プライマリーナーシングとは?ほかの看護方式との違いを解説

プライマリーナーシングとは?ほかの看護方式との違いを解説

最終更新日:2024/01/24

プライマリーナーシングは多くの病院で導入されている看護方式です。今回は、プライマリーナーシングの特徴とほかの看護方式との違いを解説します。また、現場での看護師の役割ややりがいについても紹介します。ぜひ参考にしてください。

プライマリーナーシングとは

プライマリーナーシングとは、1人の看護師が担当となった患者さんを入院から退院まで一貫して受け持つ看護方式です。1970年代に日本でも紹介され、現在では多くの医療施設で導入されています。
プライマリーナーシングとは
担当看護師はプライマリーナースと呼ばれ、看護計画の立案や評価などを行いながら受け持ち患者さんに対して個別性に応じた看護を提供します。

ほかの看護方式との違い

看護方式には、プライマリーナーシング以外にも様々な種類があります。以下は主な看護方式の特徴をまとめたものです。今回紹介するプライマリーナーシングとの違いをみてみましょう。

看護提供方式の種類
プライマリーナーシング ・入院から退院まで1人の患者さんを1人の看護師が担当する
・担当看護師が中心となり継続的なケアを提供する
患者受け持ち方式 ・それぞれ決まった患者さんを担当する
・勤務時間帯に受け持ちになった患者さんの看護をおこなう
PNS
(パートナーシップ・ナーシング・システム)
・2人の看護師がペアになり複数の患者さんを受け持つ
・先輩看護師と後輩看護師がペアを組むことが多い
・パートナー同士が協力しながら患者さんを看護する
チームナーシング ・病棟内の看護師で2つ以上のチームを編成し、各チームで複数の患者さんを受け持つ
・チーム内ではリーダー、メンバーが役割を分担しながら看護を担当する
・一定期間チームのメンバーを固定して看護を提供する場合を固定チームナーシングという
モジュール型継続受け持ち方式
(モジュールナーシング)
・病棟内の看護師で2つ以上のチームを編成し、各チームをさらにモジュール(単位)として分割し、それぞれが複数の患者さんを入院から退院まで受け持つ
・チームナーシングとプライマリーナーシングの中間のような看護方式
機能別看護方式 ・業務ごとに担当を決めて看護を担当する
・点滴係、検温係、リーダー業務など内容別に担当が振り分けられる

プライマリーナーシングは、看護師1人で受け持ち個別的な看護が提供できるのが特徴です。一方、チームを組むなど複数人で患者さんを受け持つ行う看護方式は、役割分担をしながら効率的に看護を提供できるという特徴があります。

また、病院のなかにはプライマリーナーシングに似た独自の患者受け持ち方式を実施しているところもあります。患者受け持ち方式とは、その日の勤務ごとに決められた患者さんを受け持つ方法です。

プライマリーナーシングの採用実績

各病院の公式サイトや求人情報をみる限り、プライマリーナーシングを単独で採用している病院は少ないようです。その理由として、休みなどで担当できない日があることや、看護師1人あたりの患者数の多さ、業務の煩雑さなど様々な要因が考えられます。

そのため、プライマリーナーシングを採用している病院(診療科に応じて一部病棟のみで運用されている場合もあります)では、そのメリットを生かしながら欠点を補えるよう、プライマリーナーシングとほかの看護方式を併用している場合がほとんどです。

プライマリーナーシング併用型の導入例

ここからは、実際に導入されているプライマリーナーシングとほかの看護方式との併用型を紹介します。なお、看護方式の名称や細かな運用方法は病院、病棟によって異なります。導入している看護方式は病院の公式サイトに記載されていることがほとんどです。気になる病院の看護方式を確認してみてください。

チームナーシング×プライマリーナーシング

チームナーシングとプライマリーナーシング併用型は、日々の業務ではプライマリーナースが受け持ち患者さんの看護を担当し、プライマリーナースの不在時にはチームメンバーが代わりに患者さんを担当する方法です。

チームメンバーは受け持っている患者さんの情報を全員で共有し、プライマリーナースのみでなくチーム全体で協力し患者さんの看護にあたります。

PNS×プライマリーナーシング

PNSとプライマリーナーシング併用型は、2人の看護師がそれぞれプライマリーナースとして受け持っている患者さんの看護を一緒に行う方法です。

基本的にプライマリーナースは受け持ち患者さんの看護をメインで行いますが、ペアになった看護師と相談しながら業務が進められるようになっています。夜勤時や看護師の勤務状況によっては、担当ではない患者さんを受け持つこともあります。

プライマリーナースの役割と目標

ここではプライマリーナーシングにおける看護師の役割や目標、プライマリーナースが具体的にやるべきことを解説します。

プライマリーナースの役割

プライマリーナースの役割は、入院から退院まで一貫して受け持ち患者さんへの看護を展開することです。患者さんと信頼関係を築きながら必要な看護を見出し、患者さんの状態に応じて看護計画の立案・実施・評価を行うことが求められます。

プライマリーナーシングの目標

プライマリーナーシングの目標は、個別性に合わせた質の高いケアを提供することです。1人の看護師が専任で受け持つことで、患者さんの性格や価値観についての理解を深め、その人に合った看護を継続して提供することを目指します。入院から退院まで1人の看護師が一貫して受け持つことから、日々の状態がしっかり観察でき、その時々の変化に応じたケアを実践することが可能です。

プライマリーナースが具体的に行うこと

プライマリーナースは患者さんの入院時に決まります。その場合、患者さんの状態や看護師の経験年数などを考慮して決められるケースや、看護師の受け持ち患者さんの数が均等になるよう割り振られるケースなどがあり、病院によって異なるようです。

プライマリーナースが具体的に行う業務は以下のような内容です。

看護計画の立案

患者さんの状態をアセスメントし、必要な看護計画を立案します。看護計画は基本的に入院時に立てるものなので、入院時に対応した看護師がプライマリーナースとなり立案するのが理想です。ただし、勤務の都合上そうでない看護師がプライマリーナースになる場合もあります。

立案した看護計画は、プライマリーナース以外の看護師もケアが行えるよう病棟全体で共有します。

看護の実践

日々の業務は看護計画に沿った看護ケアの実践です。病院は24時間看護が必要なため、プライマリーナースが不在のときは共有された看護計画に沿って、ほかの看護師が患者さんの看護にあたります。

看護計画の評価・修正

患者さんの状態をアセスメントし、看護内容を変更する必要があると判断した場合は、プライマリーナースが看護計画の評価・修正を行います。病院によっては、看護計画の評価日を1週間に1回など定期的に決めているところもあるため、プライマリーナースは病院のルールに則って看護計画の見直しを実施します。

退院支援

自宅退院や転院の支援もプライマリーナースの仕事です。入院時に立案する看護計画では退院を視野に入れて看護展開を考慮しなければなりません。さらにそれに基づいて、退院指導、他職種と患者さんの情報を共有する退院カンファレンスへの出席、転院先に患者さんの状態を伝えるための看護サマリー(看護情報提供書)の作成などを行います。

最終評価

受け持ち患者さんが退院したら、最終評価を行い看護計画を終了させます。退院時にプライマリーナースが不在の場合は、そのとき担当している看護師が代わりに最終評価をすることもあります。

プライマリーナーシングのメリットとデメリット

ほかの看護方式も含め、看護方式にはそれぞれメリットとデメリットがあるものです。ここではプライマリーナーシングのメリットとデメリットを解説します。これらを理解し、気になる病院がプライマリーナーシングの欠点をどのような方法で補っているかを確認しましょう。

プライマリーナーシングのメリット

プライマリーナーシングのメリットは、以下の3つです。

患者さんの安心感につながる

プライマリーナーシングのメリットは、患者さんの安心感を高められることです。入院生活により精神的にも身体的にも苦痛や不安を抱える患者さんにとって、1人の看護師が入院から退院まで一貫して担当することは安心感につながります。

また、プライマリーナースと受け持ち患者さんはケアを通して関わる時間が長く、信頼関係が築きやすくなります。信頼して話せる相手がいることは患者さんにとって心強いでしょう。

患者さんに寄り添った看護ができる

プライマリーナーシングでは、患者さんに寄り添った看護ができるのも大きなメリットです。プライマリーナースとしての関わりによって、受け持ち患者さんの性格や生活背景、病気に対する思いなどへの理解が深められます。また、入院から退院まで継続して担当するため、受け持ち患者さんの体や心の変化にも気づきやすいでしょう。そのため、個別性や状態の変化に合わせた適切な看護が提供できます。

やりがいが感じられる

プライマリーナーシングは、仕事に対するやりがいに結びつきやすいという看護師にとってのメリットもあります。看護やコミュニケーションを通して寄り添い、プライマリーナースとして関わった患者さんと信頼関係が築けたときには、やりがいが感じられます。

また、プライマリーナーシングでは「自分が担当している患者さん」という責任感が生まれやすいため、自分が提供した看護により患者さんがよい方向へ変化したときには、大きなやりがいを得られるでしょう。

プライマリーナーシングのデメリット

プライマリーナーシングのデメリットとして考えられることを3つ紹介します。

患者さんとの相性が影響する

プライマリーナーシングのデメリットとしては、受け持ち患者さんとの相性によって看護の質が変わってしまうことが挙げられます。患者さんも看護師もそれぞれに価値観や性格が異なるため、なかには相性が合わない場合もあるでしょう。

あまりにも相性が合わない場合、よい関係が築けず、看護に影響してしまう可能性も生じます。ほかの看護師のアドバイスからヒントを得られることもあるので、もし患者さんとの相性に悩んだらまず周りに相談してみましょう。

看護師により提供する看護に差が出る

プライマリーナースの場合、看護師としての経験や能力、個人の価値観などの違いにより提供する看護に差が出てしまうこともあります。担当になる看護師によって看護の質が変わってしまうことはデメリットといえるでしょう。また、プライマリーナースの不在時に代わりの看護師が対応したときに、いつものやり方と違っているというクレームが発生することはあるかもしれません。

プライマリーナースは、自身の看護を振り返る意味でも、ほかの看護師の意見も参考に看護計画を考え、関わる看護師によって提供する看護に差異が生じないよう、立案した計画の共有に努めることが望ましいでしょう。

看護師個人の責任が大きい

プライマリーナーシングは、看護師個人の責任による部分が大きくなることが看護師にとってはデメリットといえます。プライマリーナースになることで責任感をもつことはできますが、その分個人として負担を感じることが大きくなりがちです。また、患者さんの状態によっては、一部の看護師に業務負担が集中してしまうこともあります。

それをカバーするため、プライマリーナースを中心に病棟全体で患者さんを看る方針を取っている病院は多いので、迷ったときや不安を感じたときには先輩看護師に相談するようにしましょう。

プライマリーナーシングに関するよくある疑問

ここからはプライマリーナーシングに関するよくある疑問を紹介します。

新人からプライマリーを任される?

新人のうちは基本業務を理解するのが優先されるため、入職後すぐではなく数カ月ほど経ってからプライマリーナースを任される場合が多いようです。そのタイミングは病院によって異なり、プライマリーナースになるための基準が設けられている場合もあります。決められた期間ではなく、個人の能力によっても左右されるようです。

受け持ち患者さんの看護はプライマリーナースのみが行う?

プライマリーナースが受け持つ患者さんには、ほかの看護師も看護を提供します。1人の看護師だけで24時間患者さんを看ることは不可能だからです。プライマリーナーシングを採用している病院でも、病棟の特性に応じてプライマリーナーシングをアレンジしたり、ほかの看護方式と併用したりして、病棟全体で看護を行っているところが多いでしょう。

プライマリーナーシングを採用している病院を選んだほうがよい?

看護方式にはそれぞれ特徴があり、どの看護方式がよいというわけではありません。人によって仕事がしやすいと感じる看護方式はあるかもしれませんが、現場経験がないうちは、看護方式の「合う」「合わない」を判断することは難しいでしょう。看護学生のみなさんは、看護方式で病院を選ぶのではなく、気になる病院がどのような看護方式を採用しているかを理解しておくことのほうが大切です。

入職前にプライマリーナーシングの概要を理解しておこう

プライマリーナーシングは、入院から退院まで1人の看護師が1人の患者さんを担当する看護方式です。プライマリーナースと患者さんとの信頼関係が築きやすく、患者さんに寄り添った看護ができるため、看護師にとってもやりがいや責任感を感じられることがメリットです。プライマリーナーシングは多くの医療施設で導入されているため、入職前に概要を理解しておきましょう。

参考

吉田由美:看護方式の採用状況に関する調査 ―全国中規模以上の病院の場合―.J-STAGE(2023年11月25日閲覧)

野間口千香穂:プライマリーナーシングおよびモジュール型継続受持方式の運用に関する調査 ―首都圏の病院の場合― .J-STAGE(2023年11月25日閲覧)

執筆者情報

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柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。