災害看護とは?看護師の役割や大切なこと【現役DMATインタビューあり】

災害看護とは?看護師の役割や大切なこと【現役DMATインタビューあり】

最終更新日:2024/08/21

地震や台風など自然災害が多い日本。看護学生のなかには、災害現場で被災者を支える「災害看護」に興味がある人もいるでしょう。今回は、災害看護に携わる方法や災害時の看護師の役割、活動内容などを解説します。また、DMATで活躍する先輩看護師へのインタビューも紹介します。ぜひ参考にしてください。

災害看護とは

災害看護とは、災害が発生したときに看護職が、様々な専門職と連携しながら、知識や技術を駆使して看護活動にあたることです。災害による生命や健康への被害を最小限に留めることを目的としています。看護職は被災直後だけでなく、長期にわたり被災者のケアに携わります。

看護師が災害看護に携わる方法は2種類

看護師が災害看護に携わるには、DMATと災害支援ナースへの登録という方法が代表的でしょう。ここからは、それぞれの特徴と、災害看護と救急看護の違いについても解説します。

1.DMAT

DMATとは、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)の略称で、災害急性期に活動できる機動性をもった、トレーニングを受けた医療チームのことです。基本的に、1チームあたり医師1名、看護師2名、業務調整員(医師・看護師以外の医療技術職員や事務職員)1名の計4名で構成されています。

DMATの看護師は、診療の補助、被災者・負傷者の心身のケアのほか、DMATメンバーの体調管理、場合によっては活動拠点本部や対策本部で指揮・コントロールなどを行うこともあります。

平時は医療機関等で勤務していますが、災害が発生し要請が来た場合には迅速に出動できるよう日頃から備えておくことが必要です。

2.災害支援ナース

災害支援ナースとは、被災した看護職の負担を軽減できるよう努めるとともに、被災者の健康を維持するために適切な医療・看護を提供する看護師のことです。都道府県の看護協会に登録した人が、災害支援ナースとして活動できます。

災害時は、災害規模など定められたレベルを基準に日本看護協会や都道府県看護協会によって調整が行われ、派遣が要請されます。災害看護自体の対象期間は長期にわたりますが、災害支援ナースとしての被災地での活動は発災後3日以降~1カ月間です。個々の派遣期間は原則、移動時間を含めた3泊4日とされています。

災害看護と救急看護の違い

災害看護も救急看護も急なケガや病気の人に対し、医療・看護を提供する点に変わりはありません。ただし災害看護の場合、被災でケガを負った人や病気を発症した人のほかに、避難所暮らしを強いられている人に対する心身のケアも担います

また、看護を提供する環境も異なります。救急看護の現場では十分な医療資源のもと最大限の治療に努められますが、災害看護では医療資源が必要最低限であることがほとんどで、そのなかで被災者の命と健康を守るために最大限の看護が求められることになります。

さらに、災害看護は人々の状況に寄り添った長期にわたる関わりが必要になることも大きな特徴です。

災害看護における看護師の役割・大切なこととは

ここでは、災害看護に携わる看護師の役割や大切なことを解説します。

役割:場面によって変わり続ける

災害看護における看護師の役割は、災害発生時からの時間経過で以下のように変動します。

災害サイクルのフェーズ別看護師の役割

DMATや災害支援ナースが最も活発に活動するのは災害発生直後から数カ月後までとなりますが、災害看護としては長期的な支援が行われます。被災者の生活支援やこころのケア、将来的な災害への対策も災害看護の対象範囲です。

大切なこと:心構えと行動の基本原則を押さえる

災害看護に携わるうえで大切なことは、災害現場での心構えと行動の基本原則を押さえておくことです。

災害現場で最も優先すべきことは被災者の看護・ケアです。そのためにもまずは自分自身の健康管理に十分注意しなければなりません。また、不自由な災害現場では、基本的に食事・睡眠・移動などの自分の身の回りのことは自分で行う心構えが必要です。

そして、災害看護ですぐに活動できるよう、基本原則「CSCATTT(スキャット)」を頭に入れておくことが重要になります。

基本原則「CSCATTT(スキャット)」とは

「CSCATTT(スキャット)」とは、災害発生後にとるべき行動である7つの基本原則です。「シーエスシーエーティーティーティー」と読むケースもあります。

※参照:災害医療の7つのポイント
7つの基本原則「CSCATTT」
1 Command & Control 指揮命令・統制
2 Safety 安全
3 Communication 意思疎通・情報収集・情報伝達
4 Assessment 評価・判断
5 Triage トリアージ
6 Treatment 治療
7 Transportation 搬送

通常「CSCATTT」は、指揮命令・統制から評価・判断までのCSCA(組織体制関連の原則)と、トリアージから負傷者の搬送までのTTT(医療支援体制の原則)に分割して考えます。

災害医療でまず重要なのがCSCAです。災害現場についたら個々がやみくもに看護に取り掛かるのではなく、CSにあたる指揮に従いながら安全確保を行い、CAにあたる情報共有と評価をして動きを決めます。

その後、CSCAで決められた指示のもとに、TTTにあたる現場での医療・看護に移行します。初対面の人たちが、即時に組織を構築して同じ方向性で活動しなければならない災害現場では、基本原則「CSCATTT」によって共通の考え方をもっておくことが重要です。

災害看護に関する具体的な業務内容

災害現場へ派遣要請された看護師の業務内容を、流れに沿って解説します。

災害看護の流れ 業務内容
事前準備 ● 情報伝達や情報収集(前任者からの申し送りや看護協会、DMAT事務局から)
● 確認事項の把握(シフトの取り扱いや賠償責任保険の加入など)
● 持参物品の準備
災害現場での活動 ● 現地へ移動(公共交通機関や徒歩)
● 災害看護
● 定期的な報告
活動終了後 ● 後任者への引き継ぎ
● 報告書の作成
● セルフケア

派遣前日までにやること

まずは、災害現場に行くための事前準備を行います。前任者からの申し送りや看護協会、DMAT事務局からの情報収集、確認事項の見直しなどを前日までに済ませます。過酷な現場である可能性も高いので、心の準備も大切です。

持参するものの準備も前日までに必ず行い、抜け漏れがないようにします。実際に看護師が災害現場に持参するものを表にまとめました。

災害現場に持参するもの

マスクや聴診器、手袋などの医療備品やヘルメット・懐中電灯などの防災グッズは、看護協会などが用意してくれる場合もあるようです。

災害現場での業務内容

被災地で災害看護にあたる際には、時間の経過に伴い役割が変化していくため、現地スタッフと連絡・調整しながら支援活動を行います。現場では、以下の業務にあたることが多いでしょう。

災害現場での看護師の業務内容

また、二次災害予防のために避難地区や避難方法を確認したり、現地の状況や情報を看護協会へ報告したりもします。活動記録への記載が指定されるケースもあるでしょう。

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トリアージ~START法とは

活動終了後にやること

被災地での災害看護が終了した後は、後任者への引継ぎを行います。災害活動の終了を看護協会に報告し、後日、活動終了報告書を提出します。

災害看護を行ったあとは、看護師自身も想像以上に疲れやストレスがたまっています。帰宅後は適度に休養をとったり、家族や友人と交流したりして、セルフケアに時間を割くことも必要です。

災害看護の現場で活躍する現役DMAT看護師にインタビュー

今回は、災害看護の現場で活躍している現役DMAT看護師にインタビューしました。災害看護に携わるまでの経緯や具体的な業務などを伺いました。ぜひ参考にしてみてください。

プロフィール

藤野 雄大(ふじの ゆうだい)さん

藤野 雄大(ふじの ゆうだい)さん

病院名:聖マリアンナ医科大学病院
看護師歴:14年
経験部署:新卒から救命救急センターに勤務。現在DMAT要員

DMATを目指したきっかけを教えてください。

災害拠点病院である当院に入職後の配属先であった救命救急センターで義務付けられていた災害訓練に参加し、災害に関する知識の必要性を感じたことがDMATを目指した最初のきっかけです。

また、日々心肺蘇生や外傷、集中ケアなどに関わっていくなかで「自分自身の強みとなるものを向上させたい」「専門性を高めたい」という思いから、災害看護を極めたいと考えるようになりました。当院ではDMATを保有しているため、災害時の医療チームとして被災地や地域に貢献したい気持ちからDMATを目指すことを決めました。

DMAT看護師になるまでにはどのような研修を行いましたか?

まず病院内の災害研修では、災害医療・対策における知識の習得、災害訓練の企画と実施などを行い、その後、災害研修のインストラクターとして院内教育に参加しました。

病院外では、以下の研修に参加しました。

  • 外傷初期診療に関わるプロバイダコース(JPTEC、JATEC)
  • AHA蘇生トレーニングコース(アメリカ心臓協会のBLSコース、ACLSコース)
  • 米国/英国災害医学教育プログラム(BDLS、ADLS、MIMMS)
  • 日本災害医学会の多数傷病者への対応標準化トレーニングコース

そのほか、災害支援ナースとしても活動できるように、看護協会の災害支援ナース研修も受講しました。

さらに、神奈川県のDMATには、消防から要請が入り救急隊と連携して現場で活動する「川崎DMAT」、県内の災害現場において自己完結型で活動する「神奈川DMAT-L」、全国の災害現場にて自己完結型で活動する「神奈川DMAT」の3つがあり、それぞれにおいても修了必須の研修がありました。

DMATに関する具体的な業務内容を教えてください。

通常行っていることは、院内での災害教育や災害対策、物品・資機材管理などです。災害の発生時は、現場活動、病院支援、広域医療搬送、地域医療搬送が主な活動となります。具体的には、以下のことを行います。

  • 災害現場での看護活動
  • 現場での活動を遠方から支援する後方支援(資機材の調達やその他の支援の調整など)
  • 災害活動拠点本部や県庁の災害対策本部での指揮・コントロール
  • 被災した病院の支援や被災地のDMAT支援
  • 傷病者を被災地以外に搬送するための広域搬送拠点臨時医療施設(SCU)の設置、医療活動、搬送
  • 被災した地域の病院間搬送

災害時の活動場所は、厚生労働省の指示に従います。

川崎DMATでは、要請後に消防署から迎えに来た救急車に乗り、現場での医療活動や現場本部との調整などを行います。DMATチームの役割は、本部活動やトリアージ、現場での救護やケア、搬送に同乗しての引き継ぎなど、現場の状況に応じて様々です。

やりがいやDMAT看護師になってよかったことはなんですか?

災害や多くの傷病者が発生するような事案は限りなく少ないのですが、有事の際に救える命を救うことができたときにはやりがいを感じます。

私は、防ぐことが可能な災害死を起こさないよう、常に意識して活動しています。実際に多くの傷病者が発生した事案に関わり、数多くの患者さんを救命できたときには大きな達成感が得られました。

災害現場では危険を伴うこともありますが、被災者の方に寄り添ったり、力になれたりする瞬間も多く、災害看護に携われてよかったと感じられます。

DMAT看護師になるまでや、なってから大変だったことはありますか?

DMATに入るまでに大変だったことは、資格を取得するまでのハードルの高さです。DMAT看護師になるには、まずDMAT隊員養成研修の受講枠に入らなければなりません。そのためには、病院の選考基準をクリアすることが必要です。

しかし、DMATチームを多く編成する病院ではすでに人材も多く、受講希望を出しても不採用となる可能性もあります。選ばれるためには、自分自身の価値を高めることが大切です。

DMAT看護師になってからは、実際の現場活動や後方支援をイメージしにくいことに苦労しました。災害看護は経験から得られることが多いのですが、現場で活動する機会は多くありません。経験の差を日々の訓練などで埋めるしかないため、大変だと感じることもありました。

また、災害看護の現場では、ときに周りの支援はあるものの、基本的に自己完結しなければなりません。自分たちで資機材や医療資材、生活必需品などを手配し、現場では指揮に従いながら臨機応変に対応します。

そのほか、自身の衣食住の確保や体調管理も行うため、医療以外の知識、思考、行動力、精神力も必要です。ただしこれらのスキルは経験していくなかで身につけることができるはずです。

働くなかでDMAT看護師になるために、どのような能力や素質、経験が必要だと感じますか?

DMATに入りたい思いを持ち続け、学習し続けられることが最も大切なことだと思います。

また、DMAT看護師になるには、看護師として約5年経験した後、さらに病院での選考に選ばれなければいけないため、以下の素質や能力があるとよいでしょう。

  • モチベーションを維持し、自己研鑽を続ける力
  • チームとして活動するための連携力
  • 現場で冷静に対応できるメンタル力

さらに、災害のステージによって役割が変わるので、災害対策や公衆衛生の知識を増やしたり、医療対応や病院前診療などの実践を経験したりしておくとよいと思います。災害研修は様々なシチュエーションで行われるため、多くの研修を経験しておくことをおすすめします。

今後のキャリアプランを教えてください。

次世代のDMAT隊員の育成にあたりたいと思っています。災害看護のキャリアプランとしては、災害専門看護師や国際緊急援助隊(JICA)などもありますが、私は救命救急センターの副師長として働いていることもあり、今後は院内の災害看護における人材育成にも貢献していきたいと考えています。

災害看護に興味のある看護学生へ一言お願いします。

通常とは異なる考え方で医療を展開する災害看護は、医療者だけではない多くの関係者と関われるため、看護師としての視野が広がるはずです。災害看護に携わる方法はいくつかありますが、DMAT隊員養成研修では数多くのことが学べます。自身のキャリアのひとつとして検討してみるとよいと思います。

災害看護で活躍するDMAT看護師・災害支援ナースになるには

災害看護に携わる方法にはDMAT看護師と災害支援ナースがあり、それぞれになるための必要な条件は以下のとおりです。

DMAT看護師になるには 災害支援ナースになるには
● DMAT指定医療機関または災害拠点病院に入職する
● 日本DMAT隊員養成研修を修了し、筆記・実技試験に合格し、厚生労働省の定めるDMAT登録者になる
● 経験年数は問われないが、研修を受けるには医療機関からの推薦が必要
● 5年ごとに更新
● 都道府県看護協会の会員になる
● 実務経験が5年以上
● 所属施設がある場合には、登録に関する所属長の承諾が必要
● 災害支援ナース養成の研修を受講

医療機関からの推薦や試験が必要となる分、DMAT看護師のほうが難易度は高いといえます。そして、いずれ災害看護に携わりたいと考えるなら、災害拠点病院に入職するのがおすすめです。

災害拠点病院とは、厚生労働省によって定められた「災害時における初期救急医療体制の充実強化を図るための医療機関」です。DMATを保有し、受け入れや緊急対応などができるため、災害発生時の看護に携わりやすくなるでしょう。

向いている人の特徴

災害看護には、以下のような人が向いています。

  • 災害看護に強い関心がある
  • 被災者のこころのケアに携わりたい思いがある
  • 過酷な状況でも冷静でいられる
  • 観察力や判断力がある
  • チームの一員として、異なる職種の専門家とも連携できる
  • 予測できない災害に対して鍛錬を重ね、準備し続けられる

被災地へ赴くと、イレギュラーな状況への対応が必要です。冷静にチーム内で連携して活動できる人や、観察力や判断力がある人であれば、災害看護に向いているといえます。

しかし一番大切なのは、災害看護への関心や被災者に寄り添いたいという思いです。この気持ちを大切に、それに向けて経験を重ねることで、能力やスキルは磨かれる可能性があります。災害看護に興味をもち、そのために行動できる人は、被災で傷ついた方々に寄り添う災害看護師になれるでしょう。

災害看護を目指す学生がやっておくとよいこと

災害看護に携わる看護師になるには5年ほどの経験がひとつの目安ですが、看護学生からできることもあります。

  • 看護学生のうちに被災地でボランティア支援を行う
  • BLSを受講しておく
  • 災害拠点病院の外科や救命病棟を入職志望先の候補に入れる

実際に被災地で看護学生がボランティア活動をした例があり、避難所内での健康教育や足浴の実施、健康観察などの看護援助技術を活用した支援も報告されています。興味があればぜひ参加してみましょう。

また、BLS講習を受講しておくのもおすすめです。一時救命処置と呼ばれるBLSは、AED(自動体外式除細動器)を用いた心肺蘇生法(CPR)や窒息の解除方法など、乳児から成人までの心肺停止時に対する初期対応が身に付けられます。さらに履歴書へ記載できるため、いずれ災害看護に携わりたい人にはプラスになるはずです。

そのほか、災害看護に携わるためには、急性期に対応できる外科的な判断・処置の知識が必要です。災害の場では医師の代わりに看護師が行わなければならない処置もあるため、就職先を選択する際には、災害拠点病院の外科や救命病棟への配属を志望するとよいでしょう。

災害看護の働き方を理解しキャリアの選択に活かそう

災害看護に携わる看護師はほかの専門家たちと連携し、心身のケアや日常生活支援などを行います。看護師として携わるには5年ほどの経験が必要ですが、被災地のボランティアに参加するなど学生のうちにできることはいろいろあります。また、災害看護に興味がある人は、病院選びもカギとなるので、早めに情報収集して自分が目指すキャリアに近づけるようにしていきましょう。

引用・参考サイト

日本看護協会:災害看護(2024年2月16日閲覧)

神奈川県看護協会:災害救護対策委員会Presents(2024年2月16日閲覧)

厚生労働省DMAT事務局:DMATとは(2024年2月16日閲覧)

岡山済生会総合病院:DMAT(災害派遣医療チーム)ってなに?(2024年2月16日閲覧)

厚生労働省:厚生労働行政における大規模災害時の関係機関との連携(2024年2月16日閲覧)

高知医療センター看護局災害看護委員会:災害看護ガイドブック(2024年2月16日閲覧)

日本赤十字社和歌山医療センター:災害対応の原則~CSCATTTとは~(2024年2月16日閲覧)

公益社団法人 熊本県看護協会:災害看護マニュアル(ポケット版)(2024年2月16日閲覧)

松戸ECCトレーニングサイト:看護学生がAHA-BLSコースを受講する意義(2024年2月16日閲覧)

執筆者情報

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小春 ゆき

koharu-yuki

看護短期大学を卒業後、聖マリアンナ医科大学病院にてNICU病棟に3年勤務。結婚を期に在宅医療へ転職し、10年間リハビリや終末期医療に携わる。3人の育児をしながら、現在は専業Webライターとして活動中。訪問看護ステーションのホームページ制作や医療・転職メディアなどで多数執筆。