HCUとは?看護師の役割、やりがいからICUとの違いまで解説

HCUとは?看護師の役割、やりがいからICUとの違いまで解説

最終更新日:2023/12/10

HCUは幅広い疾患の患者さんが対象であり、急性期看護の経験が積める現場です。今回はHCU勤務経験者の話をもとに、やりがいから大変さ、HCUで培えるスキルまでを紹介します。HCUに興味がある人はぜひ参考にしてください。

HCUとは

HCUとは「High Care Unit(ハイケアユニット)」の略称であり、「高度治療室」を意味します

HCUは、主に一般病床とICUの中間的な役割を担う部署です。ICUでの治療により緊急の状態や重篤な状態を脱した患者さん、術後で集中的に経過観察が必要な患者さん、重症度が高まり一般病棟ではケアが難しい患者さんなど、幅広く受け入れています。

単独でHCUの病棟を設置している病院もありますが、ICU病棟の一部にHCU病床が併設されていたり、一般病棟の1室がHCU病床になっている病院もあるようです。

HCUの特徴

HCUは対象となる患者さんや設けられている施設基準に特徴があります。以下で詳しく解説します。

対象となる患者さん

HCUに入院する患者さんは、疾患の種類ではなく重症化のリスクにより受け入れが判断されるため、どのような患者さんが入院対象になるかという基準は病院によって幅が変わってきます。一般的には、下記のような疾患の患者さんが多いとされています。

HCUの入院対象となる疾患例
循環器系の患者さん 脳血管疾患、心筋梗塞、急性心不全、大動脈解離、肺血栓塞栓症
術後の患者さん 開腹手術後、呼吸器手術後、脳や心臓の手術後
救急の患者さん 意識障害、ショック状態、中等症熱傷、重症な外傷、急性中毒、急性呼吸不全
入院中の患者さん 呼吸や循環状態の悪化、臓器不全のリスクが高い

HCUの施設基準

HCUには診療報酬で定められている施設基準があります。HCUの施設基準は以下のとおりです。

参考:厚生労働省:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
        :ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票 評価の手引き

施設基準
医師 専任の常勤医師が常時1名以上
看護師の配置基準 4対1 または 5対1
※HCUに勤務している時間帯はHCU以外での夜勤を行わないこと
施設の設備 1. ハイケアユニット入院医療管理を行うにふさわしい専用の治療室がある
2. 以下の装置・器具を常時備えていること
・救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸装置等)
・除細動器
・心電計
・呼吸循環監視装置
患者さんの入院基準 ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票により評価された基準を満たす患者が8割(管理料1/管理料2の場合は6割)以上いること
※評価票の記入は院内研修を受けた人が行う

HCU病棟は、医師や看護師の配置、施設設備などを定めた施設基準を備え、医療・看護が必要な患者さんを一定の割合以上受け入れなければいけません。入室基準は「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票」によって評価され、入院基準を満たす患者さんが6割または8割以上いることが条件となります。

HCUとICUとの違い

HCU(高度治療室)とICU(集中治療室)では、受け入れる患者さんの重症度に違いがあります

以下の表は、HCUとICUの違いをまとめたものです。

HCUとICUの比較表

参考:厚生労働省:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
   日本集中治療医学会:各都道府県別 ICUおよびICUに準ずる治療室のベッド数

HCU(高度治療室) ICU(集中治療室)
対象となる患者さん 重症化のリスクがある患者さん 重症患者さん
医師 専任の常勤医師が常時1名以上 専任の常勤医師が常時1〜2名以上
看護師の配置基準 4対1 または 5対1 2対1
全国の病床数
(2022年12月29時点)
7,990病床 5972病床

HCUとICUは、ともに診療科を限定せず、一般病棟より集中的に治療・看護が必要な患者さんが入室するという点は同じです。

ただし、上の比較表からもわかるように、HCUは重症化のリスクが高い患者さんを受け入れるのに対し、ICUは生命が危機的状況にさらされている緊急度の高い重症患者さんを受け入れるため、より集中的な治療や看護が求められます。そのため、ICUのほうがHCUよりも医師や看護師の配置基準が強化されています

またICUには、対象となる患者さんの違いにより、CCU(冠動脈疾患集中治療室)、SCU(脳卒中集中治療室)など、いくつかの種類があります。HCUとCCUおよびSCUの違いを以下で説明します。理解しておきましょう。

HCUとCCUの違い

HCUとCCUの大きな違いは、対象となる患者さんの疾患部位です。HCUは診療科に関わらず重症化のリスクがある患者さんを受け入れるのに対し、「冠動脈疾患集中治療室(Coronary Care Unit)」を意味するCCUでは、急性の心筋梗塞や狭心症により、集中的な治療・全身管理が必要な患者さんが対象です。

病院によっては、「循環器疾患集中治療室(Cardiac Care Unit)」として心疾患だけでなく、循環器系の急性・重症患者さんを受け入れているCCUもあります。また看護師の配置基準にも違いがあり、HCUが4対1または5対1であるのに対し、CCUは2対1となっています。

HCUとSCUの違い

HCUとSCUの主な違いも、対象となる患者さんの疾患部位にあります。SCUとは「脳卒中集中治療室(Stroke Care Unit)」を意味し、脳梗塞やくも膜下出血など急性の脳血管障害を発症し症状が不安定な患者さんをケアするための部署です。脳血管障害は、早期発見と治療、リハビリテーションがその後の回復を左右するため、SCUでは専門チームが初期治療からリハビリテーションまでを担当し、患者さんの早期回復を目指します。

診療報酬により定められている基本診療料は、HCUがハイケアユニット入院医療管理料なのに対し、SCUは脳卒中ケアユニット入院医療管理料です。看護師の配置基準も異なり、HCUは4対1または5対1、SCUは3対1となっています。

HCU看護師の役割と仕事内容

ここからはHCUの設備や受け入れる患者さんの特徴を踏まえて、HCU看護師の役割と仕事内容を解説します。

HCU看護師に求められる役割

HCU看護師の役割は、重症化リスクのある患者さんの症状が回復・安定し、早期に一般病棟への転棟ができるように看護することです。

HCUの看護師は、他職種と連携し、診療科にかかわらず症状が悪化した場合の対応から、回復に向けた治療、一般病棟への転棟を見据えたリハビリまで幅広く対応します。また、患者さんや家族はいつ重症化するかわからず常に不安を抱えているため、その心のケアもHCU看護師の役割です。

HCU看護師の仕事内容

HCU看護師の具体的な仕事内容を一覧で紹介します。

HCU看護師の業務一覧
全身状態の管理 バイタルサイン、検査データ、患者さんの症状・訴えなどから全身状態を観察する
医療機器の管理 心電図モニター、輸液ポンプ、人工呼吸器などを管理する
処置の介助 ガーゼ交換や中心静脈カテーテル挿入など医師が行う医療処置の介助を行う
医師への報告と指示受け 医師への状態報告と指示を確認する
日常生活の援助 患者さんの食事・排泄・清潔・移動を援助する
患者・家族の精神的ケア コミュニケーションによる心のケアを行う
入院と退院・転棟業務 入院や退院・転棟に伴う事務処理を行う

HCUの患者さんは、落ち着いているようにみえても容体が悪化する可能性があることから、看護師は様々な情報から全身状態をアセスメントし、異常の早期発見に努めなければなりません。生命維持や状態管理のための医療機器の管理も重要です。

HCUでは患者さんの状態に合わせて高度な治療を行います。一般病棟よりも医師の医療処置や指示の変更頻度は高くなる傾向にあり、HCU看護師は医師や他職種との密な報告・確認・相談が必要になります。また、HCUは一般病棟に比べて入院日数が短いため、入退院に伴う事務処理や看護業務が煩雑になることも多いようです。

HCU看護師の1日の勤務スケジュール

HCU看護師は、2交代または3交代勤務で24時間患者さんの看護にあたります。

ここでは2交代の場合を例に、HCU看護師の勤務スケジュールを解説します。ただし、スケジュールは病院によって異なるため、あくまで一例として参考にしてください。

日勤帯のスケジュール例

HCUの看護師配置基準は4対1と定められているため、日勤では基本的に4名程度の患者さんを受け持ちます。HCU看護師の日勤のスケジュール例は以下のとおりです。

HCUで働く看護師の1日スケジュール例(日勤)

1日の業務の流れは基本的に一般病棟と同じですが、患者さんの状態が変化しやすいHCUでは突発的な入院受け入れや検査、処置が発生することがあります。

また、HCU病棟はナースステーションと患者さんのベッドが同じフロアにあり、カルテの記入やほかの業務をしながら、常に患者さんの状態に配慮しなければなりません。モニターの確認、ドレーンの排液や排尿量のチェックなどを行い、急変時は優先順位を考えて対応することが求められます。

さらに、HCU病棟では様々な職種がチームとして患者さんをサポートするため、他職種を交えたカンファレンスが行われることもあります。

夜勤帯のスケジュール例

以下は2交代制の夜勤のスケジュールになりますが、常に患者さんの状態から目が離せないHCUでは集中力を要するため、2交代と3交代を選べる病院もあるようです。

HCUで働く看護師の1日スケジュール例(夜勤)

夜勤では、手術が長時間に及び日勤帯に終了しなかった患者さんの受け入れ、救急で運ばれてきた患者さんの緊急入院への対応、さらに一般病棟から状態が悪化した患者さんの受け入れをすることもあります。

そのため、HCU病棟では夜間の緊急入院用として1床はベッドを空けておくのが一般的です。また消灯後に、備品チェックなど日勤帯ではできない業務を行う病院もあるようです。

勤務経験者が語る~HCU看護師のやりがいや大変なこと~

ここからは、HCU病棟勤務の経験がある看護師が、HCU看護師で培えるスキルややりがい、HCU看護師の心構えを紹介します。

看護師プロフィール

小田 成美さん

新卒から1,000床以上の大規模病院に入職し、救急病棟の看護師として経験を積む。その経験を活かすため、転職先ではHCU病棟を希望し配属される。現在は介護施設、応援ナースなどで活躍中。

HCU看護師になったきっかけは?

急性期や救急医療に興味があり、新卒でER(救急外来)からの入院を受ける救急病棟に入職しました。その後、救急看護の経験を活かしながら患者さんとより関われる病棟で働きたいと思っていたことから、転職した先でHCU病棟を希望し配属されました。

HCUで培えるスキルや知識とは?

HCUでは、様々な疾患の知識が培えるとともに、患者さんを総合的にアセスメントする力が養えます。HCU看護では、幅広い疾患の知識と検査データやフィジカルアセスメントによる情報から、変化しやすいHCU患者さんの全身状態を注意深くみていかなければならないからです。

また、HCUでは他職種を交えたカンファレンスも多いため、他職種との連携やコミュニケーション能力も培えるでしょう。

HCU看護のやりがいや魅力とは?

HCU看護のやりがいは、患者さんを重症化させることなく、回復していく経過を間近で感じられることです。HCU病棟では一人の患者さんに関わる期間は短いのですが、そのぶん一般病棟への転棟や退院となる患者さんが多いため、その回復に貢献できていると実感する瞬間が多くありました。

また、HCU病棟ではチームの一員として医師が常駐しているため、医師から疾患や処置の知識を直接教わる機会が多く、そこから学びを得られることも魅力のひとつです。

HCU看護の大変なところとは?

HCU看護の大変なところは、患者さんの入れ替わりや状態の変化が激しいところです。医師の指示も変わりやすく、急な医療処置や薬剤の変更などが生じることは珍しくありません。状況に合わせた対応が求められます。

ただし常駐医がいるので、医師との連携は比較的取りやすく、経験を重ねることで、状況に合わせて素早い対応が取れるようになりました。

HCU看護師になるうえで大切な心構えは?

HCU看護師になるうえで大切な心構えは、確認を怠らないことです。変化が多いHCU病棟で患者さんに安全な看護を提供するためには、患者さんの状態や医師の指示、機器の設定などを細部まで確認をする必要があります。少しの確認漏れが患者さんの命にかかわることもあるため、勤務交代時や少しでも不安に感じたときは確認を徹底することが大切です。

HCUの看護業務を覚えるまでにやったことは?

HCU病棟に勤務するようになってからは、一つひとつを丁寧に確認しながら看護業務を覚えるようにしました。看護師は職場によって使う物品や仕事の進め方に違いがあります。いち早く仕事を覚えるためには、確認や相談が大切になってきます。

HCU看護師の給料事情

HCU看護師の給料は、基本給に夜勤手当がつく給与形態であり、一般病棟の看護師と同じです。ただし、HCU病棟に配属されている看護師の人数の関係で夜勤が多めになる場合は、そのぶん給料も高くなるでしょう。なかには別途HCU手当がつく病院もあるようですが、手当がついても一般病棟の給料と大きな差はないでしょう。

HCUの経験を活かせるキャリアプランやおすすめの資格は?

HCUでの経験は急性期から在宅まで幅広い分野で活かすことが可能です。より急性期の専門性を磨きたい場合は、呼吸器の設定などができる特定行為研修の受講や、クリティカルケア認定看護師の資格取得がおすすめです。

一方で、患者さんの生活により深く関わりたいと感じた場合は、HCU看護で身につけた疾患の知識やアセスメント力を活かし、患者さんの治療と生活を支える訪問看護師を目指すのもいいでしょう。

HCU看護師になるためには

HCU病棟は、看護師資格があれば新卒からでも勤務が可能です。もちろん幅広い看護の知識・技術を覚える必要はありますが、急性期一般病棟よりも看護師の配置人数が多いため、しっかりと学びを深められるというメリットもあります。

以下では、HCUに向いている人の傾向や就活や入職前にやっておいたほうがよいことを紹介します。

HCU看護師が向いている人

ここからは、HCU看護師に向いている人の傾向を紹介します。ただし、新卒看護師の能力は経験を積むことでも磨かれていくので、向いている人の特徴が備わっていないとしても、HCU看護師に挑戦することは可能です。あくまで参考として捉えてくださいね。

幅広い知識を学び経験を積みたい人

HCU病棟は基本的に全診療科の患者さんを受け入れるため、幅広い疾患の知識や経験を積んでいきたい人に向いています。また、医療処置やカンファレンスも多いため、急性期看護での処置技術やチーム医療も経験できるでしょう。

向上心がある人

新たな知識や技術の習得に意欲的で向上心のある人もHCUに向いています。HCU病棟では診療科の垣根がなく次々と新たな患者さんを受け入れるため、継続的に学び続ける姿勢が求められます。高度な急性期医療では、最先端の医療機器を扱うこともあるため、向上心を持って仕事に臨むことができれば配属後もプラスにつながるでしょう。

スピード感のある仕事がしたい人

HCU病棟は、平均在院日数が短く、患者さんの状態変化も早いため、スピード感のある対応が求められます。そのため、じっくりと看護をしたい人よりは、スピード感のある仕事がしたい人のほうが向いているといえます。ただし、HCUはICUより患者さんとの関わりが持てる傾向にあるため、ICU看護のスピードについていけるか不安な人は、まずHCUを選ぶのもひとつの選択肢です。

新卒からHCUに配属されるために就活や看護学生中にできること

新卒からHCU看護師を目指すためにやっておくとよいことをまとめました。

幅広く興味を持って学んでおく

HCU病棟に入院する患者さんの年齢や抱える疾患は様々です。そのため看護学校では幅広く学ぶことを意識しましょう。すべての領域で好成績を収める必要はありませんが、座学から実習まで幅広く興味を持って学ぶ姿勢が大切です。

就活で熱意をアピールする

HCU看護師に興味がある人は、志望先の病院に思いを伝えましょう。病院は一般的に内定後の面談で配属希望の聞き取りがあります。まずはHCUの現場を肌で感じるために、病院説明会やインターンシップに参加するのがおすすめです。そのうえで、HCUに興味があることを採用選考前から積極的にアピールしておくとよいでしょう。

今から参加できるインターシップや病院説明会は以下からチェックできます。ぜひご活用ください。

インターンシップ 病院見学会

※ナース専科就職ナビ

HCUでは幅広い経験を積んでスキルアップができる

HCUは、診療科に関わらず、重症化リスクのある急性期の患者さんを支える病棟です。HCU看護師は、疾患の知識から医療処置、患者さんの援助まで幅広い知識と技術が学べ、看護師としてのスキルアップが目指せます。さらに、HCUで身につけたスキルは将来的にも広く役立つでしょう。新卒からでも配属になる可能性はあるので、急性期に興味がある人は学びの多いHCU看護師に挑戦してみてください。

参考

日本集中治療医学会:CCU設置のための指針(2023年9月3日閲覧)

厚生労働省:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(2023年9月3日閲覧)

日本集中治療医学会:各都道府県別 ICUおよびICUに準ずる治療室のベッド数(2023年9月3日閲覧)

一般社団法人日本医療福祉建築協会:ICUの種類と対象患者・施設基準(2023年9月3日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

柴田 実岐子

shibata-mikiko

福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。