看護師国試対策|内分泌腺と外分泌腺、さまざまなホルモンの働き
最終更新日:2024/05/14
人間の臓器はさまざまなホルモンと密接なかかわりをもっています。逆にいえばさまざまなホルモンが人間の臓器を司っているともいえます。ここでは、複雑に働き合うホルモンの種類と関連する臓器について解説します。
問題 ホルモンを分泌するのはどれか。
- 前立腺
- 子 宮
- 膵 臓
- 肝 臓
[第98回看護師国家試験より]
解答・解説
1.(×)→前立腺は精液をつくり、分泌する外分泌腺です。
2.(×)→子宮はホルモンを分泌しません。
3.(〇)→膵臓はホルモンを分泌する内分泌臓器であると同時に、消化液を分泌する外分泌臓器でもあります。
4.(×)→肝臓は、不要となったホルモンを分解する働きがあります(参照)。
覚えておきたい|外分泌腺と内分泌腺=「人間ちくわ説」
分泌腺には、体の外側に汗や涙などを分泌する外分泌腺と、体の内側にホルモンを分泌する内分泌腺とがあります。この話を進めるうえで、体の外側と内側について確認しておく必要がありますが、人間をちくわに例えて解説します。
ちくわは真ん中が空洞になっています。人間もちくわのように、口から肛門に至る空洞(消化管)があります。この空洞は外とつながっています。空洞の内側は、外の世界なのです(ですから消化管には、外の世界と同様に、腸内細菌などさまざまな微生物が住み着いています)。この外の世界に分泌する腺が外分泌腺で、涙、汗、乳汁、精液はもちろんのこと、消化液を出す腺も外分泌腺に該当します。
これに対してちくわの肉の部分、人間でいえば体液が流れている内側の部分ですが、ここは無菌で恒常性(体温や血圧、血中に溶けているガスの量、体液の組成などの内部環境が安定した状態を保っていること)が保たれており、外側の世界とは全く異なります(参照)。内側の体液中に分泌する腺が内分泌腺であり、分泌される化学物質をホルモンというのです。
あらゆる臓器を司るホルモンの働き
ホルモンの働きは、自律神経系の働きに似ています。
ホルモンも自律神経系も恒常性を調節するために臓器の働きを調節するのですが、自律神経系はその働きによる組織の反応が速く、消滅までの時間が短いという特徴があり、ホルモンは効果の発現が遅く、持続時間が長いという特徴があります。この特徴の違いをうまく使って、身体は適切に恒常性を調節しているのです。
ホルモンは恒常性の維持の他に、成長や月経、妊娠、分娩、母乳分泌など身体に「変化」をもたらす作用をもつものもあります。
図2には、代表的な内分泌腺とホルモンについて示しました。「カタカナばかりだし、たくさんあって覚えるのが大変」と思う人が多いのが実情です。ホルモンの分泌の調節中枢は視床下部です。視床下部は自律神経とホルモンの両方の中枢と考えられています。
視床下部を頂点としたホルモン体系
そこでまず、視床下部を頂点としたホルモン体系を理解することが重要です。下の図は複雑なホルモン体系をできるだけシンプルに表現したものです。
最初に下垂体前葉に着目してみましょう。下垂体前葉からはたくさんのホルモンが出ていますが、それを調節するのは視床下部から出るホルモンです。「視床下部→下垂体前葉」という2段階のしくみをもつものが成長ホルモンとプロラクチンです。下垂体前葉の下にさらに内分泌腺がある、「視床下部→下垂体前葉→内分泌腺」という3段階のしくみをもつものは、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、卵巣ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)です。
※男性の場合は精巣からアンドロゲンが分泌されます。
次に下垂体後葉をみてみましょう。視床下部と後葉はつながっており、後葉から出るホルモンは、実は視床下部で作ったものを後葉で分泌していることがわかるでしょう。ですから、後葉ホルモンのバソプレッシンとオキシトシンは、1段階のしくみということができます。
視床下部を頂点としないホルモンも
視床下部を頂点とするホルモンは、重要な役割を担うものばかりです。これらとは別に、視床下部を頂点に置かないホルモンもあります。血中カルシウム濃度の調節を行うカルシトニン(甲状腺より分泌)とパラソルモン(副甲状腺より分泌)、血糖調節に関わるインスリン(膵臓より分泌)とグルカゴン(膵臓より分泌)、食べ物が消化管のどこを通過しているかを知らせ、消化液の分泌調節を行う消化管ホルモン(ガストリン、セクレチンなど)などがあります。
こうして分泌のしくみをざっくり理解した上で、ひとつ一つのホルモンについて学んでいくと、整理しやすいのではないでしょうか。
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エピソード|ホルモンの不調はメンタルにも影響する
みなさん、精神の不調にホルモンが関与しているのはご存じでしょうか。有名なものに「マタニティブルーズ」があります。妊娠中、分娩、産褥と、めまぐるしくホルモン環境が変わるなかで、一時的に涙もろくなったり気分が沈んだりする状態です。かくいうわたしも、産後一時的に、ささいなことを情けなく感じ、子どもを抱きしめてポロポロ涙を流していました。
そうして命がけで産んだ息子ですが、中学生の思春期真っただ中では親と口もきかなくなり、ささいなことにイライラしていました(皆さんにも記憶があるでしょう)。そのころわたしの方は、これまた更年期真っただ中で、子どもの反抗的な態度にイライラしていました。思春期VS更年期。性ホルモンが上昇している時期VS下降している時期です。
寄ると触るとバトルが勃発する状態となり、果てしない口げんかに疲れたときの決め台詞は、「もう、これはお互いホルモンのせいだから、やめよう!」の一言でした。