外科看護師の仕事内容から向いている人の特徴まで経験者が解説!
最終更新日:2024/12/13
外科はメジャーな診療科のひとつで、整形外科や脳外科など部位ごとにさまざまな専門分野があります。今回は、外科の特徴や働く看護師の役割と仕事内容を解説します。勤務経験者の話をもとに、やりがいや向いている人の性格の特徴も紹介するので参考にしてください。
目次
外科とは
外科とは、患部に対し手術などの直接的な処置によってけがや病気を治療する診療科です。がんや腫瘍、切り傷や骨折など手術や切除、縫合などの外科的処置が必要な患者さんを対象とします。
外科系診療科を掲げる医療施設は多数あり、部位別にいくつかの専門分野に分かれています。厚生労働省が発表している「2022年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、外科系の医師数は内科医に次いで多く、主要な診療科だといえます。
外科にはどんな種類がある?
外科は大きく分けると、一般外科と専門外科があります。一般外科はやけどや切り傷、体内や皮膚上にできた腫瘍など、幅広い部位が治療の対象であるのに対し、専門外科は特定の部位や対象、目的に特化しています。
下記は、外科の種類とそれぞれ対象となる患者さんの例をまとめたものです。
外科の種類 | 治療の対象 | |
---|---|---|
一般外科 | 身体部位には関わらない外傷や腫瘍、炎症による急性疾患など | |
専門外科 | 呼吸器外科 | 肺がん、気胸、縦隔腫瘍など胸部臓器に関わる疾患や外傷 |
心臓血管外科 | 虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、先天性心疾患など心臓や血管に関わる疾患 | |
消化器外科 | 消化器系がん、虫垂炎、胆のう炎など消化器に関わる疾患 | |
脳神経外科 | 脳血管疾患、脳腫瘍、頭部外傷、てんかんなど脳神経に関する疾患外傷 | |
整形外科 | 骨折、靭帯損傷、脱臼など運動器に関わる疾患や外傷 | |
形成外科 | 先天性疾患、外傷、熱傷、腫瘍など体表面を主とする組織の異常や変形や欠損 | |
小児外科 | 先天性疾患、外傷、呼吸器・消化器・腹部臓器に関わる疾患などにより外科的処置が必要な小児 | |
美容外科 | 美容を目的とした医療行為(保険適用外) |
︎外科看護師の役割と仕事内容
ここでは外科で働く看護師の役割や職場例、それぞれの職場での仕事内容を解説します。
役割
外科看護師の細かい役割は施設形態や専門分野によって異なりますが、総じていえることは患者さんが安全安楽に治療を受けられるよう、周手術期の看護を提供することです。安心して手術を受けてもらうために術前の説明や術前検査の介助、不安の緩和に努めます。術後には全身管理や疼痛管理など回復に向けての支援を行います。
周手術期の患者さんは、変化が激しい急性期の状態にあるため、状況に合わせて必要な看護を提供することが求められます。
外科看護師が働く職場例
外科に該当する職場は、施設形態や専門の違いによってさまざまです。例えば、病院の呼吸器外科病棟や整形外科病棟などで病棟看護師として働く、あるいは整形外科や一般外科などの外来で働く、外科を標榜する診療所で働くなどがあります。
病棟、診療所、クリニックなどの各施設形態と一般外科や各専門外科の別を組み合わせて考えると、外科看護師として働く人の職場の種類は幅広く存在するといえるでしょう。
そのため、一言で外科看護師が働く職場といってもその仕事内容は異なることになります。
仕事内容
ここでは外科看護師の仕事内容を病棟と外来・クリニックに分けて解説します。
細かい仕事内容は医療施設や専門診療科によっても異なるため、ここで紹介する内容は外科全体の一般的な例として参考にしてください。
病棟の仕事内容
外科病棟の看護師の業務一覧 | |
---|---|
手術前のケア |
・術前オリエンテーション ・点滴、更衣など術前の準備 ・オペ出し |
手術後のケア |
・オペ迎え ・全身状態の管理 ・疼痛ケア |
全身状態の管理 | ・バイタルサイン、検査データ、創部の状態など全身状態の観察 |
検査介助 |
・CT検査やレントゲン検査などの介助 ・採血や採尿などの検体採取 |
他職種との連携 |
・オペ室看護師、リハビリ担当者など院内他部署との連携 ・ケアマネジャー、訪問看護など院外の他職種との連携 |
入院生活のケア | ・環境整備、入浴・食事・トイレの介助など日常生活の援助 |
患者・家族の精神的ケア |
・術前術後の不安の緩和 ・退院後の生活に関する相談 |
記録・手続き |
・看護計画の立案 ・看護記録 ・手術関連の同意書類の処理 ・入退院に伴う手続き |
外科病棟では術前術後の看護や患者さんのケア、同意書類の処理など、手術に関連することが主な仕事内容です。周手術期の展開に合わせた看護が求められます。
例えば、術前は患者さんが安全安楽に手術を受けられるよう援助することが優先されますが、術後は全身状態の管理や疼痛ケアなど患者さんの生命にも関わる看護が優先になります。術後の患者さんの回復状態に合わせて、退院や社会復帰に向けた日常生活の援助やリハビリテーションの支援、退院支援をするのも外科看護師の仕事です。
外来・クリニックの仕事内容
外科外来・クリニックの看護師の業務一覧 | |
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診察の補助 |
・問診票の確認 ・診察の優先順位の判断 ・必要物品の準備 ・医師のサポート ・外科的処置の介助 ・点滴や注射の実施 |
検査介助 | ・レントゲン検査やCT検査の介助 ・採血や採尿などの検体採取 |
患者・家族のケア | ・処置、検査、入院・手術予定の説明 |
記録・手続き | ・看護記録 ・受付業務 |
外科外来やクリニックでは、医師の診察のサポートや検査の介助が主な仕事内容です。外傷や骨折などは、外来で処置する場合もあるため、処置に必要な物品の準備や処置中の介助を行います。患者さんの状態を把握し、診察の優先順位を判断するのも仕事のひとつです。
また、外来受診で入院による手術が決定した患者さんに対し、術前検査の説明や実施、入院・手術予定に関する説明をすることもあります。
︎外科病棟の1日のスケジュール例
ここでは2交代勤務の病棟を例に、外科病棟で働く看護師のスケジュールを紹介します。なお、病院によっては3交代のところや変則2交代のところもあります。また、勤務形態や細かな1日のスケジュールは病院や病棟によって異なるため、一例として参考にしてください。
日勤のスケジュール
こちらは日勤のスケジュール例です。日勤で受け持つ患者さんの人数は、病院の医療区分や病棟の看護方式によって異なります。
手術当日や術直後などの患者さんが重なった場合は、重点的に看護が必要な患者さんの受け持ちが偏らないよう、担当の調整をしたりチームで協力して受け持ったりする場合もあるようです。
外科病棟の日勤業務の特徴は、回診のときに医師によるガーゼ交換や創部の状態確認が行われることです。看護師は回診に使用する物品の準備や医師のサポート、術前の点滴準備や更衣、術後の受け入れベッドの準備、オペ迎えなどの業務も担当します。
夜勤のスケジュール
夜勤で術後の患者さんを受け持つ場合は、通常業務の流れで仕事をしながら頻回に術後患者さんの状態観察を行います。手術の終了時間によっては、夜勤帯でオペ後の患者さんを受け入れる場合もあります。
︎経験者が語る〜志望理由からやりがい・大変なことまで〜
ここからは外科病棟に勤務経験がある看護師の話から、外科看護師のやりがい、大変なことなどを紹介します。
ともこさん
新卒で急性期の地域医療指定病院へ就職。整形外科と消化器外科の混合病棟にて7年間勤務し、看護の基礎から周手術期の看護、新人指導まで幅広く経験を積む。その後、内科系慢性期病院へ転職し現在も活躍中。
外科を志望した理由は?
もともと急性期の看護を学びたいという気持ちがあり、さらに看護実習で周手術期の看護に興味をもったことから外科病棟を志望しました。性格的に自分には患者さんの展開が早い外科が合っているのではないかと感じたのも志望した理由のひとつです。
やりがい・魅力は?
外科のやりがいは、患者さんの経過の展開が早く、回復していく過程が実感しやすいことです。消化器系の術後で絶食だった患者さんが食事を取れるようになったとき、骨折で手術をした患者さんがリハビリテーションを頑張って歩けるようになったときは、患者さんと共に喜びを感じていました。なかでも一番のやりがいを感じていたのは、回復し退院する患者さんをお見送りするときです。
きついこと・大変なことは?
外科の看護で大変なことは、状況によってはやるべき仕事が重なり忙しくなることです。外科病棟では、手術予定や入退院、リハビリテーションの予定などスケジュールが決まっています。優先しなければならない仕事が多く、予定が重なると想像以上の忙しさになることがあります。優先順位を判断しながら仕事をしなければならなかったため、きついと感じるときもありました。
外科と内科はどちらが大変?
外科と内科は一概にどちらが大変とはいえません。どちらも大変なところがある反面、やりがいや魅力もあるからです。だからこそ、自分の性格や価値観にあった診療科を選ぶことが大切だと思います。新人のうちは何が自分に合うかわからないこともあるので、外科と内科の特徴を理解して興味のあるほうを選ぶとよいでしょう。
病院によってはローテーション研修として複数の病棟を経験した後に配属希望が出せるところもあります。配属希望を決めかねている人はローテーション研修がある病院を選ぶのもおすすめです。
培われるスキルは?
外科看護師において培われるスキルは、主に判断能力とタスク管理能力です。外科では展開の早い周手術期の看護を学ぶことができます。患者さんの状態をアセスメントし状況に合わせて看護判断ができる能力や、多重業務下でやるべきことに優先順位をつけながら仕事を進める能力が身につきます。
また、看護処置や医師の介助が業務の多くを占めるため、さまざまな看護手技や清潔操作の知識など、看護師が知っておくべきことを学ぶ機会は増えるでしょう。
その後のキャリアプランやおすすめの資格は?
外科病棟の場合は、がん患者さんの手術を担当することが多いため、がん看護専門看護師や乳がん看護認定看護師の資格がおすすめです。また、ストーマの知識を有する皮膚・排泄ケア認定看護師の資格も消化器外科で役立ちます。
認定看護師や専門看護師の資格以外にも、それぞれの外科専門分野で役立つ資格はいろいろあるので、まずはどの専門分野に進むか決めるとよいでしょう。
︎外科看護師になるには? 向いている人の特徴
外科看護師になるには、外科がある病院やクリニックに就職する必要があります。外科は多くの病院が掲げているため、就職の難易度はそれほど高くないかもしれません。ただし、就職後に外科に配属されなければならないため、志望動機は明確にしておきましょう。
外科が向いている人の特徴
外科が向いている人の特徴を以下にまとめました。
- テキパキと物事を進めるのが好き
- 急性期の看護を学びたい
- ケアよりも医療処置に興味がある
外科は内科に比べると患者さんの変化がはっきりとしており経過の展開が早いため、患者さんの状態や周手術期の段階に応じた看護やケアを提供する必要があります。そのため、テキパキと物事を進めるのが好きな人や、急性期の看護を学びたい人が向いているでしょう。
また、創傷処置や医師が行う医療処置の介助などを学ぶ機会も多いため、ケアよりも医療処置に興味がある人にはおすすめの診療科です。
ただし、上記の特徴はあくまで傾向であり、最も大切なことは外科に興味があることです。たとえ現段階で向いている人の傾向を持ち合わせていなくても、配属後に身につけられることもあります。外科に興味がある人はぜひ挑戦してみてくださいね。
外科看護師を目指している学生へ。今からやっておくとよいことは?
外科看護師を目指したい人は、しっかりと解剖生理学を理解しておきましょう。解剖生理学が理解できていると、手術内容や疾患の理解、患者さんに必要な看護を考えるのに役立ちます。
また、どの診療科を目指すかに関わらず、看護師は相手の立場で物事を考えることができる力や幅広い視点をもつことが大切です。そのため、看護学生のうちに読書や旅行、趣味などいろいろなことに興味をもち感性を磨いておくことも必要になります。
外科の配属を目指している人は、就業体験などで実際の現場を見学してみるのもおすすめです。見学することで働くイメージがより明確になり、より具体的で納得感のある志望動機を伝えられるようになります。現在実施されている就業体験、病院が行っている説明会は以下のバナーから検索し申し込めるので、ぜひチェックしてみてください。
︎外科の種類や看護師の働き方を理解してキャリアの選択肢に
外科は手術を中心に治療を提供する診療科で、専門分野は部位ごとに分かれています。骨折や外傷、がんなど幅広い年齢と疾患の人を対象とした急性期の看護に加え、仕事の優先順位のつけ方や看護師としての基礎を学ぶにはおすすめの診療科です。ただし、多重業務になったときの大変さや展開の早い看護が性格的に合わない人もいるため、働き方を理解したうえで就職の選択肢にしてみてください。
参考
厚生労働省:令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(2024年10月29日閲覧)
日本看護協会:認定看護師(2024年10月29日閲覧)
日本看護協会:専門看護師(2024年10月29日閲覧)