高度急性期看護に興味がある看護学生必見!採用担当者のトークセッションレポート2022 採用担当者や新人看護師が語る!就活で意識することや求める人物像

急性期看護に憧れをもつ学生さんは多いのではないでしょうか。
そもそも、高度急性期と一般急性期、特に二次救急と三次救急にはどのような違いがあるか知っていますか?
今回は、二次救急と三次救急医療機関の指定を受ける東京女子医科大学病院の採用担当者から、高度急性期病床の看護の現場や心構えについて伺いました。
さらに、実際に高度急性期病院に就職した先輩看護師から伺った、就活のポイントについてお伝えします!

※本内容は、2022年11月19日に開催したオンライン就活ゼミ「高度急性期看護を目指す人必見!
採用担当者・新人看護師が語る就活の心構え」にて、東京女子医科大学病院の採用担当者と同院の新人看護師にお話いただいた内容を再構成したものです。

講義

高度急性期看護とは -働き方・心構え・求められるスキルなど-

講師プロフィール

廣瀬 由希子(ひろせ ゆきこ)氏

廣瀬 由希子(ひろせ ゆきこ)氏
東京女子医科大学病院 雇用対策担当看護師

東京女子医科大学看護専門学校を卒業後、2002年に東京女子医科大学病院の中央手術室に入職。2010年にカナダに語学留学を行い、翌年、同院中央手術室に復職、教育担当となる。その後2018年東京女子医科大学3施設看護職採用担当、2020年同院八千代医療センター、2021年に同院へ異動。看護師の採用には2018年から採用担当として携わり、2021年には雇用対策担当となる。2022年4月国家資格であるキャリアコンサルタント取得。

急性期と高度急性期はここが違う

皆さん「急性期」って何だかわかりますか?
病気になりはじめた時期やケガをして症状が現れはじめた時期のこと。これがいわゆる一般にいう「急性期」です。
なかでも病気やケガの状態が重く、より多くの治療や処置が必要であったり手術をする場合には、入院して治療やケアを行います。このとき入院するのが「一般急性期」病棟をもつ医療機関です。
そしてさらに病気やケガが重く不安定で、生命に危険があったり危険が迫っていたりと、重症度や緊急度が高い場合には、「高度急性期」病棟で、多くの医療機器を使い24時間体制で集中的に治療やケアを行います。これを「診療密度が特に高い医療」といい、救命救急病棟や集中治療室(ICU、HCU、NICU)などで行われています。

<キーワードおさらい>

急性期

病気やケガをして症状が現れはじめた時期のこと。患者さんの状態は不安定で刻々と変化する。

一般急性期

病棟(病床)で提供される医療の機能の区分。病気としての急性期の患者さんに対し、状態の早期安定化に向けて医療を提供する。病気としての急性期がこれにあたる。

高度急性期

病棟(病床)で提供される医療の機能の区分。緊急度や重症度が高い急性期の患者さんに対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する。救命救急病棟、集中治療室(ICU、HCU、NICU)などがこれにあたる。

※医療の機能を表す区分には、ほかに「慢性期」や「回復期」がある。

図1)病棟(病床)で提供される医療の機能の種類
病棟(病床)で提供される医療の機能の種類 高度急性期・一般急性期・回復期・慢性期の中で、高度急性期は救命病棟・集中治療室(成人・新生児・小児・総合周産期)があたる

二次救急と三次救急はここが違う

もう一つ、よく聞く言葉に「二次救急」や「三次救急」があるでしょう。
これらは、救急医療を提供している医療機関の分類です。各都道府県が指定、重症度や緊急度に応じた効率的な医療を提供するために、一次から三次の3段階に医療機関を分類しています。

では「二次救急」と「三次救急」では、何が違うのでしょう。
「二次救急」は、主に入院や手術が必要な患者さんに24時間体制で対応する医療機関です。ただし「自施設で可能な範囲で対応し、必要に応じて三次救急医療機関に紹介する」とされており、自分の施設で対応が難しいときには、三次救急医療機関へ搬送することが望ましいとされています。

「三次救急」は、二次救急では対応が難しく重症で重篤な患者さんに、より高度な救命救急医療を提供する医療機関です。救命救急センターやさらに高度な診療機能をもつ高度救命救急センターを備えています。
また、三次救急医療機関では、一次から三次までのすべての救急医療に対応している施設が多いことも特徴です。どうしても救急医療に携わりたい人は、三次救急医療機関を就職先に選ぶと、経験したい看護が集中的に勉強できると思います。

<キーワードおさらい>

二次救急

救急医療体制に沿った分類。指定された医療機関は、入院や手術が必要な重症の患者さんに24時間体制で救急医療を提供する。救急車で最初に運ばれる医療機関にあたる。

三次救急

救急医療体制に沿った分類。指定された医療機関は、二次救急では対応できないような重症で重篤な患者さんに、より高度な救命救急医療を提供する。救命救急センターや高度救命救急センターを備える。

※一次救急は、比較的軽症な患者さんを対象とした外来診療

図2)救急医療体制による医療機関の区分
救急医療体制による医療機関の区分 三次救急は生命の危機をおよぼし、かつ専門性が高い患者に対する医療を提供する

高度急性期の現場で求められるもの

高度急性期医療の現場では、時間勝負になることが少なくありません。心筋梗塞で(緊急手術をする等)治療方針の判断は、発症から120分以内が望ましいとされています。さらに準備時間を入れると発症から90分程度で判断できると望ましいとも言われています。このようにめまぐるしく緊迫する状況のなかで、私たちスタッフは医療を進めています。

例として、心筋梗塞の患者さんが転院してきたとき、どのような看護が求められるかの一例を挙げてみます。

患者さんには心電図モニターを着け、看護師が常時心電図波形を確認します。全身状態のアセスメントを続け、正常波形から逸脱している徴候があるなど違和感を感じたらすぐに医師に報告と相談をします。
緊急手術が決まれば、手術にはカテーテルによる治療と胸を開く開胸手術がありますが、高度急性期の現場では一分一秒を争う場合が多く、時間を短縮するために両方の準備を同時に進めていきます。
手術の後には全身状態を細かくチェックし、アセスメントを続けます。痛みや症状があれば医師と相談して和らげる努力をするのはもちろん、患者さんは同じ体位で寝たままの状態になることもあるので、麻痺や褥瘡、せん妄などが起こらないように予防にも注意します。
また多くの患者さんは、緊急で入院・手術になっていることが多く、患者さんだけでなく家族を含めて不安が大きい中で、短時間で重要な意思決定をしなければならない場合もあります。そのため精神的なケアや支援も重要です。

高度急性期の現場では、このようにさまざまな対応を迅速かつ正確・丁寧に行わなければなりません。看護師として高度な知識と技術、そして細やかな配慮が求められているのです。

高度急性期で働くメリットとは

高度急性期の看護の例を聞いて、こんなことが自分にはできるのだろうか?と不安になる人もいるでしょう。
でも高度急性期を担う医療機関では、それだけ教育体制がしっかり整えられているところがほとんどです。

当院の場合は、細かい技術までそれぞれにチェックリストがあり、ME機器には機器ごとにきちんと手順書が準備されています。また臨床工学技士や業者など専門性の高い人物から勉強会を受ける機会もあるので安心です。
また、病状や症状の難易度ごとに治療や管理方法の勉強から始め、段階を追ってステップアップしていけるような研修システムも組まれています。
ですから高度急性期に興味があるという人は、いろいろな病院の説明会に参加し、教育体制について質問してみるとよいでしょう。

高度急性期で働くメリットの一つは、アセスメントをすることに加えて深く考える力が上がることだと思います。また、患者さんの状態の変化に、速やかに対応できるようにもなります。さらに、なかなか経験できないような医療機器の取り扱いも身につけられます。また何よりも、専門性に特化したスペシャリストである他職種のスタッフたちと一緒に働けるということは、自分を高めるうえでも、とても恵まれた環境といえるのではないでしょうか。

採用担当者インタビュー

選ばれる学生になるための就活のポイント1

【お話】
廣瀬 由希子(ひろせ ゆきこ)氏
東京女子医科大学病院 雇用対策担当看護師

高度急性期看護において求める人物像は何ですか?

変化が大きい現場なので、考える力、考えようとする姿勢がとても大事だと思っています。まずは、基本の業務や指示に加え、自分でも考えて、それを言葉にして相談できるようにすることが大切になります。

選考でみているポイントは何ですか?

看護師は、患者さんや家族、多職種とかかわり、チームで業務にあたる仕事なので、コミュニケーション力を重視しています。例えば、選考時には、人の話を聞こうとする姿勢があるかどうかをよくみています。多くの看護部長や人事担当者も言っていますが、特に表情や視線、姿勢などに着目します。さらに、ちゃんと自分の言葉で語ることができているかという点にも注意します。

面接の練習をする人は多いと思いますが、練習どおりに話そうとするあまり、内容が質問とずれてしまっていることがあります。練習をして場に慣れることはよいことですが、さらに自分らしさを出せるようにしていくとよいとでしょう。面接官が自分が働く姿をイメージできるよう、意識して話すことも大事です。

就職活動が本格化する前の今の時期から意識しておくべきことは何ですか?

1つ目は、計画的に進めるということです。東京都内を例にすると、採用審査は3月頃から始まりますから、逆算して考えるとよいと思います。「3月に審査なので、1月~2月には病院の見学会やインターンシップに参加し、ある程度希望を絞り込む。そのためには、12月~1月には就職説明会へ参加したり、インターネットなどで情報収集することが必要」といった具合に進めます。

2つ目は、自分が就職で重視する点を整理しておくこと。今はわからなくても、情報収集するうちに気になるポイントが出てきます。福利厚生、病院の特徴、教育体制、雰囲気など、気になったことを少しずつ整理していきましょう。

3つ目は、興味と関心です。将来自分がどうなり、何を目指していくかです。今は明確でなくても、まずはどういうことがしたいか、何を大事にしたいかを整理するとよいでしょう。この2つ目・3つ目は、病院とのマッチングの条件にもなっていきます。

最後に挙げたいのは、対話を大切することです。
実はこれが一番大事で、日常のなかで、どのような場面でも対話を恐れず、積極的に人と向き合ってほしいと思います。実習などで患者さんにかかわるとき、これ以上踏み込んでいいのか迷うことがあると思います。そのときは医療者としてアセスメントを行い、迷う時は相談し、必要だと判断できたら迷わずに一歩踏み込んでみてください。

そのとき、もし相手に受け入れ準備ができていなくても、少し時間を経てから、相手から声をかけてくれるかもしれません。また、チームでその必要性を共有していれば、誰かが患者さんの支えになれるかもしれません。それは、医療として最善を尽くすことにつながり、これからのあなたの看護を支えるでしょう。

新人インタビュー

選ばれる学生になるための就活のポイント2

【お話】
東京女子医科大学病院 心臓血管外科病棟 新人看護師

高度急性期看護を志望する上で、就職活動ではどんなところを意識していましたか?

自分がどうして急性期看護をしたいか、急性期看護のなかでどのような看護をしていきたいかに意識を置きました。また、実習で心臓の病棟へ行った際、モニターなどの扱いが難しそうと思っていたのですが、実習指導の看護師の方が心電図モニター等の扱いをわかりやすく丁寧に教えてくれ、そこで面白さを知り、心臓に興味を持つようになりました。そのため、就職活動では心臓系が強い病院を探していきました。

どのようなスケジュールで就職活動を進めましたか

大学3年生の1月から2月にかけて、いろいろな病院のWEB説明会に参加して、候補をいくつかに絞りました。当院は5月頃に試験を受けたと思います。

実習期間中の就職活動はなかなか難しかったので、実習が一旦落ち着いてから一気に情報収集を始めました。周囲の友人などと情報交換しながら、スケジュールを立てていきました。

志望病院はどのように絞り込みましたか?

3月頃には3病院に絞り込み、4月頃には小論文や面接の対策に切り替えていきました。私の場合、心臓系に興味があり、特に補助人工心臓(VAD)に関心をもっていました。当院に人工心臓管理技術認定士の方がいらっしゃることを知って、ここで詳しく学べると思って志望しました。

認定士が在籍することを知ったのは病院説明会です。ホームページに載っていない情報もわかるので、説明会に参加することは大切だと実感しています。

面接対策では何を意識しましたか?

本を買ったりもしましたが、主に教員の先生との練習で対策を行いました。
どうしてこの病院を志望したか、なぜ急性期で働きたいかについて、自分の言葉で言えるよう心がけました。自分の看護観、どんな看護をしたいかについて、先生と一緒に深く掘り下げました。ただあまり練習しすぎると、用意した原稿にとらわれてしまうと先生からアドバイスを受けたので、そこは注意しました。

高度急性期看護する上で大変なところは何ですか。どのように工夫していますか?

病棟には、手術直後の患者さんから、手術前で病状が不安定な方もいらっしゃいます。また、急変される方もいます。ですから受け持ち患者さんのどこをみて、どうアセスメントしていくかが、今一番難しいと感じている部分です。

心がけていることは、まず患者さんの頭から足の先まで全身を自分でしっかり観察し、アセスメントして、先輩看護師にたくさん相談して一緒に患者さんをみてもらうようにしています。先輩の視点から学びを深められることが少なくありません。

高度急性期看護する上で大事だと思うことは何ですか?

しっかりと全身をみてアセスメントする力が大切です。また結果を看護師だけで共有するのではなく、病状の変化を医師や他職種に報告したり相談するので、コミュニケーション力も必要だと思います。

コミュニケーション力は、患者さんとのかかわりにも欠かせないため、力をつけようと日々努力しています。手術前で不安を感じて眠れない患者さんがいたら、就寝時間に少しでも時間をとって話を聞くようにしています。

あとがき

二次救急と三次救急との違いや実際の医療現場についてのお話はいかがでしたか?
高度急性期を目指す学生の皆さんにとっては、採用時のポイントになる点や先輩看護師の就活の経験談も参考になったのではないでしょうか。
高度急性期看護を目指すうえでは、常に対話を恐れず、コミュニケーションを大切にする姿勢が重要です。自分にできるか不安…という方も先輩看護師の就活ポイントを参考に、いろいろな病院の説明会に参加して、自分にあう病院を見つけてください!

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