看護学生必見!コミュニケーションの必要性とスキルアップの具体策

看護学生必見!コミュニケーションの必要性とスキルアップの具体策

最終更新日:2023/09/05

看護師にとってコミュニケーションは必要不可欠であり、求められるスキルです。一方でコミュニケーションを苦手に感じる看護学生もいるでしょう。今回は看護師が患者さんや同僚とのコミュニケーションにおいて大切なことからスキルを磨く具体策まで紹介します。

看護師にコミュニケーションが求められる理由

看護学校の基礎看護技術でもコミュニケーションについて学習しますが、看護師にコミュニケーションが求められる理由は「患者さんに適切なケアを提供するため」に必要不可欠であるからです。

看護師が患者さんと密にコミュニケーションをとり情報収集・アセスメントをすることで、患者さんの小さな変化も見逃さないようにする意図があります。さらにスタッフ間でのコミュニケーションでは正確で素早い伝達・情報共有することで、ミスを最小限に減らすだけでなく、急変時でもスムーズな連携につながるなど、患者さんに対して迅速かつ適切な対応が取れるようになります。

またヴァージニア・ヘンダーソンは、患者さんの基本的ニードのひとつとして「自分の感情、欲求、恐怖あるいは“気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つ」とあげています。話しかける、話を聴く、表情やしぐさから感情を汲み取るコミュニケーションは、看護師に求められる役割といえます。

引用:ヴァージニア・ヘンダーソン「看護の基本となるもの」/日本看護協会出版会

看護学生はコミュニケーションが苦手?

では看護師を目指す看護学生のコミュニケーションの実態はどうでしょうか。アンケート調査や文献をもとに分析しました。

多くの看護学生がコミュニケーションに不安を抱えている

看護学生に入職前に不安に感じていることについてアンケート調査を行ったところ、第1位が「先輩・上司とのコミュニケーション」で69.4%、第5位が「同僚とのコミュニケーション」で43.1%、第9位が「患者さんとのコミュニケーション」で20.3%と、多くの看護学生がコミュニケーションに対して不安を抱えていることがわかりました。

入職前の看護学生が抱える不安ベスト10

コミュニケーションに苦手意識を持つ看護学生は約50%

また、自分自身のコミュニケーション力について質問したところ、コミュニケーションそのものに苦手意識がある看護学生は53%と半数以上いることがわかりました。

コミュニケーションが苦手な看護学生の割合

参考:ナース専科調べ

以下はコミュニケーションが苦手と答えた理由です。

    苦手と感じる理由

  • 沈黙が続いてしまって、会話が続かない
  • 緊張のあまり、うまく話せない
  • 人見知りの性格もあり、話すのが苦手

参考:ナース専科調べ

友人とのコミュニケーションには問題なくても、実習という緊張しやすい場になるとうまく話せなくなることから、看護コミュニケーションを苦手と感じてしまっていると考えられます。

コミュニケーションに不安を抱える看護学生の特徴

上記のアンケートや参考文献から考えられるコミュニケーションに不安を抱える看護学生の特徴をまとめました。

対人援助の気持ちが強く、自己主張に苦手意識を持っている

看護学生は、人を助ける「対人援助」の気持ちが強いため、他人との関係を大切にしようとするあまり、自己主張が弱い傾向があるとされています。対人援助の気持ちは看護師として大切ですが、自分の意見を伝えづらくなってしまう可能性もあるでしょう。

参考:看護学生のコミュニケーション・スキルと課題

実習体験を経てコミュニケーションが不安になってしまった

実習での経験を通して、コミュニケーションに不安を感じてしまう看護学生もいるようです。以下は実習でコミュニケーションが困難に感じた一例です。

  • 患者さんにケアを拒否された
  • 緊張してうまく会話ができなかった
  • 知識・スキル不足を自覚した

特に実習経験の少ない1年生は知識も浅く、患者さんや先輩看護師の言動や行動を的確に判断するのが難しいとされています。学年が上がるごとにコミュニケーション技術は習得されていくものですが、早い段階でコミュニケーションに不安を感じてしまうと、そのまま苦手意識を持ち続けてしまう場合もあるでしょう。

参考:患者とのコミュニケーション困難場面における看護学生の「解読、問題解決、感情」の関連

看護師のコミュニケーションで大切なこと

多くの看護学生がコミュニケーションに不安を抱えていますが、看護師になったらコミュニケーションが必要不可欠です。ここからは看護師が患者さん、スタッフ間で適切なコミュニケーションをとるために、大切にしたいポイントをそれぞれ解説します。

対患者さんとのコミュニケーションで大切なこと3選

患者さんとのコミュニケーションをとる際は、患者さんの悩みや不安を聞きだし問題点を明らかにするほか、信頼関係の構築などの目的を持って行いましょう。とくに大切なポイントは以下3つです。

傾聴する

看護の場合は「聴く」ことが重要なスキルです。コミュニケーションというと、「会話」をイメージする看護学生も多いでしょう。しかしこちらから話すだけでなく、患者さんが持つ悩みや不安を聞きだすことで、問題の解決や患者さんとの信頼関係の構築につながります。

客観的視点を入れる

看護の現場では、客観的な視点を持って患者さんの訴えや状態をアセスメントすることが基本です。主観的な視点では間違った判断をすることにもつながりかねないので、常に客観的な視点を意識し正確な情報収集ができるようにしましょう。

共感する

患者さんの訴えに共感して適切な助言や対応をすることは、その後の治療やケアを受け入れてもらいやすくなります。看護師が患者さんの訴えを受け止めることで、患者さんは「自分の悩みを理解してくれた」と感じやすくなるためです。まず患者さんに共感して考えを受け入れてみましょう。

表情や態度に注目する

患者さんの表情や態度にも注目することも大切なポイントです。患者さんが「痛みはないです」と話していたとしても、険しい表情だった場合は痛みを我慢している可能性も考えられます。表情や態度からも患者さんの問題点をアセスメントできるため、意識してみましょう。

スタッフ間でのコミュニケーションで大切なこと3選

スタッフ間でのコミュニケーションでは、患者さんの治療に影響が出ないよう、正確な情報の伝達や共有が不可欠です。とくに以下3点のポイントをおさえ、正確なコミュニケーションをとるよう心がけましょう。

わからないことは素直に聞く

わからないことは早めに質問することを心がけましょう。内容を理解できずに放置してしまうと、スタッフ間のトラブルの原因になるだけでなく、患者さんの治療やケアにも影響がでる可能性もあります。小さな疑問点であっても早めの確認が大切です。

聞き取れなかったら聞き返す

相手の話が聞き取れなかった場合は、どんなに忙しくても必ず聞き返して確認しましょう。聞き逃すと患者さんの治療に支障が出てしまう可能性があります。タイミングや確認内容など相手の状況に合わせて行うことを心がけながら、できる限り早めに解決しましょう。

報告はかならずする

スタッフ間のコミュニケーションでは報告が重要となります。看護業務は基本的にチームで行われるため、情報共有が必須だからです。スタッフ間で細かな情報共有ができると、信頼関係も築きやすくなりチームワークが向上することで、スムーズな業務につながります。

コミュニケーションスキルをアップさせる具体策

看護学生がコミュニケーションスキルをアップさせるにはある程度の経験も必要ですが、日常でスキルアップさせるための具体策を取り入れるのもひとつの手です。ここからはコニュニケーションスキルをアップさせる具体策について解説します。

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションを取り入れる

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションは、どちらも他者とコミュニケーションをとるうえで重要な手段です。

言語コミュニケーションは見る・聞く・話すなど言葉や文章を使って情報を伝える方法であり、非言語コミュニケーションは表情・動作・身振り手振りなど言葉以外の方法を指します。

笑顔で挨拶をされた場合と、怒った表情で挨拶をされた場合では、相手が抱く感情はまったく異なるように、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションは2つを同時に使うことでより効果的なコミュニケーションになるでしょう。

コミュニケーション手法を取り入れる

コミュニケーションにはさまざまな手法があり、これらを取り入れることでよりスムーズなコミュニケーションが可能になります。対患者さん、対スタッフごとに取り入れられる手法を解説していきます。

対患者さんに取り入れられるコミュニケーション手法

患者さんは「不安や悩みを聞いてほしい」「受け止めてほしい」という思いがあるため、共感や信頼感を高めるコミュニケーションが大切です。患者さんに対して取り入れられるコミュニケーション手法は以下になります。

ペーシング法

ペーシング法は、相手の動きに合わせて自分も動くことで、相手からの親近感や信頼感を高める効果が期待できる手法です。話すスピードや声の大きさなど相手のペースに合わせると安心感を与えられて、よりスムーズなコミュニケーションが期待できるでしょう。

ミラーリング法

ミラーリング法はペーシング法のひとつで、相手の話し方やしぐさ、表情などを真似する手法です。ただ、ミラーリング法を使って過剰に同調しすぎてしまうと不自然であるほか、相手に不信感を与える可能性もあります。患者さんの様子を見ながら適切に使いましょう。

バックトラッキング法

バックトラッキング法は、相手が話したことを繰り返して確認する手法です。自分の話を理解してくれたと安心感を与えるだけでなく、認識が間違っていた場合にすぐに修正できるメリットもあります。ただしバックトラッキング法も、頻繁に使うと相手に不信感を与えるので、適切なタイミングと頻度で行うようにしましょう。

対スタッフに取り入れられる手法

スタッフ間でのコミュニケーションでは、正確な情報共有をスムーズに行うことが大切です。スタッフ間で取り入れられるコミュニケーション手法をいくつか紹介します。

結論・目的ファースト

看護師間でのコミュニケーションは、まず結論・目的から述べるのが前提です。結論から述べることで、相手が状況をスムーズに理解しやすくなり正しい情報共有が可能になるので、相手に伝える時は意識してみましょう。

5W1Hを明確にする

5W1Hとは「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」を表します。対スタッフでは、この5W1Hを明確にしながらコミュニケーションを取ることで、情報の伝達もれや認識のずれを防ぐことができ、正しい情報共有につながります。

看護学生のうちにコミュニケーションスキルをアップさせよう

看護師にとってコミュニケーションは重要ですが、経験を積むことや手法を取り入れることでより早くスキルを身につけることができます。看護師のコミュニケーションにおいて大切なことを理解したうえで実習や学校生活でもコミュニケーションの手法を取り入れて、学生のうちからコミュニケーションの苦手意識を克服できるとよいでしょう。

引用・参考

ヴァージニア・ヘンダーソン「看護の基本となるもの」/日本看護協会出版会

看護学生のコミュニケーション・スキルと課題

患者とのコミュニケーション困難場面における看護学生の「解読、問題解決、感情」の関連

執筆者情報

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伊藤 雪乃

ito-yukino

2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力