【看護の統合と実践 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

【看護の統合と実践 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

最終更新日:2024/08/07

この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は「看護の統合と実践」編です。第113回で出題された看護の統合と実践に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。

第113回の「看護の統合と実践」はどうだった?

第113回の難易度は?

第113回の「看護の統合と実践」のうち、看護管理学の問題でメンタルヘルスなど労務管理上の問題が出題されましたが、患者さんのケアを学ぶための臨地実習では、リアルに労働問題を学ぶ機会はそれほど多くはないため、難しく感じた人がいたかもしれません。

また、診療情報に関するテキストや参考書をみると、電子カルテ等の情報システムについては詳しく学べる内容ですが、個人情報の保護に関する内容は軽く触れる程度に学ぶもので、診療情報の開示請求が本人以外にどのような場合にできるのかまでは記載されていないものも多いようです。そのため、自己学習だけでは正解を導くのが難しかったのではないでしょうか。

災害看護学、医療安全、国際看護に関する問題の難易度は例年と大きく変わらず、基本的な知識を問う問題やこれまでと同様の傾向の問題が出題されました。

第113回で出題された看護の統合と実践に関する問題の特徴を、以下4つに分けて解説します。

  1. 看護管理学
  2. 災害看護学
  3. 医療安全
  4. 国際看護

1.看護管理学

看護管理学では、看護職員に限らずすべての労働者の課題になっている、ストレスチェックや鬱などのストレスマネジメントに関する問題が2題出題されました。第112回でも第113回と同様に、看護師の働き方のマネジメントに関する問題として、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について問われています。このことから、根拠法と関連させた労働管理に関する問題をしっかり勉強していくことが必要であると考えます。

そのほか、セカンドオピニオンに関連した診療情報の提供が出題されました。診療情報の提供等に関する指針についても学習しておく必要があるでしょう。

2.災害看護学

近年、多発する大規模災害を背景に、災害における看護職者の活躍が期待されており、適切な災害支援のための多職種との連携がますます重要になっています。そのため第113回では、心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)の活動原則に関する問題、トリアージタッグに関する問題など、災害現場で必要とされる実践的な知識が問われていました。

3.医療安全

医療安全について、第113回ではインシデントレポートに関する基本的な考え方や、医療事故が起きた場合の対応策、つまり看護の実践が問われました。医療事故が起きた場合の対応策は「人は誰でも間違える」を前提に、事故の防止とともに現実に起きた場合に備えて、どのように対処する必要があるのかを優先順位を考えて理解しておく必要があります。

4.国際看護

国際看護の問題は、外国籍の家族への対応として何が大切であると考えるかを問う内容でした。相手がもつ文化的背景や価値観を尊重することが大切なので、まずは相手の考えを聞くという対応が必要であることを理解しておきましょう。

第112回と比較すると?

第112回では、看護管理学からは看護の質評価、看護のマネジメントプロセスなど、看護におけるマネジメントの基本について理解を問う問題が4問、医療安全の問題からは病院の医療安全管理部門の組織的位置づけ、医療法に基づいて医療機関で行われる医療安全管理者養成研修について出題されていました。

また、災害看護学では災害発生から3日目の超急性期における被災者の精神的な支援のあり方、災害時支援の法的根拠が第112回で出題されました。災害サイクルに合わせた支援方法、災害時支援の法的根拠、看護実践に即した知識を身に着けておく必要があります。

国際看護に関しては、第113回では外国籍の母親への対応について問われました。第112回では外国籍の妻への対応について問う問題が出題されていたことから、外国籍の家族への対応について出題されるという傾向にあるようです。

第113回から分析する「看護の統合と実践」の傾向

近年、出題頻度が高い問題の特徴は?

近年ではストレスチェックや鬱などのストレスマネジメントの出題が続いています。日本では、鬱など看護職員の心の問題による休職や離職が十分に解決できていないことから、労働者としての看護職員の管理に関する問題は今後も出題されると予想されます。

また、国際看護については、外来受診や入院治療を受ける外国籍の患者さんが増えている現状を踏まえて、ここ数年出題が続いています。さまざまな文化、価値観、生活習慣をもつ患者さんや家族に対する適切な対応について出題される傾向にあるようです。

第113回でとくに目立っていた問題

第113回で出題されたセカンドオピニオンに関連した診療情報の提供の問題は、第108回でも出題されていました。今後も出題される可能性があるため、診療情報の提供等に関する指針を押さえておくことが必要でしょう。この問題は、インフォームドコンセントや個人情報保護を踏まえながら、診療情報の提供における看護者の責任への理解が出題の意図だと考えられます。

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【第114回出題予想】「看護の統合と実践」に関する問題3問

予想問題1

    6か月以上就労している看護師に与えなければならない年間の有給休暇で正しいのはどれか。

  1. 労働者の希望通りに10日間与えなければならない
  2. 労働者の希望通りに5日間与えなければならない
  3. 労働者の希望とは別に時季を指定して5日間与えなければならない
  4. 労働者の希望とは別に時季を指定して10日間与えなければならない
解答・解説をチェック

 
 3

2019年の働き方改革関連法では、年次有給休暇の取得促進をねらいの1つとして管理者が時季を指定して最低でも5日間の有給休暇を与えなければならないこととなりました。もし5日の休暇が取れずに違反した場合は、30万円以下の罰金(労働基準法第120条)が課せられます。看護管理者は計画的に看護職員が有給休暇を取得できるようにする必要があります。

看護師として働くうえで、管理者だけでなく一般の看護職員についても十分理解しておくことや、セルフマネジメントが重要であることから取り上げました。

予想問題2

    医療の安全管理のシステム設計で正しいのはどれか。

  1. インシデントを起こした個人に反省を促す
  2. インシデントの原因を分析し共有する
  3. 効率よく、複数の業務を同時に進める
  4. ミスは起きても実害がなければ報告はいらない
解答・解説をチェック

 
 2

1.(×)インシデントを起こした個人に反省を促しても、同じようなミスを他の人が起こしてしまう恐れがあります。問題は個人ではなくシステム設計のあり方です。
2.(〇)インシデントの原因を分析し共有することで、医療の安全につながります。
3.(×)複数の業務を同時に進めることはミスを誘発する恐れがあります。
4.(×)実害の背景には29件の小さな事故があり、さらにその背景には軽微な事故やヒヤリハットがある(ハインリッヒの法則)といわれています。

「人は誰でも間違える」を念頭に原因を分析し、情報を共有しシステムを改善するのが医療安全の考え方です。医療安全の考え方を問う問題は、これまでも出題されており、今後も重要であるため予想問題として紹介しました。

予想問題3

    SDGs(Sustainable Development Goals)について正しいのはどれか。

  1. 2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標のことである
  2. 8つの目標を設定している
  3. 目標の達成年限を2050年としている
  4. 主として開発途上国に向けた目標である
解答・解説をチェック

 
 1

1.(〇)(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年の国連サミットにおいて全ての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられ、2030年を達成年限として17のゴールと169のターゲットから構成されています。
2.(×)8ゴール21のターゲットから構成されているのは、SDGsの前身であるMDGs(Millennium
Development Goals:ミレニアム開発目標)です。
3.(×)SDGs が掲げている達成年限は2030年です。
4.(×)SDGsは開発途上国のみならず、先進国も含め、全ての国が取り組むべきユニバーサル(普遍的)な目標です。

SDGsに関しては世の中のさまざまな場面で取り上げられることが多く、第108回、第110回でも出題されているため、正しく理解しておく必要があります。

【第114回攻略法】「看護の統合と実践」のチェックポイントはズバリここ!

看護管理学は、看護管理のプロセス、看護の質評価、就労継続に関する労務管理、とくにストレスへの配慮、労働安全衛生などが重要となると考えます。

災害看護は、実践を支える基本的な法的根拠、トリアージや心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド: PFA)の活動原則について理解を深めておくとよいでしょう。

医療安全については、医療安全の基本的な考え方、個人で行う安全対策、たとえば復唱確認や指差呼称、ダブルチェックなどを押さえておくことが必要です。

国際看護については、外国籍の患者さんや家族に対して、一方的な情報提供ではなく、患者さんや家族の価値観、考えなどを尊重しながらの対応が大切であるということを理解しておく必要があります。また、プライマリ・ヘルスケア、ODA、SDGs、WHOなど国際看護に関連する用語に関しては広く出題される傾向にあるため、正しく理解しておきましょう。

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執筆者情報

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田中 幸子/ 山本 伊都子

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■田中 幸子 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 教授/担当領域:基礎看護学   ■山本 伊都子 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科/担当領域:成人看護学