看護師1年目で辞めたいと感じる人は多い?その理由と対処法を紹介

看護師1年目で辞めたいと感じる人は多い?その理由と対処法を紹介

最終更新日:2024/04/03

看護師1年目は生活スタイルも変化し、悩みを感じやすい時期です。では1年目の看護師は、とくにどのような理由で離職を検討するのでしょうか。調査結果をもとに分析し、入職前後の対処法をまとめました。入職を控える看護学生や新人看護師はぜひ参考にしてください。

看護師1年目の離職状況

理想と現実のギャップを感じやすい看護師1年目。ここでは看護師1年目の離職率について、病院の規模別、エリア別に分けて詳しく解説します。各データから近年の新卒看護師の離職状況を把握しましょう。

【全体】看護師1年目の離職率

以下のグラフは、日本看護協会が実施した2023年病院看護実態調査より、近年の看護師1年目の離職率と、比較対象として厚生労働省が発表する新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況から、大卒・短大卒の社会人1年目の離職率を示したものです。

社会人1年目の離職率

参照:日本看護協会:2023年病院看護実態調査
  :厚生労働省:新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況

最新データである2022年の離職率は10.2%と、2021年より0.1%下がったものの、2年連続で10%を超える結果となりました。およそ10人に1人が看護師1年目で離職している割合です。

その背景には、新型コロナウイルス感染症の影響が考えられています。2023年病院看護実態調査では「2022年度に早退職者が増加した」と回答した病院は約35%で、そのうち新型コロナウイルス感染症による影響と回答した割合は41.5%と昨年よりも多い結果でした。

なお、厚生労働省が発表する新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況をみると、全職種を含めた社会人1年目の同年の最新の離職率は短大等卒で19.2%、大卒は12.0%です。全職種を含めた社会1年目の離職率と比べると、看護師1年目の離職率は極端に高いわけではありません。

【病院規模別】看護師1年目の離職率

日本看護協会の2022年病院看護・助産実態調査報告書によると、2022年における病床数ごとの看護師1年目の離職率は以下のとおりでした。

病床数別の新卒看護師の離職率

参照:公益社団法人日本看護協会:2022年病院看護・助産実態調査報告書

病床数 離職率
99床以下 13.9%
100~199床 12.7%
200~299床 9.2%
300~399床 11.8%
400~499床 9.6%
500床以上 9.3%

この表から、病床数が少ない小規模な病院ほど離職率が高いことがわかります。これは例年通りの結果です。考えられる要因として、大規模な病院に比べると教育・研修体制や待遇面が不十分な病院が多いことが挙げられます

また、人手不足により急な休みや時短勤務などに対応できず、辞めざるをえなかった場合もあるでしょう。

【エリア別】看護師の1年目離職率

以下の表は、日本看護協会の2022年病院看護・助産実態調査報告書から、2022年における看護師1年目の離職率をエリア別で見たときの結果です。離職率が高いエリアと低いエリアそれぞれ3位までの都道府県と、参考として正規雇用看護師の離職率が高いエリア3位までを示しています。

エリア別の看護師の離職率

参照:公益社団法人日本看護協会:2022年病院看護・助産実態調査報告書

看護師1年目
離職率が高いエリア
看護師1年目
離職率が低いエリア
正規雇用看護師
離職率が高いエリア
1位 香川県(17.1%) 福井県(3.7%) 東京都、神奈川県(14.6%)
2位 栃木県(14.3%) 静岡県(4.1%) 大阪府(14.3%)
3位 長崎県(13.3%) 富山県(5.1%) 千葉県(13.5%)

看護師1年目の離職率が高いエリア1~3位に大きな共通点はありませんでしたが、離職率が低いエリア上位3つは地方に集中していることがわかります。一方、正規雇用看護師の離職率が高いエリアをみると、大都市部やその周辺の都市がランクインする結果になりました。

看護師1年目の離職率が高いエリア3位までには大都市部は入っていませんが、地方より大都市の離職率のほうが高くなりやすいと考えられます。その要因として、医療機関が多く転職しやすい環境であることや、患者さんの数が多いことによる業務量の負担増などが挙げられるでしょう。

看護師1年目で離職を検討した人の割合

実際に離職を選択しなかったとしても、入職1年目で離職を検討したことがある看護師もいるでしょう。ここからは、ナース専科が実施したアンケートの結果をもとに、看護師1年目で離職を検討した人の割合とその原因を深堀します。

約1/4の看護師が1年以内で離職を検討

以下のグラフは、ナース専科が実施した「はじめて離職(転職)を検討した時期」に関するアンケート結果です。ちなみに、1年以内に離職を検討した看護師は24.3%、約4人に1人の割合でした。

はじめて離職(転職)を検討した時期は?

一般的に一人前の看護師とされる3年目までを含めると、離職を検討した人は55.3%と半数以上にのぼります。3年目は病院から奨学金を借りていた場合に指定される返還免除の条件期限であることも多く、離職の目安としている人も多いようです。

この結果は独自のアンケート調査によるものなので、あくまで参考の数字でしかありません。しかし、現に早期離職を考える看護師は多く、看護師1年目であっても辞めたいと感じることは珍しくないといえます。

なぜ早期離職を検討する人が多い?

早期離職を検討する原因のひとつに、入職後のギャップが挙げられます。ナース専科が同じ人を対象に実施したアンケートによると「入職後にギャップを感じた」と答えた人は約7割にのぼりました。

学生から社会人になるときには、少なからずギャップを感じるのは当然です。しかし、実習や勉強で忙しい看護学生は、あまり働くイメージを持てていないまま看護師になるため、入職後にさまざまなギャップに悩まされるのかもしれません。

入職後のギャップが続くと、より焦りや落胆を感じやすくなります。その結果、看護師として働くことがつらくなり、離職を検討してしまう人も多いのではないでしょうか。現に先輩も多くのギャップに悩んでいます。以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

1年以内で離職を検討した理由

実際に離職を検討する理由は人それぞれです。ここでは、1年以内に離職を検討したことがある先輩看護師の具体的な理由を紹介します。

人間関係

看護師1年目で「辞めたい」と思った人の理由で最も多かったのが人間関係の問題です。人間関係は働きやすさに直結し、自分とは合わないと感じると離職を考えるようになります。看護師が悩む人間関係の問題には、以下のようにいろいろな要因があります。

  • 上司や医師が怖かった
  • 上司との相性が悪かった
  • 病棟の雰囲気が合わなかった
  • 同僚とも馴染めなかった

とくに、まだ職場や業務に不慣れな1年目で人間関係に悩みが生じてしまうと、精神的な負担も大きいでしょう。人間関係の問題には相談できる相手を見つけることが重要です。

業務内容や業務方針

業務内容や業務方針と自分が描いていた理想との間でずれを感じ、離職を検討したと答える看護師もいます。看護師1年目では日々の業務をこなすことに必死で、理想の看護ができないケースも多いでしょう。

ほかにも「希望の配属先とは違った」「スキルアップできるような内容ではない」などのケースもあります。思っていた業務内容と現実との間でずれが生じると、やりがいを感じられず「辞めたい」と感じやすくなるのです。

業務量の多さ

離職を検討した理由として、業務量の多さによるモチベーションの低下も挙げられます。入職直後は受け持ち患者さんの数自体は多くありません。しかし、1年目は病態や検査などの知識・手技の獲得以外にも、1日の流れや病院のシステム、スタッフを覚えなければならず、日々精一杯です。

さらに、受け持ち患者さんのための勉強と並行して、病棟や病院開催の研修・勉強会へも参加します。そのほかにも1年目は業務終了後に先輩との振り返りの時間があり、残業も多くなりがちです。結果、プライベートの時間が少なくなり、心身ともに疲弊してしまう人もいるでしょう。

身体的・精神的な負担

看護師は、業務内容や勤務形態面からみても身体に負担がかかる仕事です。ボディメカニクスに注意しなければ、容易に腰痛にもつながるでしょう。夜勤や日勤を繰り返すことで体調不良を引き起こす可能性も高くなり、結果的に離職を検討せざるを得なくなる人もいます。

また、常に不安やプレッシャーのかかる仕事であることから、心身の不調につながり仕事を続けることが難しくなる場合もあるでしょう。

待遇面

看護師は年収が高いイメージがあるものの、実際に働き始めると思ったよりも少なく感じ、看護師を続けるか迷う人もいます。

看護師の給料は夜勤の回数やボーナスによっても変動しますが、とくに入職後すぐは夜勤もなく夏のボーナスも満額支給されないため、より少なく感じてしまうのかもしれません。ただ、給料に関しては勤続年数が増えるごとに増額していくでしょう。

また勤務条件面に関しては「休み希望は1ヵ所まで・3ヵ所まで・冠婚葬祭のみ」など、希望通りの休みが取りづらい場合もあります。休み希望のルールは上司によっても変わるため入職後に知るケースも多く、融通がきかないと感じると離職を考える人もいるようです。

看護学生・新人看護師ができる対処法

ここでは、新人看護師が離職につながらないようにするための対処法を紹介します。入職前にできることや入職後に「辞めたい」と感じてしまったときにできることでもあるので、ぜひ参考にしてください。

入職前の看護学生向け対処法

まずは、これから入職する看護学生ができる対処法を3つ紹介します。

自己分析を必ずする

自己分析がしっかりできていないと、入職後のギャップに苦しむ可能性が高く「辞めたい」と感じてしまうことになりかねません。自分にあった職場を選ぶためにも、自己分析して自分の価値観や長所・短所をきちんと理解しましょう。

自己分析することで働くイメージも明確になり、入職後のギャップも最小限にすることができるはずです。また自己理解が深まると、悩んだ時の対処の仕方もわかるため、早い段階で自己分析することをおすすめします。

自己分析の方法は以下の記事にまとめています。ぜひ参考にしてください。

自分の価値観にあわせた職場を選ぶ

入職先は親や先生からすすめられたからではなく、自分の価値観に合うかを重視して選ぶことが大切です。価値観にあっていない職場を選んでしまうと、無理をしてしまったり不満がたまったりして長続きしない可能性が高くなります。

自己分析で自分のもつ価値観が明確になったら、どの職場なら自分らしく働けるのか情報収集し、いろいろな病院を比較しましょう。また書面での情報収集だけではわからないことも多々あるため、合同説明会でさまざまな病院の話を聞いたり、インターンで実際に体験してみたりする方法もおすすめです。

どのように病院を選ぶべきかわからない方は、以下の記事も参考にしてみてください。

先輩看護師に話を聞く

入職後のギャップを最小限にするために、その職場で働いている先輩看護師に話を聞いてみるのもおすすめです。実際に働いている人の話を聞くことで自分の働くイメージもしやすくなります。機会があればぜひ先輩看護師の1年目のときの経験談や、病院の雰囲気などを聞いてみましょう。

なお、看護学生専用の「就活のトリセツ」では、自分の価値観を深堀する方法や、職場の情報収集のコツなどがわかりやすくまとめられています。こちらもぜひチェックしてみてください。

就活のトリセツ

※ナース専科就職ナビより

入職後の新人看護師向け対処法

入職後に悩みを抱えたり「辞めたい」と感じてしまったりしたときは、以下の対策を取ってみてください。

完璧を求めすぎない

1年目はできなくて当たり前なので、完璧を求めすぎないことが大切です。先輩看護師や医師も「1年目はこれからできるようになっていく」ととらえています。自分の心の負担になるような過度なプレッシャーを与えるのは避けましょう。

看護師1年目は、まずは先輩のアドバイスを素直に聞くことと、そこから少しずつできることを増やしていくことを意識して仕事に励んでくださいね。

相談できる相手をみつける

悩みやモヤモヤは一人で抱えても解決できないことがあります。ときには人に頼ることも必要です。同期や先輩、学生時代の友人、家族など、だれでもよいので悩んだときに相談できる相手をみつけましょう。

同じ職種であれば共感や効果的なアドバイスがもらえ、同期なら協力して業務にあたることもできます。違う職種だとしても、第三者からみた感想やアドバイスをもらえるかもしれません。

休息時間を確保する

働くことは、想像以上に心身に負担がかかります。忙しいなかでも意識して休むことが重要です。とくに看護師は体力仕事であるため、疲労もたまりやすくなります。さらに、看護師1年目は環境の変化によって余計に負担を感じる人もいるでしょう。

定期的に体を休める時間を設けることで、心の安定にもつながります。ただ休むだけでなく、自分がしたかったことに取り組むことも立派な休息です。プライベートの時間を有意義に過ごせるように心がけてみてください。

早期離職を避けるためにも今できる対策をしよう

看護師1年目はギャップを感じやすく「辞めたい」と離職を考える人も多い時期です。しかし、就活の取り組み方、入職前の準備や心構え、仕事の向き合い方次第で早期離職が防げる可能性もあります。働いてみてどうしてもつらくなったら転職や離職を検討するのも間違いではありません。しかし、まずは辞めたいと感じないようにするために、今できることに取り組みましょう。

引用・参考

公益財団法人日本看護協会:新卒看護職員の離職率が 10.3%に増加(2023年11月17日閲覧)

厚生労働省:新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します(2023年11月17日閲覧)

公益社団法人日本看護協会:2022年病院看護・助産実態調査報告書(2023年11月17日閲覧)

厚生労働省:令和4年賃金構造基本統計調査(2023年11月17日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

小春 ゆき

koharu-yuki

看護短期大学を卒業後、聖マリアンナ医科大学病院にてNICU病棟に3年勤務。結婚を期に在宅医療へ転職し、10年間リハビリや終末期医療に携わる。3人の育児をしながら、現在は専業Webライターとして活動中。訪問看護ステーションのホームページ制作や医療・転職メディアなどで多数執筆。