【老年看護学 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

【老年看護学 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

最終更新日:2024/08/07

この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は老年看護学編です。第113回で出題された老年看護学に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。

第113回の「老年看護学」はどうだった?

第113回の全体的な難易度は?

第113回看護師国家試験で出題された一般問題、状況設定問題のなかで「老年看護学」に関する問題は、例年と変わらない難易度でした。

以下は第113回の一般問題で出題された老年看護学に関する問題です。

  • 法律や施策の概要や内容に関する基本的な問題
    ✔ 老人福祉法
    ✔ 介護保険法
    ✔ 高齢者虐待防止法
    ✔ 認知症施策(新オレンジプラン)
  • 加齢性変化に関わる身体的・精神的・社会的問題の理解に基づいた思考・判断を問う問題
  • 高齢者特有の疾病(病態)・症候・障害の理解に基づいた看護実践についての問題

また今回、運動機能障害をもつ高齢者の性交渉など、今まで出題頻度が高くない看護の視点について出題された状況設定問題に戸惑ったという声も聞かれました。しかし、生活者として高齢の対象の特性を捉えたうえでの看護実践能力を問う内容であったため、基本的な知識に基づき思考すれば、答えを導けるシンプルな問題という印象でした。

総合的にみると第113回看護師国家試験の老年看護学に関する問題は、例年の出題傾向と大きな変化はなく、問題を熟読してキーワードを正しく把握し、出題の意図を考えれば解答できる内容だったといえます。

第112回と比較すると?

前回の第112回の一般問題では、関係法規に関わる問いが多く出題された傾向にありました。それに比べ第113回では、偏りなく広範囲の知識を用いて解答する問題が出題されていました。

第113回から分析する「老年看護学」の傾向

第113回看護師国家試験では、令和5年版看護師国家試験出題基準で示されている老年看護学の出題基準のうち、大項目9項目から満遍なく出題されました。

【令和5年版看護師国家試験出題基準 老年看護学の大項目】

  1. 高齢者の理解の基本となる概念
  2. 高齢者の生活
  3. 高齢者の健康
  4. 老年看護の基本
  5. 高齢者の生活を支える看護
  6. さまざまな健康状態や受療状況に応じた高齢者の看護
  7. 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
  8. 治療・介護を必要とする高齢者の家族の看護
  9. 多様な場で生活する高齢者を支える看護

【参考】厚生労働省:看護師国家試験出題基準

近年、出題頻度が高い問題の特徴は?

認知症、排尿障害、誤嚥性肺炎、脳梗塞など、大項目7の症候・疾病・障害にかかわる理解と看護に関する問題は、近年出題頻度が高い傾向です。

超高齢社会が進むなかで、看護師は高齢者の多様な健康レベルや生活の場に応じた看護を提供することが期待されています。看護基礎教育で行われる、高齢者を対象とした実習が病院だけにとどまらないことも、求められる役割を果たせるようになるためです。

そこで今後の看護師国家試験でも、高齢者の併存疾患が複合し、健康障害により生活機能の低下が生じ、日常生活に支障をきたす状況を想定したなかで、全人的に対象をとらえ家族を含めた看護実践を問う内容が出題されると予想されます。適応できるよう不可欠な知識や判断に基づく解答が導き出せるかが重要です。

そのほか、近年出題頻度が高い問題は、大項目4に含まれる身体拘束に関する問題や、高齢者の社会生活を妨げる偏見(エイジズム等)に関する問題、大項目1に含まれるよりよく生きるための視点(サクセスフルエイジング等)に関する問題、大項目1や3に含まれる加齢性変化に基づく生理的な変化などの身体的特性に関する問題です。

これらは、高齢者理解の基本となる概念や、老年看護の基本となる考え方が実装能力として備わっているかを問う内容です。このような問題に対応するために、超高齢社会で、あらゆる健康レベルにある高齢者を対象に、さまざまな場でよりよい看護を実践するために不可欠な「対象理解に必要な考え方」を押さえておきましょう。

第113回でとくに目立っていた問題

第113回では、大項目1に含まれる高齢者の加齢への適応や、大項目4に含まれる倫理観を問う問題、大項目5の高齢者の生活を支える看護に関する問題が多く出題されていました。また、さまざまな健康状態や受療状況に応じた高齢者の看護を基盤として、大項目7疾病や症候、障害や治療などを考慮した看護の判断についての問いがありました。

このような基本的な知識を適切に活用し、高齢者の生活を見据え、今、必要な看護についての判断を問う問題は、今後も多く出題される傾向にあると考えられます。

そのほか、「フレイル」や「サルコペニア」といった比較的新しい概念に関する基本的知識を問う問題は今後も出題が予想されます。この対策として、過去問題だけにとらわれず、予想問題などを解く訓練も必要です。

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【第114回出題予想】「老年看護学」に関する予想3問

予想問題1

    高齢者の社会活動参加状況が最も多い活動はどれか。

  1. 趣味(俳句、詩吟、陶芸など)
  2. 地域行事(祭り、地元の催しなど)
  3. 健康・スポーツ(体操、ゲートボールなど)
  4. 教育関連・文化啓発(郷土芸能伝承、学習会など)
解答・解説をチェック

 
 3

出題基準の大項目2と3に該当する、高齢者の「その人らしい生活の継続」や「老年期における心理・社会的変化と健康への影響」に関する問題です。高齢社会対策の現状や、高齢者・家族・世帯に関するデータは「高齢社会白書」で公表されています。

令和5年版では、健康に関する調査がトピックスとして取り上げられていました。高齢社会白書のデータを知らないと即答が難しい問題ですが、高齢者の健康や生活に関する特徴を理解していれば正解にたどり着くことができます。

高齢社会白書は、高齢社会対策基本法(平成7年法律129号)に基いて、高齢社会対策に関する調査研究の結果や、国民に対する啓発活動の報告がまとめられています。高齢社会対策の傾向も把握できるものです。老年看護学に関連する問題として過去の国家試験でも出題されているので、毎年6月ごろに公表される高齢社会白書のデータは必ず確認しましょう。

予想問題2

    認知症をもつ人のエンド・オブ・ライフ・ケアにおいて意思決定支援で適切なのはどれか。

  1. 成年後見人の意向を尊重する
  2. 図や表をもちいた選択肢を提示する
  3. 家族が同席しない場で本人の意思を確認する
  4. 確認を繰り返さないようにする
解答・解説をチェック

 
 2

出題基準の大項目6に該当する「終末期にある高齢者と家族への看護」に関する問題です。認知症をもつ人の死が避けられない予後が規定された段階(エンド・オブ・ライフ)では、身体的・精神的・社会的・実存的な苦痛を包括的にアセスメント・マネージメントし、対象とその家族の生活の質の向上を目指す支援が不可欠です。

この問題を解くには、アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning: ACP)について理解する必要があります。認知症をもつ人の終末期は、本人の意思がわからない場合が多く、意思決定を支援する際は家族を含め、周りの人たちからこれまで送ってきた人生に関する情報を収集し、参考にしてどのようなケアが必要か、医療・看護・介護で話し合いながら決めていきます。

本人の状況や意思を医療従事者が把握し、さまざまな場面で思いを確認しながら、本人が安寧で平穏な死を迎えられるように家族や周囲の人々を支援することが重要です。

このような健康レベルに応じた看護支援について問う問題は、毎年出題されています。健康レベルに応じた対象の特性、問題課題の傾向、看護支援の特徴について把握しておくことが大切です。

予想問題3

Aさん(92歳、女性)は、5年前に一過性脳虚血発作 Transient ischemic attack〈TIA〉を発症している。1年前に転倒して大腿骨頸部骨折を発症し、人工骨頭置換術の手術を受けたが、術後疼痛が強く、重度の廃用症候群を引き起こし、半年前から自力でベッドから起き上がることができなくなった。現在は特別養護老人ホームで生活している。Mini-Mental State Examination〈MMSE〉13点で血管性認知症 Vascular dementia 〈VaD〉と診断された。食事をデイルームで摂るのを勧めるが「何もできない自分は生きている価値がないからご飯を食べない」という反応がある。

問題3-①

Aさんに出現している症状はどれか。

1.うつ症状
2.感情失禁
3.言語障害
4.幻視

解答・解説をチェック

 
 1

血管性認知症と診断されており、術後に身体活動量が低下し、活動不耐が生じた状態にあります。術後疼痛の影響もあり、日常生活に参加することへの恐怖や意欲低下、ひいては自尊心の低下に繋がっている、Aさんの悲観的な訴えに注目して考えてみましょう。

問題3-②

Aさんへの機能訓練で適切なものはどれか。

1.ベッド上で関節可動域訓練を行う
2.車椅子に乗車する機会を増やす
3.ベッド上で計算ドリルを行う
4.庭で栽培する花壇の手入れを一緒にする

解答・解説をチェック

 
 2

Aさんの術前のADLを想定し、日常生活に参加するきっかけを作る段階にあります。少しでも意欲や気分が向上するよう、適度な活動量を生活の中に取り入れていくことが必要です。虚弱な高齢者に対し、活動と休息のバランスを考慮したケアはどれか考えましょう。

問題3-③

Aさんが「何もできない自分は生きている価値がない」といった時の看護師の対応として適切なものはどれか。

1.「そんなことないですよ」
2.「痛みで起き上がるのがきついですね」
3.「生きる価値がないと感じるのはどうしてですか」
4.「家族が悲しみますよ」

解答・解説をチェック

 
 2

Aさんの心理的状態を考慮すると、辛いと感じていることの原因を唐突に探るのではなく、まずは今最も辛いと感じていることを引き出す問いかけが必要な段階です。

状況設定問題では予想問題3のように、出題基準の複数の項目が包含され、看護の思考を問う問題が出題される傾向にあります。高齢者に多い事故である転倒や、高齢者に特有の疾患や障害である骨折の手術後、脳梗塞発症などの既往歴があるなど、高齢者が陥りやすい状況を複合的に考えて解答できるようにしましょう。

とくに、認知症をもつ人への社会的問題や看護については毎年出題されているため、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症など、それぞれの症候の特徴を踏まえ、対象に生じやすい問題や課題を考える必要があります。

近年アルツハイマー型認知症に関する出題が多い傾向にあったので、今回は脳血管性認知症を予想問題として取り上げました。

できることとできないことの差が大きい脳血管性認知症の特徴と、多様な場で生活する高齢者を支える看護の実際についても、これを機会に学習を深めてください。

【第114回攻略法】「老年看護学」のチェックポイントはズバリここ!

第114回の問題は、第113回と同様、広範囲から出題されると考えられます。攻略法として、過去問題や予想問題を解きながら、高齢者の尊厳ある生を支援する看護の視点を確立することが肝要です。

とくに多様な場で生活する高齢者を支える看護については、医療施設に入院する高齢者の看護だけでなく、退院で生活の場が変わる場合の多職種連携、多職種との情報や目標の共有、家族を含めた支援に関する幅広い知識を習得し、さまざまな視点で思考・判断できるように訓練しましょう。

また、来るべき災害に備え、高齢者の避難所での生活や健康維持、心理的支援について学習を進めておくこともおすすめです。

高齢者特有の疾患・障害のアセスメントや予防と看護では、複合的な病態や、認知症などを含む症候が併存している状態を踏まえた看護に関する出題が続くと予想されます。

サルコペニアとフレイルは、廃用症候群として全身性に及ぶ問題であり、生活機能を著しく低下させる状態につながります。看護の対象として家族を含めた視点で知識を深め、判断できるように備えましょう。

加えて、高齢者に関する問題は、近年在宅看護論でも高頻度に出題されています。生活の場を変える高齢者の支援として、他職種間の情報提供や、目標の共有・評価にあたっても不可欠な国際生活機能分類(ICF)に関する問題などが、老年看護学以外の視点でも出題されており、今後も続くと予想されます。

こちらの対策としては、社会保障制度や高齢社会白書などの基本データの傾向、高齢者に関する動向を示す「少子高齢化」や「高齢者の健康・介護」に関する統計情報などについて、国家試験を受験する前年度の最新情報は正しく把握しておきましょう

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参考文献

厚生労働省:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版.(2024年5月20日閲覧)

内閣府:令和5年版高齢社会白書(全体版).(2024年5月21日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

中島 淑恵

nakajima

東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 准教授/担当領域:老年看護学