【母性看護学 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法
最終更新日:2024/08/07
この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は母性看護学編です。第113回で出題された母性看護学に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。
目次
第113回の「母性看護学」はどうだった?
第113回の全体的な難易度は?
母性看護学の全体的な難易度はややアップしていたものの、大きな変化はありませんでした。その要因として、全体的にこれまでの出題傾向と大きく変わらなかった点が挙げられます。一方で、なかには表面的な知識だけでは正解するのが難しい問題も散見されました。例えば、法で定められている具体的な内容を問う問題(午前No.59)や、生理学的な機序まで理解していなければ解答できない問題(午前No.62)などです。
また、問題が全体的に長文化している傾向がみられ、問いと関係ない情報が記載されている問題(例:午前No.110)もありました。提示された情報すべてをアセスメントするのではなく、状況や産褥日数に応じて情報を取捨選択する力も求められるようになっていると考えられます。
第112回と比較すると?
第112回と比べると、出題された問題の傾向や問題数は概ね変化していませんでした。しかし、第113回では避妊法に代わり、人工妊娠中絶に関する問題(午前No.60) が出題されるといった新たな動向が見られました。
また、今回不適切問題となったものの、女性の鉄摂取推奨量を問う問題(午後No.2)が出題されるなど、近年の社会的な健康課題として取り上げられている内容が出題されている側面もうかがえます。
妊娠期・分娩期・産褥期・早期新生児期の看護に関する問題は第112回と変わらず、看護するうえで必要となる基本的な知識と、それらの知識に基づいてアセスメントし適切な看護や保健指導について問う問題が出題されました。
第113回から分析する「母性看護学」の傾向
第113回看護師国家試験は、令和5年版看護師国家試験出題基準が出題範囲となります。以下は母性看護学の出題基準の大項目をまとめたものです。
【令和5年版看護師国家試験出題基準 母性看護学の大項目】
- 母性看護の対象を取り巻く環境や社会の変遷
- 母性看護の基盤となる概念
- 女性のライフサイクル各期における看護
- 妊娠期の看護
- 分娩期の看護
- 産褥期の看護
- 早期新生児期の看護
【参考】厚生労働省:看護師国家試験出題基準
近年、出題頻度が高い問題の特徴は?
第113回を含め、近年の出題傾向に大きな変更は見られません。「令和5年版看護師国家試験出題基準」の母性看護学の小項目に列挙されている内容は、いずれも現在の日本社会において重要な課題となっているものばかりであるため、今後の出題傾向も大きな変化はないと予想されます。
とくに、少子化に直面している今、女性の活躍推進や仕事と育児の両立に向けた支援は、社会全体で取組むべき重要課題です。そのため、出題基準の大項目1に該当する「健やか親子21(第2次)」の課題や、それらに関連した母子保健施策や統計データ、妊娠期からの切れ目ない支援・働く妊産婦への支援・女性の健康支援に関する法や施策について問う問題は近年出題されやすく、今後も出題が続くでしょう。
また、大項目3に含まれる思春期の特徴や、若者の性と妊娠に関する健康相談についても問われやすい傾向にあるため、知識の習得が重要です。
大項目4~7の妊娠期・分娩期・産褥期・早期新生児期の看護に関する問題は、前述のとおり看護に必要な基礎知識と、それに基づいたアセスメント、看護、保健指導についての問題が近年続いています。とくに、妊娠期の保健指導や破水時の看護、母乳育児支援、新生児の生理的変化に関するアセスメントの問題は頻出しています。
またここ数年、妊娠期や新生児期で看護技術に関する問題が出題されるようになり、単に手技を問う問題だけでなく、図や写真などから判断することも求められるようになってきています。
第113回でとくに目立っていた問題
第113回で印象的だった問題は、珍しく出題された人工妊娠中絶に関する問題(午前No.60)と、不適切問題になりましたが近年社会的な健康課題として取り上げられている、女性の鉄摂取推奨量に関する問題(午後No.2)です。
また、分娩予定日を算出する問題(午前No.106)や、帝王切開術の状況設定問題(午後No.106~108)が数年ぶりに出題されたことも特徴として挙げられます。
そのほか、産褥期の母乳育児支援に関する問題はこれまでも頻出していますが、第113回では、母乳不足が正解となる変化が生じました(午前No.111)。基礎的知識を問う問題に加え、母乳育児の現状と課題を反映した問題が出題されたと考えられます。
反対に、以前に頻出されていた問題のなかで、ここ数年出題されていない問題もあります。例えば、妊娠の成立や機序、母子感染、出生前診断に関する問題などです。これらはいずれも重要な知識であるため、今後また出題されてもおかしくないでしょう。
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【第114回出題予想】「母性看護学」問題3問
予想問題1
- 成育基本法で言及された
- 男性は対象外である
- 産後の健康管理を意味する
- 「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)に基づく事業である
プレコンセプションケアに関する説明で正しいのはどれか。
解答・解説をチェック
1
1.(〇)年2月に成育基本法に基づく成育医療等基本方針が閣議決定され、初めてプレコンセプションケアに言及されました。
2.(×)女性やカップルが対象であり、男性も含まれます。
3.(×)妊娠前の健康管理を意味します。
4.(×)女性支援新法は生活困窮、性暴力・性犯罪被害、家庭関係破綻などの困難な問題を抱えるすべての女性ひとりひとりに寄り添った支援を強化する法律です。
プレコンセプションケアは令和5年版看護師国家試験出題基準に新たに挙げられた項目ですが、未だ出題されていません。社会的にプレコンセプションケアの取組みも増えてきているため、今後出題が予想されます。
予想問題2
- 成育基本法―産後ケア事業
- 成育基本法―父親の孤立
- 成育基本法―子育て世代包括支援センター
- 不妊専門相談センター―市区町村
妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援に関する施策で正しい組合せはどれか。
解答・解説をチェック
2
1.(×)令和元年(2019年)の母子保健法の改正により規定されています(令和3年4月1日施行)。
2.(〇)2021年2月の閣議決定により基本方針の1つに父親の孤立が含まれました。
3.(×)母子保健法の改正(平成29年4月1日施行)により、子育て世代包括支援センターの設置を市町村の努力義務となりました。
4.(×)不妊専門相談センターは都道府県、指定都市、中核市に設置されました。
妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援は頻出問題です。近年では、法の改正による施策の充実化が図られており、今後も出題が予測されます。
予想問題3
Aさん(33歳、経産婦)は、妊娠40週2日に経腟分娩にて2400gの男児Aちゃんを出産した。出生後5分の、Aちゃんは四肢末端にチアノーゼがみられ、強く啼泣して四肢を活発に動かし、心拍数156回、呼吸56回であった。分娩経過は正常であり、会陰裂傷もなかった。分娩第1期~第3期までの出血量は250mlであった。
分娩後2時間が経過し、Aさんは軽度の下腹部痛を訴えている。子宮底は臍下2横指、硬度良好であり出血量は20mlであった。
問題3₋①
アセスメントで正しいのはどれか。
1.生後5分のアプガースコアは8点である
2.分娩時出血量は250mlである
3.子宮復古を促すため冷罨法が必要である
4.Aちゃんの血糖値をチェックする必要がある
解答・解説をチェック
4
1.(×)アプガースコアは皮膚色のみマイナス1点となり合計9点となります。
2.(×)分娩時出血量は第4期(分娩後2時間まで)の出血量も含まれます。
3.(×)子宮収縮は良好であるため、特別なケアは必要ありません。下腹部痛は後陣痛と考えられます。
4.(〇)Aちゃんは低出生体重児のため、低血糖になるリスクがあります。
状況設定問題は、妊娠期・分娩期・産褥期・早期新生児期のいずれの時期からも頻出されています。また、低出生体重児に関する問題もよく出題されるため、予想問題として取り上げました。
問題3-②
産褥2日目、Aさんは体温36.8℃、脈拍67回、血圧110/72mmHg、子宮底は臍下2横指に硬く触れた。悪露は赤色で少量、悪臭はないが授乳時に下腹部痛がある。下肢の浮腫は認めなかった。乳房は腋窩付近にやや緊満が見られ、乳管開口数は左右とも3本で黄色い乳汁がジワリと分泌している。Aさんは、母乳でAちゃんを育てたいと考えているが、これまでの育児経験から母乳分泌不良になることを心配している。Aさんのアセスメントで適切なのはどれか。
1.子宮復古が遅延している
2.乳房の変化は産褥日数相当である
3.うっ滞性乳腺炎が生じている
4.子宮内感染が疑われる
解答・解説をチェック
2
1.(×)子宮復古は産褥日数相当です。
2.(〇)産褥2日目で乳管から初乳が分泌されており、腋窩付近の緊満は乳汁産生が活性化し産褥3日目に向けて生理的緊満が生じる徴候と考えられることから、乳房の変化は日数相当の変化といえます。
3.(×)腋窩付近の緊満は、乳汁産生が活性化し産褥3日目に向けて生理的緊満が生じる徴候と考えられるため、乳腺炎ではありません。
4.(×)バイタルサインや悪露の性状は正常であることから、感染徴候は認められません。下腹部痛は授乳によりオキシトシンが分泌され、後陣痛が生じていると考えられます。
産褥期の退行性・進行性変化が日数相当であるか、正常であるかを問うアセスメント問題はよく出ているため、今後も出題が予測されます。
問題3-③
産褥3日目。Aちゃんを観察したところ、体温37.1℃、心拍数132回/分、心雑音なし、呼吸数42回/分で胸部と腹部が同時に上下している。皮膚には胸部と殿部に中央に丘疹があり、直径1㎝程度の紅斑が数個点在している。経皮ビリルビン5.8mg/dl、薄い黄色い尿を8回/日、便は4回/日であり泥状で緑色のなかに黄色い顆粒が混じっている。体重は2230g(前日比マイナス63g)であった。授乳回数は12回/日で生後1日目以降は1回も人工乳を補足していない。Aちゃんのアセスメントで正しいのはどれか。
1.体重減少率は2.6%である
2.ウンナ母斑がある
3.異常呼吸はみられない
4.人工乳を補足する必要がある
解答・解説をチェック
3
1.(×)体重減少率は7.1(7.08)%です。
2.(×)胸部と殿部にある丘疹は中毒性紅斑であり、生理的な皮膚の変化です。
3.(〇)呼吸数は正常です。新生児の正常な呼吸は複式呼吸であり、吸気時に胸部と腹部が同時に上がります。吸気時に胸部が下がり腹部が膨らみ、呼気時に逆の動きを呈する呼吸をシーソー呼吸といい異常呼吸の1つです。
4.(×)体重減少率や排尿回数、排泄物の性状、ビリルビン値はすべて正常であり、新生児の状態や授乳回数から人工乳の補足を必要とする情報は見あたりません。
新生児の生理的変化や母乳育児に関するアセスメント問題もよく出ているため、今後も出題が予測されます。
【第114回攻略法】「母性看護学」のチェックポイントはズバリここ!
第114回も全体的な出題傾向は変わらないと考えられるため、まずは過去の問題に関連する内容をしっかり理解しておくことが肝要です。加えて、日本社会においての重要課題であったり、社会問題として取り上げられたりした内容から出題される傾向もあるため、時事問題や法改正はチェックしておきましょう。
妊娠期・分娩期・産褥期・早期新生児期の看護に関する一般問題や状況設定問題では、情報からアセスメントしたうえで、適切な援助や保健指導を解答することが求められます。それぞれの定義や生理的変化などの基本的な知識を理解しておくことが重要です。実習での学びが十分であれば容易に解答できる問題も多いため、妊婦や産婦、褥婦、新生児への看護について実習での体験を通じて会得しておきましょう。
また、近年ではレオポルド触診法や胎児心拍聴取、NST、新生児の観察、沐浴など看護技術に関する問題が出題されているため、手順だけでなく環境設定や得られた情報から判断できるように知識を深めておくことも大切です。
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