中小規模病院とは?大規模病院との違いから看護師が働くメリットまで

中小規模病院とは?大規模病院との違いから看護師が働くメリットまで

最終更新日:2024/09/02

全国に約8000施設ある病院の多くは中小規模の病院です。今回は中小規模病院について、大規模病院との違いや看護師が働く際のメリット・デメリットを解説します。新卒看護師が中小規模病院を選ぶときのポイントも紹介するので参考にしてください。

中小規模病院とは

中小規模病院は病床数によって示されることが多く、日本の病院の約8割を占めているとされます。地域医療を支えるうえで必要不可欠な病院といえるでしょう。ここでは、中小規模病院の定義や大規模病院との違いを詳しく解説します。

中小規模病院の定義は?

中小規模病院の明確な定義は示されていません。ただし、厚生労働省の中小病院看護管理支援事業ガイドラインでは、病床数300床未満の病院を中小規模病院としています。

一方で、厚生労働省が発表している受療行動調査では、病床数20〜99床を小病院、100〜499床を中病院と分類しています。また全国自治体病院協議会では、病床数200床以下の病院を中小規模病院としています。このように、中小規模病院の定義はそれぞれの調査や団体により異なっているのが現状です。

大規模病院との違いは?

ここでは、厚生労働省の中小規模病院看護管理支援事業ガイドラインに則って、病床数300床未満の病院を中小規模病院、300床以上の病院を大規模病院として、特徴の違いを以下にまとめました。

中小規模病院と大規模病院の比較表

【参考】
病院数:令和4年医療施設(動態)調査・病院報告
看護師の初任給(大学卒):2023年 病院看護・助産実態調査 報告書
※平均税込給与総額(基本給+各種手当)を表記
中小規模病院 大規模病院
病院数 6735病院 1421病院
診療科の種類 少なめ 多め
病棟の種類 少なめ 多め
看護師の初任給
(大学卒/税込)
27万1417円 28万4074円
看護師の働き方 幅広い業務を担当することが多い 業務が細分化されていることが多い

厚生労働省の令和4年医療施設(動態)調査・病院報告によると、2022年10月時点の全国の病院数は8156で、そのうちの8割以上を病床数300床未満の中小規模病院が占めています。全国に多数ある中小規模病院は、大規模病院と機能を分担・連携しながら、地域医療を支える役割を担っているといえます。

大規模病院に比べて病床数が少ない中小規模病院は、ひとつの病院に設置されている診療科や病棟の種類が少ない傾向にあります。そのなかで、専門診療科に特化している病院やひとつの病床区分で構成されている病院、人々のニーズに合わせた診療科を有する地域密着型の病院など、その特色は病院によって様々です。

大学卒の初任給で比較すると、大規模病院のほうが高い水準となっています。看護師の働き方については、中小規模病院はひとりの看護師が幅広い業務を担当することが多いのに対し、大規模病院では業務が細分化されることが多いのが特徴です。

大規模病院では勤務する看護師やほかの医療従事者の数が多いため、書類処理やコスト管理を担当する病棟クラークや患者さんの日常生活介助を行う看護助手などが各病棟に配置されることが少なくありません。その場合、看護師は医療処置や診療介助などの看護業務を主に担当します。

反対に中小規模病院では、入退院の書類処理や日々のコスト管理、入浴介助など、ひとりの看護師が幅広く業務を担当するケースが多いでしょう。

中小規模病院のメリットとデメリット

中小規模病院の特徴を踏まえて、働く看護師のメリットとデメリットを紹介します。

メリット

中小規模病院で働くメリットは以下の3つです。

幅広く学べる

中小規模病院で働くメリットは幅広く学べることです。中小規模病院は業務が細分化されていない傾向にあり、看護師が幅拾い業務を担う場合が多くなります。裏を返せば、日常生活援助から看護処置、事務関連の業務まで様々なことが経験できるということです。

入浴や食事の介助、採血やバルーン交換など幅広い業務を経験しておくと、将来違う病院や病院以外の医療施設で働く場合にも役立てられるでしょう。また、大規模病院に比べて、幅広い層の患者さんと関われるのも魅力です。

病院の選択肢が多い

中小規模病院は病院数が多いため、入職先を選ぶ際の選択肢が多いのもメリットです。病院規模や診療科、看護師の働き方など様々な特徴をもつ多くの病院のなかから、自分の理想に近い病院を探すことができるでしょう。なかには専門分野に特化している小中規模病院もあるので、専門性を磨きたい人には、そういった病院を選ぶ選択肢もあります。

大規模病院はその人気から採用の競争率が高いことも多くなります。中小規模病院であれば、施設数が多く選択肢も幅広いため、入職難易度の高くない病院を選ぶことも可能です。

プライベートとの両立がしやすい傾向にある

中小規模病院は、特定機能病院や救急指定病院などの大規模病院に比べ、プライベートとの両立がしやすい傾向にあることもメリットといえます。もちろん、中小規模病院のなかにも残業が多く忙しい病院はありますが、救急指定になっていない病院やワークライフバランスを重視している病院を選べば、プライベートとの両立がしやすいでしょう。

また、リフレッシュ休暇が設けられていて長期休暇が取りやすい病院、子育て支援に力を入れていて子育て世代の看護師が多く長く勤めやすい病院など、具体的な特色を参考に自分のライフスタイルに合わせて働きやすい病院を選ぶこともできるので、福利厚生なども細かく確認してみるとよいでしょう。

デメリット

中小規模病院で働くデメリットは以下の3つです。

高度医療を学ぶ機会が少ない

中小規模病院で働くうえでデメリットになり得るとしたら、高度医療を学ぶ機会が少ないことでしょう。例えば、高度医療を提供する特定機能病院は病床数400床以上の病院と定められており、中小規模病院には当たりません。

また、超急性期や難しい症例の患者さんは、ICUなどの病棟があり、診療科が専門性に応じて細かく分けられている大規模病院に入院するケースが多く、中小規模病院で関わる機会はどうしても少なくなります。

しかし、中規模病院のなかにも、ICUがあるところや、救命救急センターの指定を受けている病院はあります。急性期や救急を学びたい人は、病院説明会や就業体験などで診療科や病棟構成、患者さんの受け入れ状況など、それぞれの病院の情報を確認してみましょう。

待遇が期待できない場合がある

中小規模病院は給料などの待遇面に期待できない場合があるのもデメリットのひとつといえます。

日本看護協会が発表している病院看護実態調査報告書では、大学卒の新卒看護師の初任給(税込)は、病床数300未満の病院では平均27万1417円なのに対し、300床以上の病院は平均28万4074円となっています。勤続10年(31〜32歳、非管理職)の看護師の平均税込給与は、病床数300未満の病院の平均が31万9659円なのに対し、300床以上の病院は平均34万7693円という結果です。

ただし、比較したデータはあくまでも平均で、数多くある中小規模病院のなかには平均水準より高い給与が期待できる病院もあります。また、給与以外の福利厚生などは病院によって異なるため、気になる人は説明会や就業体験の際に確認するようにしましょう。

新卒の同期が少ない場合がある

新人時代は、切磋琢磨しながら成長し合える同期の存在が特に支えになります。しかし、中小規模病院では新卒の同期が少ない可能性があります。中小規模病院は大規模病院に比べて新卒の採用人数が少ない傾向にあり、一緒に頑張る仲間は少ないかもしれません。

ただし、採用人数が少ない反面、手厚い教育が期待できる可能性があります。新卒採用人数や教育方針については事前に情報収集しておくとよいでしょう。

新卒が選ぶなら中小規模病院or大規模病院?

中小規模病院と大規模病院のどちらを選べばよいか、新卒の病院選びのポイントを解説します。

理想の働き方によって選ぼう

中小規模病院と大規模病院の看護師の働き方はそれぞれ特徴があり、メリットとデメリットも異なります。そのため、どちらを選ぶのが正解ということはなく、どちらが自分の理想の働き方に適しているかで選ぶことが大切です。

病院規模だけでなく、機能区分や診療科の違いも比較して総合的に判断し、自分の理想の働き方がより実現できそうな病院を選びましょう。ナース専科では、様々な視点から病院選びのポイントを解説しているので参考にしてください。

新卒看護師が大規模病院を選びがちな理由

看護学生の志望先としては、大規模な大学病院や急性期病院に人気が集まる傾向があります。新卒看護師が大規模な病院を選びがちなのは、以下のような理由によるようです。

新卒看護師が大規模病院を選びがちな理由

  • 診療科が多い急性期病院で経験を積みたいから
  • 大規模病院のほうが安定していると思うから
  • 大規模病院は教育体制が充実していそうだから

大規模病院は診療科が多く急性期医療を提供していたり、新卒採用が多く教育体制が整っていたりする傾向があるため、看護学生には人気が高いようです。ただし、なんとなく周りに流されて大規模病院を選んでしまうと、現実とのギャップから早期離職につながるケースもあります。

病院選びは病院の規模にとらわれず、自分に合った病院を選ぶことが大切です。自分の理想の働き方と中小規模病院の特徴がマッチする人は、中小規模病院も選択肢に入れてみましょう。

中小規模病院を選ぶときのポイント

ここからは中小規模病院を選ぶときのポイントを解説します。

自分の働き方の理想を明確にする

理想の働き方を実現するためには、自分の理想を明確にしておくことが重要です。病院選びの前に自己分析を行って、自分の価値観や理想の看護師像を深掘りしましょう。その際、どのような看護師になりたいかだけでなく、仕事とプライベートをどのようなバランスで過ごしたいか、理想の生活をするためにどのくらいの給料水準を望むかなど細かく分析すると、理想の働き方がより明確になります。

説明会や就業体験に行く

理想の働き方に合った病院を選ぶためにも、ぜひ説明会や就業体験に参加しましょう。説明会や就業体験では、求人票だけではわからない病院の雰囲気や、どのような人が働いているかなど、現場のリアルな情報が得られます。

また、中小規模病院志望であったとしても、大規模病院の説明会や就業体験にも参加して比較することをおすすめします。規模が違う病院と比較することで、どのような病院が自分の理想と合うかがより明確になるはずです。どんな病院があるかわからない人は、以下のページから条件を選択して探してみましょう。

教育制度を確認しておく

気になる病院がみつかったら、どのような教育制度を整えているかを確認しましょう。新人教育制度はもちろん、入職後のキャリア教育に関する内容も確認することが大切です。中小規模病院は数が多く、病院によって特徴が異なるため、複数の病院を比較検討するとよいでしょう。

教育制度を確認する場合も、合同説明会や就業体験に参加するのがおすすめです。説明会や就業体験では、毎年の新卒採用枠や看護師の教育制度についての方針など、病院側に直接質問することができます。ナース専科 就職では、全国の病院の説明会や就業体験情報を発信しているので、積極的に活用してみてください。

就業体験

※ナース専科 就職

中小規模病院の特徴を理解して病院選びの選択肢に

日本の病院の8割以上は一般的に病床数300床以下の中小規模病院とされています。看護学生には大規模な急性期病院のほうが人気が高い傾向にありますが、新卒時から中規模病院に入るメリットは少なくありません。中小規模病院が理想の働き方とマッチする人は病院選びの選択肢に入れてみましょう。病院によって様々な特徴があるので、資料請求や説明会、就業体験を活用して情報収集をしてみてください。

参考

厚生労働省:中小規模病院看護管理支援事業ガイドライン(2024年6月13日閲覧)

厚生労働省:令和2年受療行動調査(確定数)の概況(2024年6月13日閲覧)

公益社団法人 全国自治体病院協議会:中小病院委員会(2024年6月13日閲覧)

厚生労働省:令和4年医療施設(動態)調査・病院報告の概況(2024年6月13日閲覧)

日本看護協会:2023年 病院看護実態調査 報告書(2024年6月13日閲覧)

執筆者情報

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柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。