看護師国試対策|肝臓の働き、糖質・脂質・タンパク質代謝、解毒など

看護師国試対策|肝臓の働き、糖質・脂質・タンパク質代謝、解毒など

最終更新日:2024/05/14

沈黙の臓器といわれる肝臓。
肝臓には生命活動に必要な物質を合成したり、不要になった物質を分解して排泄しやすくしたりする機能があります。
その姿は、さながら体内の化学工場のようです。ここでは、肝臓の主な機能を紹介します。

問題 肝臓の機能で正しいのはどれか。

  1. 胆汁の貯蔵
  2. 脂肪の吸収
  3. ホルモンの代謝
  4. 血漿蛋白質の分解
  5. [第107回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)→胆汁を合成するのは肝臓ですが、貯蔵・濃縮するのは胆嚢です。

2.(×)→脂肪はモノグリセリドと脂肪酸の形で小腸から吸収されます。

3.(〇)→「代謝」というのは、合成と分解をさすのですが、ここでいう「代謝」は、分解を意味します。体内で不要になったホルモンは、肝臓で分解処理されます。

4.(×)→アルブミンや、αグロブリン、βグロブリン、フィブリノゲンなど血漿蛋白質のうちほとんどを肝臓で合成しています。

Point:肝臓で行われる代謝は、合成と分解

覚えておきたい、肝臓は巨大な化学工場

「このお魚は、どうやってぼくになるの?」

うちの子どもが小さい頃、食事中にこんな質問をしてきました。なんとかわいらしい質問でしょう。

わたしは次のように答えました。

「お魚はね、まこちゃんの体の中で、どんどん細かくなっていくんだよ。そして、目に見えないくらい細かい粒になると、小腸というところから、まこちゃんの血の中に入って運ばれていくの。運ばれるのは肝臓だよ。そこは大きな工場で、今度は運ばれた細かい粒を組み立てて、まこちゃんの体を作っていくんだよ」

それからというもの、子どもは苦手な魚も「お魚さんはぼくになるんだよ!」と頑張って食べるようになりました。

肝臓の最も重要な仕事はタンパク質・脂質・糖質の代謝(合成・分解)です。小腸から吸収された栄養素(単糖、アミノ酸、モノグリセリド、脂肪酸)は、門脈を経由して肝臓に運ばれ、さまざまなものに組み立てられたり(合成)、あるいはエネルギーとして消費されたり(分解)します。

合成・分解という化学反応には本来、100度を超える高熱が必要とされます。しかし、人間がそんな高熱に耐えられるわけがありません。そこで、低温(37.0度)でも反応が促進されるように触媒を用います。それが「酵素」です。

ASTやALTなど聞いたことがあるでしょう。これらはトランスアミナーゼという、代謝に用いる酵素で肝細胞にたくさん含まれています。よく健康診断の結果をみて、「ASTとALTが高くて肝機能が低下している」などと言いますが、これは、「肝細胞が崩壊して、中の酵素が漏れ出ている」ことを意味しています。

肝臓はAST・ALT以外にもたくさんの酵素を保有しており、体に必要なものをなんでも作り出すことができる巨大な化学工場なのです。

図 肝臓の模式図図 肝臓の模式図

肝臓は人体に必要なたくさんのものを合成したり分解したりすることができます。ここでは代表的なものを紹介しておきましょう。

糖質代謝

食後、糖の吸収によって血糖値が上昇しますが、血糖値は70~110mg/dlあれば十分です。そこで余った分は肝臓で分子をつなぎ合わせ、グリコーゲンにして蓄えます。

血糖が消費されて少なくなったら、グリコーゲンの分子を切ってブドウ糖に戻し、血中に供給します。たくわえたグリコーゲンがなくなってしまったら、アミノ酸を作り変えてでもブドウ糖を作り出します(これを糖新生といいます)。

このようにして肝臓は、血糖を一定に保つために、重要な働きを担っています。

脂質代謝

肝臓には、細胞膜の成分であるコレステロールやリン脂質を合成する働きがあります。

また、すぐには使わない栄養素を脂肪として合成し、蓄える働きもします(備蓄エネルギーであるグリコーゲンが普通預金なら、脂肪は定期預金に例えられます)。

タンパク質代謝

アルブミンをはじめ、肝臓では血漿タンパク質のほとんどを合成しています。タンパク質はさまざまな種類のアミノ酸がつながってできていますが、その種類が不足しているとき、アミノ酸の作りかえによって調達するのも肝臓の働きです。

ビリルビン代謝

古くなった赤血球が破壊されると、間接ビリルビンという脂溶性の老廃物が出てきます。脂溶性の老廃物は水分が多い人体内では扱いにくいので、肝臓で水溶性の直接ビリルビンに変換します。直接ビリルビンは胆汁の一部として胆嚢に送られます。

有害物質の解毒

肝臓では、毒素やアンモニア、薬物、アルコールなど人体にとって有害な物質を、安全で水に溶けやすいものに変換します。こうすることで、胆汁や尿の中に排泄することができます。

ホルモンの分解

必要なくなったホルモンを分解して処理します。

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エピソード|コラーゲン鍋の効能?

先日、実家に帰省したところ、母が自慢げに「昨日、すっぽん鍋食べたから、コラーゲンで肌がピチピチになったでしょう?」と話してきました。

喜んでいる母に水を差すようですが、「お母さん、コラーゲン(タンパク質)は、腸の中でアミノ酸まで分解されたあと、肝臓でコラーゲンに合成されるとは限らないのよ」と、うっかり事実を言ってしまいました。

母はとたんに機嫌が悪くなり、「わかってないね~。」とあきれ顔です。

「お母さん、ほんとだ!なんだか肌の艶がよくなって、10歳くらい若返ったみたい!」というのが適切な言い方でした!! 言い直しましたが、もう手遅れでした。

執筆者情報

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廣町 佐智子

hiromachi-sachiko

<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。