【人体の構造と機能 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法
最終更新日:2024/08/07
この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は「人体の構造と機能」編です。第113回で出題された人体の構造と機能に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。
目次
第113回の「人体の構造と機能」はどうだった?
第113回の全体的な難易度は?
第113回看護師国家試験で出題された「人体の構造と機能」に関する問題の全体的な難易度は、例年並みからやや高めでした。
以下は第113回で出題された人体の構造と機能に関する問題です。
- 神経系の問題
✔ 自律神経
✔ 神経細胞
✔ 脳神経
✔ 小脳 - 生殖器系の問題
- 感覚器系の問題
- 内分泌系(ホルモン)の問題
- 代謝系の問題
第113回出題された問題のうち、交感神経の興奮によって起こる眼の反応を問う問題(午後No.26)、舌にある味蕾の分布を問う問題(午前No.27)、乳房の構造と機能を問う問題(午前No.76)、神経線維の髄鞘の働きを問う問題(午前No.26)などは、一般的な人体の構造と機能の知識があれば解ける内容でした。
一方で、例年頻出される脳神経や代謝に関する問題は、機能やメカニズムをしっかりと理解していないと解けない問題です。今回出題された脳神経の問題(午前No.75)も、声帯の調整に関連している脳神経の分枝について問われ、解答するためには分枝やその機能に関する知識が必要でした。
全体的にみると、第113回看護国家試験の人体の構造と機能に関する問題は、基礎知識があれば解答できる問題と、応用力が必要な問題に分かれていたという印象でした。
第112回と比較すると?
神経細胞の問題は2年続けて出題されていますが、前回の第112回では神経伝達物質について、第113回では神経線維についてと違う角度の問題でした。感覚器系の問題も2年連続で出題されていますが、第112回は聴覚、第113回は味覚と同じ項目でも問われる内容が異なっています。
また、近年の高齢者の増加から、尿失禁関連として排尿に関する問題が頻出傾向にあり、第112回でも出題されていました。しかし、第113回では排尿についての問題は出題されず、排便に関わる大腸の構造について問われました。
そのほか、よく問われる心血管系、免疫系の問題も第112回では出題されましたが、第113回では出題されていません。一方で、脳神経や代謝系の問題は第112回では出題されず、第113回で出題されていました。
このことから第113回は、例年頻出されている問題のうち、第112回に出題されなかった項目の問題を中心に出題されたことがわかります。また同じ項目の場合は、問う内容を変えて出題されるようです。
第113回から分析する「人体の構造と機能」の傾向
第113回看護師国家試験は、令和5年版看護師国家試験出題基準が出題範囲となります。以下は人体の構造と機能の出題基準のうち大項目をまとめたものです。
【令和5年版看護師国家試験出題基準 人体の構造と機能の大項目】
- 細胞と組織
- 生体リズムと内部環境の恒常性
- 神経系
- 運動器系
- 感覚器系
- 循環器系
- 血液
- 体液
- 生体の防御機構
- 呼吸器系
- 消化器系
- 代謝系
- 泌尿器系
- 体温調節
- 内分泌系
- 生殖器系
- 成長
【参考】厚生労働省:看護師国家試験出題基準
近年、出題頻度が高い問題の特徴は?
例年、神経系の問題はよく出題されています。第113回でも自律神経、脳神経、神経線維、小脳と4題出題されました。また、近年出題が続いている感覚器系や生殖器系などの問題、例年出題されやすい内分泌系、代謝系の問題も第113で出題されました。
一方で、例年出題されやすい循環器系に含まれる心血管系の問題、生体の防御機能に該当する免疫系の問題、生体リズムと内部環境の恒常性(ホメオスターシス)などの問題は、第112回で出題されたこともあり、第113回では出題されていません。
看護師国家試験で問われる人体の構造と機能の問題は、全ての分野から出題されているため、幅広い知識が求められます。第106回ごろまでは機能についての問いが多くみられましたが、近年では構造を問う問題も増えており、問題の幅も広がっていることがわかります。
傾向が変化した理由として、近年他職種への理解が求められるなか、看護師も基礎医学教育で重要とされる解剖の知識を習得することに重きを置かれるようになったからだと考えられます。
また、ここ数年は単なる構造と機能の暗記で解答できる問題はほとんど出題されず、知識を使って設問に答えていく問題が大部分を占めています。これは、人体の構造と機能を覚えるだけではなく、疾病の理解も重要視されるようになったためです。
正常な機能が障害を受けた際に、どこがどのように変化するのかまで考察できることが求められていると考えられるため、幅広い知識を身につけるだけでなく、身につけた知識から答えを導く応用力を養うことも重要です。
例として、第113回の問題を紹介します
- (×)三叉神経
- (×)顔面神経
- (×)舌咽神経
- (〇)迷走神経
- (×)舌下神経
問題:「声帯の運動や緊張度を調節する神経を分枝するのはどれか」(午前No.75)
脳神経に関する知識は身につけられていたとしても、なかなか声帯の運動に関する支配神経まで細かく覚えておくことは難しいでしょう。この問題を正解するためには、迷走神経の効果器として咽頭下部・喉頭筋を理解しておくか、話す機能として声帯について学習しておくことが必要です。ちなみに、迷走神経以外の脳神経は音調に関わっています。
第113回でとくに目立っていた問題
第113回では大項目7に含まれる止血機構のうち、血液凝固後の線維素溶解についての問題(午後No.74)が出題されました。血球の成分や血液型についての問題は第111回に出題されていますが、止血機構についての問題は久しく出題されていません。
血液凝固に関する知識は、看護する上で採血や抜針後の止血など基本的知識として必要不可欠です。今後同様の問題が出題されるというよりは、血液の成分や分化など他の内容も出題されてくると考えられます。
また、直腸の構造を問う問題(午後No.76)も、今まで出題されてこなかったため、第113回で出題されたなかで目立っていました。解答するためには解剖の十分な知識が必要であり、難易度が高めの問題だったといえます。
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【114回出題予想】「人体の構造と機能」に関する問題3問
予想問題1
- 刺激伝導系は房室結節から発し心房を収縮させる
- 平滑筋である
- 収縮にはカルシウムイオンが強く関与している
- 神経系の指令によって収縮する
- 骨格筋より活動電位の不応期が短い
正常な成人の心筋について正しいのはどれか。
解答・解説をチェック
3
1.(×)刺激伝導系は洞房結節から発し、心房を収縮させ房室結節からヒス束を経て右脚、左脚に伝わり、プルキンエ線維を経て心室を収縮させる。
2.(×)心筋は横紋筋であるが、平滑筋と同様の自律神経に支配される不随意筋である。
3.(〇)心筋細胞は、細胞外から細胞内にNa +に続きCa2+が流れ込み、膜電位の脱分極時間が長い。細胞膜を通るイオンの流れの変化が細胞の興奮をもたらし、カルシウムイオンが筋の収縮蛋白の配置を変化させ心筋の収縮が起こる。
4.(×)刺激伝導系がペースメーカーとなり心筋の収縮を支配している。刺激伝導系は神経系の支配がなくても自発的に収縮する自動能を有している。
5.(×) 心筋は骨格筋に比べて円滑なポンプ作用を保つため、不応期が長く活動電位の持続時間が長い。
循環器系の問題は例年頻出されていますが第113回の一般問題では出題されていないため、第114回では出題されることが予想されます。とくに心筋に関する問題は出題頻度が高いものの、最近では出題されていないため注意が必要です。
心筋は骨格筋と同じ横紋筋ですが平滑筋のように不随意の働きを兼ね備えています。筋収縮活動の理解も合わせて必要となるため、最近の出題傾向である知識を応用した問題としても出題されやすい内容だと考えられます。
予想問題2
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
記憶に関わる領域はどれか。
解答・解説をチェック
4
1.(×)①:脳梁
2.(×)②:帯状回
3.(×)③:脳弓
4.(〇)④:海馬
5.(×)⑤:下垂体
神経系の問題は毎年数問出題されています。第113回では4問と比較的多く出題されていましたが、中枢神経系の項目からは大脳ではなく小脳の問題が出題されました。大脳皮質の部位と機能については第111回に出題されています。
今回は、最近出題が多い傾向にある人体の構造について問う問題が出題されているため、大脳辺縁系の構造を理解した上で、アルツハイマー型認知症とも関連が強い海馬を回答させる問題を第114回の出題予想として紹介しました。
予想問題3
- プロゲステロン-精巣
- テストステロン-下垂体前葉
- 卵胞刺激ホルモン-子宮
- 黄体化ホルモン-視床下部
- エストロゲン-卵巣
生殖に関わるホルモンと産生する臓器の組み合わせで正しいのはどれか。
解答・解説をチェック
5
1.(×)プロゲステロン(黄体ホルモン)は卵巣より分泌され、妊娠を継続させる働きがある
2.(×)テストステロン(男性ホルモン)の大部分は精巣より分泌され、性欲を起こす働きがある
3.(×)卵胞刺激ホルモンは下垂体前葉より分泌され、卵胞ホルモンを分泌させる
4.(×)黄体化ホルモンは下垂体前葉より分泌され、排卵を促す
5.(〇)エストロゲン(卵胞ホルモン)は卵巣より分泌され、卵を成熟させると同時に子宮内膜の増殖を促す
ホルモンなどの内分泌系の問題は例年出題されやすく、第113回では尿量調節に関するホルモンの問題が出題されました。以前はホルモンと産生臓器の組み合わせの問題が出題されていましたが、最近ではホルモン名とその働きを直接問う問題が出題されています。
今後生殖に関する出題が増えてくるのではないかと予想し、今回は生殖に関するホルモンと産生臓器の組み合わせを問う問題を紹介しました。とくに女性の生殖の関するホルモンの分泌は複数あり、名称も似ているものが多いため、どこから分泌されどのような働きがあるのかもあわせて正確に理解しておくことが大切です。
【第114回攻略法】「人体の構造と機能」のチェックポイントはズバリここ!
第114回の対策として、人体の構造と機能を勉強するときに注力すべきポイントは以下の4つです。
1. 神経系の働きと機能について必ず理解する。
自律神経系の交感神経と副交感神経は構造と機能を合わせて理解しましょう。また、脳神経や中枢神経、末梢神経と幅広く学習し知識を身につけておくことも大切です。
2. 感覚器系に含まれる視覚、聴覚、嗅覚、触覚、痛覚等の機能と構造を理解する。
3. 循環器系に関連する問題は毎年よく出題されるため対策しておく。
とくに第113回で出題されておらず第114回での出題が予想されるため、心臓や血管の構造と機能を合わせて理解しておきましょう。
4. 生殖器に関する知識も深めておく。
少子化に歯止めがかからず更なる人口減少が懸念されることから、プレコンセプションケアについて注目が集まっています。それに合わせて生殖器に関する問題の出題も予想されるため、機能だけでなくその構造も十分理解しておくことが必要です。
一般問題で出題される人体の構造と機能の問題は、5問一択または5問二択の形式で出題されています。選択肢のうち3つや2つに絞るのは容易ですが、そこから正しい答えを選択するには曖昧な理解では難しく、確実な知識の定着が必要です。
人体の構造と機能は範囲が広く、使われる用語も難しいですが、疾病や看護援助の基本的な知識となります。低学年の早期から学習に取り組み、臨地実習などで活用しながら繰り返し学ぶことで、確実な知識の定着を目指せるでしょう。
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参考文献
厚生労働省:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版.(2024年5月28日閲覧)
執筆者情報
大橋 十也/ 青木 紀子
ohashi-aoki
■大橋 十也 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 教授/担当領域:健康科学(疾病・治療学 小児科学) ■青木 紀子 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科/担当領域:基礎看護学