専門看護師になるには?役割から種類一覧、認定看護師の違いまで解説

専門看護師になるには?役割から種類一覧、認定看護師の違いまで解説

最終更新日:2024/11/01

専門看護師は、特定の専門看護分野の知識と技術を持ち、卓越した看護が実践できるエキスパートのことです。今回は、専門看護師資格の取得方法や種類の一覧、役割や認定看護師との違いを解説します。

専門看護師とは

専門看護師とは、一定の専門看護分野ごとに日本看護協会が認定している資格で、水準の高い知識と技術を持ち、卓越した看護を提供する専門家として認められた看護師のことです。

専門看護師は、保健医療福祉の発展や看護学の向上を目的として、1994年より制度化されました。高度・複雑化する医療の中で高い専門性を発揮し、患者さんと家族のケアだけでなく、病院や地域全体の看護の質の向上に貢献できる人材として期待されています。

専門看護師の役割

専門看護師には以下の6つの役割が定められており、受験資格においても各専門看護分野での実務研修の要件となっています。

参照:日本看護協会:専門看護師
1.実践 個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する
2.相談 看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う
3.調整 必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う
4.倫理調整 個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る
5.教育 看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす
6.研究 専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う

専門看護師の役割は、高度な専門知識を用いて患者さんと家族に質の高い看護を提供することです。他の医療スタッフに専門的なアドバイスを行うことや、多職種との連携を調整し、ケアの質を高める役割も担っています。

さらに、倫理的問題の調整、教育や研究によって看護の質の向上に貢献することも専門看護師の役割のひとつです。これら6つの役割を通じて、病院全体や地域における看護の質を高めることを目指します。

専門看護師が活躍する場

専門看護師はどのような職場で活躍しているのか、日本看護協会が発表している就業中の専門看護師の所属先データを元にその割合を算出しました。

専門看護師の所属先

参考:日本看護協会:専門看護師が所属する施設【全体】【分野別】(2023年12月)

2023年12月末時点の専門看護師の認定登録者数3,316人であり、上図の円グラフはうち1,392人が回答した結果を示しています。

回答した専門看護師のうち、6割以上が病院に所属しています。次に多い所属先は、学校や大学などの教育機関です。そのほか、訪問看護ステーションや介護保険施設に所属している人もおり、病院から在宅、教育や研究分野まで、専門看護師は幅広い場で活躍しています。

専門看護師の種類一覧

専門看護師の資格において認定されている専門看護分野は14分野あります。以下の表は専門看護分野の種類と2023年12月末時点での登録者数をまとめたものです。

引用:日本看護協会:専門看護師
登録者数:日本看護協会:データで見る専門看護師
分野 登録者数 分野の特徴
がん看護 1,090 がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する
精神看護 436 精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する
地域看護 32 産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する
老人看護 268 高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する
小児看護 314 子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する
母性看護 94 周産期の母子及び家族への支援、女性のライフサイクル全般にわたる健康への援助等、水準の高い看護ケアを提供する
慢性疾患看護 276 生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う
急性・重症患者看護 405 緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する
感染症看護 110 施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する
家族支援 94 患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する
在宅看護 127 在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する
遺伝看護 24 対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する
災害看護 40 災害の特性をふまえ、限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供する。平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する
放射線看護 6 放射線がもたらす身体、心理社会的影響の特性をふまえ、放射線事故・災害における平時からの体制構築と健康課題を有する対象へ長期的な看護を提供する。また、放射線診療を受ける対象者とその家族へ水準の高い看護を提供するとともに、職業被ばく低減の方策等、施設における体制を構築する

専門看護分野は、専門看護師制度委員会が「変化する看護ニーズに対して、独立した専門分野として知識及び技術に広がりと深さがある」と認めた分野です。

専門分野のなかで最も早く認定開始となったのは、1996年からスタートしたがん看護と精神看護です。一方で、最も新しい分野は放射線看護で2022年に認定が開始されました。このように認定が始まった時期は分野によって異なります。

認定看護師との4つの違い

日本看護協会が認定している資格には、専門看護師とともに高い水準の能力が認められるものとして認定看護師があります。ここでは、専門看護師と認定看護師の違いを4つの視点から比較します。

求められる役割

求められる役割の違いは、専門看護師のほうがより幅広い役割を担っていることです。専門看護師には複雑で高度な患者さんと家族への看護実践や看護スタッフへの教育、医療チームの調整や研究など6つの役割があり、専門看護分野において総合的に活躍するエキスパートといえます。

一方認定看護師は、看護実践と指導、相談が役割です。患者さんや家族、看護スタッフなどに対して看護実践を通して働きかけをする、より現場に近い位置で活躍するスペシャリストといえるでしょう。

難易度

専門看護師は資格取得までの道のりが長いため、認定看護師よりも難易度は高めだといわれています。

専門看護師になるためには、大学院修士課程で2年間学び単位を取得しなければなりません。一方で認定看護師の履修期間は半年から1年といわれており、その期間に600〜800時間程度のカリキュラムを学びます。

そのため、専門看護師のほうが資格取得までの期間が長く、その間の費用や労力も要することから難易度が高い資格と考えられるでしょう。

登録数

2023年12月末時点の認定登録者数は、専門看護師が3,316人なのに対し、認定看護師は24,095人となっており、登録者数にも違いがあります。どちらの資格も制度が発足し認定審査が始まったのはほぼ同時期ですが、専門看護師の登録者数は認定看護師の1/7程度となっています。

所属先

専門看護師は認定看護師に比べ、学校や大学に所属している人の割合が高いことも違いのひとつです。日本看護協会のデータを元にした割合によると、専門看護師の14.6%が学校や大学に所属しているのに対し、認定看護師のなかで学校や大学に所属している人は5.0%でした。

専門看護師には教育や研究の役割があるため、それが学校や大学で活躍する道につながっていると考えられます。

専門看護師になるには

ここからは、看護師免許取得から専門看護師になる流れや難易度を解説します。専門看護師を目指す人が新卒時にどのように就職先を選べばよいかも紹介するので参考にしてください。

専門看護師になる流れ

専門看護師へのステップ

参考:日本看護協会:専門看護師になるには

専門看護師になるためには、上記の流れで認定審査を受ける資格を得たのち、年1回実施されている認定審査に合格しなければなりません。認定審査を受けるためには、以下の条件が必要です。

  • 日本の看護師免許を持っていること
  • 看護系大学の大学院修士課程で日本看護系大学協議会が認める所定の単位を取得していること
  • 実務経験が通算5年以上(うち3年以上は認定看護分野の実務経験)があること

認定審査合格後は、所定の手続きを行い認定証の交付を受ければ、専門看護師として活動できます。資格の有効期間は5年で、専門看護師として活動し続けるには、看護実践や研修、研究の実績を積み重ねたうえで、5年ごとの更新手続きが必要です。

専門看護師の難易度や合格率は?

正式には発表されていませんが、認定審査の合格率は70〜80%程度といわれており、専門看護分野によっても合格率が異なるようです。認定看護師の合格率は90%程度といわれているため、合格率は専門看護師のほうが低い傾向だといえます。

また、専門看護師になるまでには実務経験や大学院での勉強が必要なため、新卒から最短でも7年程度かかります。認定審査の合格率と受験資格を得るまでの期間や労力を考慮すると、専門看護師の資格取得の難易度は高めといえるでしょう。

専門看護師になるための費用は?

以下は、専門看護師になるための費用例をまとめたものです。なお、審査料や登録手続きに必要な認定料は一律ですが、学費は教育機関によって異なるため、目安として捉えてください。

参考:日本看護協会:専門看護師
専門看護師になるための費用 合計:250万円程度
内訳 教育機関の学費 受験料 3万円程度
入学金 30万円程度
受講料など(2年間) 200万円程度
専門看護師の審査料 51,700円
専門看護師登録の認定料 51,700円

専門看護師になるための合計費用は、2024年9月時点では250~300万円程度なっています。大学院によっては、授業料のほかに施設使用料や実習費が必要なところもあるようです。このほか、通学費や教科書代なども考慮しなければなりません。

専門看護師になるためには、仕事を辞めざるを得ない場合もあるため、その場合は生活費の確保も必要です。経済的負担を減らすためには、日本看護協会や大学院の奨学金制度や、病院の資格支援制度の活用を検討するとよいでしょう。大学院の長期履修課程を活用し、働きながら学ぶ選択肢もあります。

新卒の就職先はどのように選べばよい?

新卒時から専門看護師を目指すことを決めている人や、専門看護師に興味がある人は、新卒のうちから以下のような就職先を選ぶとよいでしょう。

  • 専門看護師がいる病院
  • 資格取得支援制度がある病院

専門看護師を目指したい人は、実際に自分が目指している専門看護分野の専門看護師が活躍する病院を選ぶとよいでしょう。すでに専門看護師が働いている職場であれば、実務経験に必要な条件もクリアしていると考えられます。また、先輩の活動内容も間近で見られ、資格取得へのアドバイスももらいやすいはずです。

ただし、専門看護師の登録者数は多くないため、就職サイトの詳細条件の絞り機能などを活用し、専門看護師が実際に活躍している病院を探すようにしましょう。ちなみに、専門看護師が活躍している病院は、国立病院機構や大学病院など比較的大規模なところが多いようです。

また、専門看護師は資格取得のハードルが高いため、資格支援制度がある病院を選ぶとよいでしょう。すでに専門看護師の資格支援実績がある病院を選べば、費用支援や勤務調整などへの理解が得られやすいかもしれません。

専門看護師を目指すメリット・デメリット

ここでは、専門看護師を目指すメリットとデメリットを紹介します。メリットだけでなく、デメリットも理解しておきましょう。

専門看護師になるメリット

専門看護師を目指すメリットは、以下の3つです。

活躍の場が広い

専門看護師を目指すメリットは、専門看護分野のスキルを習得したことで、より広い活躍の場が得られることです。病院では、特定の診療科や高度なケアを必要とする患者さんに対し、ほかの看護師や医師と協力しながらチーム医療の中心的存在として活躍できるでしょう。

また、病院だけでなく地域医療や教育機関でも専門性を活かした活動ができるため、働く環境や役割の選択肢も広がるはずです。

総合的な看護知識が身につく

専門看護師は、総合的な看護の知識を身につけられるのもメリットです。6つの役割を担っている専門看護師になるためには、専門看護分野の知識を深めると同時に、看護全体に対する総合的な理解が求められます。そのため、専門的な知識だけでなく、患者さんの全体像を理解し問題を総合的に捉える力や、専門知識を活かして医療チーム全体を調整する力なども身につきます。

また、病院内外にも活躍の場があるため、他職種や他部署と関わることも多く、看護現場以外で学ぶ機会も多いでしょう。このように専門看護師として経験を積むことで、総合的な知識が身につくはずです。

給料アップや昇進ができる可能性がある

専門看護師は、評価の指標として明確にアピールできる資格のため、給料アップや昇給のチャンスを得やすいのもメリットといえるでしょう。病院によっては専門看護師を高く評価し、資格手当を支給しているところもあるようです。専門看護師の資格を取得することで昇進の機会を広がるかもしれません。

さらに、専門看護師としての経験が豊富になると、教育・研究の分野やマネジメントポジションへの道も開けるため、病院以外の職場を選ぶことによって、給料アップが期待できる可能性もあります。

専門看護師を目指すデメリット

専門看護師を目指すデメリットは、以下の2つです。

休職・退職しなければならない場合がある

専門看護師になるためには、大学院での勉強が必要です。働きながらの資格取得も可能ですが、仕事と学業の両立は大変で、休職や退職しなければならない場合はデメリットになり得ます。収入が減ることによる経済的な不安や、一時的に看護の現場から離れる不安を感じるかもしれません。

活躍の場が限られる可能性がある

その専門性を広く活かせる専門看護師ですが、実際に働く場所は限られており、自分の希望に合った場をみつけるのに苦労することもあるというデメリットがあります。特定の分野に特化した病院や、専門性を必要とする医療機関でないと、資格を十分に活かせず、通常の看護業務に従事することになる可能性があるのです。なるべく専門性が発揮でき、やりがいが感じられる職場を見極めて選ぶようにしましょう。

専門看護師の活躍事例

ここでは日本看護協会がホームページに掲載している専門看護師の活動事例より、専門看護師として活躍している人の資格取得までの経緯や、具体的な活動内容を紹介します。

家族支援専門看護師のSさん

  • 病院を退職し資格を取得
  • 同病院の相談支援部門へ再就職
  • 病院併設の訪問看護ステーションへ管理者として異動

Sさんは急性期病院で勤務するなか、家族看護の必要性を感じ、家族支援専門看護師の資格を取得しました。大学院へ進学する際、病院は退職しましたが、資格取得後に同じ病院に再就職し、自らの希望で相談支援部門に配属となりました。

相談支援部門では専門知識を活かした相談業務だけでなく、管理業務や退院支援の仕組みの見直しなども担当しました。その後は、地域で暮らす家族への支援を強めていくことの必要性を感じ、訪問看護ステーションの管理者として活躍しています。また、病院内外で家族ケア研修を実施し、組織を超えた活動も行っています。

災害看護専門看護師のKさん

  • 東北地方の災害拠点病院に勤務
  • 常勤勤務をしながら資格を取得
  • 病院内外の災害対策分野にて活躍中

Kさんは、東日本大震災時の支援活動で失敗した経験がきっかけとなり、所属病院での勤務を続けながら教育課程にて3年間就学、1年間の実践活動を経て、災害看護専門看護師の資格を取得しました。

資格取得後は、自施設の災害対策チームの年間活動計画立案や院内訓練、教育研修の企画・実施などに携わっています。また、豪雪や豪雨災害時の対応や地域防災活動を通じた地域住民への災害教育や災害看護専門看護師のネットワークの構築・強化に取り組んでいます。

地域看護専門看護師のMさん

  • 県職員保健師として採用された後、県内の保健所に勤務
  • 在職しながら職場の自主研修制度を利用し資格を取得
  • 県職員保健師の人材育成や指導に携わっている

Mさんは県職員の公務員保健師として働いた後、保健師としてキャリアアップするために、職場の自主研修制度を利用して地域看護専門看護師の資格を取得しました。

現在の職場では、主に職員のメンタルヘルス対策を担当しており、専門知識を活かしながら復職支援に取り組んでいます。また、専門看護師の役割でもある相談・教育・研究を意識した活動として、県職員保健師の人材育成や指導にも携わっています。

制度を理解して専門看護師をキャリアアップの選択肢に

専門看護師はがん看護や老人看護など14種類の専門看護分野における看護のエキスパートです。認定看護師より難易度は高めですが、卓越した知識を活かして看護実践から教育や研究まで、幅広い分野で活動しており、今後も活躍が期待されています。看護師として高い専門性を身につけたい人は、専門看護師の制度や役割を理解して選択肢のひとつにしてみてください。

引用・参考

日本看護協会:専門看護師(2024年9月2日閲覧)

日本看護協会:専門看護師ってどんな看護師?(2024年9月2日閲覧)

日本看護協会:認定看護師(2024年9月2日閲覧)

日本看護系大学協議会:高度実践看護師情報(2024年9月2日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。

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