大学病院の看護師は大変?一般病院との違いからメリット・デメリットまで

大学病院の看護師は大変?一般病院との違いからメリット・デメリットまで

最終更新日:2024/01/28

看護師として働き始めるとき、まずは大学病院でキャリアをスタートしようと考える看護学生も多いでしょう。では、大学病院の看護師にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか? 今回は、大学病院勤務経験者が、大学病院の働き方について紹介します。

大学病院とは

大学病院とは、以下の図のように「診療」「研究」「教育・研修」の役割をもつ医療機関です。

大学病院の役割
診療
(特定機能病院が多い)
地域の中核医療機関として、最先端医療の導入を進め、高度医療を提供する
研究 がん医療や移植医療、再生医療、難病医療などの臨床研究を行い、人々が求める医療の発展に貢献する
教育・研修
(臨床研修病院が多い)
研修やカリキュラムを整備し、医療従事者を育成する

大学病院は診療科目が細分化されており、配属先ごとに専門性の高い知識や技術を習得できます。また、最先端の医療技術を備えた大学病院も多く、最新の医療知識とスキルをアップデートしやすい職場ともいえるでしょう。

大学病院の看護師の役割

大学病院の看護師には、患者さんが高度な医療を安全に受けられるようサポートする役割があります。専門性の高い診療科目が多いため、確かな知識と技術を身に付けることが求められ、より患者さんの状態に合わせた適切な看護提供を行わなければなりません。

また、診療科目が細分化されることで、学生で学んだことよりもさらに詳細な知識を身に付けていく必要があります。知識やスキルを習得するために、病棟の勉強会のほか、院内や外部で行われる研修にも定期的に参加します。

さらに、大学病院は臨床研修施設でもあるため、勤務年数を重ねると看護実習生の指導担当になることも増えるでしょう。

一般病院との違い

大学病院と一般病院との大きな違いは、患者さんの疾患レベルと診療科目です。

大学病院は「特定機能病院」に指定されることが多く高度な医療を提供しています。そのため、一般病院では受けられない専門的医療が必要な疾患あるいは重症度レベルの高い患者さんに対応します。一般病院の医師が患者さんの状態を診療し、高度医療の必要性を感じた場合に大学病院を紹介するという流れが一般的です。

診療科目でみると、大学病院の場合、同じ「外科」であっても、消化器外科や呼吸器外科、心臓外科など専門分野ごとに細分化されています。一方一般病院では、脳神経外科を有するところはあっても、そのほかの臓器ごとに分けることは少ないようです。

看護師の日常業務については、大学病院と一般病院で大きく異なることはありません。しかし大学病院の看護師には、専門領域に応じて高度な知識や技術を必要とする処置が求められることはあるでしょう。

大学病院で働く看護師の仕事内容と1日スケジュール

ここでは、大学病院で働く看護師の仕事内容や1日のスケジュールを紹介します。

大学病院の看護師の仕事内容

看護師の具体的な業務内容は配属先によって異なりますが、各診療科共通で行う主な仕事内容を例として紹介します。病院によっても異なりますので、参考材料のひとつと捉えてください。

大学病院で働く看護師の主な仕事内容
状態観察、モニタリング バイタルサイン測定、皮膚状態や呼吸・循環状態の観察
処置・検査 与薬、点滴、注射、採血、高度なライン管理
褥瘡ケア 皮膚の清潔保持・処置、体位変換など
呼吸ケア 喀痰吸引、呼吸器管理など
急変時の対応 心肺蘇生、応援要請など
診療の補助 診察・処置の介助、医師への報告
日常生活援助 食事、入浴、清拭、排泄、口腔ケアなどの介助
身の回りのお世話 環境整備、散髪の手配、持ち物の整理など
※患者さんとご家族の意向に合わせて療養環境を整える
ご家族の対応 面会時の対応やIC(インフォームドコンセント)時の同席・記録

大学病院で働く看護師の主な仕事は、診療の補助と療養上の世話です。この点は一般病院と大きく変わりません。ただし大学病院では、看護師が各診療科で行う先進医療や重症例の治療に対する処置や管理を担うことも多く、常に新たな知識のアップデートが求められます。

また、大学病院の急性期一般病棟では、人工呼吸器や人工心肺の取り扱い頻度、機器の種類が一般病院と比べて多いところもあるでしょう。

【日勤/夜勤別】1日のスケジュール例

ここでは、二交代制で勤務する看護師の一般的なスケジュール例を、日勤帯と夜勤帯に分けて紹介します。しかし、1日のスケジュールは診療科やそのときに受け持つ患者さんの状況によって異なるので、あくまで一例として捉えてください。

日勤帯のスケジュール例

受け持ち患者さんの数は病棟によって異なりますが、一般病棟であれば7人を受け持つことが多いでしょう。以下は一般的な日勤帯の流れを示したものですが、手術・検査予定の患者さんを受け持つ場合や緊急入院などがある場合は、スケジュールも変動します。

大学病院で働く看護師の1日スケジュール例(日勤帯)

患者さんが起きている日勤帯は検査や退院などの予定も入りやすくなります。

夜勤帯のスケジュール例

夜勤帯はスタッフの数が減るため、担当する患者さんの数が多くなります。ここでは、一般的な夜勤帯の流れを紹介します。

大学病院で働く看護師の1日スケジュール例(夜勤帯)

基本的に、夜間は予定される手術や処置もなく、入眠する患者さんが多いため、ラウンドや点滴管理、喀痰吸引などルーティンの業務がほとんどです。ただし、大学病院は救急医療を担っていることが多いため、夜間時に緊急入院を受け入れる可能性はあるでしょう。

大学病院で働く看護師のメリット・デメリット

大学病院の働き方の特徴を踏まえ、看護師にとってのメリットおよびデメリットと考えられることを紹介します。大学病院での勤務はあなたの理想の働き方に近いのかを判断する材料になるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

メリット

ここでは、看護師が大学病院で働くメリットを紹介します。

給与が高い傾向にある

大学病院で働く看護師は、介護施設やクリニックなどほかの職場に比べて給与が高い傾向にあります。その理由は、重症度・難易度の高い治療や手術をおこなうことで診療報酬も高くなる傾向があるためです。

また、福利厚生の面でも大学病院のほうが充実しているところが多いようです。ただし給与や勤務条件については、地域や勤続年数などによっても差があるので、詳細は各病院に確認しましょう。

先進医療が提供できる病院で学びながら働ける

大学病院は先進医療を提供する医療機関であるため、最新の設備や技術が取り入れられていることが多くなります。診療科目も細分化されているため、診療科ごとに専門性の高い看護スキルを追求できるでしょう。

高度な医療を学びたい人やスキルアップを目指す看護師にとっては、よい入職先といえます。

教育体制が充実している

大学病院は医療従事者の教育・研修の役割も担っており、教育体制が充実しています。新卒看護師の受け入れ数も多く、新人教育の面でも研修内容やプログラムなどがしっかり構築されている病院が多いでしょう。

さらに、大学病院で働くと研修や勉強会への参加以外に、看護研究を行ったり自分で勉強会を開催したりするなどの機会も多くなります。

デメリット

次に大学病院の特徴から考えられるデメリットをいくつか紹介します。

残業や時間外業務が多く忙しい

大学病院は、勉強会や研修などのほか緊急入院や急変対応などで残業が発生するケースがあります。特に、救急救命センターや脳卒中センター、周産期センターなどがあり、高度医療に対応した設備等を有している大学病院は、難しい症例の患者さんを受け入れるため、業務が忙しく、残業時間も多くなるリスクが高いといえるでしょう。

また、毎月行われる病棟会や勉強会に参加する際には夜勤明けや休日の出勤もあり、時間外勤務が発生しやすい傾向にあることは否めません。

幅広い領域にまたがる看護スキルが習得しづらい

診療科目が細分化されている大学病院では、看護師も領域に特化した知識や技術を身に付けられます。しかしその半面、診療科によっては経験できない基本的看護スキルが生じることもあります。また医師や研修医が行うため、看護師が静脈注射や採血、ルート確保などに携わらない病院もあります。

看護実習生や研修医の対応も求められやすい

大学病院は教育・研修の役割も担っているため、看護実習生や研修医が患者さんを担当することは多くあります。新人看護師の場合、看護実習生が自分の受け持ち患者さんにつく可能性は少ないものの、研修医が配置され、その診療の補助にあたる場合は出てくるでしょう。

自分の業務をこなすのに精いっぱいであるなか、研修医の処置のフォローを求められることがあるため、大変だと感じる場面も多いかもしれません。

勤務経験者が語る~大学病院を志望した理由からよかったことまで~

ここからは、大学病院で働いた経験がある看護師の話から、志望理由や働いてよかったこと、大変だったことを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

大学病院を志望した理由

看護学校卒業後の入職先として大学病院を選んだ理由は、高度な先進医療設備の整っている病院で働き、専門的な知識やスキルを身に付けたかったためです。新卒だからこそ、充実した環境に身を置き、早く吸収して一人前になりたいとの思いがありました。

大学病院で働いてよかったこと

大学病院で働いてよかったことは自信がついたことです。専門性が高い急性期病棟で働いたことで、細かな観察力や対応力が身に付きました。

診療科目が細分化されているとはいえ、培った経験やスキルはほかの状況下でも活かせるときがきます。ほかの病棟に手伝いに行ったとき自分が培ったスキルが役に立ったことは自信につながりました。

そのほか、大学病院で看護師をしていると周りからより信頼を得られるようです。友人や親族などから頼られることが増えました。

大学病院で大変だったこと

大学病院で大変だったことは、覚えなければならない知識が膨大だったことです。当時は患者さんの病態や治療の勉強を進める傍ら、新たな知識をインプットするために外部の様々な勉強会や院内研修に参加しました。

忙しさからゆっくり看護について考える余裕がなく、特に新人時代は覚えることに必死で、自分が描く理想の看護とのギャップに悩んだこともありました。

また、診療科ごとに習得できる看護スキルが違うため、ほかの診療科で勤務している同期と比べて看護スキルの習得度の違いに焦ったこともあります。しかし、1年目は配属病棟の領域で使える知識や技術を吸収する時期と捉え、「一人前になるために今やるべきことをする」と考えて行動していくと自然に成長できるはずです。

新人看護師が悩みやすいことや対処法については、以下の記事で詳しくまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

大学病院の看護師を目指す人へ

看護学校を卒業後、まずは大学病院への入職を目指す人もいるでしょう。ここでは、そのような人が知っておくとよいことを紹介します。

大学病院の看護師になるには

基本的に、大学病院は看護師免許があればだれでも働けます。専門学校卒でも大学卒でも可能です。ただし、新卒採用の入職難易度が高い大学病院もあるので、自身の出身校の附属病院や提携先の大学病院を選択したほうが採用される確率が高いでしょう。

とはいえ、学校に附属や提携先がない学校もありますし、あったとしてもどんな病院か調べずに入職してしまうと、思い描いていた働き方が実現できない可能性もあります。

入職後に感じるギャップをできる限り少なくするためにも、まずは自己分析を行い、自分の理想の働き方を整理しましょう。そのうえで情報収集をし、希望する病院を選ぶようにしてくださいね。採用試験では自分がどのように働きたいのかを担当者に伝えられるようにしておくと、自分の納得のいく入職につながるはずです。

大学病院が向いている人の特徴

大学病院で働くことが向いている看護師の特徴は、以下のとおりです。

  • 専門分野の看護知識・スキルを習得したい
  • 教育体制の充実した病院で働きたい
  • 充実した福利厚生のもと高めの年収で働きたい

診療科目が細分化され、教育・研修体制が充実している大学病院は、看護師として着実にスキルアップしていきたい人に向いているでしょう。給与のほか福利厚生も整っている病院が多いため、安定を求める人にもおすすめです。

ただし、病院によって特徴は異なります。気になる大学病院がある場合は、十分に情報収集をして自分の希望条件に合っているか検討してみてください。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビ

大学病院の特徴を理解して病院選びに役立てよう

大学病院は高度医療の提供と医療発展のための研究・教育研修の実施という役割を担っています。そのため、診療科目の領域ごとに専門性の高い知識やスキルが必要です。勉強会や研修が多く大変なこともありますが、手厚い教育体制があるので確かな知識・スキルが習得できるでしょう。

大学病院から看護師のキャリアをスタートすることが正解というわけではありませんが、自分の目指したい方向性とマッチしている場合は適しているといえるかもしれません。働き方の特徴や得られることを理解したうえで、病院選びに役立ててください。

引用・参考

信州大学医学部付属病院:大学病院の役割(2023年11月12日閲覧)

日本医師会総合研究機構:大学病院の現状について(2023年11月12日閲覧)

愛知大学病院看護部:部署・仕事紹介(2023年11月12日閲覧)

愛知医科大学病院看護部:看護師の1日(2023年11月12日閲覧)

順天堂大学医学部附属順天堂医院看護部採用情報:看護体制(2023年11月12日閲覧)

令和4年賃金構造基本統計調査(2023年11月16日閲覧)

中央社会保険医療協議会:第23回医療経済実態調査(医療機関等)報告(2023年11月16日閲覧)

厚生労働省:令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(2023年11月16日閲覧)

執筆者情報

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小春 ゆき

koharu-yuki

看護短期大学を卒業後、聖マリアンナ医科大学病院にてNICU病棟に3年勤務。結婚を期に在宅医療へ転職し、10年間リハビリや終末期医療に携わる。3人の育児をしながら、現在は専業Webライターとして活動中。訪問看護ステーションのホームページ制作や医療・転職メディアなどで多数執筆。