【助産師になるには】大学・専門学校別の最短ルートから難易度や費用まで

【助産師になるには】大学・専門学校別の最短ルートから難易度や費用まで

最終更新日:2024/08/22

助産師は、妊娠から出産、産後、新生児のケアまでを専門とし、分娩の介助や出産前後の保健指導などにより母子の健康をサポートするスペシャリストです。助産師になるためのルートは複数あり、年数や費用も異なります。今回は、助産師になる方法、最短ルート、費用について条件別に解説します。

どうしたら助産師になれる?

助産師として働くには、厚生労働省が認める助産師免許が必要です。また、ほかにもクリアしなければならない条件があります。ここでは助産師になるための条件、助産師国家試験の概要について解説します。

助産師になるための3つの条件

助産師になるためには3つの条件が必要です。

  1. 女性であること
  2. 助産師免許を取得していること
  3. 看護師国家試験に合格していること

助産師は保健師助産師看護師法(第三条)において「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義されています。日本で助産師になるには、女性であることが条件となります。

また2007年に行われた同法(第七条2)の改正により、助産師免許を取得するには助産師に加えて、看護師の国家試験合格が必須となりました。そのため助産師国家試験に合格しても、看護師国家試験が不合格の場合は助産師にはなれません。

助産師国家試験とは

ここからは助産師国家試験の実施頻度や試験内容、難易度について解説します。

実施頻度

助産師国家試験は保健師助産師看護師法(第十八条)の規定に則り、毎年1回実施されています。試験日は毎年2月上旬で、日程は前年の夏頃に厚生労働省から発表されます。

2024年度の第107回助産師国家試験は2月8日、合格発表は3月22日でした。ちなみに同年の第113回看護師国家試験は2月11日で実施日は異なっていました。このような場合は、助産師国家試験と看護師国家試験のダブル受験が可能になります。

試験内容

助産師国家試験の出題科目は以下の4項目です。

助産師国家試験の出題科目
  • 基礎助産学
  • 助産診断・技術学
  • 地域母子保健
  • 助産管理

出典:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版

2023年2月8日に実施された第106回助産師国家試験の試験時間と問題数は以下のとおりでした。

参考:第106回助産師国家試験 問題および正答について
出題方式 問題数 時間
午前 一般問題 40問 80分
(10:40〜12:00)
状況設定問題 15問
午後 一般問題 35問 80分
(13:55〜15:15)
状況設定問題 20問

助産師国家試験問題の内容は、厚生労働省が発表する保健師助産師看護師国家試験出題基準をもとに作成されます。年度により問題数や試験時間が変わる場合もあるため、詳細は厚生労働省の「試験・資格情報」を確認してください。

難易度

難易度の指標として、過去5年間の助産師国家試験の受検者数と合格率をまとめました。

助産師国家試験の合格率の推移

出典:厚生労働省 国家試験合格発表

助産師国家試験の合格率は例年95%以上となっており、合格率90%前後で推移している看護師国家試験に比べると、助産師国家試験の合格率は高いといえます。

ただし、助産師国家試験を受けるためには、看護師になるための勉強に加えて、所定の教育課程を修了していることが条件です。施設数と定員が限られる助産師教育機関に入学し、座学と実習を修了したうえで国家試験に合格するというハードルを考えると、助産師になる難易度は低くはないでしょう。

【教育機関別】助産師になるための最短ルート

助産師になるまでのルート

助産師免許は、高校卒業から最短4年、中学卒業からだと最短6年で取得可能です。どのような助産師教育機関を選ぶかによって期間やルートは異なってくるので、ここでは教育機関別に助産師になるための最短ルートを解説します。

助産師課程がある大学の場合

看護師・助産師課程がある4年制大学の助産師選択過程を修了することが、高校卒業から4年間で助産師が目指せる最短ルートになります。そして、看護師および助産師の国家試験の受験資格が得られるため、最終学年時にダブル受験で合格すれば、同じ年に看護師免許と助産師免許を取得できます。

ただし、助産師になるには看護師免許の取得が必須となるため、ダブル受験をして助産師国家試験に合格したとしても看護師国家試験で不合格だった場合、助産師免許は取得できません。その場合には無資格者となってしまうことを覚えておきましょう。

助産師課程がない教育機関の場合

助産師課程がなく、看護師課程のみの大学や専門学校の場合は、卒業後に助産師課程がある教育機関への進学が必要です。通学期間は1〜2年のため、看護師課程がある4年制大学をストレートで卒業した場合、その後1年間の助産師養成期間を経て最短5年で助産師免許が取得できます。3年制専門学校を卒業した場合には、最短4年で取得できることになります。

以下の表は、助産師課程がある教育機関の種類と修業期間です。なお、卒業する看護師学校養成所の種類によって進学できる助産師教育機関が異なるため、一般的にいわれている入学条件もまとめてあります。

しかし、教育機関ごとに入学要項も異なるため、例外もあります。詳しくは進学を希望する教育機関に問い合わせてください。

参考:全国助産師教育協議会 会員校一覧
教育機関の種類 修業期間 入学条件
大学院 2年 大学を卒業した者
指定の専修学校を修了した者
大学専攻科・別科 1年 大学を卒業した者
指定の専修学校を修了した者
短大専攻科 1年 短期大学を卒業した者
同等以上の学力があると認められた者
専門学校 1年 看護師学校養成所を卒業または卒業見込みの者

5年一貫看護師養成課程校の場合

5年一貫看護師養成課程校の場合は、卒業後に1年制の助産師教育機関に進学すると、中学卒業から最短6年で助産師免許が取得できます。最短であれば年齢的にもっとも早く助産師を目指せるルートです。

現役看護師から助産師を目指す場合

現役看護師から助産師を目指す場合は、助産師教育機関を卒業し国家試験に合格すれば最短1年で助産師免許が取得できます。最終学歴によって受験できる助産師教育機関が異なるため、詳細は希望する教育機関を確認してみましょう。

ただし、助産師教育機関のほとんどは全日制です。一部夜間制の学校もありますが、1〜2年間で座学と実習を修了しなければならないため、仕事を続けながら助産師を目指すことは難しいかもしれません。

助産師になるために必要な学費

ここでは助産師になるために必要な学費や資格取得支援制度について解説します。

費用は選ぶ教育機関によって異なる

学費は教育機関によって異なります。教育機関別の学費の目安は以下のとおりです。

教育機関の種類 費用の目安
大学院(2年制) 120〜350万円前後
大学専攻科・別科(1年制) 60〜200万円前後
短大専攻科(1年制) 150〜200万円前後
専門学校(1年制) 150~350万円前後

詳しい費用は教育機関によって様々ですが、一般的に同じ種類の教育機関であっても国公立のほうが私立より学費が安い傾向にあります。また、助産師になるための必要な費用の総額は、どのルートで看護師免許を取得し助産師を目指すかによっても変わってきます。

助産師になるための教育機関は少ないため、複数の学校の学費を比較しながら、現実的に通える教育機関を選びましょう。

資格取得のための支援制度

助産師になるには、活用できる資格取得の支援制度がいくつかあります。主な支援制度は以下のとおりです。

主な資格支援制度
日本学生支援機構 ● 主に奨学金、留学生支援、学生生活支援の事業を展開している
● 数種類の奨学金制度があり、対象者や申込資格などもいくつかに分かれている
看護師等修学資金貸与事業 ● 保健師、助産師、看護師等の教育機関在学中に修学資金が貸与される各都道府県が行う資格支援制度
● 免許取得後、指定施設に一定期間勤務すると返還が免除される
教育訓練給付制度
(専門実践教育訓練)
● 就業しており一定要件を満たす看護師に対し、指定教育訓練についての受講費用の一部を支給する制度
学校や病院による奨学金 ● 学校や病院が貸与・支給する奨学金
● 対象者や内容は支給する学校・病院により異なる

支援の対象となる条件や内容は制度によって異なります。活用できそうなものがあれば確認してみましょう。

助産師の働き方 どんな人が向いている?

ここからは助産師の働き方や向いている人の特徴について紹介します。

主な仕事内容

助産師の仕事内容は、主に出産前後の母子のケアと女性の健康に関するケアです。項目ごとに具体的な仕事内容をまとめました。

助産師の主な仕事内容
妊娠期のケア ● 母子の健康管理
● 妊娠期の生活指導
● 妊婦の精神的サポート
● 出産の基礎知識や沐浴など産後ケアの知識の提供
分娩のケア ● 分娩の準備
● 正常分娩の介助
● 異常分娩の判断と医師との連携
出産後のケア ● 産後の状態管理
● 授乳やオムツ交換などの育児指導
● 産婦本人と家族の精神的サポート
新生児・乳児のケア ● 発達・健康管理
● 健診・保健指導
女性の健康に関するケア ● 家族計画や不妊治療についての相談対応
● 思春期や更年期の女性のケア

活躍の場

厚生労働省が発表している令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、全国で助産師として働いている人は3万8063 人おり、そのうちの約8割が病院や診療所に勤務しています。

助産師は病院のほか以下のような場で活躍しています。

  • 助産院(開業が可能)
  • 保健所・保健センター
  • 助産師教育機関または研究機関

近年の需要

日本では少子化が進んでいますが、少子化によりお産の数が減ったとしても、お産がなくなることはないと考えられ、助産師の需要がなくなることはないでしょう。

厚生労働省の令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、就業している助産師の数は増えています。しかし地域によって助産師の数には差があり、不足している地方もあります。

国は、助産業務に従事する助産師の数を増やすとともに、質の向上を図るための取り組みを、日本看護協会と一緒に進めているようです。

年収・給与事情

厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagのデータにより、助産師と看護師や保健師の年収を比較しました。

年収・月給の全国平均

参照:職業情報提供サイト jobtag(助産師・看護師・保健師)
助産師 看護師 保健師
年収 584.2万円 508.1万円 481.3万円
月給
※求人データによる
29万円 25.3万円 25.1万円

助産師の平均年収は、看護師と比べると約76万円、保健師と比べると約103万円高いことがわかります。ちなみに国税庁の民間給与実態統計調査によると、日本人の平均年収(民間企業)は約458万円(2022年)となり、助産師の給料水準は高いといえるでしょう。

向いている人の特徴

助産師の特徴や仕事内容を踏まえ、どのような人が助産師に向いているのか、特徴をまとめてみました。

  • 新生児・乳児が好きな人
  • 向上心がある人
  • 責任感がある人
  • 体力に自信がある人

助産師は看護師の知識に加え助産師の専門知識が必要になるため、新生児が好きであることはもとより、助産師になるために学びたいという向上心のある人が向いているでしょう。医師の指示なく助産行為が可能とされる助産師の仕事には責任感も必要です。

また、1〜2年の間に資格取得のための座学と実習をこなす必要があり、さらに働き出すと予測できないお産に対応しなければならないため、体力があるとよりよいといえるでしょう。ただし、これらはあくまで傾向であり、助産師として働くなかで身につくものもあります。まずは、助産師の仕事に興味があるということが大切です。

助産師になる方法を理解してキャリアの選択肢を広げよう

助産師になるには看護師資格を取得したうえで、助産師国家試験に合格しなければなりません。また、助産師になるためのルートは複数あるものの、時間と費用がかかり、難易度は低くないでしょう。しかし、助産師には看護師にない活躍の場があり、さらに看護師としても働くことができます。助産師に興味がある人は、助産師になるための方法を知って、キャリアの可能性を広げておきましょう。

参考

公益社団法人 日本助産師協会(2024年3月21日)

公益社団法人 日本看護協会(2024年3月21日)

厚生労働省:令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(2024年4月2日)

厚生労働省:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版(2024年3月21日)

厚生労働省:職業情報提供サイト jobtag(2024年3月21日)

国税庁:民間給与実態統計調査(2024年4月2日)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。