【最新の看護師の初任給】手取り額、ボーナスからお金の管理法まで紹介

【最新の看護師の初任給】手取り額、ボーナスからお金の管理法まで紹介

最終更新日:2024/08/23

看護師になったらどのくらい給与がもらえるのか気になる人も多いでしょう。今回は、看護師の平均初任給や手取り額、ボーナスの平均額を日本看護協会や厚生労働省のデータをもとに紹介します。働く前に知っておきたいお金の管理法も紹介するので参考にしてください。

新卒看護師の初任給と手取り額

ここでは日本看護協会の病院看護・助産実態調査をもとに、新卒看護師の平均初任給と手取り額の内訳を解説します。

平均初任給は26〜27万円、平均手取り額は約21万

下記は2023年度の専門卒と大卒看護師の平均初任給と手取り額をまとめたものです。

新卒看護師の平均初任給

出典:2023年 病院看護・助産実態調査 報告書

※平均税込給与総額は各種手当を含む(時間外手当は除く)
※夜勤手当は三交代で夜勤8回(二交代で夜勤4回)にて算出
※平均手取り額は給与総額の8割として算出

平均基本給 平均給与総額 平均手取り額
専門卒 204,950 円 266,558 円 約210,000円
大卒 210,963 円 274,752 円 約217,000円

2023年 病院看護・助産実態調査 報告書によると、新卒看護師の初任給(平均給与総額)の平均額は26〜27万円です。専門卒と大卒では基本給に約8000円の差があるため、給与総額と手取り額にも差が出ています。

ちなみに、厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査をもとに算出した医療・福祉産業で働く人の平均初任給は、22万5400円です。新卒看護師の初任給26〜27万円と比べると4万円程度の差があり、看護職は医療系職種のなかでも給料水準が高い職種といえるでしょう。

ただし、実際に受け取れる金額(手取り)は給与総額の8割程度となるため、看護師の初任給の手取り額は21万円程度となるでしょう。

給与の内訳

給与の手取り額は、基本給以外に支給される通勤・住宅・夜勤などの各種手当の額と、社会保険料や税金が差し引かれた額で決まります。基本給は施設ごとに規定され、年齢や経験年数によって昇給するのが一般的です。

ここではどのようなものが加減されるのか、給与の内訳を解説します。差し引かれるものと支給される手当等を理解しておきましょう。

差し引かれるもの

給与総額から差し引かれるものには、以下のようなものがあります。

給与総額から差し引かれるもの
所得税 国が定める税率に従い給与所得に対してかかる税金
※給与所得とは給与から給与所得控除額を差し引いた金額であり、給与所得控除額は給与によって異なる
住民税 1月1日時点に住民票がある市町村(道府県)に納める地方税
※道府県民税と市町村民税があり一括で徴収されるが、税率は基準を踏まえて各自治体の実情に合わせて決められている
社会保険料 健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険にかかる保険料
※医療保険制度や公的年金制度などの財源であり、納付することで自身も社会保障を受けられる

住民税は前年の1月1日〜12月31日の所得に対し課税されるため、入職後1年目は差し引かれません。ただし、入職後2年目からは住民税が引かれるため、2年目の手取り額が1年目より少なくなることもあります。一方、社会保険料は月の所得額に応じて毎月差し引かれるため(前月分を翌月に徴収)、初任給の翌月から差し引かれます。

支給される手当

基本給以外に支給される手当には、主に以下のようなものがあります。

基本給以外に支給される手当
資格手当 看護師資格に対する手当(病院によっては基本給に含まれている場合あり)
役職手当 管理職、役職者に支払われる手当
夜勤手当 1カ月あたりの夜勤勤務の回数に応じて加算される手当
交代勤務手当 交代勤務が必要な職に就く人に支給される手当
家族手当 扶養している家族や子どもがいる場合に支給される手当
通勤手当 通勤かかる交通費等を支給する手当
住宅手当 住宅費の負担軽減を目的とした手当

各種手当は病院が提供する福利厚生によって決まるため、受け取れる手当の種類や金額も就職先の病院で異なります。

また、新卒看護師の夜勤は夏から秋にかけて始まることが多く、夜勤手当がつかない4月の初任給は平均給与総額より低くなる傾向です。

近年の看護師初任給の変化

以下は2023年から過去3年間の新卒看護師の初任給(平均税込給与総額)をまとめたものです。

初任給(平均税込給与総額)の推移

出典:日本看護協会調査研究報告シリーズ

※平均税込給与総額は各種手当を含む(時間外手当は除く)
※夜勤手当は三交代で夜勤8回(二交代で夜勤4回)にて算出

専門卒 大卒
2023年 266,558 円 274,752 円
2022年 263,711 円 271,730 円
2021年 259,233 円 267,440 円

過去3年間の新卒看護師の初任給は、微増です。高齢化による看護・介護需要の拡大や、少子化による医療従事者不足により看護師の需要は今後も拡大が見込まれています。日本看護協会は社会情勢を踏まえて、看護職員の処遇改善に取り組んでいます。今後、看護師の初任給の水準アップに期待したいところです。

条件別にみた看護師の初任給

ここからは初任給の給与総額を地域、施設規模、設置主体別に解説します。

地域別

新卒看護師の初任給は地域差があります。2023年 病院看護・助産実態調査より、専門卒と大卒の給与総額を地域別にまとめました。

都道府県別・初任給の平均税込給与総額ランキング

出典:2023年 病院看護・助産実態調査 報告書

※平均税込給与総額は各種手当を含む(時間外手当は除く)
※夜勤手当は三交代で夜勤8回(二交代で夜勤4回)にて算出

地域別で初任給(平均税込給与総額)を比較すると、専門卒・大学卒どちらも最も高いのは千葉県で、最も低いのは宮崎県となっており、その差は5万円以上でした。都市部とその周辺は初任給が平均よりも高い傾向にあり、地方になるほど平均より低くなり地方より都市部のほうが給与水準が高いことがわかります。

また、各都道府県の専門卒と大卒の給与総額の差は6000〜1万円程度となっており、最終学歴による給料の差にも地域差があるようです。

施設規模別

新卒看護師の初任給(平均税込給与総額)は施設規模によっても差があります。2023年度の施設規模(病床数)別のデータは以下のとおりです。

施設規模別初任給の給与総額(平均税込給与総額)

出典:2023年 病院看護・助産実態調査 報告書

※平均税込給与総額は各種手当を含む(時間外手当は除く)
※夜勤手当は三交代で夜勤8回(二交代で夜勤4回)にて算出

病床数 専門卒 大卒
全国平均 266,558 円 274,752 円
99床以下 260,415 円 268,265 円
100~199 床 265,219 円 272,320 円
200~299 床 266,325 円 274,566 円
300~399 床 272,834 円 282,470 円
400~499 床 274,907 円 284,818 円
500 床以上 276,437 円 285,528 円

専門卒と大卒ともに500 床以上の施設が最も高く、99床以下の施設が最も低い結果となっており、1万円程度の差があります。施設規模別の初任給は、規模が大きいほど高い傾向があるといえるでしょう。

病床数が多い大規模病院は、救急医療や高度急性期医療を担っていることが多いため、緊急度や重症度が高い患者さんも受け入れます。そのため、病院の収入源である診療報酬が高く、看護師の給料も高い傾向があると考えられます。

ただし、急性期医療を提供する大規模病院の場合は、入退院の多さや専門スキルの必要性があるため、看護師への負担は大きいかもしれません。

設置主体別

病院を設置した組織の違いによっても初任給に差があるようです。主な設置主体別の初任給の比較したものを以下の表にまとめました。

設置主体別初任給の給与総額(平均税込給与総額)

出典:2023年 病院看護・助産実態調査 報告書

※平均税込給与総額は各種手当を含む(時間外手当は除く)
※夜勤手当は三交代で夜勤8回(二交代で夜勤4回)にて算出

設置主体 専門卒 大卒
全国平均 271,430 円 274,752 円
国立 266,969 円 283,065 円
公立 259,721 円 277,067 円
医療法人 264,727 円 271,750 円
私立学校法人 284,309 円 293,243 円

設置主体別で初任給を比べると、専門卒と大卒ともに大学の附属病院などの私立学校法人が経営している病院がもっとも高く、平均より1万円程度高い結果となっています。

その他の設置主体を比較すると、大卒は国公立が平均よりやや高くなっていますが、専門卒ではほとんど差はありませんでした。ただし、福利厚生の条件や昇給、退職金などには違いがあるかもしれません。

看護師のボーナス事情

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、看護師全体のボーナス平均は約86万円となっています。ボーナスの金額や査定方法は病院によって異なり、さらに一般的には経験年数が上がるほど高くなります。では、新卒看護師を含む若手看護師のボーナス事情はどうなのでしょうか。詳しくみてみましょう。

20代前半の平均ボーナス額は46万2000円

同調査の年齢別データによると、20〜24歳の看護師のボーナスは約46万2000円となっています。ボーナスからも所得税や社会保険料は差し引かれるため、手取り額にすると37万円程度です。

ちなみに、20代前半の助産師の平均ボーナスは41万9000円、准看護師は25万7000円となっており、看護師の平均ボーナスは同業他職種と比べるとやや高いことがわかります。ただし入職後1年目は、ボーナス査定時期の関係で夏のボーナスがない、または少ない病院もあります。

ボーナスについては「賞与」として、求人情報に前年の実績を掲載している病院もあります。基本給をベースに〇〇カ月分などと記載してあるので、気になる人は病院の求人票をチェックしておきましょう。

看護師の年収事情

厚生労働省のデータによると、看護師全体の平均年収は約508万円となっています。看護師1年目については平均年収がどの程度になるか、以下で詳しく解説します。

看護師1年目の平均年収はおよそ360万円

2023年 病院看護・助産実態調査 報告書の新卒看護師の初任給と、令和4年賃金構造基本統計調査の平均ボーナス額より算出した看護師1年目の平均年収は、おおよそ360万円になります。

国税庁の令和3年分民間給与実態統計調査によると、日本で給与所得のある人全体の20〜24歳の平均年収は269万円となっているため、看護師1年目の平均年収は同年代と比べると高い水準であることがわかります。

助産師・保健師との年収比較表

次に、看護師と同業他職種の年収を比較します。以下は、看護師、助産師、保健師の全体の平均年収と20〜24歳の平均年収を比較した表です。

看護師・助産師・保健師の平均年収

参考:令和4年賃金構造基本統計調査

※平均年収は決まって支給する現金給与額×12(カ月)+年間賞与その他特別給与額にて算出

20〜24歳の平均年収 全体の平均年収
看護師 約4,000,000円 約5,080,000円
助産師 約4,100,000円 約5,840,000円
保健師 約3,470,000円 約4,810,000円

看護師の平均年収は、20代前半と全体平均のどちらも助産師より低いものの、保健師よりは高い水準となっています。

助産師はより専門性が高い職種であるため、平均年収も高くなる傾向です。保健師も専門性が必要な職種ですが、看護師や助産師が働く職場は24時間交代勤務のところが多く夜勤手当があることから、保健師の平均年収のほうが低くなると考えられます。

看護師になる前に知っておきたいお金の管理法

様々なデータからもわかるように、ほかの職種と比べ看護師の給料水準は比較的高いといえるでしょう。しかし、看護師のお金の使い方は二極化していて、貯蓄形成ができている人とお金の管理が苦手な人に分かれるようです。

そこで、ここでは看護師になる前に知っておきたいお金の管理法を紹介します。新卒のうちから将来に備えたマネープランを立てられるように、早い段階でお金の管理法を身につけておきましょう。

生活費用とは別で貯金口座を作る

計画的に貯金をするコツは、生活費と貯蓄口座を分けることです。口座を分けておけば、気づかないうちにやってしまいがちな使い過ぎを防げます。

確実な資産形成を目指す場合は、毎月の給料から一定額を貯蓄にまわす先取り貯金がおすすめです。銀行の自動積み立てや、職場の財形貯蓄制度などを活用してみましょう。

使ったお金は見える化して管理する

使い過ぎを防ぐコツは、お金を見える化して管理することです。家計簿などを使って毎月の収支を把握しておけば、無駄遣いや知らないうちに使い過ぎるのを防げます。

手帳タイプや家計簿アプリなど様々な家計簿ツールがあるので、自分が使いやすく継続できそうなものを選んでください。

iDeCoやNISAで運用する

よりお得に資産形成をしたい人には、iDeCoやNISAがおすすめです。

iDeCoとは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に、自分のお金を自分で運用し節税しながら将来のために資産形成する私的年金制度です。また、NISAは、一定の範囲のなかで行った投資から得られた利益に対し税金がかからない少額投資非課税制度です。どちらも国の制度で、投資のなかでもハードルが低いため、投資が初めてという人はここからスタートするとよいでしょう。

もっと積極的に運用したい人は、iDeCoやNISA以外にも投資方法があるので調べてみましょう。

日本の税の仕組みを理解しておく

日本で働くからには、様々なルールに則って税金や保険料を納めなければなりません。お金の流れを理解して自分で管理するためには、日本の税金制度を理解しておくことも大切です。控除などの仕組みを知っておくことで節税することもできるため、今一度税金についての知識を深めておきましょう。

看護師の初任給について理解しておこう

新卒看護師の平均税込初任給は給与総額が26〜27万円、手取り額は21万円程度となっています。初任給は地域や病院規模、設置主体によっても差があるため、相場を知り、病院選びに役立ててください。また、看護師の初任給は他の職種に比べると高水準ですが、かえって使い過ぎてしまうこともあり得ます。若いうちにお金に関する知識を身につけ、上手にお金を管理して将来に備えましょう。

出典・参考

日本看護協会:2023年 病院看護・助産実態調査 報告書(2023年10月4日閲覧)

日本看護協会:労働に関すること,5分で分かる給与明細(2023年10月4日閲覧)

厚生労働省:令和4年賃金構造基本統計調査(2023年10月4日閲覧)

国税庁:令和3年分 民間給与実態統計調査(2023年10月4日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。