新人看護師に必要な7つの能力|病院が求める力を身につける方法とは?

新人看護師に必要な7つの能力|病院が求める力を身につける方法とは?

最終更新日:2025/03/04

専門職である看護師には、求められる能力やスキルがあります。今回は看護師を目指す人に向けて、就活事情の変化や病院側の意見を踏まえ新卒看護師に求められる「7つの能力」について解説します。必要な能力を身につける方法も紹介するので参考にしてください。

看護師に必要な能力とは?

看護師は専門職であり、働くうえで一定の看護知識や技術などの能力が必要です。しかし、実際の職場で看護師が期待される能力は、看護師としての経験値や職場の医療機能、病棟の種類などによって異なります。今回は、新卒看護師として入職時に必要とされる能力について解説します。

新卒採用とキャリア採用で求められる能力は異なる

新卒採用は社会人経験や看護師経験がない看護学生が対象であるのに対し、キャリア採用はそれらの経験がある人が対象となり、採用側が求める能力には違いがあります。

病院によっても異なりますが、下記の表は新卒採用とキャリア採用で重視されやすいことや期待される知識・技術についてまとめたものです。

新卒採用とキャリア採用の違い

新卒採用 キャリア採用
対象者 看護学生
(社会人・看護師経験なし)
看護師経験者
(一般的に経験3年目以上)
重視されること 【将来性】
病院に適応し看護師として成長できるポテンシャルがあるか
【即戦力】
人員が不足している部署ですぐに活躍できるか
期待される知識 ● 基礎学力
● 国家試験に合格できる学力
● 基本的な看護実践知識
● 専門分野の看護知識
期待される技術 ● 基本的になし(入職後に育成)
 ※病院によって異なる
● 基本的な看護技術
● 専門分野の看護技術

一般的に新卒採用は定期的に募集されており、未経験者を採用し本人の希望や適正に合った部署・環境でキャリアを積んでもらうことで人材を育成します。一方キャリア採用の場合、欠員が出た場合などに不定期で募集されることが多く、スキルを身につけた短期間で即戦力となる人材が求められる傾向にあります。

コミュニケーション能力や誠実さなど、看護師として働く人すべてに求められる能力もありますが、これから看護師としてスタートする人に備わっていてほしい能力と、すでに看護師である人に求められる能力には違いがあることは理解しておきましょう。

新卒採用は「量」から「質」重視へ

人材不足が続いている医療業界では求職者に有利な売り手市場の傾向が続き、一般企業に比べると採用時に学生の個性やポテンシャルはあまり重要視されていませんでした。しかし近年の新卒採用では、看護学生個人が兼ね備えている素質や価値観など、内面的な部分に注目する病院も増えてきています。その背景には次のような3点が挙げられます。

  • 医療体制の変化
  • 看護系大学の増加
  • 新卒看護師の離職率の高さ

人口構造の変化や医療費削減により、病床数は減少傾向となっています。一方で、看護系大学の増加により大卒の新人看護師は増加傾向です。そのため、看護学生が希望する就職先として人気の急性期病院など、病院によっては採用倍率が上昇しています。

また、日本看護協会の「2023年 病院看護実態調査」によると、新卒看護師の離職率(入職して1年以内の退職者の割合)は2021年度に10%を超え、2022年度もその傾向は続いています。そのため、定着率アップを課題とする病院は増え、新卒採用でも自施設とのマッチングを念頭に質が重視されるようになってきたと考えられます。

病院が求める|新人看護師に必要な7つの能力

では、採用する病院側は新人看護師に何を求めているのでしょうか。ここでは、大学病院や特定機能病院など、さまざまな病院に「質の高い学生」についての回答を踏まえて、新人看護師に必要だと考えられる7つの能力を解説します。

︎1.前向きな学習意欲

新卒看護師は、現場経験を積みながら看護技術や知識、患者さんとの関わり方、医療スタッフ同士の連携など、多くを学ばなければいけません。さらに、看護師として最適な医療を提供し続けるには学び続ける姿勢も必要です。そのため、意志をもって主体的に学び続けられる学習意欲が求められます。

新卒看護師は、初めての経験の連続で苦労することもありますが、できなくても前向きに努力を続けられる人は成長が望めます。大事なことは失敗から課題を見つけようとする姿勢で、この点を重視する病院は多いでしょう。

︎2.明確な看護観

看護観とは「患者さんに対してこういう看護がしたい」という理想の看護師像です。看護観は内容だけでなく、そこに至るまでの考え方や一貫性も注視されます。

また採用側として、ミスマッチを避けるために、病院の方針に沿う看護観を有する人材を求める場合はあります。しかし一番大切なのは、患者さんを主体に寄り添える看護観をもっているかどうかで、新卒採用においては確認したいポイントになっているといえます。

︎3.自発的に行動するための思考力

思考力とは自分の頭で考える力のことです。思考力には、課題に対して筋道を立てて考える論理的思考力、視点を切り替えて幅広い角度から物事を考える多面的思考力、課題を客観的にとらえて分析する批判的思考力などがあります。

看護師は、患者さんや医療現場の状況に合わせて動く必要があるため、自分で考えて行動に移せる能力をもつ人のほうが看護師としての成長が期待できます。そのため、病院は自発的に行動できる思考力をもった人材を求める傾向にあります。

︎4.自己客観視の力

自己客観視とは、感情や考えに捉われず、客観的に自分を見る力です。仕事をするうえで、自己を客観視できるスキルはもっておいてほしい能力として挙げられます。

自分を客観的に見られないと、「自分はできている」と過大評価して課題に気づけなかったり、「自分はできていない」と過小評価して正しい判断ができなくなったりしてしまうからです。自己客観視ができれば、自分に足りない能力を見極めて課題に取り組む姿勢につながります。また、看護師としての冷静な判断や物事を多角的に捉える視点にもつながるため、必要な能力だといえるでしょう。

︎5.最後までやりぬく継続力

「任された仕事は責任をもって最後までやり遂げること」や「学び続けて成長すること」など、継続力は社会人として欠かせない能力です。とくに新人のうちは、最初から何事も完璧にできるわけではないので、失敗しても反省・改善し、諦めずにやりぬく継続力が重要になります。

また新卒看護師の離職率の高さから、病院側が働き続けられる人材を求める傾向はより強くなっており、粘り強くやり抜く力があるかどうかは注目される点といえます。

︎6.コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、患者さんとの信頼関係を築き、適切なケアを提供するために必要不可欠な力です。チーム医療では、ほかの看護師や他職種と協力して患者さんをサポートするために、報告・連絡・相談やスタッフ同士の信頼関係を大切にしなければなりません。

そのため、病院側はコミュニケーション能力のある学生を求めており、面接時には質問に的確な返答ができるか、スムーズに意思疎通ができるかなどをみています。

︎7.素直さと柔軟性

新卒看護師は学生から社会人へとまったく異なる環境に身を置くことになります。環境の変化に適応し成長するためには、自分を取り巻く人々の助言や意見を受け入れて吸収する素直さや、変化に対応できる柔軟性が必要です。とくに現場経験がない新人看護師には、失敗を反省し、先輩の助言を受けて学ぼうとする素直な姿勢が求められます。

また、看護師は基本的に24時間のなかで交代勤務となるため、新人教育でも指導者を中心にさまざまな人が関わることになります。そのため、異なる看護観をもった複数の人から助言を受けることもあるでしょう。しかし、それらを素直に受け取り、やってみようとする柔軟性があれば、どんな状況にでも対応できるようになります。そういう点でも採用側が重視する能力だと考えられます。

新人看護師に求められる能力を身につけるためのポイント

これらの新人看護師に必要な能力は、完璧に備えていなければならないというわけではありません。大切なのは、能力の重要性を理解し、日常生活で身につけられるように向き合う姿勢です。

ここでは、新人看護師に求められる7つの能力を身につけるためのポイントを紹介します。

1.早めに勉強を習慣化させる

進化する医療や多様化する看護ニーズに対応しながら最適な看護提供を行うには、常に学び続ける姿勢が必要です。そのような姿勢を身につけるには、看護学生のうちから勉強を習慣化させるとよいでしょう。テストや国家試験の勉強だけでなく、日常的に前向きな学習意欲をもってさまざまなことに取り組んでいれば、小さな疑問にも目を向けられるようになり、視野も広がります。

習慣化させるためには、まずは「毎日10分だけ授業の復習をする」など低めのハードルを設けてコツコツと積み重ねてみましょう。勉強が習慣化すれば、継続力を身につけることにもつながりますよ。

2.現場見学の機会を作る

実際に病院などの医療現場に触れる機会は、自分の看護観を育てるのに役立ちます。患者さんを受けもつ実習も自分なりの看護観を見出せるチャンスですが、実習中はやることに追われてしまいがちなので、病院が主催する就業体験などを活用してじっくりと現場を見学する機会を作るのがおすすめです。

現場の雰囲気や他職種を含めた医療チームの動きを見たり、先輩の話を聞いたりすることで、自発的に行動するための思考力や現場で必要な柔軟性について学ぶことができるかもしれません。

現在申し込み可能な就業体験、現場見学ができる病院説明会は以下から確認できます。ぜひ活用してみてください。

説明会・見学会 就業体験

※ナース専科 就職

3.さまざまな人と関わる

学生時代からコミュニケーション能力を身につけるためには、さまざまな人と関わる意識をもちましょう。学校生活では同級生や他学年の人、先生などと自分から積極的にコミュニケーションをとると、多くの学びや気づきにつながります。

また、アルバイトや趣味など、看護分野以外のコミュニティーをもつことも大切です。考え方の違いに触れることは柔軟性を養い、客観視する力を身につけることにもつながります。また、アルバイトでさまざまな環境で働く経験は、自発的に行動するための思考力を育ててくれるかもしれません。

4.壁を感じたら目標を設定する

看護学生は、課題や実習などその時期で超えなければならない壁がたくさんあります。大変だと感じるかもしれませんが、受け身の姿勢ではなく、何のためにやるのか、その時々で自分なりの目標を設定し取り組みましょう。それに向かって走り切ることで、困難を感じても乗り越えようとする姿勢が自然と身につきます。

自分で目標を設定するクセをつけておけば、モチベーションが維持できたり継続力が備わったりするだけでなく、自己成長のスピードも上がるはずです。

必要な能力を養うために|看護学生が意識したいこと

ここでは、新人看護師に必要な能力や能力を身につけるためのポイントを踏まえ、看護学生が日々の学校生活や、実習、就活、国試勉強などで意識したいことを解説します。

【学校生活】さまざまなことに幅広く興味をもつ

低学年から実習が始まる前までの学校生活は、学内での座学や実技演習が中心となります。苦手意識をもたず、幅広い分野に興味をもって勉強しましょう。興味や関心は、積極的に学ぶための原動力となり、学んだ内容は基礎知識となります。国家試験対策や看護師になってからの基盤として必ず役に立ちます。

また、比較的プライベートの時間が確保しやすい時期であるため、アルバイトや趣味、旅行など学校以外の場での学びも大切にしてみてください。就業体験や病院説明会などは低学年から参加できる場合もあり、現場を知るために参加してみるのもおすすめです。

【看護実習】積極的なコミュニケーションと観察を心がける

看護実習中は患者さんやその家族、医療スタッフと関わる機会があるので、積極的なコミュニケーションを心がけてみましょう。人と関わるときには、伝え方だけでなく、相手が使っている言葉や行動を観察する姿勢も意識すると相手の意図が汲み取りやすくなり、コミュニケーション能力アップにつながります。

また、実習先の看護師やほかの職種がチーム医療を円滑にするためにスタッフ同士でどのようなコミュニケーションを取っているかも観察し学んでみてください。

【就活】自己分析に重きを置く

就活ではまず自己分析に取り組み、客観的に自分を振り返る時間をつくってみましょう。自己分析では、自分の体験から感じたことや他人から見た自分を掘り下げることが、自己客観視の力や他人の意見を受け入れる柔軟性を養うことにもなります。

また、しっかりと自己分析することは、自分の看護観を深めたり、看護師としての理想の働き方を明確にしたりするメリットもあるため、その後の就活にも活かせるでしょう。

【国試】合格に向けて計画を立てる

国家試験は看護学生が必ず乗り越えなければいけない壁です。合格に向けて余裕をもった計画を立て、前向きな学習意欲と最後までやりぬく継続力を発揮して対策に取り組んでください。

ナース専科では国家試験合格応援プログラムとして、予想問題や攻略法も紹介しています。ぜひ活用してみてくださいね。

新人看護師に必要な能力を理解して学校生活で身につけよう

就活事情の変化や離職率の高さから、病院側は質の高い学生を求める傾向にあります。しかし、いずれの病院でも新卒看護師に求める能力は基本的に大きく変わらず、今回紹介した7つの能力はどのような職場であっても役に立ちます。この能力は、勉強や実習への取り組み方、プライベートでの過ごし方など、日々の学校生活で少し工夫するだけで磨くことができるもの。ぜひ意識してみてください。

参考

厚生労働省:地域医療構想、医療計画について(2025年1月19日閲覧)

日本看護協会:「2023年 病院看護実態調査」結果(2025年1月19日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。