される可能性がある

看護学生向けの奨学金には、日本学生支援機構のように全国の学生が申請できる制度のほか、各病院が独自で設けている病院奨学金、自治体が運営する自治体奨学金(看護師等修学資金)などがあります。ほかに、民間団体等が提供している給付型奨学金制度もありますが、募集枠は限られるようです。

受給できる奨学金の金額はそれぞれ異なり、入学前より申請できるものから、在学途中でも申請できるものまでさまざまです。

社会人向け制度一覧

社会人が新たに進学して看護師を目指す場合、看護学生向けの奨学金に加えてキャリア支援のための給付金制度も利用できます。

看護師を目指す社会人向けの制度一覧

制度 支給内容 条件
教育訓練給付金
(専門実践教育訓練)
教育訓練費の50〜80%
※訓練終了後の雇用状況・条件により支給割合が上昇
(80%の場合 上限64万円/年)
雇用保険に一定期間以上加入
自立支援教育訓練給付金 訓練年数×40万円
(最大160万円)
ひとり親が対象
高等職業訓練促進給付金 訓練期間中
月額10万円
ひとり親が対象
所得制限あり

参考:教育訓練給付制度

   母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について

社会人向けの支援制度は、学費や生活費が支援される一方で、年齢制限、在籍要件、収入制限が設けられていることもあります。事前に制度内容を確認し、計画的に活用することが大切です。

利用前に必読!奨学金制度の注意点

奨学金は学びを支えてくれる大きな味方ですが、制度ごとに条件やルールがあり、それらを把握せずに利用すると思わぬ返済義務やペナルティに遭遇することがあります。ここでは、看護学生が特に気をつけたい注意点を、具体例とあわせて解説します。

留年・退学時の返済義務

奨学金は、留年や退学により支給が停止されるだけでなく、それまでに受け取った奨学金について返済を求められる場合があります。

ケース1

成績不振で留年した

留年中は奨学金の支給が停止となり、翌年進級後に支給が再開された

ケース2

病院奨学金(月5万円)を利用中に2年生で退学

奨学金規定により、それまでの受給額90万円(5万円×18か月)の一括返済を求められた

留年や退学時のルールは奨学金制度によって異なりますが、無利子の貸与型奨学金や返済義務のない給付型奨学金では条件が厳しくなる傾向にあるようです。

留年や退学をしないように心がけることが第一ですが、念のため申し込み前に留年や退学時のルールも確認しておきましょう。

勤務義務付き奨学金の制限

病院や自治体が運営する勤務義務付き奨学金では、指定の医療機関での勤務を条件に返済免除が認められています。しかし、義務期間中に転職や退職をすると、一括返済を求められるケースがあります。

ケース1

病院奨学金を受けてその病院に就職したが、その病院にはない診療科に興味をもち、別の病院に転職した

退職時に奨学金の全額返金を請求された

ケース2

自治体奨学金を利用中に家庭の事情で県外に転居した

翌月から分割での返済義務が生じた

勤務義務付きの奨学金の場合、返済しなくてもよいというメリットがありますが、指定された医療機関で一定期間勤務しなければなりません。必要となる勤務年数のルールを確認し、卒業後の数年間は勤務義務が発生することを想定して選択しましょう。

収入制限による影響

奨学金のなかには、家計収入が一定額以下でないと利用できないものがあります。

ケース1

世帯収入に制限のある給付型奨学金を受けていたが、保護者の昇給により基準を超えた

次年度から更新不可となった

途中で家計状況が変わると受給資格を失うこともあるため、収入制限と家計状況を事前に確認しておく必要があります。

返済滞納のリスク

貸与型奨学金は返済が必要です。滞納すると延滞金が発生するだけでなく、信用情報に記録されて将来のローンやクレジット契約に影響する可能性があります。

ケース1

奨学金を多めに借りたが、就職先の給与が低く返済困難になった

ボーナス月に返済したものの、延滞金が追加された

返済が難しくなりそうな場合は、延滞になる前に返還猶予や減額返還制度について奨学金窓口に必ず相談しましょう。

奨学金選びで後悔しないためのポイント

看奨学金選びで後悔しないためには、自分に合った奨学金制度を選ぶことが大切です。ここでは奨学金を選ぶときのポイントを解説します。

メリット・デメリットを比較する

奨学金には、無利子、有利子、返済免除制度の有無など、さまざまな仕組みがあります。制度ごとの条件を整理し、メリットだけでなくデメリットも含めて比較することが重要です。

以下は、奨学金を比較する際にチェックすべきポイントをまとめたものです。金額や条件だけでなく、将来の返済負担や勤務義務などのデメリットも含めて比較検討しましょう。

奨学金を比較するときのチェックリスト

  • 奨学金の種類は?(無利子/有利子/返済免除付き)
  • 勤務義務はある? ある場合は何年間か?
  • 利息はある? ある場合の利率は?
  • 中途辞退や退学時の返済条件は?
  • 受給できる金額と期間は?
  • ほかの奨学金や支援制度と併用できる?
  • 総返済額はいくらになる?

必要金額と受給期間を見積もる

奨学金は、金額が高いほど返済時の負担が大きくなるため、「最低限の金額×必要な年数」で見積もるようにします。学費や教材費に、生活費、通学費、実習時の交通費なども加えて、年間に必要な金額と卒業までに必要な総額を把握しておきましょう。

返済計画を立てる

貸与型奨学金を利用する場合は、卒業後の収入を想定し、無理のない返済計画を立てておくことが大切です。

例:月5万円を4年間借りた場合

借入総額:約240万円
返済期間:10年
無利子:毎月約2万円
有利子(年1%):毎月約2.1万円

奨学金面接で押さえるべき要点

一部の奨学金制度では申請時に面接があります。面接では「本当に支援が必要な学生か」「学ぶ意欲があるか」を確認することが目的とされます。ここでは、看護学生が意識しておきたい面接の要点を整理しました。

面接でチェックされるポイント

奨学金面接では、以下の観点が重視されます。

  • 経済的支援が必要である根拠が明確か
  • 学ぶ姿勢や人柄に誠実さがあるか
  • 将来のビジョンが具体的か

特に勤務義務付きの奨学金の場合「地域や医療現場にどう貢献したいか」をアピールすることが大切です。単にお金が必要だからではなく「奨学金があることで学業に専念でき、将来〇〇などの面で貢献したい」と伝えましょう。

問われやすい質問と回答例

ここでは奨学金の面接で聞かれやすい質問に対する回答のポイントを例とあわせて紹介します。

Q.「なぜ奨学金を必要としているのですか?」

【回答ポイント】
家計状況を簡潔に説明し、制度の内容を踏まえたうえで「学業継続のためにどのように役立つか」を述べる

【回答例】
家庭の収入だけでは学費の負担が大きく、希望する学校への進学が難しいため申請いたしました。返済方法や制度を認識したうえで、授業料の支払いなどに活用し、学業や実習に集中したいと考えています。

Q.「将来どんな看護師になりたいですか?」

【回答ポイント】
興味のある分野や理想像を具体的に伝え、社会貢献の意欲を示す

【回答例】
患者さんに寄り添い、その不安を和らげられる看護師を目指しています。特に高齢者医療に関心があり、地域で誰もが安心して暮らせる環境づくりに貢献したいです。

Q.「在学中に努力したいことは?」

【回答ポイント】
学業成績の維持、資格取得、実習への積極的な取り組みなどを伝える

【回答例】
学業成績を維持しつつ、実習に積極的に取り組みたいです。現場で学んだことを振り返りながら、自分の看護観を深めていきたいと考えています。

知っておきたい面接マナー

面接は内容だけでなく、第一印象や立ち居振る舞いも評価対象です。

  • 入室時には「ノック→あいさつ→お辞儀」を忘れずに
  • 椅子に座るタイミングは面接官の指示に従う
  • 話すときは、相手の目を見て、落ち着いた声を心がける
  • 服装は清潔感を意識し、制服やスーツを着用するのが望ましい

面接のマナーを意識し注意を払うことで、自信をもって自分の考えを伝えられます。面接のマナーや身だしなみの具体的なポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。参考にしてください。

奨学金に関するQ&A

ここでは、看護学生が疑問をもちやすい奨学金に関する質問と回答をまとめました。

返済免除の条件は?

返済免除になる条件は、奨学金の種類によって異なります。例えば、特定の医療機関で一定期間勤務することで返済が免除される場合や、死亡・心身の障害により返還ができなくなった場合に免除されるものもあります。一方、給付型奨学金は元から返済が不要です。返済の要否や免除条件は契約時に必ず再確認しましょう。

在学中に辞退できる?

原則として奨学金は途中辞退が可能です。ただし、既に受け取った分は返還が必要になる場合があります。辞退が必要になった場合は早めに奨学金窓口へ相談しましょう。病院奨学金などのなかには、辞退に難色を示される場合もあるようです。

ほかの奨学金と併用できる?

併用の可否は制度によって異なります。日本学生支援機構の奨学金は、他団体や病院の奨学金と併用できる場合がありますが、条件や上限が設定されていることがあります。

奨学金は生活費にも使える?

多くの場合、奨学金の使途は学費や教材費に限られていません。そのため、生活費や通学費に充てることも可能です。ただし一部の制度では、奨学金を現金で受け取るのではなく、入学金や授業料が免除されるというケースもあります。

奨学金制度を理解して賢く活用しよう

奨学金は、学費や生活費の不安を軽減できる心強い制度ですが、種類によってメリットやデメリットがあります。制度ごとの条件や返済ルールをしっかり理解し、自分に合った奨学金を選ぶことが大切です。

参考

公益社団法人東京都専修学校各種学校協会:令和4年度専修学校各種学校調査統計資料(2025年8月17日閲覧)
e-Gov 法令検索:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(2025年8月17日閲覧)
文部科学省:私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(2025年8月17日閲覧)
全国大学生活協同組合連合会:第60回学生生活実態調査(2025年8月17日閲覧)
日本学生支援機構:奨学金制度の種類と概要(2025年8月17日閲覧)
こども家庭庁:母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について(2025年8月17日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。