看護師国試対策|自律神経の働き、ホメオスタシスと交感神経・副交感神経
最終更新日:2024/05/14
人間には、体内の環境を安定した一定の状態に維持しようとする働きがあり、これは「ホメオタシス」と呼ばれます。また「ホメオタシス」をコントロールしているのは、交感神経と副交感神経という自律神経系です。ここでは自律神経系の巧みな働きを紹介します。
目次
問題 交感神経の緊張状態はどれか。
- 瞳孔の収縮
- 気管支の収縮
- 心拍数の減少
- 末梢血管の収縮
[第95回看護師国家試験より]
解答・解説
1.(×)→交感神経の刺激によって瞳孔は散大します。
2.(×)→交感神経の刺激によって気管支は拡張します。
3.(×)→交感神経の刺激によって心拍数は増加します。
4.(〇)→交感神経の刺激によって末梢血管は収縮します。
戦いを指示する交感神経、リラックスを指示する副交感神経
体温や血圧、血中に溶けているガスの量、体液の組成などの内部環境は、生命活動がスムーズに進むために、安定した状態を保っています。これを「恒常性(ホメオスタシス)」といいます。
恒常性が維持されているかどうかを監視する受容器は体内のさまざまな場所にあり、常に中枢に情報を送っています。内部環境に関する情報を判断しているのは、間脳にある視床下部と脳幹(中脳・橋・延髄)です(前回説明した、「大脳は”外部とやりとりする脳”」ということと対照的です)。
内部環境が不安定な状態にあるとき、間脳にある視床下部や脳幹は、「恒常性を取り戻すための戦いだ! エネルギーを作れ!」という指示を、ニューロン(交感神経)を介して、効果器である不随意筋に伝えます。
逆に内部環境が安定していれば、間脳の視床下部や脳幹は、「今は平和だ。リラックスしてよし! 今のうちに有事に備えてエネルギー源を貯めておけ!」という指示を、ニューロン(副交感神経)を介して不随意筋に伝えます。
このように、戦いを指示する交感神経と、リラックスを指示する副交感神経をあわせて自律神経と呼びます。
自律神経が支配する効果器(不随意筋)について
視床下部や脳幹の指示を不随意筋に伝えるニューロンを自律神経(交感神経・副交感神経)といいますが、以下に自律神経(交感神経と副交感神経)と、その支配下にある不随意筋との関係を示します。
出典:原三紀子「自律神経障害の看護|原因、症状、アセスメントとケア」ナース専科より掲載.
不随意筋は、「自分の意思では動かせない筋肉」という意味です。内臓に分布する平滑筋や心筋が不随意筋にあたります。平滑筋はゆっくりと持続的に動く特徴があり、心筋はパワフルにリズミカルに動く特徴があります。
交感神経系は上半身、副交感神経系は下半身を活性化
ここでは交感神経系と副交感神経系について解説します。
交感神経系
交感神経が刺激されるのは、ストレスにさらされたときです。ストレスとは、精神的なストレスだけでなく、運動や、恒常性が不安定になったとき(血圧低下、脱水、低血糖、感染症、疼痛、出血など)も含みます。
このとき、人体はストレスに対応するために、たくさんのエネルギー(ATP;アデノシン3リン酸)を必要とします。ATPは主に細胞内のミトコンドリアで合成しますが、その材料は大量のグルコースであり、グルコースは、肝臓が備蓄のグリコーゲンを分解することで調達します。
同時に、大量の酸素も必要となるため、気管支を拡張させ、呼吸を早めることで酸素を調達します。また、このグリコーゲンと酸素を迅速にミトコンドリアに運ぶために、心臓は心拍数を増やして対応します。さらにATPの合成によってできた二酸化炭素や水素イオン、水などの老廃物を細胞は細胞外液中に排出し、腎臓や呼吸器は老廃物を体外に排出しようと働きます。
以上のことからATPを合成するのに肝臓、呼吸器、心臓、腎臓、そしてこれらを支配する脳がフル稼働になることがわかります。また、これらの臓器は上半身に集中しており、「重要臓器」といわれています。
他にも交感神経が刺激されているときは、瞳孔が散大したり、のどが渇いたり、冷や汗をかいたり、鳥肌が立ったりします。また、手足が冷たくなるのも特徴ですが、これは手足の血液を重要臓器に移動させるために、血管が収縮しているためなのです。
副交感神経系
副交感神経が刺激されるのは、ストレスがないときです。このときは、次のストレスに備えてエネルギー源をため込むように不随意筋がコントロールされています。
エネルギーを溜め込む場所は消化器なので、消化器への血流配分が増えます。また排泄や性機能も活発になり、とてもリラックスした状態となります。手足の血管は拡張しているので、ぽかぽかと温かいのが特徴です。交感神経が、上半身を活性化させるのに対して、副交感神経は下半身を活性化させると覚えてもよいでしょう。
交感神経 | 副交感神経 | |
---|---|---|
瞳孔 | 拡大(+) | 縮小(-) |
唾液 | 少量の高濃度の唾液(-) | 多量の低濃度の唾液(-) |
発汗 | 促進(+) | 変化なし |
立毛筋 | 収縮(+) | 変化なし |
末梢神経 | 収縮(-) | 変化なし |
心臓の拍動 | 促進(+) | 抑制(-) |
気管・気管支 | 拡張(+) | 収縮(-) |
胃腸蠕動 | 抑制(-) | 促進(+) |
消化液分泌 | 抑制(-) | 促進(+) |
排尿 | 抑制(-) | 促進(+) |
エピソード|ワクワクなのか、体調が悪いのか「交感神経の緊張状態」
今日は彼との初デート! 昨夜は緊張しすぎて眠れなかったわ! 最近みんなから「きれいになったね。好きな人いるの?」と言われるけど、わたしの瞳孔が散大してキラキラしているせいね!
待ち合わせ場所に来てくれた彼は、やっぱり眼がキラキラしていて、そっと手に触れると、しっとりと汗ばんでいて、冷たくなっていたわ。わたしを意識して交感神経が刺激されているのね!
そう思って嬉しくなっていたら、いきなり彼が「ごめん、今日、体調悪いんだ・・・。来たばっかりで悪いけど、やっぱ帰るわ・・・」って帰っちゃったの!
体調が悪いから交感神経が刺激されていたのね……おだいじに!!
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