【成人看護学 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

【成人看護学 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

最終更新日:2024/08/07

この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は成人看護学編です。第113回で出題された成人看護学に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。

第113回の「成人看護学」はどうだった?

第113回の全体的な難易度は?

第113回看護師国家試験で出題された「成人看護学」の問題の全体的な難易度は、例年並みでした。難化したという声もありましたが、これまでとは違ったアレンジが問いに加えられた程度だったといえます。

一般問題では、急性期看護も慢性期看護も基本的な知識を問う問題が出題されました。状況設定問題でも、肺がんや非ホジキンリンパ腫など、実習で出合いやすい疾患や対象者の状況をもとに問題が作成されており、検査データや基本的な病態の把握ができていれば回答できる問題が多かった印象です。

成人看護学で問われる知識は広範囲ですが、肝硬変による肝性脳症の症状を問う問題(午前No.88)などのように、全体的にみると症状やメカニズムなどを系統的に理解していれば正答できる問題が多いと感じました。

一方で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に汚染された注射針による針刺し事故の感染率を問う問題(午後No.45)など、なかには具体的な細かい数値の理解も求められ、繰り返し細部まで学習を積み重ねなければ定着しないような知識が必要な問題もありました

第112回と比較すると?

状況設定問題の設問に違いがみられました。以前は患者さんの身体的な状況を示す文章のみの内容でしたが、第113回では病名告知時の気持ちを加味して全人的苦痛を理解できているかを問う内容が出題されました。1つの苦痛から、それに関連する苦痛を推論する力も問われていることがわかります。

第113回から分析する「成人看護学」の傾向

近年、出題頻度が高い問題の特徴は?

近年では、慢性の経過をたどりさまざまなセルフケアが求められるがん、循環器・呼吸器などの疾患の患者さんの看護に関する問題が増えています。入院期間の短縮化により、在宅療養に必要となる症状マネジメントや、急性増悪予防に関連した知識が看護師にもますます求められているためです。

医療の進歩に伴い、基礎知識を活用して状況を判断する能力も看護師に求められていることから「成人看護学」の問題では、患者さんのアセスメントのために詳細な知識を問う問題が今後もさらに増えてくると予想されます。

第113回でとくに目立っていた問題

これまでは、具体的な数値を覚えなくても正答できる問題が多くみられましたが、第113回では「術後の創傷治癒が遅延する因子となる検査値はどれか。」(午後No.42)のような、検査データの詳細な理解が求められる問題が出題されました。単純に過去問を解くだけでは、合格点を得ることが難しくなってきており、今後は細かな知識の習得が必要でしょう。

また以下の性生活に関わる問題も印象的な問題でした。

外来で、診察終了後にAさんから「少し話がある」と言われた女性のB看護師は、空いている診察室で面談した。Aさんから「男性の医師には聞けなかったのですが、性交はやめておいた方がよいでしょうか。股関節の痛みが強くなることはないのですが、夫も心配していました」と相談があった。このときのB看護師のAさんへの対応で適切なのはどれか。(午前No.101)

1.(×)「同年代の変形性関節症の方に聞いてみてはいかがですか」
2.(〇)「股関節に負担がない体位について説明します」
3.(×)「性交時は潤滑剤を使いましょう」
4.(×)「性交は避けた方がよいでしょう」

今までは、性機能障害が生じる性・生殖器系関連で取り扱われてきたような内容が、今回の問題のように他の疾患でも問われるようになってきました。背景として患者さんや家族の生活を幅広く、また深く捉え、必要な看護を提供できることが求められる時代になったことが考えられます。このように分野を横断した問題は引き続き出題されるでしょう。

【第114回出題予想】「成人看護学」に関する問題3問

予想問題1

神経麻痺で猿手が生じる場合にみられる他の障害や肢位として適切なものはどれか。

 1.手関節の背屈障害
 2.下垂手
 3.鷲手
 4.母指の対立運動障害

 

解答・解説をチェック

  
  4

脳・神経機能障害は「成人看護学」のなかでも出題されやすい問題です。手関節の背屈障害や下垂手は橈骨神経麻痺、鷲手は尺骨神経麻痺、猿手や母指の対立運動障害は正中神経麻痺でみられます。障害の原因を導けるように知識を身につけましょう。

予想問題2

冠動脈バイパス術(CABG)後5時間が経過した患者が、心タンポナーデを起こした。この時の患者の状態や症状として可能性が低いものはどれか。

1.心嚢ドレーンからの排液の減少
2.血圧低下や脈圧の狭小化
3.呼吸困難
4.徐脈

  

解答・解説をチェック

  
 4

この予想問題も「成人看護学」で出題されやすい循環器疾患の症状のメカニズムの理解を問う問題です。開心術後の合併症とその発症時期をあわせて覚えておきましょう。

予想問題3

Aさん(42歳 女性)は、不正性器出血があり近医を受診した。検査の結果、子宮頸がんⅡ期と診断され、手術目的の入院となった。入院時「子宮をとることは、がんになったから仕方がないと思うけど、手術の後に排尿トラブルが起きるかもと聞き、とても不安です。営業職で、トイレにすぐにいけない時もあるので…」と不安を語っていた。翌日、Aさんは広汎性子宮全摘出術を受けた。術後1日目、体温37.6℃、脈拍数78/分、血圧120/68mmHgであった。腹部は平坦で腸蠕動音は聴取できない。膣からの分泌物はなく、骨盤死腔内の異常出血の疑いはない。尿管損傷や尿路感染症が生じている可能性も低い状態であるが、腹壁層の痛みを訴えている。

問題3-①

術後1日目にみられるAさんの訴えや徴候として可能性が低いのはどれか。

1.「便が出る感じはありませんが、ガスは少し出ます」
2.膀胱留置カテーテルからは単黄色透明の尿が流出している
3.「おなか以外に痛いところは特にありません」
4.経腹的な後腹膜ドレーンからは2時間で淡血性の廃液が300mL

解答・解説をチェック

  
  4

状況設定問題は過去問が使わることもありますが、難化する可能性もあります。今回はその点を加味して、第90回の問題(午後No.22~24)をアレンジした予想問題を紹介します。

問題3-①は、過去の問題では症状から、患者の状態を問う形式でしたが、今回は状態から患者さんの訴えや症状の理解を問う内容です。どちらが問われても答えられるよう、知識を深めておきましょう。

問題3-②

術後7日、膀胱留置カテーテルが抜去された。排尿障害に対する看護で正しいのはどれか。

1.残尿量の測定は、残尿量が50mL以下になるまで行う
2.排尿は尿意を感じた時にするよう指導する
3.排尿時は下腹部の圧迫刺激を避ける
4.排尿障害は治らないため、退院したら仕事内容を上司と相談するように勧める

解答・解説をチェック

  
  1

問題3-②は、排尿障害に対する看護の知識を問う問題です。退院後のことについては、セルフケアの獲得状況をアセスメントしながら患者さんの希望を尊重した関わりが求められます。

問題3-③

術後16日目から全骨盤に対する放射線照射が開始された。1週間経過し、計10Gvの照射を終えたところ、以下の症状が出現した。放射線照射による症状として可能性が最も高いのはどれか。

1.卵巣欠落症状
2.下肢の浮腫
3.下痢
4.血便

解答・解説をチェック

  
  3

問題3-③は放射線治療による影響について問う内容です。1と2は、手術に伴う影響と考えられます。4は、放射線照射の晩期障害になります。それぞれの治療や手術による影響について理解しておくことが大切です。

【第114回攻略法】「成人看護学」のチェックポイントはズバリここ!

攻略法としては「教科書の隅々まで勉強する」ことが一番のポイントです。「成人看護学」の場合、まずは覚え難い循環器疾患や脳神経疾患、出題されやすくなった感染症の基礎知識からしっかり習得するとよいでしょう。

国家試験で問われる内容は臨地実習でもよく出合う疾患であるため、その経験と知識を紐づけることもおすすめです。また、自分の受け持ち患者さんだけではなく、グループメンバーの事例にも関心を寄せ、状況を理解するための必要な情報の確認や、自らアセスメントしてメンバーと比較するなどの訓練をするのもよいでしょう。知識の獲得につながり、根拠をもった看護支援を導く力を習得できます。

近年では5問2択問題も増えていますが、上記のように細やかな学習を積み重ねないと選択肢を絞り込むのが難しいでしょう。とくに事例問題の長文化は顕著であり、一般問題でもさまざまな情報についてしっかり解釈できているかを問う問題が増えています。状況設定問題の傾向に変化はみられませんが、難化しても対応できるように、アセスメント力や状況に合わせた看護援助を導く思考を高めておきたいところです。学校のカリキュラムも大いに活用して、国家試験に必要な力を養っていきましょう。

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望月 留加

mochizuki

東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 准教授/担当領域:成人看護学