看護師の新卒採用│就職が決まらないときの対処法は?要因分析から具体策まで

看護師の新卒採用│就職が決まらないときの対処法は?要因分析から具体策まで

最終更新日:2024/07/23

今回は夏になっても就職先が決まらない看護学生へ、内定をもらうためにもう一度見直したいポイントをアドバイスします。近年の就活事情や就職が決まらない理由などもあわせて解説しますので、夏以降の就活に活かしてみてください。

看護師の近年の就活事情

高齢化に伴う医療ニーズの変化は、看護師の就活にも影響を及ぼします。ここでは近年の新卒看護師の就活状況や、求人倍率・病床数の変化から読み解く看護師の需要について解説します。

早期化する新卒看護師の就活

以下のグラフは、2024年卒の看護学生に「内定をもらった時期」についてアンケート調査した結果です。また、比較対象として10年前のアンケート調査の結果もご紹介します。

看護師新卒採用で内定をもらった時期

2024卒のグラフより、ほとんどの学生が卒業年の1年前である2023年に内定を獲得していることがわかりました。さらに細かくみると、5~6月でおよそ半数、8月までには約80%の看護学生が内定をもらっていることが読み取れます。

対して10年前は8月が内定獲得のピーク時期であるため、新卒看護師の就活時期は少しずつ早まっているといえるでしょう。

看護師の求人倍率は減少

求人倍率とは求職者一人に対する求人件数を示すものです。求人倍率が大きいと、一人あたりの求人数が多いことがわかるため、その職種や業界の需要をはかる指標のひとつとなっています。

以下は日本看護協会が調査した、2006年度から2021年度までの雇用形態別の求人倍率の推移を示した結果です。

看護師(常勤)の求人倍率の推移

引用:日本看護協会:2021年度 「ナースセンター登録データに基づく看護職の 求職・求人・就職に関する分析」 結果

日本看護協会の「2021年度都道府県ナースセンター登録データの集計・分析」によると、求人数は増加していますが求職者数も増えていることで、看護師の求人倍率は少しずつ減少しています。

ただ、これは新卒以外の看護師も含めたデータであり、新型コロナウイルス感染症拡大による医療体制や個人の生活状況の変化が要因となっている可能性もあります。

施設別の求人倍率ランキング

日本看護協会「2021年度都道府県ナースセンター登録データの集計・分析」のデータから、2021年度の求人倍率が高い施設TOP3を紹介します。

1位 訪問看護ステーション

2位 20〜199床の病院

3位 200〜499床の病院

在宅医療の需要が高まっていることもあり、2021年度の看護師求人倍率は訪問看護ステーションが最も高い結果となりました。

さらに2位は20〜199床の病院、3位は200〜499床の病院という結果から、大規模病院よりも中小規模病院の方が看護師の求人倍率が高い傾向にあるといえます。

ただし求人倍率はあくまで指標のひとつにすぎません。自分が希望する施設の求人倍率が低いからといって就職できないわけではないので、参考程度に留めておくのがよいでしょう。

病床数の変化

厚生労働省「地域医療構想、医療計画について」によると、平成29年から令和7年にかけて、病床数の変更が予定されています。以下は医療機能ごとに病床数が変化する見込みをまとめた表です。

病床数の変化数(見込み)

引用:厚生労働省:地域医療構想、医療計画について

回復期は唯一増える見込みですが、そのほかは減少する予定であることがわかります。とくに急性期の病床数が大幅に減少することが予想され、看護師が働く環境にも影響が出かねません。需要の変化に対応できるよう、社会の変化や国の動きも理解しておきましょう。

就職が決まらないときに考えられる要因

就職が決まらないと焦りの気持ちが先行しがちですが、まずはなぜ就職が決まらないのか冷静に原因を分析することが大切です。上記で解説した近年の看護師の就活事情を念頭に置き、広い視野で就活がうまくいかない要因を考えてみましょう。

キャリアビジョンがない

自分のキャリアビションをもつことは就職先を決めるうえで重要です。キャリアビジョンがないと職場選びの軸がぶれてしまい、志望動機や意欲も採用側に伝わりづらくなる恐れがあります。

現段階でキャリアビジョンを具体的に決める必要はありませんが、まったくなかった人はまずキャリアの方向性だけでも明確にしましょう。キャリアプランの描き方は以下の記事で解説しています。気になる人はぜひ参考にしてください。

志望先の理解を深めていない

志望先がどんな人材を求めているのかを理解していないことも就職先が決まらない要因と考えられます。その場合、志望先が求めている人材とずれてしまう可能性があり、採用担当者からの印象がうすくなってしまうからです。

とくに志望動機や自己PRを複数の面接で使いまわしている人は、もう一度考え直してみましょう。

選択肢の幅が狭い

特定の分野や難易度が高い職場にこだわりすぎてしまうと、受けられる求人も少なくなり就職先が決まらない要因にもなり得ます。とくに新卒のときは、経験を積むために大規模病院や高度なスキルを必要とする診療科への就職を志望する人も多いでしょう。

しかし「新卒だから」とこだわりすぎず、広い視野をもって情報収集し選択肢の幅を広げることも大切です。

社会人としてのマナーが不十分

社会人として十分なマナーが身につけられているかどうかも、採用を決める重要な判断材料のひとつになります。看護師としての視点ではなく、社会人としての自覚も働くうえで大切であるからです。

とくに人と関わることが多い職業である看護師は、より一層マナーを重要視されるため、今までの面接を振り返りビジネスマナーで不足していた部分はなかったか、考えてみましょう。

就職先が決まらないときにやるべき具体策

就職先が決まらない要因を踏まえ、やるべき具体策を紹介します。ポイントをおさえて対策をとることで結果も見えてくるはずです。ぜひ参考にして、実践しましょう。

自己分析と他己分析をする

就活がうまくいかない要因で挙げた、キャリアビジョンがない点や選択肢の幅が狭い点を改善するためには、自己分析と他己分析が必要不可欠です。

自己分析で目標や適性について理解し、他己分析で客観的な視点からの強みなどが明確になることで、自分にあった職場選びや軸がある志望動機、わかりやすい自己PRにつながるからです。まずは以下のような内容を整理して、自己分析してみましょう。

  • 看護師になりたいと思ったきっかけ
  • 看護観(患者さんに対してどんな看護がしたいか)
  • 将来はどんな看護師になりたいのか
  • 就職先に希望する条件
  • 自分が重視したい条件

他己分析は、家族、昔からの友人、先生など、信頼できる人から客観的な意見を聞くのが得策です。強みだけでなく、性格の傾向や弱みなど聞くと、さらに職場選びや説得力のある自己PRに活かせるでしょう。また、他者の意見から新たな選択肢の発見につながるかもしれません。

幅広い視野で情報を得る

志望先を絞りすぎている人は就職先の選択肢を広げるために、現状よりも広い視野で情報収集するようにしてみましょう。高い理想をもつことももちろん大切ですが、視野を広げることで今まで気が付かなかった興味のある分野が新たに見つかるかもしれません。

就職先の選択肢が偏らないように、さまざまな方法で情報収集することが大切です。例えば、看護業界に詳しい先生や実際に働いている先輩から情報を得ると、違う視点で見ることができます。

また、看護学生の就活を支援するメディアが開催するオンライン講座に参加するのもひとつの手です。こちらも自分では得られにくい業界の情報を収集する機会になるので、気になる人はぜひチェックしてみてください。

志望先の病院を分析する

「志望先の理解を深めていない」と自覚している人は、志望先の病院理念や方針などを調べ、病院を分析することが大切です。志望先がどんな人材を求めているのかを知ることで、自分の看護観や強みとマッチするかを見極められるほか、志望動機や自己PRがよりオリジナリティーあふれる内容となり、採用担当者の印象に残りやすくなるからです。

病院のホームページや資料を参考にするほか、インターンシップや病院見学に行き実際の職場の雰囲気を感じてみるのもよいでしょう。参加できるインターンシップや病院説明会の申し込みは以下から検索できます、ぜひチェックしてみてください。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビより

社会人マナーを意識した面接対策を講じる

過去の面接を振り返りマナーが十分にできていなかったと自覚する人は、社会人としての基本マナーをもう一度見直しましょう。学生から社会人になるタイミングでもある新卒の面接は、マナー面も採用担当者が重視するポイントとなるためです。

内容だけでなく丁寧な言葉遣いや立ち振る舞い、整った身だしなみなど、まずは基礎となる就活マナーを確認して対策しましょう。面接に苦手意識がある人やマナーに不安がある人は、親や先生などに面接練習をお願いするのもおすすめです。

就活マナーは以下の記事をぜひ参考にしてみてください。

不安になりすぎない

就職がなかなか決まらない状況では焦りや不安を感じるのは自然なことです。ただし、焦りすぎて自分の軸を見失ってしまうと、自分が目指す目標からも遠ざかってしまいます。就活に正解はなく早ければよいわけでもないので、周りの状況に流されず自分のペースで取り組みましょう。

もう一度自分の就活を見直し、上記で紹介した具体策を実践すれば内定につなげられるはずです。不安が大きくなったときは信頼できる人に相談したり話を聞いてもらったりして、前向きな気持ちを取り戻しましょう。

対策を見直し夏からの就活にしっかり落とし込もう

看護学生の就活が早期化されるなか、なかなか内定が得られず不安に感じる学生もいるでしょう。しかし、自分に合った就職先を見つけるためには焦りすぎないことが大切です。まずもう一度自身の就活を見直し、要因を明確にしたうえで具体的な対策に取り組みましょう。
自分自身の分析や情報収集など就活のポイントをおさえて準備すれば結果につながるはずです。夏からの就活にぜひ活かしてくださいね。

参考文献

厚生労働省:地域医療構想、医療計画について.(2023年7月20日閲覧)

厚生労働省:高齢者向け住まいの今後の方向性と紹介事業者の役割.(2023年7月20日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

伊藤 雪乃

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2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力