男性看護師の年収・給料事情から需要まで│学生が知りたいリアルを解説
最終更新日:2024/09/02
男性看護師は女性が多い看護業界においてマイノリティな存在です。就職前に少なからず不安を抱える男性看護学生も多いでしょう。今回は男性看護学生が知っておきたい男性看護師の現状の割合と需要から平均年収・給料事情までを解説します。
目次
男性看護師(ナースマン)の実態調査
近年徐々に増えつつある男性看護師ですが、看護業界のなかではいまだマイノリティな存在であり、実際に医療現場で働く男性看護師の情報が少ないと感じる看護学生も多いでしょう。そこで厚生労働省のデータをもとに、男性看護師・准看護師の就業者数や割合を調査しました。
男性看護師・准看護師の就業者数
以下は令和4年の男性・女性それぞれの看護師・准看護師の人数です。
男性 | 女性 | 男女計 | |
---|---|---|---|
看護師 | 112,164人 | 1,199,523人 | 1,311,687人 |
准看護師 | 18,808人 | 235,521人 | 254,329人 |
令和4年の時点で、女性看護師数は119万9523人であるのに対して男性看護師11万2164人となっています。さらに准看護師で比べても圧倒的に女性のほうが多いことがわかります。
男性看護師の割合
厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例」で示されている全看護師に対しての男性の割合です。
女性看護師と男性看護師の数を割合でみると、女性看護師91.4%に対して男性は8.6%です。看護師業界はまだまだ女性社会であるといえるでしょう。
自分の職場の男性看護師の有無
さらに自分の職場に男性看護師が在籍しているかについて、看護師へアンケート調査を行いました。
※ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:304)
アンケートでは60.8%の看護師が「職場に男性看護師がいる」と回答しました。男性看護師と女性看護師の割合でみると、男性看護師の数は圧倒的に少ないものの、実際の職場には男性看護師が在籍している可能性は高いといえます。
男性看護師の給料・年収事情
男性看護師として就職を考えた際に、気になるのが収入面です。女性看護師や一般男性の給料・平均年収と比較しながら解説します。
男性看護師の給料・平均年収
厚生労働省と国税庁のデータから、男性看護師・女性看護師・一般男性の給料と平均年収を調査しました。以下はその比較表です。
男性看護師 | 女性看護師 | 一般男性 | |
---|---|---|---|
給料 | 34万9300円 | 33万7000円 | 38万3300円 |
平均年収 | 約505万円 | 約490万円 | 約545万円 |
給料・平均年収は女性看護師よりもやや高め
男性看護師の給料・平均年収を女性看護師と比較すると、月額1万2300円、平均年収では15万円の差があり、男性看護師の方がやや高めの水準となっています。女性の数が圧倒的に多い看護師業界ですが、収入面では男性看護師の方が高い収入を得られる可能性があります。
一般男性の平均年収と比べると低い傾向にある
一方で、男性看護師と一般男性の給料・平均年収を比較すると、月額3万4000円、平均年収では40万円の差があり、男性看護師の方が低い傾向にあります。ただ、一般男性の職種によっても年収は異なる点は理解しておく必要があります。
年齢・男女別の看護師の給料・平均年収
次に男看護師と女性看護師の給料・平均年収を年齢別に比較した表を紹介します。
男性看護師 | 女性看護師 | |||
---|---|---|---|---|
年齢 | 給料 | 平均年収 | 給料 | 平均年収 |
20~24歳 | 27万8000円 | 377万0000円 | 29万7000円 | 399万8000円 |
25~29歳 | 33万000円 | 469万0000円 | 33万4000円 | 474万4000円 |
30~34歳 | 36万0000円 | 514万0000円 | 32万8000円 | 475万6000円 |
35~39歳 | 36万8000円 | 522万9000円 | 34万3000円 | 492万9000円 |
40~44歳 | 38万5000円 | 554万4000円 | 35万7000円 | 520万0800円 |
45~49歳 | 40万0000円 | 572万4000円 | 38万4000円 | 563万0000円 |
50~54歳 | 41万1000円 | 594万0000円 | 38万2000円 | 559万2000円 |
55~59歳 | 36万5000円 | 558万1000円 | 39万3000円 | 591万7000円 |
60~64歳 | 26万6000円 | 394万8000円 | 29万1000円 | 424万8000円 |
男性看護師と女性看護師の給料・平均年収を年齢別に比較すると、20代では女性看護師の方がやや高いものの、30歳以降からは男性看護師の方が年間30万円以上高くなっています。
差が開く理由として女性は妊娠・出産で仕事を離れる期間があり、子育ての都合で時短勤務やパートに変更する人も多いためです。
近年の男性看護師の需要は?
女性が90%以上を占める看護師業界ですが、男性看護師の需要は高まっているといわれています。では実際にどのくらいの需要が伸びているのか、男性看護師の10年間の就業者数の推移から読み取ります。
男性看護師の就業者数は直近10年間で2倍に増加
ここ10年の男性看護師の就業者数を比較したところ、2010年男性看護師数は53,748人であるのに対して、2020年男性看護師数は104,365人とおよそ2倍に増えていることがわかりました。
近年の男性看護師の推移
さらに2年ごとで比較しても男性看護師として働く人は年々増加していることから、需要が高まっているといえます。医療サービスの拡大にともない、今後男性看護師が活躍できる職場の増加も期待できるでしょう。
男性看護師として働くメリット
看護師の職場はまだまだ女性中心であり、男性看護師として働くことに不安を感じる学生もいると思いますが、ここで男性看護師として働くメリットを紹介します。
雇用や収入が安定している
看護師は国家資格の一つであることや、年々医療サービスの需要も高まっていることなどから、求人が豊富で雇用が安定しています。転職を考えたときに再就職先が決まりやすく、さまざまな働き方の選択も可能です。雇用が安定していることで、収入面の安定にもつながるでしょう。
キャリアアップを目指しやすい
男性看護師は女性看護師に比べて割合が少ないうえに、人によってはライフイベントによりキャリアを離れることが少ないため、比較的にスムーズにキャリアを積み上げられる可能性があります。
希少性が高く活躍の場が広い
男性看護師が少ないことをデメリットとして捉えてしまう人もいるかもしれませんが、男性看護師は希少性が高く活躍の場が広い存在です。
とくに以下のような場面・役割で活躍します。
- 力仕事
- 同性患者の看護
- 女性社会の潤滑油
女性患者が女性看護師や女性医師を頼りにする傾向があるのと同様に、男性患者にとっては男性看護師が頼りになる存在です。また、女性が多い職場に男性看護師が入ることで潤滑油の役割となり、職場の雰囲気を良くする存在にもなり得ます。
先輩男性看護師が抱える悩み
男性看護師の需要は年々高まっていますが、まだマイノリティーな存在であり男性看護師ならではの悩みもあるでしょう。すでに男性看護師として活躍している先輩が抱えやすい悩みの例を紹介します。
頼れる同性の先輩が少ない
気軽に相談できる同性の先輩が少ないことは、新人として働くうえで大きな悩みとなります。とくに男性看護師の割合が少ないため、男性看護師の先輩が職場にいない可能性も0ではありません。
女性看護師とのかかわり方が難しい
女性とコミュニケーションをとる機会が少ない男性にとっては、女性看護師とかかわりに難しさを感じるでしょう。とくに同僚として働くとなると、分かり合えないことも徐々に増えて、悩みを抱えることになる男性看護師も少なくないでしょう。
男性看護学生が就活時に確認すべきポイント
女性が多い環境下でも働きやすい職場に就職するためには、就業体験や病院説明会へ参加し、入念な情報収集を行うことが大切です。ここでは就職後の不安を解消するために、男性看護学生が就活で確認するべきことを解説します。
ポイント1:男性看護師の在籍状況
男性看護師の数や配置先など、在籍状況はかならずチェックしたい部分です。積極的に質問してみましょう。施設内の見学がある場合は、男性職員の活躍を見られるチャンスです。男性看護師がどのような仕事をしているのか確認しましょう。
ポイント2:男性管理職の有無
管理職に男性看護師がいるかどうかも確認すべきポイントです。男性管理職がいるということは、「男性看護師が活躍している職場」であると考えられます。特にキャリアアップを考えている男性看護学生は注目したい部分です。
また管理職が男性であると、業務面で悩みや問題が起きた際に相談しやすいこともメリットでしょう。
ポイント3:男性看護師の受け入れ体制の状況
男性看護師の数は少しずつ増加しているとはいえ、男性更衣室やトイレまでの距離が遠かったり、女性ばかりの休憩室に入りづらかったりと、男性看護師が肩身の狭さを感じる職場も存在します。
男性用の更衣室やトイレ・休憩室などは確保されているか、施設内の受け入れ体制もチェックしましょう。
病院説明会や就業体験を実施している病院は以下から探すことができます。ぜひ活用してみてください。
参考:ナース専科 就職
男性看護師の働き方を理解して就職後のギャップを減らす
男性看護師はいまだマイノリティな存在であり、環境面でも大変さを感じる仕事です。しかし、男性看護師の人数は年々増加しており、需要も高まっています。それにともなって男性看護師が働きやすい体制も徐々に整えられ、職場次第では男性の強みを活かしてキャリアアップを目指すことも可能です。男性看護師の働き方を理解したうえで就職活動を行い、自分に合った職場を選択しましょう。それによってギャップを減らすことができれば、入職後のリアリティショックを緩和できるはずです。
引用・参考
厚生労働省:令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
厚生労働省:令和4年賃金構造統計基本統計調査