チーム医療とは?看護師に求められる役割や大切なこと【経験談あり】

チーム医療とは?看護師に求められる役割や大切なこと【経験談あり】

最終更新日:2024/05/14

多職種が連携して患者さんを支える「チーム医療」は、様々な医療現場で実践されています。今回は、チーム医療における看護師の役割や活躍の場を解説します。経験者の声も紹介するので、参考にしてください。

チーム医療とは

チーム医療とは、患者さんの状況に合わせて様々な専門職が連携し医療を提供することです。医師、看護師、薬剤師など、それぞれの知識や技術を活かしつつ、情報共有や業務分担をしながら協働し、最適な治療を行います。

チーム医療は、患者さん一人ひとりのその人らしい生活を実現するため、そして質が高く安心・安全な医療を提供するための体制として、様々な医療現場で実践されています。

チーム医療はなぜ必要?

チーム医療が必要とされる背景には、医療の高度化・複雑化が進んだこと、患者さんのニーズが多様化したことが挙げられます。医療技術の進歩によって、医療従事者には今後さらに高度な専門性が求められ、医師や看護師といった単独の医療従事者だけでは、質が高く、安心・安全な医療を求める患者さんのニーズすべてに対応することは困難です。

そこで、様々な医療現場では、チーム医療を実践することで、患者さんの個別性に合わせた質の高い医療の提供を目指しています。

また、超高齢化社会を迎えている日本では、病院だけでなく、介護・福祉を含め地域全体で患者さんと家族を支える地域包括ケアシステムの構築が進められていることから、医療機関と地域が連携する広い意味でのチーム医療も重要視されています。

チーム医療のメリット

チーム医療には、患者さんにとっても医療従事者にとってもメリットがあります。特に以下の3点がメリットとなります。

  1. 医療・生活の質の向上
  2. 医療従事者の負担の軽減
  3. 医療安全の向上

チーム医療では、より安心・安全な医療を提供するために、各医療従事者が専門性を発揮しながら協働し、病気の早期発見や回復の促進、重症化を予防して、医療と生活の質向上に努めます。

また、チームメンバーが役割を分担することにより、医療の効率化を図り、医療従事者の負担を軽減できるのもメリットのひとつです。そのほか、複数の専門職がその知識をもとに多くの視点によって患者さんをケアすることは、医療の安全性の向上にもつながります。

チーム医療を構成する職種

チーム医療は患者さんと家族を中心に、主に以下のような職種で構成されています。

チーム医療の構成

チーム医療を構成する職種には、上記以外にも歯科衛生士や義肢装具士など患者さんのサポートに携わるすべての職種が含まれます。

例えば、ケアマネージャーや保健師など病院外の専門職が加わることもあり、メンバーはそれぞれの医療チームの目的によって変わります。

チーム医療における看護師の役割とは

ここでは、チーム医療における看護師の役割と大切なことを解説します。

看護師はチーム医療のキーパーソン

チーム医療において、看護師はチーム全体を調整する重要な存在だといえます。

昼夜を通して療養生活全体をサポートしている看護師は、患者さんの全身状態や精神状態など多くのことを知ることができる立場です。療養生活に携わるほかの医療従事者とも接点が多いため、患者さんについての深い理解をもとに、チーム医療の中心として全体を調整する役割を果たすことが求められます。

チーム医療の調整役として大切なこと

チーム医療の調整役として大切な3つのポイントを解説します。

患者さんに寄り添う

チーム医療の調整役として最も大切なことは、患者さんに寄り添うことです。看護師は患者さんの身近な存在として患者さんを深く理解し、患者さんそれぞれのその人らしい生活の実現をサポートしなければなりません。

患者さんの全身状態や精神状態を専門的な視点から観察し、コミュニケーションを通して信頼関係を築きながら、患者さんへの理解を深めることを心がけていくようにします。

チームの調整役としてリーダーシップをとる

看護師はチーム医療の調整役として、リーダーシップを発揮することも大切です。医療チームは多職種が共通の目的を持ち、共通認識のもと最適な医療を提供するために動くことが必要ですが、時にはチーム内で意見が食い違うこともあります。

そのようなとき、看護師には、患者さんの代弁者として、また患者さんの療養生活全体を支える専門職として、場合によっては、リーダーシップを発揮し全体の調整を図ることも求められます。

チームの仲介役として情報を共有する

看護師はチーム医療の仲介役として、他職種と情報を共有することも重要です。チームは医師やリハビリ担当者、管理栄養士など、部署が異なるメンバーによって構成されます。そのなかで、常に病棟にいる看護師は、各メンバーからの情報や意見を把握しやすい立場にあります。

そのため、看護師はチームの仲介役として各メンバーと情報を共有し、コミュニケーション能力を活かしながら、チーム内で円滑な連携が図られるよう調整することが求められます。

臨床現場における医療チームの例

臨床現場では、対象となる患者さんや治療目的の違いにより、様々な種類のチーム医療が実践されています。ここでは、病院区分や病棟に関わらず臨床現場でチーム医療の実践のために組織されている医療チームの例を紹介します。

代表的な4つの医療チーム

様々な病院の臨床現場で実践されている代表的な4つの医療チームを紹介します。

栄養サポートチーム(NST)

チームメンバー:医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士 など

栄養サポートチームとは、栄養状態に問題がある患者さんに対して最適な栄養管理を提供し、原疾患の症状改善や合併症予防などにつなげることを目的とする医療チームです。病棟内で低栄養や摂食嚥下障害のある患者さんをピックアップし、継続的な栄養状態の評価、不足している栄養の補給、口腔内環境・嚥下機能の管理など栄養計画に基づいたサポートを行い、栄養状態の改善を図ります。

褥瘡管理チーム

チームメンバー:医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、理学療法士 など

褥瘡管理チームとは、褥瘡の予防や早期発見、悪化防止を目的とした医療チームです。自己体動が少ない、あるいは低栄養など褥瘡のリスクが高い患者さんや、すでに褥瘡が発生している患者さんに対し、全身状態を評価し、褥瘡の予防や早期発見、改善・治癒に努めます。最適な体位や寝具の検討、治療・ケアの実践と管理、栄養管理などを提供します。

褥瘡管理チームではチームの中心として、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)が活躍している病院も多くあります。

認知症ケアチーム

チームメンバー:医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士、作業療法士など

認知症ケアチームとは、認知機能が低下している患者さんに対し、早期発見、早期治療、本人や家族の支援、地域生活の維持などの面からサポートを行うことを目的とした医療チームです。患者さんの尊厳を守り、安心した療養生活が送れるように、定期的なカンファレンスを行い、環境調整、薬剤の調整、転倒・転落防止、日常生活機能回復訓練などの取り組みを行います。

認知症看護認定看護師や、精神看護専門看護師がチームの中心となり活動している病院もあります。

退院支援チーム

チームメンバー:医師、看護師、薬剤師、院内の退院支援部門、理学療法士、作業療法士、地域の医療・介護・福祉関係者など

退院支援チームとは、入院患者さんが退院後も必要な医療や療養生活が継続できるよう、あるいは社会復帰ができるようサポートすることを目的とした医療チームです。身体機能や認知機能の低下などによって支援が必要な患者さんに対して、在宅ケアに向けた技術指導、在宅環境の整備や介護サービスの検討、地域での連携先の確認、家族のサポートなどを行います。必要な場合は、院内だけでなく院外の多職種とも連携します。

その他の医療チーム

代表的な医療チームのほかにも、様々な医療チームがあります。上記以外の医療チームについて、一覧にまとめました。なお、実践されているチーム医療の種類や実践方法は、病院や病棟によって異なります。

その他の医療チームの例
緩和ケアチーム 対象:がんなどの終末期にある患者さんと家族
身体的苦痛の緩和、心理的・社会的問題への寄り添い・サポートなどにより、QOL(生活の質)の改善とその人らしい生き方の実現を目指す
急性期
リハビリテーションチーム
対象:心身に障害がある、またはそのリスクがある急性期の患者さん
全身状態の安定と合併症の予防、早期回復を目指す
回復期
リハビリテーションチーム
対象:心身に障害がある回復期の患者さん
障害の改善や社会復帰を目指す
呼吸ケアチーム 対象:呼吸機能に問題がある患者さん、人工呼吸器を装着した患者さん
早期に呼吸状態の改善を図り、呼吸機能の安定や合併症の予防に努め、日常生活をサポートする
糖尿病チーム 対象:糖尿病患者さんと家族
合併症や重症化の予防と継続した自己管理をサポートする
精神科リエゾンチーム 対象:精神科的治療やケア、心理的支援が必要な患者さん
多職種によって多面的で全人的な支援を行う
感染症対策チーム 医療施設内での感染の予防・対策、患者さんや職員への教育を行う
医療安全管理チーム 医療機器や薬剤の安全対策や事故の予防、再発防止対策などを行う

経験者が答える「チーム医療の実情」

ここからは、病院でチーム医療に携わっていた看護師の経験談をもとに、チーム医療の魅力や大変だと感じたことを紹介します。チーム医療で活かせる資格についても紹介するので、参考にしてください。

チーム医療に携わったきっかけは?

勤務していた外科病棟で栄養サポートチーム(NST)の担当になったのがきっかけです。私が働いていた病院では、経験年数が3年目ぐらいになると、病棟内で実践されている何らかのチーム医療の担当を任されることになっていました。

チームで担当していた業務は?

栄養サポートチーム内で担当していた業務は、対象となる患者さんのピックアップと定期カンファレンスの進行役です。

対象となる患者さんは、採血の検査数値や日常生活の観察によってピックアップしていました。看護師は患者さんの食事摂取状況や全身状態を日頃から観察しているため、それをもとに病棟のほかの看護師の意見も聞きながら、栄養サポートが必要な患者さんを選定します。

月2回行われるカンファレンスでは、患者さんに合わせた栄養管理の方法について多職種メンバーで話し合うために、問題点を挙げたり、目標点をまとめるなどの進行役を担当していました。

また、カンファレンスで決定したことが病棟全体で取り組めるように、メンバー以外のスタッフに周知するのも看護師の役割でした。

チーム医療に携わってよかったことは?

チーム医療に携わってよかったことは、看護の視点が広がったことです。病棟看護師として勤務していると、看護の視点が患者さん寄りになりすぎたり、業務的になってしまったりすることがありますが、チーム医療に携わることでほかの職種からの意見を聞くことができ、患者さんを全体的に看る視点が養えました。

また、他職種と連携したケアで患者さんの症状が改善したときには、チームで患者さんを支えることにやりがいが感じられたこともよかった点です。

チーム医療に関わるなかで大変だったことは?

チーム医療に関わるなかでで大変だったことは、病棟業務と並行して栄養サポートチームの仕事をしなければならなかったことです。急性期病院だったため、忙しい日常業務の合間にチームの仕事を進めなければならず、時間的な余裕がありませんでした。残業をしてチーム医療の仕事をしたこともあります。

また、24時間交代勤務の病棟では情報共有が難しい場合は少なくありません。チームで決定したケアを病棟内で周知しても思うように伝わらず、チーム医療の実践が難しいと感じることもありました。

チーム医療で活躍するためにおすすめの資格は?

看護師としてチーム医療で活躍するためにおすすめの資格は、認定看護師や専門看護師です。認定看護師や専門看護師は、実務経験を積んだ後に所定の教育を受ける必要があるため、ハードルは高いといえますが、病院全体の中心となり活躍できる資格です。

代表的なチーム医療で活躍したい場合は、褥瘡や糖尿病、認知症やがんに関する分野がおすすめです。在宅支援に興味がある場合は、ケアマネージャーの資格も役に立つでしょう。

チーム医療に携わるには

看護師として様々な臨床現場で実践されているチーム医療に携りたいという人のために、職場を選ぶときのポイントを紹介します。

職場を選ぶときの3ポイント

チーム医療に携わりたい人は、職場を選ぶときに以下で紹介する3つのポイントを意識しましょう。

専門医療チームがある病院を選ぶ

チーム医療に携わりたい人は、医療チームを組織・実践している病院を選びましょう。医療チームがあるかどうかは、説明会やインターンシップの際に確認してみてください。

また、医療チームのなかには診療報酬の加算対象となっているものもあるため、病院ホームページの施設基準などを確認することで、チーム医療が実践されているかどうかを知ることもできます。

例えば、病院ホームページの施設基準などの項目に「栄養サポートチーム加算」と記載されている場合は、その病院には栄養サポートチームがあるということです。

チーム医療がメインの職場を選ぶ

チーム医療に携わるためには、部署全体でチーム医療を展開している職場を選ぶのもひとつの方法です。例えば、回復期リハビリテーション病棟や訪問看護は在宅支援も担うので、地域の多職種との連携を学べる機会が多いでしょう。

また、手術室やICUもほかの職種との関わりは多く、チーム医療が学べる可能性が高いといえます。

専門性が磨ける職場を選ぶ

興味のある分野がはっきりしていて、将来的に医療チームの中心として活躍したい人は、専門性を磨ける職場を選んでみてください。

例えば、糖尿病看護に興味がある人は内科や内分泌内科で経験を積む、災害支援チームで活躍したい人は救急で幅広い疾患の対応を学んでおくなど、進みたい分野でのキャリアアップを目指してみましょう。

学生のうちにやっておくとよいこと

将来的にチーム医療の一員として活躍するためには、学生のうちに看護の基礎を固めることが大切です。まずは、授業でしっかり看護の知識を習得し、実習で看護観を深めてください。看護師になったら、実践による看護の基礎を身につけ、チーム医療で活躍できるようスキルアップを図りましょう。

チーム医療で活躍できる看護師を目指そう

高齢化が進むなか、医療の高度化や複雑化によってチーム医療のニーズは高まっており、臨床現場では様々なチーム医療が実践されています。チーム医療において看護師は重要でやりがいのある役割を担っています。チーム医療には様々な分野があるため、ぜひみなさんも興味がある分野で活躍できる看護師を目指してみてください。

参考

厚生労働省:チーム医療の推進について

チーム医療推進方策検討ワーキンググループ(チーム医療推進会議):チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集

日本赤十字社:チーム医療の推進に関するガイドライン 第2版

日本看護協会:看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。