【保健師になるには】資格取得までの最短ルート、看護師から目指す方法など解説

【保健師になるには】資格取得までの最短ルート、看護師から目指す方法など解説

最終更新日:2024/06/20

赤ちゃんから高齢者まですべての人の健康的な生活をサポートする保健師。今回は、そんな保健師になるための最短ルートや看護師から保健師免許を取得する方法に加え、それぞれに必要な費用などを紹介します。また、保健師の働き方についても解説するのでぜひ参考にしてください。

保健師とは

保健師は国家資格で、保健師助産師看護師法(第二条)において「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」と定義されています。

保健指導に従事する職業で、専門知識をもとに保健指導や健康相談を行い、乳幼児を含む子どもから成人、高齢者まで、すべてのライフステージの人が健康的な生活を送れるようにサポートをするのが保健師です。

保健師の種類

保健師は、活躍する場によって大きく4つに分けられます。以下の表は、それぞれどんな仕事を担うのかをまとめたものです。

保健師の種類
自治体保健師 ・都道府県や市区町村の役所、保健所、保健センターなどに勤務する保健師(公務員試験に合格する必要あり)
・地域住民の病気の予防、健康の維持・増進のサポートを行う
産業保健師 ・民間企業に勤務する保健師
・社員の健康管理やメンタルヘルス対策、保健指導を行う
学校保健師 ・主に私立の小中学校や高校、大学、専門学校などに勤務する保健師
(公立学校の保健室に勤務する養護教諭ではない)
・生徒や教職員の健康管理を行う
病院保健師 ・病院や診療所など医療機関に勤務する保健師
・患者さんや病院職員の健康管理や保健指導を行う

保健師と看護師との違い

保健師と看護師は、どちらも対象となる人の健康の改善・維持・管理をサポートする役割を担いますが、実際に行う仕事は異なります。保健師の仕事は保健指導が中心であるのに対し、看護師の仕事は診療の補助と療養上の世話になります。

また、資格制度にも違いがあります。看護師に必要な免許は看護師免許のみですが、保健師になるには、保健師免許と看護師免許が必要です。そのため保健師は看護師としても病院や診療所などに勤務することができます。

保健師になるには

保健師助産師看護師法(第七条)で「保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」と定められているように、保健師になるには保健師免許と看護師免許の両方を取得する必要があります。

そのため、保健師国家試験に合格しても看護師国家試験が不合格であった場合は、保健師免許は取得できません。

保健師国家試験とは

ここでは、保健師国家試験の受験資格から、実施頻度、試験内容、難易度について解説します。

受験資格

保健師国家試験の受験資格は、保健師助産師看護師法(第十九条)で以下のように定められています。

  • 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校において一年以上保健師になるのに必要な学科を修めた者
  • 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事の指定した保健師養成所を卒業した者
  • 外国の第二条に規定する業務に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において保健師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの

引用:保健師助産師看護師法(第十九条)

実施頻度

保健師国家試験は保健師助産師看護師法(第十八条)の規定に則り、毎年1回実施されています。試験日は毎年2月上旬で、日程は前年の夏頃に厚生労働省から発表されます。

2024年の第110回保健師国家試験は2月9日に全国12カ所で実施され、合格発表は3月22日でした。ちなみに同年の第113回看護師国家試験は2月11日に行われました。例年、看護師と保健師の国家試験は別の日に設定されているため、保健師国家試験と看護師国家試験のダブル受験が可能です。

試験内容

保健師国家試験の出題科目は以下の4項目です。

保健師国家試験の出題科目
  • 公衆衛生看護学
  • 疫学
  • 保健統計
  • 保健医療福祉行政論

出典:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版

2024年2月9日に実施された第109回保健師国家試験の試験時間と問題数は以下のとおりでした。

参考:第109回保健師国家試験 問題および正答について
出題方式 問題数 時間
午前 一般問題 40問 80分
(10:40〜12:00)
状況設定問題 15問
午後 一般問題 35問 80分
(13:55〜15:15)
状況設定問題 20問

保健師国家試験の問題は、厚生労働省が発表する保健師助産師看護師国家試験出題基準をもとに作成されます。問題数や試験時間は年度によって変わる可能性もあるため、詳細は厚生労働省の「試験・資格情報」を確認してください。

難易度

保健師国家試験の難易度の指標として、過去5年間の保健師国家試験の受検者数と合格率をグラフと表にまとめました。

保健師国家試験の合格率の推移

出典:厚生労働省 国家試験合格発表

過去5年間の保健師国家試験の合格率は、ほぼ90%を超えています。ちなみに、過去5年間の看護師国家試験の合格率は88~91%あたりを行き来しており、助産師国家試験の合格率は96%以上となっています。

ここ5年間で比較すると、保健師国家試験の合格率は看護師国家試験よりは高いものの、助産師国家試験よりは低くなっています。

また、保健師国家試験の合格率は90%以上ですが、保健師になるには看護師国家試験にも合格しなければなりません。保健師に加えて看護師になるための教育課程も修了し、2つの試験をクリアしなければならないことを考えると、保健師になる難易度は低くはないでしょう。

【教育機関別】保健師になるための最短ルート

保健師になるまでのルート

保健師免許は、中学卒業から最短6年、高校卒業からであれば最短4年で受験が可能で、合格すれば取得できます。ただし、選ぶ教育機関によって免許取得にかかる年数やルートは異なります。ここでは、教育機関別に保健師になるための最短ルートを解説します。

保健師課程がある教育機関の場合

看護師・保健師課程がある大学や専門学校は、高校卒業から4年間で保健師資格が取得可能な最短ルートです。看護師・保健師課程がある4年制教育機関を修了すると、看護師と保健師の国家試験の受験資格が得られるため、最終学年時にダブル受験ができます。

ただし先にも述べたとおり、保健師になるには看護師国家試験の合格が必須であるため、保健師国家試験に合格しても、看護師国家試験に不合格となった場合は保健師免許が取得できません。無資格者になってしまいます。これは、免許取得のためのいずれのルートにおいても同様です。

保健師課程がない教育機関の場合

保健師課程がない看護師課程のみの教育機関の場合は、卒業後に保健師課程がある教育機関へ進学または編入する必要があります。保健師教育機関の修業期間は1〜2年のため、高校卒業後から4〜5年かかり、これが保健師を目指す最短ルートになります。

保健師課程がある教育機関には、様々な種類があります。以下の表は、保健師課程がある教育機関の種類と修業期間です。卒業する看護師教育機関の種類によって進学・編入できる先が異なるため、詳しくは希望する教育機関に問い合わせてください。

保健師教育機関の種類 修業期間 入学条件
大学院 2年 大学を卒業した者
指定の専修学校を修了した者
大学専攻科・別科 1年 大学を卒業した者
指定の専修学校を修了した者
短大専攻科 1年 短期大学を卒業した者
同等以上の学力があると認められた者
専門学校 1年 看護師教育機関を卒業または卒業見込みの者
大学(保健師課程を有する) 3年次編入 看護師課程を修了見込み、または修了した者

参考:全国保健師教育機関協議会 会員校一覧
   厚生労働省:医療関係職種養成施設

5年一貫看護師養成課程校の場合

5年一貫看護師養成課程校を選択すると、中学卒業から最短6年間で保健師が目指せます。5年一貫看護師養成課程校を卒業した後は、保健師課程がある教育機関に進学し修了する必要があります。

ただし、学校教育法上、5年一貫看護師養成課程校を卒業して得られるのは高等学校卒業の資格です。そのため進学を希望する教育機関によっては、入学条件が満たせない場合もあります。詳しくは希望する教育機関の募集要項を確認してください。

現役看護師から保健師を目指す場合

現役看護師から保健師を目指す場合は、保健師課程がある教育機関への入学が必要です。最短1年で保健師が目指せます。ただし、保健師課程がある教育機関のほとんどは全日制のため、仕事を続けながら保健師を目指すことは難しいかもしれません。

また、最終学歴によって受験できる教育機関が異なるため、詳細は希望する教育機関の募集要項を確認してください。

保健師になるために必要な学費

ここでは保健師になるために必要な学費や資格取得支援制度について解説します。

費用は選ぶ学校によって異なる

保健師になるための費用は選ぶルートや教育機関によって異なります。種類別の学費の目安は以下のとおりです。

教育機関の種類 費用の目安(参考)
4年制大学・専門学校
(看護師・保健師課程あり)
約240〜650万円
大学院(2年制) 約140〜350万円
大学専攻科・別科(1年制) 約50〜125万円
短大専攻科(1年制) 約110〜170万円
専門学校(1年制) 約150万~250万

一般的に費用は私立より国公立のほうが安い傾向にあるようです。ただし、保健師になるために必要な費用の総額は、看護師課程を修了する教育機関によっても変わります。

保健師課程がある1〜2年制の教育機関は多くないため、現実的に通える条件であるか、保健師免許取得までにトータルでどのぐらい費用がかかるかなどを比較しながら選びましょう。

資格取得のための支援制度

保健師になるうえで、活用できる資格取得の支援制度がいくつかあります。主な支援制度について表にまとめました。

保健師の主な資格支援制度

支援の内容や利用できる条件は制度によって異なります。活用できそうなものを確認してみましょう。

保健師の働き方⁻どんな人が向いている?

ここからは保健師の働き方や向いている人の特徴について紹介します。

データでみる|保健師の仕事

ここでは厚生労働省のデータをもとに、保健師の就業場所や給与事情について解説します。

就業人数と就業場所

厚生労働省が発表している令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、全国で保健師として働いている人は6万299人で、看護師(准看護師は除く)の約1/20、助産師の約1.6倍となっています。

保健師の就業場所の7割以上が都道府県や市町村、保健所で、自治体保健師として働いています。そのほか、病院・診療所、事業所、介護保険施設などで活躍しています。

年収・給与事情

厚生労働省のjobtagにより、保健師と看護師や助産師の年収を比較しました。

参照:職業情報提供サイト jobtag(保健師・看護師・助産師)
年収・月給の全国平均
保健師 看護師 助産師
年収 481.3万円 508.1万円 584.2万円
月給
※求人データによる
25.1万円 25.3万円 29万円

保健師の平均年収は481.3万円で、看護師と比べると約27万円、助産師と比べると約103万円低く、看護系3つの資格のなかでは最も低い給料水準となっています。これは保健師が働く市町村や保健所は夜勤がないため、病院勤務で夜勤手当がつく看護師や助産師に比べて低い給料水準になっていると考えられます。

なお、国税庁の民間給与実態統計調査では、2022年時点の日本人の平均年収は458万円と報告されているため、保健師の給料水準は日本人の平均からはやや高めだといえるでしょう。

保健師の将来性

国によって健康維持・増進に関する取り組みが行われている一方で、人々の健康意識も高まっており、予防医療や健康促進などの分野で活躍する保健師の需要は今後も高まると考えられます。すでに一部の地方自治体では保健師不足が発生しており、採用時の年齢制限を緩和しているところもあるようです。

そもそも保健師の多くが働く都道府県・市区町村役所や保健所などでは、地域住民の健康を守る仕事がなくなることはありません。それどころか、生活習慣病や社会的ストレスを抱える人が増える現状のなか、保健師の果たす役割にはますます期待が寄せられています。行政機関だけでなく、事業所や施設など保健師が活躍する場はさらに増えていくと予想されています。

保健師に向いている人の特徴

保健師の特徴や仕事内容をふまえ、どのような人が保健師に向いているのか、特徴をまとめました。

  • 予防医学に興味がある人
  • 誰とでもコミュニケーションが取れる人
  • 相手の立場に立ちアドバイスできる人
  • 健康意欲の高い人

保健師には、健康維持・増進のため、治療や処置といった医療知識に止まらず、予防医療についての知識も必要です。具体的な仕事内容も健康相談が中心となるため、より予防医療に興味がある人が向いているでしょう。

また、乳幼児から高齢者まで様々な人と接点を持つ必要があるため、誰とでもコミュニケーションが図れ、相手の立場に立ってアドバイスできる能力が必要です。対象となる人に適切な健康指導を行うためには、自身も健康意欲を持っていることが望ましいでしょう。

保健師になる方法を理解してキャリアの選択肢を広げよう

保健師になるためには所定の教育を修了し、保健師と看護師の国家試験に合格する必要があります。保健師になるには複数のルートがありますが、看護師を目指すよりも期間と学費がかかるため、難易度が低いとはいえません。しかし、保健師は予防医療を通じて人々の健康に貢献できるやりがいのある仕事で、看護師としても働くことができます。保健師に興味がある人は、保健師になるための方法についても理解を深めておきましょう。

参考

一般社団法人 全国保健師教育機関協議会(2024年4月14日閲覧)

厚生労働省:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版(2024年4月14日閲覧)

厚生労働省:職業情報提供サイト jobtag(2024年4月14日閲覧)

公益社団法人 日本看護協会:自治体保健師の人材確保ガイド(2024年4月14日閲覧)

日本公衆衛生協会:「自治体保健師の人材確保支援策の検討」報告書(2024年4月14日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。