社会人から看護師になるには?免許取得の方法から学校の選び方まで解説
最終更新日:2024/08/27
看護師は社会人から目指す人も多い職種です。今回は看護師になるまでの最短ルートや働きながら看護師免許を取得するルートなど、社会人から看護師になるための方法をいくつか紹介します。看護師を目指す前に知っておきたいことも解説するので参考にしてください。
目次
社会人からでも看護師は目指せる
厚生労働省が定めた教育課程を修了し看護師国家試験に合格すれば、社会人からでも看護師を目指すことは可能です。では実際に社会人から看護師になった人はどれくらいいるのか、アンケート調査を実施しました。
社会人経験がある看護学生の割合は?
看護学生を対象に行ったアンケートの結果では、社会人の経験がある人が全体の17.8%でした。1クラス40人定員の看護学校の場合、約7人に1人が社会人経験者ということになります。
看護学校に年齢制限はある?
看護学校の入学や、看護師免許の取得には年齢制限はありません。以下は看護学校を卒業するときの年齢について質問した結果です。
全体の約70%は現役の看護学生にあたる20代前半の人ですが、30代、40代以上もそれぞれ約7%ずついることから、看護師は幅広い年代の方が目指せる職業であることがわかりました。
社会人から看護師免許を取得する方法
看護職として働くための資格には准看護師資格と看護師免許の2種類があります。いわゆる正看護師と呼ばれる人が取得している「看護師免許」を社会人から取得する方法は、大きくわけて以下の2つのルートです。
- 看護師免許の取得を目指す
- 准看護師資格を取得後、看護師免許の取得を目指す
それぞれのルートは進学する学校の種類により、さらに以下の図のように細かくわけられます。それぞれのルートを詳しく見てみましょう。
1.看護師免許の取得を目指す
看護師免許を取得するには、看護師国家試験に合格しなければいけません。下記5ルートのいずれかを選択すれば、看護師国家試験の受験資格が得られます。
最終学歴が中学卒業の場合、5年一貫看護師養成課程がある高等学校に進学するのが看護師を目指す唯一の方法です。そのほかのルートは、高校卒業以上の学歴が必要になります。
最終学歴が高校卒業以上あれば、最短3年で看護師を目指すことが可能です。看護大学や看護専門学校の4年制統合カリキュラム校に進学すると、保健師か助産師国家試験の受験資格も得られます。
2.准看護師資格を取得後、看護師免許の取得を目指す
都道府県知事が認定する准看護師資格を取得後、所定の教育を修了し看護師国家試験を受けることもできます。准看護師資格の取得方法は、准看護師養成学校か高校の衛生看護科を卒業し、都道府県が実施する資格試験に合格することです。
准看護師資格取得後に看護師免許の取得目指すルートには、以下の7つがあります。
准看護師資格を取得後、中学卒業以上の学歴があれば各学校への進学が可能ですが、中学卒業者は実務経験が必要な場合もあります。高校卒業以上であれば実務期間なしで2~3年で看護師国家試験の受験資格が得られます。
看護師になるための学校・ルートの選び方
社会人から看護師を目指す人は年齢や家庭事情、経済面など、それぞれの生活背景が違うため、ライフスタイルや重視したいポイントにあわせた学校・ルート選びが大切です。ここでは、タイプ別に3つの学校の選び方を紹介します。
最短で免許取得を目指すなら「看護専門学校」or「看護短期大学」
社会人から最短で看護師免許の取得を目指したい人は、看護専門学校か看護短期大学を選ぶと良いでしょう。看護専門学校と看護短期大学は、高校卒業の資格さえあれば3年で正看護師を目指せます。
ただし看護師専門学校や看護短期大学は全日制のため働きながら学ぶことは難しいでしょう。とはいえ最短で正看護師を目指せるルートなので、看護師としての収入が早く得られるメリットもあります。
入職後のキャリアアップを目指すなら「4年制大学」
看護師としてキャリアアップを目指したい人は、4年制大学を選ぶと良いでしょう。4年制大学は履修登録次第で保健師か助産師免許の取得も目指せるため、キャリアの幅が広がります。
看護専門学校の統合カリキュラム校でも保健師や助産師免許の取得は目指せますが、専門看護師などの上位資格取得をめざす場合、4年制大学を卒業していたほうが目指しやすいため、将来的にキャリアアップしたい人は4年制大学のほうがおすすめです。
また大学に4年間通うので専門学校や短大より看護師免許の取得は遅れますが、入職後の基本給は4年制大学卒業者のほうが高くなる傾向があります。
働きながら看護師を目指すなら准看護師からチャレンジ
働きながら看護師を目指したい人は、准看護師からチャレンジすると良いでしょう。2〜3年制の准看護師の養成所には、授業が週に3回ほどの全日制の学校や半日制の学校もあるので、働きながら通学できます。
准看護師資格の取得後は、以下3つのなかから自分にあったルートで看護師免許の取得を目指すとよいでしょう。
准看護師から看護師への最短ルートは「全日制の看護師専門学校」or「看護短期大学」
准看護師から最短で看護師を目指したい人は、全日制の看護師専門学校もしくは看護短期大学が適しています。最終学歴が高校以上であれば、2年間で准看護師から看護師の免許取得が目指せるためです。
ただし2年制の看護師専門学校は全日制であるため、働く時間は休みの日だけと限られてしまいます。
また准看護師から看護師になれる短期大学は全国でも数少ないので、選択肢が少ないことも難点です。
通学しながら働きやすいのは「定時制の看護師専門学校」
通学しながらの働きやすさを考えるなら、定時制の看護師専門学校を選ぶと良いでしょう。
3年制の定時制の看護師専門学校には週3~5日程度授業がある昼コースと夜間コースがあり、学校以外の時間は准看護師免許を活かして働けます。
ただし准看護師免許の取得後に定時制の看護師専門学校に入学するには、高校卒業以上の最終学歴が必要であり、中学卒業者の場合は准看護師として3年以上の実務経験が求められます。
7年以上の実務経験があるなら「通信制の看護師学校養成所」も一手
准看護師として7年以上の実務経験がある人は、通信制の看護師学校養成所に進学するのも良いでしょう。
通信制の看護師学校養成所は2年制でオンライン授業が中心であり、出席が必要な実習などの回数も少なく設定されていることが多く、仕事と学校の両立がしやすい点がメリットです。
社会人から看護師になるメリット3選
社会人から看護師を目指すには、多くの選択肢の中から学校や資格試験の取得などを選ばなければいけないというハードルがあります。しかしその分メリットもあります。以下では社会人から看護師になるメリットを3つ紹介します。
長く働け、幅広く働き方が選べる
看護師になる大きなメリットは、生涯役立つ免許を持つことができ、働く場所や働き方が選べることです。人々の健康をサポートする看護師の職場は、病院から介護施設、在宅、一般企業まで多岐にわたります。年齢が上がっても経験者として長く働くことができ、例えば訪問看護師の中には80代でも現役の人もいます。
また、正職員だけでなくパート・夜勤専従・派遣スタッフなど、看護師の雇用形態は多種多様なため、自分のライフスタイルや年齢にあわせて働き方が選びやすい職業といえるでしょう。
給与水準が平均より高い
看護師は給与水準が比較的高い職種です。厚生労働省のデータによると、看護師の平均年収は508.1万円で、日本人女性の平均年収304.3万円とくらべると1.5倍以上となっています。
日本看護協会のデータでは、大卒看護師の平均初任給は月収で271,730 円なのに対し、日本人女性の平均月収は253,600円となっており、新卒看護師でも平均より高い給与水準で働けるのが看護師の魅力でしょう。
社会人経験が生かせる
社会人としての経験は、看護師の職場でも生かせる場面が多くあります。例えば、さまざまな立場の人と関わってきた経験がある人は、患者さんとも適切なコミュニケーションを心がけることができるはずです。
ほかにも部署のメンバーと連携しながら仕事を進めた経験があれば、同僚への配慮を忘れずに協力する姿勢が身についているため、ほかのスタッフとの連携が多い看護師の現場でも十分に生かせるでしょう。
社会人から看護師を目指す前に知っておきたいこと
社会人から看護師を目指すには、事前に知っておいたほうが良いことがあります。いくつか紹介するので、念頭に置いておくとよいでしょう。
看護学校選びと入試対策が重要
看護師を目指すルートは複数あるため、重視したいポイントからルートをしぼり、学校を選びましょう。なかには社会人の入試倍率が高い学校もあるため、希望の学校を決めたら入試対策も必要です。
また、選ぶ学校によってはクラスのほとんどが現役の学生である場合もあります。できる限り同じ境遇の人と一緒に頑張りたい人は、希望する学校の社会人の割合も調べておきましょう。
学費・生活費の計画も大切
学校選びの段階で、学費・生活費を含めた経済面の計画をしっかり立てておきましょう。看護学校在学中は学校が忙しく、働けたとしても現役社会人より収入が下がる可能性は十分あり得ます。
学業に専念するためにも、卒業までにかかる費用を貯蓄しておくか、奨学金の利用などを検討してみましょう。
看護学生は多忙であること
社会人から看護学生になると慣れない勉強から看護実習、国家試験まで多忙な毎日を送らなければいけません。家庭と両立しなければならない人は、学ぶ時間の確保と家族の時間をうまく調整できるようにあらかじめ協力をお願いしましょう。
また働きながら看護師を目指す人は、学校と仕事の両立に理解のある職場を見つけることが必要です。
看護師として働く大変さ
看護師として働きはじめると、責任の重さを感じる場面も少なくないでしょう。また、社会人から看護師になると新人看護師として働く年齢によっては、同期だけでなく先輩や上司も年下になることがあり人間関係の難しさを感じる人もいます。
さらに勤務先に病棟を選んだ場合は、年末年始など決まった休みがなく、夜勤など不規則な勤務の大変さもあることを知っておきましょう。
看護師になるまでにかかる費用
看護師になるための学費は、選ぶ学校にもよりますが200~400万円程度かかります。以下は学校別の卒業までにかかる費用をまとめた表です。
学校の種類 | 卒業までの学費 | 学費として必要なもの |
---|---|---|
准看護師養成所 | 100〜150万円程度 | ● 入学金 ● 授業料 ● 実習費 ● 設備費 ● 教科書代 ● ユニフォーム代 など |
5年一貫看護師養成課程校 | 150〜350万円程度 | |
看護師専門学校 | 250〜400万円程度 | |
看護短期大学 | 300〜350万円程度 | |
看護大学(国公立) | 250〜300万円程度 | |
看護大学(私立) | 500〜700万円程度 |
学費として必要なものは学校によってさまざまで、保険料や後援会費などが必要な学校もあります。また、医師会立などの公立学校と私立の学校では、学費の違いも大きいため進学を希望する学校のホームページで確認しておきましょう。
学費の負担を減らす方法は?
奨学金や給付金の制度を利用すると学費の負担を減らせる可能性があります。ここでは、社会人でも申請可能な制度や看護学生ならではの制度を紹介します。
奨学金制度
奨学金制度とは、進学や学費の支払が経済的に困難な学生に対し経済的な援助をする制度です。返済が必要な貸与型と返済不要の給付型があり、制度を設けている団体により支援する学生の基準や支援内容は異なります。
ナース専科 就職のアンケートでは、社会人から看護師を目指す看護学生のおよそ半数が奨学金制度を利用していたと回答しています。
代表的な奨学金制度には以下のようなものがあります。
日本学生支援機構の奨学金 | ● 幅広い学生が利用している奨学金制度 ● 給付型と貸与型がある ● 学力と収入による審査あり |
都道府県や自治体の奨学金 | ● 地方自治体独自の看護学生を支援する奨学金 ● 給付型が多く、貸与型であっても利息が比較的低い ● 自治体により対象者や金額がさまざま |
病院奨学金 | ● 病院独自の奨学金 ● 看護師免許取得後に貸与を受けた病院で一定期間就業すると奨学金の返済が免除される |
奨学金は種類により対象となる条件や返済の義務の有無、返済方法などが異なります。併用できる奨学金もあるため、学生生活に必要な金額と返済プランを計算し、利用を検討しましょう。
給付金制度
給付金制度とは受給条件を満たしている場合に限り、国や地方自治体に申請すると支援金が受け取れる制度です。返済の義務はありません。
社会人のキャリアアップを支援する給付金には、以下のようなものがあります。
専門実践教育訓練給付金 | ● 労働者の専門的なキャリアアップを支援する制度 ● 厚生労働省が指定する看護学校の学生が対象 ● 雇用保険に一定期間以上加入していることが条件 |
高等職業訓練促進給付金 | ● ひとり親の資格取得を支援する制度 ● 児童扶養手当の支給や所得に条件あり |
給付金は返済の義務がないため、給付の対象になる場合は活用を検討してみましょう。利用条件の詳細は、住んでいる地域のハローワークに問い合わせてみてください。
自分に合った方法で看護師を目指そう
看護師は長く働け、仕事の幅も広く給与水準も比較的高いため、免許取得を目指すメリットは高いといえるでしょう。
しかし社会人から看護師を目指すには最短でも3年間必要で、学校での勉強だけでなく、実習や国家試験の勉強など難易度が低いとはいえません。また看護師になってからは、これまでとは違った仕事の責任や人間関係などの大変さもあるでしょう。
社会人から看護師を目指す人はこれら大変さを踏まえて自分に適したルートを選び、看護師免許取得という目標をかなえましょう。